ふらふら   作:九条空

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赤髪海賊団/ミホーク

 あっちへふらふら、こっちへふらふら。

 私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。

 

 場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。

 それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。

 

 ――空から落ちるのも久しぶりだ。

 

 体を反転させ、地面の方を見る。

 そこに島はありそうだが、海上の方がいっそマシだったかもしれない。

 飛んでくる覇気、剣気、ギャハギャハ笑う海賊の声。

 帰りてェ……と思うくらいだったが、このまま宙を蹴って別の島を探す余裕もなかった。

 この次の島がどれだけの距離かわからないのだ。上陸はするしかあるまい。

 

 私はポケットを漁った。

 ……どっかの村で食べたお団子の串が出てきた。捨て忘れていたらしい。

 

 しょうがない、これでいいか。

 串に武装色の覇気をこめて、私は下にいる2()()に、結構本気で投擲した。

 殺意くらいこもってないと避けてもらえないどころか、無視されそうだったからだ。

 

 投擲した串は誰にも刺さらなかった。

 斬り結ぶ彼らはきちんとそれに気づいて、お互い後退することでそれを避けたからだ。

 

 そうして開けた場所に着地する。

 いてて、足がしびれる、もっとちゃんと衝撃を逃がさないといけなかった。

 かなり高いところから落ちていたらしい。

 空を見上げたが、さっきまで自分がいた高度などわかりはしなかった。

 

 私はシャンクスを見た。

 まだ両腕がある頃の彼で、しょっちゅうミホークと決闘していた頃の彼である。

 

「邪魔してごめん。すぐいなくなるから気にせず続きやって」

「なんだよ水臭ぇな! こいつとはいつでも会えるからいいよ!」

「私ともいつでも会えるよ、シャンクス」

「嘘つけェ! いつどこから出てくるかわかんねェくせに!」

「ぐえ」

 

 シャンクスに肩を組まれると同時に首がしまった。

 体格差を考えてくれ、子供の頃の彼ならいざ知らず。

 私はミホークを見た。彼に関しては10年後もわりとこんな感じなので、時代を判別するのが難しい。

 

「ミホークも、邪魔してごめんね」

「……続きは貴様とやるか」

「いやだー! シャンクス、いけっ!」

「おれもいやだ! いけベック!」

 

 ベックマンは、無言で首を横に振った。

 おい船長、簡単に見捨てられてるじゃないか。

 

 今日の私は比較的元気なのだ。

 縫い傷からはほとんど出血していないし、骨も……4、いや6本くらいしか折れていない。

 それを友達と決闘してボロボロになりたくない! 私は別の提案をした。

 

「しょうがない……飲み比べで勝負だ!」

「っしゃやるぞ鷹の目!」

「いやだ」

「えーっ」

 

 私とシャンクスにぶーぶー文句を言われても、ミホークはNOの姿勢を崩さなかった。

 私以外と戦ってくれるなら別にいいんだけど。なんかとばっちりきそうなんだよ。

 

「酔ったら戦う気になるかも。ほら私使えるから」

「……ほう」

 

 やべ、適当言ったらちょっと興味を持たれている。

 私は手加減が苦手で、それは酔っていると尚更そうだ。

 だから酔って剣を握ると、要らんものまで斬ってしまう可能性がある。

 相手がミホークだとしたら、いつにもましてかなりいろいろ斬っちゃいそうだな。

 

「……一応聞いとくけどこの島って地図から消えても平気そう?」

「そんな島はねェ」

「だよね」

 

 シャンクスに断言され、私は頷いた。そりゃそう。

 この2人は本気で戦いながら、よく島を潰さずにやれているものだ。

 

「じゃあミホーク、エニエス・ロビーでやろう。あそこはなくなってもいい場所だから」

「ブフーッ」

 

 吹き出したのはもちろんミホークではなく、シャンクスである。

 笑い事じゃないんだ。私は本気で言っているので。

 うん、決闘でボロボロになるのは嫌だが、世界政府に大打撃を与えるついでにボロボロになるのなら許せるな。私はちょっと乗り気になってきた。なにしろ今日は空元気ではない。

 

「マリージョアでもいいな。こっからどんくらい? 近いなら行こうか?」

 

 その問いにはベックマンが答えてくれた。

 

「世界半周するくらい遠いぞ」

「なんだきみら、変なとこで戦うなよ」

「だっ……! ……!」

 

 シャンクスが声も出ないほど爆笑している。

 ミホークはそれでも気にせず、私に尋ねる。

 

「海軍基地で会ったら剣を握るか」

「いつもよりやる気でるかもね」

 

 海軍基地はしっかり仕事をしているのならぶっ壊してやろうという気持ちにはならないため、奴隷の売り買いしているような場所の方がいいな。そこをついでに破壊できるなら決闘してもいい。

 ……なんだかミホーク、私を海軍基地で待とうとしていないか?

 そんなに戦いたいのか。いつも何かと避けていて申し訳ないな。

 その割に、こないだ七武海の会合に参加しに来た彼に海軍基地で出会ったときは……ああ、あれ私死にかけてたんだっけ。

 意図的に彼と決闘するのを避けるときより、重症過ぎてそれどころではないときのほうが多いからな。

 

 しかし、それで言ったら、重症故にシャンクスの酒を断った回数の方が多い。

 

「まあ今日は飲もうよ。内臓全部無事なの久々だもん。祝おう祝おう」

「祝おう祝おう! 野郎共ー! 宴ー!!」

 

 シャンクスの適当な掛け声で、シャンクスとミホークのどっちが勝つか賭けていた赤髪海賊団は酒瓶持って集結した。

 

「お前、今日は飲むってマジか!?」

「うん」

「なあ、前やってくれた一発芸やってくれよ!」

「うおー、前の私はなにやったんだ?」

 

 私にとっては未来だからなのか、そのときの私が劇的に酔っていたか、どちらかわからないが一発芸は記憶にない。

 

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