あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
「大変、そんな薄着で!」
踏みしめている大地に雪が積もっていることを認識した瞬間、近くにいたビビが私を心配して駆け寄ってきた。ウソップとドルトンくんもいる。
雪がちらついているために寒いはずだが、私はあまりわからなかった。ウソップが私の顔を見て驚く。
「なんかお前、顔紫じゃねえか!?」
「寒いから寒いから」
「寒いときは普通赤くなんだよ!」
「誤差誤差」
「青はどっから来たんだオメー!」
しらばっくれるのにも限度があるか。諦めた私は肩をすくめた。
「ちょっと毒食らっちゃって」
「毒ゥ!?」
「そう。あ、もちろんこの国の人にじゃなくてね。見る? そこそこ性格悪い傷だよほら」
処置をする時間もなくこちらに飛ばされたため、私の傷はむき出しだ。
かろうじて服に隠れていたが、ボロボロで穴あきの服をちょっと引っ張ってやれば新鮮な生傷が現れる。
マゼランの攻撃は一撃必殺に近いため、攻撃の回避を苦手としている私との相性は最悪だ。
毒に耐性もない。彼による毒ガスでの攻撃も、呼吸するだけでダメージが入るからしんどい。
しかし毎回攻撃されたとしても、牢獄に不法侵入している私が100%悪いから彼を恨めないんだよな。
この場合恨むのは、そんなところに飛ばしてくる私の悪魔の実である。
ドクドクの実とはそのへんのロギア系よりよっぽど相性が悪いのだが、マゼランの方も私を意外と苦手にしているようなのでトントン……いや、やっぱり私が劣勢だな。
「……なんてひどい傷だ……!」
傷を見せると、ドルトンくんが顔を青ざめさせるほどだったので、私はいそいそと傷を隠した。
ちゃんとショックを受けられるとバツが悪い。全部自分のせいだが。
私は空元気のために無理に上げていたテンションを落とし、謝った。
「ごめん、気分の悪いもの見せた。弱ってると痛みに同情してもらいたくなるんだよな。そういう意味できみのリアクションは100点満点だ、ドルトンくん」
「なぜ私の名前を……」
「え!? 初対面!?」
しまった、初対面だったら初対面であることに驚いちゃダメだろ。
毒で頭が回っていないらしい。
言い訳をするために、私はドルトンくんの顔をズビシ、と指さした。
「顔に書いてある。きみのような誠実な男に付けられる名前はみーんなドルトン」
「すげえ無茶なこと言ってるぞお前」
「わかってる。なんも考えられねえ」
ウソップに言われなくとも、私の発言が無理筋なのはわかっていた。
これ以上は何を言ってもドツボにはまるだけだろう。会話自体を避けるに限る。
腕組をして、遠くの山を見た。雪崩はまだ起きていない。
つまり、
時折あるのだ、こういうことが。特に毒などの状態異常を食らっている時によく起きる誤作動である。
悪魔の実というのはつまり、今となっては私の
私が同時に存在していることを私自身が認識するのと、私以外の人間が認識するのでは、とてつもなく重要度が変わってくる。
たぶん、あの時の私は誰かに出会う前にどこぞに飛ばされたはずだが――あ、ゾロの服。
「さて、じゃあ私も登ろうかな、ドラムロック」
「隣村に医者が来ているっていうのに!?」
驚くビビに、私は頷いた。
「重病のナミより先に処置してもらうわけには行かない。上に行って順番を待つよ。医者は今、この国にひとりなんだろ?」
「致命傷といってもいい程なのにか……」
「自分の傷より、仲間が苦しんでいるのを見るほうが辛い」
まあ私、普段から致命傷ばかり負っているから慣れっこだ。
死に至る傷だろうが、死ななければいずれ治る。
ともかく急いで退散しよう。私はひょいと跳躍して、城の建っている山の頂上に登るため高度を上げていった。
「と、飛んでいる……」
「あー、アイツなんでか飛べるんだよな」
「それでいいの!? なんなのあなたたち!?」
私が飛んでいるのに呆然とするドルトン、もはや慣れてきたウソップ、初見なので思いっきりつっこんでくれたビビである。
気を取り戻したドルトンが、私に向かって大声で叫んだ。
「ハイキングベアに会ったら一礼を忘れるな!」
「わかったー!」
ハイキングベアがなにかわからないので、会った生き物にはとりあえず一礼しておくことにしよう。
大声ついでに、私もビビとウソップに叫んだ。
「ゾロに会ったら謝っといてくれ! ゾロの服と靴失くした!」
「なんで!?」
「届けようとしたらここに来る途中でどっかにやっちゃった!!」
「……アイツなんで服着てねえんだよ!」
本当にな!!