あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
……これはさすがにやばいだろ。
誰にだかわからないが、確実に怒られる。
冷や汗をかきながら、私を見て目を丸くする2人の男に、必死でしーっ、しーっと合図した。
場所はインペルダウン最深部、LEVEL6だ。
幸いなことに、私がここにいることはまだ気づかれていないようだ。
檻の向こうで繋がれている、エースとジンベエを見る。
これどうしようかな。
あー、飛ばされるのが檻の内側だったらもうちょっとやりようがあったかもしれないのに。
彼らの入っている檻の鉄格子を握ると、案の定体から力が抜けていく。
当然、彼らが繋がれているのも海楼石だ。これを破るには……うーん……。
壁ごとえぐって……でっかい音が鳴るよなァ……。壁も海楼石混じってたらおしまいだし。
動かせるようになった後も、壁の破片と鎖につながったエースとジンベエがいるわけで、その状態でこのインペルダウンからの脱出は正直無謀だ。
「……全員殺すか」
「喋ったと思ったら、いきなり物騒じゃの」
ジンベエに言われたが、私はさほど頭が良くないのでそれ以上のいい方法は思いつかない。
インペルダウンにも一部顔見知りがいるが、斬ってもそうそう死にそうにないやつらだし。
本当に、全力で大暴れしても構わない気がする。やるか。
私は檻から3歩、後ろに下がって、右手を腰に当てた。
「ニューゲートも来るでしょ。そうしたら総出で殺し合いになるんだから、先に私が始めてもいいと思わないか」
「悪ィな、ガラにもねェこと言わせちまってよ」
私が
「おれはそんなこと望んじゃいねえ……」
「エース。私だってきみに死んでほしくないと望んでいる」
どちらの希望が通るか、ここで戦えとでもいうつもりなのか。
私は肩をすくめて、ジンベエを見た。
「ジンベエ、エースが世話になったね。一人で寂しくしていないか心配だったんだ」
話し相手がいて良かった。
まあ海軍としては、トップクラスに危険な奴らは一緒に閉じ込めて、リスクを分散したくないという思いなのだろうが。
エースがまっすぐに私を見る。――私の負けだ。
あまり元気でもないしな。
ついさっきまで小腸は腹から飛び出しかけ、左の二の腕あたりと大腿骨あたりにヒビが入っている。
「わかった。じゃあ、ニューゲートと共にもう一度来るさ。まったく男の子ときたら、男の子同士じゃなきゃ通じない話が多い。いや……次に来るのはルフィと、かな」
「ルフィが……!?」
「来るだろそりゃ」
何を驚いているのかと呆れたが、エースも投獄されて追い詰められているのだろう。
私は彼に、当たり前のことを思い出させた。
「きみの弟だ」
大量の足音と共に「侵入者だァー!」「いつの間に……!?」「LEVEL6にどうやって!」と声が聞こえる。
まあまあ早い……いや遅いかな。私が本気だったら、この部屋中切り刻んで彼らを脱出させていたかもしれないし――海楼石が斬れるかはチャレンジ要素だが――あるいは他のLEVEL6の奴らを脱獄させて混乱を招いていたかもしれない。私としてもあんまり出てきてほしくないから今日はやらないけど。
「ま、せっかく来たんだし、ちょっと斬ってから帰る。またね」
気負わず、海兵の声のする方にすたすたと歩いていく。
ガープ来たら全力で逃げよう。
あとセンゴクと三大将が来ても全力で背中晒して逃げるからね。
他の海兵と七武海は面子による。ミホークだったら……斬り合うか。
インペルダウンはなくなってもいい場所か微妙だけど、暴れてもいいくらいには頑丈だ。