あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
「あ……あの……クソボケカスマッドサイエンティストがァ……!」
パンクハザードから突然景色が変わり、見知らぬ船に乗っている。
シーザーをなます切りにしてやろうと思って攻防を繰り広げたのだが、私の能力で時間切れになってしまった。
私は特別毒に耐性を持たないため、ガスガスの実の能力で毒ガスを使用してくるシーザーとは相性が悪い。性格も嫌いだ。
やってることもやってることなので、見かけるたびに結構本気で攻撃を仕掛けているのだが、今回は手ひどい反撃をくらってしまった。
しくしく、また顔が紫色になっているかもしれない。
「な、なんだお前!? いつこの船に乗りやがった!?」
「今だよ今、見てなよちゃんと」
「いや見てたけどさっきまでいなかっただろ!?」
だからさっきまでいなかったんだよ、話が分からないやつだな。
私は上を見て、掲げられるジョリーロジャーに見覚えがないことを確認した。
「で、きみらはなんだ? 海賊か? いい海賊か? 悪い海賊か?」
「海賊にいいも悪いもあるか!?」
「あるだろうが……何のために海にいる?」
「くだらねえ話をしてる暇はねえんだよ! 目の前にビッグマム海賊団がいるんだからな。お前はその仲間なんじゃねえのか!?」
私はため息をついた。
「微妙だな。返事は煮え切らないし、シチュエーションも微妙。殺すほどではないが、殺さないほどでもない」
ビッグマム海賊団の標的になるには善悪が関係ないから、そこは基準にできない。
だがここまでのやり取りで彼らが
普通の海賊とはつまり、ろくでもないということだ。
水平線に船の影が3つ見える。見聞色でたどればそれぞれスムージー、シトロン、シナモンが乗っていた。敗色濃厚だな。こっちに億越えはいなさそうだし。
「今の私はめちゃくちゃ機嫌が悪いから、良い死に方はできないよ」
シーザーの笑い声を聞くだけで私のストレス値が限界を超えるのだ。
場合によってはビックマム海賊団の捕虜になる方がしんどいかもしれないし、情けかもしれない。
近くの海賊を蹴り飛ばし、その瞬間に腰の剣を奪う。
大上段に構えたなまくらを、特に狙いもつけずに振り下ろした。
……
乗っていた船を沈めてしまったので、私は宙を蹴ってスムージーの船まで足場を求めにいった。
特に考えなしに剣をふるうとこういうことになるからやめようね。
私が船に乗っても、誰も文句を言わなかった。この時間軸では、彼らとの関係は良好らしい。
いつか険悪になることを知ってしまったので、今のうちに仲良しを楽しんでおこう。
「ごめん、何も考えずに斬っちゃったんだけど、船も欲しかった?」
「構わないとも」
「心広いね、愛してるよ」
スムージーは私の言葉に照れることもなく、心配そうに私を見た。
「よほど具合が悪いようだ。あなたは頻繁に軽口をたたくが、愛の言葉を軽率に口にすることはない」
「わかられているねえ」
それにも愛を感じたが、これって毒のせいなのだろうか?
私は服をたくし上げて、腹部の傷を見せた。メスの突き刺さった場所は青紫色に変色している。アザよりもっと、やたらに
毒ガスを警戒していたせいで反応が遅れ、毒の塗られたメスを避けられなかったのである。あいつも忍者の才能があるのかもしれない。なんか投げてくるのがメスなのめっちゃいやかも、マッドサイエンティストのくせに医療器具を使うな、しかも攻撃に。
スムージーはおずおずと提案した。
「試してみてもいいだろうか? あなたの毒素部分だけを絞れるかもしれない」
「スムージーちゃん、天才か?」
「少々余計な部分まで絞ってしまうかもしれないのだが……」
「いいよいいよ」
私の許可を得ると、スムージーは私の上半身と下半身をそれぞれそっと持ち、ぐるっと回してぎゅっと絞った。
ねじられた私の腹部からは、鮮やかな色をした毒がジュースとなって流れていった。
余計な部分まで絞られたかどうかは素人の私にはわからなかったが、スムージーが微妙な顔をしているため彼女の納得のいく処置ではなかったのだろう。
「頭がはっきりした。ありがとう」
「いや、私もまだ修行不足ですまない」
スムージーちゃんの発育が良過ぎて気づかなかったのだが、彼女は随分若かったようだ。
うーん、30過ぎてもこの若々しさなんだよな。もしかして今はまだ10代か?
「毒は問題ないが、傷の治療をしなければ」
「こんくらいほっといても平気だよ。深くもないし」
「あまり心配させないでくれ」
強い
おかしいな、絶対に私の方が年上のはずなのに、ふるまいとしては私の方が完全にガキなんだよな。
歳をとるだけでは人は成長しないということか。しかし私は自分の能力のせいで、なかなか落ち着きというものを得ることができないでいる。