あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
「あーっ、お前こないだの!」
気づいたら竹林にいた。
竹の爽やかな香りは好きだ。
ちょっと昼寝でもしちゃおうかな、と思っていたところ、早速人に発見されてしまった。
「傷はもういいのか!? なんか別の場所にも包帯巻かれてねえか!?」
「これは自分のせいでついた傷だから気にしなくていいよ」
はて、どんな傷を負っているときに出会った子だろうか。
駆け寄ってきてくれたので、しゃがんで目線を合わせ、顔をよく見る。
短く刈り上げた緑色の髪、両手に竹刀、道着、まあまあ悪い目つき。
……これゾロか。小さすぎてわからなかった。
なるほど道理で、麦わらの一味に加入したとき、私を知っているような態度だったのに納得がいった。
こんな小さい時からの知り合いか。
しかも彼の最初の発言からいって、彼の少年時代に会うのは二度目のようだ。
「なんだよ、そんなボロボロだったら勝っても意味ねー」
「こんなボロボロでも負けないけどねー」
「んだと!」
「お、やるかァ?」
未来の大剣豪と稽古も悪くない。最悪負けても傷があるからと言い訳できる。
ゾロから竹刀を借りて、私は右手一本で持って構えた。
一番大きな傷は左わき腹だ。
そこをかばうために、今回はフェンシングスタイルをとる。
普段やらない見様見真似だが、それでもまあ、私結構強いからね。
何度か打ち合った末に、ゾロの竹刀を2本とも弾き飛ばして勝負はついた。
「クソーッ、バケモンかお前!?」
「ワハハ。実はそうなんだ」
本気で悔しがるゾロに、私は言った。
「私って妖怪なんだ」
「はあ?」
「神出鬼没で歳は取らない」
「なに言ってんだお前。若さに憑りつかれたババアの妄想か?」
私はゾロの頭をチョップした。言っていいことと悪いことがあるだろ。
頭のたんこぶを押さえるゾロに私は言う。
「そんなことを言うやつとはもう戦ってやらんぞ」
「勝ち逃げする気か!?」
「神出鬼没だからなー。逃げちゃおっかなー」
ゾロをからかって遊んでいると、少女が近づいてきた。
私を見て困惑しているところから、ゾロに用事があったのだろう。
「先約があったのか。ごめんね邪魔をして」
「いえ……勝ったんですか? ゾロに?」
「ゾロが勝ってたらここまで悔しがってないだろうねー」
「うるせえ!」
少女は肩にかけていた竹刀袋から竹刀を取り出すと、スッと構えた。
「くいなと言います。……私とも一戦お願いします」
私はずるい大人なので、負けたら怪我してるからって言い訳しよ、と思ってその勝負を受けた。
結果私が勝ったが、見様見真似のフェンシングスタイルでは一瞬危ない場面があったので、一度両手で剣を握って少女の竹刀を弾き飛ばした。危ない。
少女はゾロのように地面をダンダン叩いて悔しがることはしなかった。
ただ、弾き飛ばされた竹刀を拾い上げてはぎゅっと握りしめ、私をまっすぐに見上げた。
「私でも、あなたみたいに強くなれますか?」
「なれるとも」
私なんかたいしたことないよと続けてしまいそうになったが、憧れてくれているようだから夢をつぶすようなことはしないでおこう。
「私は世界一の剣豪に認められるくらいには剣の腕があるらしいからね」
「世界一の剣豪と戦ったのか!? どんなやつだ!?」
「め~っちゃ強い」
「適当かッ!!」
今この時代でも最強の剣豪がミホークかわからないので、適当を言った。
「いつかぜってーお前に勝つッ! くいなにも!」
「えー。それよりも、世界一の剣豪を私より先に倒してくれ。相手するの大変なんだ。ゾロでもくいなでもいいけど」
「わかりました! 私がやります!」
「おれがやる!」
なんか適当に言ったらだいぶ気合を入れられてしまった。ごめんミホーク。
……いや喜びそうだな。じゃあいいか。