あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
私は何でもない時にメリー号にたどり着いていた。
敵もいなければ、飯時でもなく、島にすぐたどり着くわけでもない。
何も起きない船の旅だ。私はこういう時間を、大層愛していた。
「で、おれたちはナミを助けるために空飛ぶ船でココヤシ村に上陸したってわけだ」
「すごっ」
ウソップの話を、相槌を打ちながら聞く。
空島でさえ空を飛ぶ船を見かけたことはない。
あー、ココヤシ村というからにはナミの故郷で……前にもウソップからアーロン一味を倒した話を聞いたが、そのときとディティールが異なっているな。
「まあお前は空が飛べるから先に到着しててだな……」
「すげえ、さすが私」
私はウソップのほら話を、いつでもかなり熱心に聞いている。面白いからだ。
今日はこの場にいないが、ルフィとチョッパーも、言い方はあれだが……単純だから結構ウソップの話を聞いている。
しかし、ウソップは私に話すとき、いつもに加えて嘘の量が増している気がする。
これはサービスされているのだろうか。
「ここでキャプテン・ウソップが華麗に登場!」
「おおー」
拍手でキャプテン・ウソップを迎える。
ちなみに、彼の話の中でキャプテン・ウソップが登場したとき、実際の出来事でウソップが登場する確率は今のところ10%を下回る。
これはすごいことだ。自分の話をするときに、自分がそこにいた、と言ったら普通いるものだ。
彼の場合むしろ結構な確率で、いない。嘘の吐き方がすごい。それが面白い。
「そこで両腕を大砲にしたお前がちゅどーんとレーザービームを放ったわけだ!」
「エーッ!? 両腕を大砲にした私が!? 嘘だろ!?」
「嘘だろ」
冷静にゾロが言ってくれなければ、私はうっかり本気で信じるところだった。
なにしろその時の出来事を私はまだ知らず、それは未来の出来事だ。
未来の私がうっかりビームを撃てるようになっている可能性も……なくはないわけで。
だから私は、自分に関してのウソップの嘘についてだけは、ついつい信じかけてしまう瞬間があるのである。
それもあってか、ウソップは、ウソップ自身と同じくらい、私に対して嘘を盛る。
嘘を信じやすいルフィもチョッパーも、流石に自分が見聞きした事実ならばほとんど騙されない。
しかし私は、彼らにとって経験したことであっても、私にとっては未来であることが多いため――ウソップが過去改変してもわからないのだ。
だから、ウソップの話においては、キャプテン・ウソップ並みに私も魔改造されている。
「しかしビームを撃った反動でしばらく動けなくなったお前をこの俺が! 俺が次の戦場へと運んでやったと言うわけだ!」
「すげえや! ありがとうキャプテン・ウソップ!」
ウソップに関する嘘は、未来のウソップを見てきているから大体は嘘だとわかる。
わかった上で、そんな嘘をつけるウソップをすげえやと褒めている。
私が両腕を大砲にした部分の、元になったのは本当になんなんだろう。銃でも撃ったのか?
武器として、剣以外をあまり持つことはない。
まったく持たないわけではないし、適当な剣をその辺から借りることもある。あまりにも適当過ぎて棒状なだけで刃物ではないこともあるくらいだ。
特に狙撃手であるウソップの前で下手な狙いを見せるのは恥ずかしいから、そんなことはしなさそうだが。
でもウソップの嘘の才能は素晴らしいからな。
本当に0から1を作っていることもあるので、大砲とはなんの関係もないのかもしれない。
答え合わせをするときが楽しみだ。
いざその時になっても嘘が嘘過ぎて、それのことだったと気がつけないかもしれない。