あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
結構田舎っぽい景色だ。
見覚えはない。初めて来る島だろう。
馴染みの気配がして、私は顔を輝かせた。足音さえ懐かしい。
手を振りながらこちらに来るので、私も手を振って彼を迎えた。
「いたいた。アイツ仲間にするぞ!」
「おー、船長のお眼鏡にかなうとは。どんな人だい?」
「ええーッ!? いきなり出てきていきなり納得したーッ!?」
ルフィしか見えていなかったので、ちゃんとしたツッコミが飛んできて驚いた。
「ごめん、きみを無視したわけじゃないよ。お名前を聞いても?」
「無視されたと思ったわけでは……コビーです」
「コビーくん。あれ、きみも仲間?」
「ちげーぞ、こいつはいかついオバサンの仲間だ」
「それもちが……いえその……!」
かくかくしかじか、と事情を聞いて笑った。
正確な時間軸も把握した。旅に出たばかりの頃だ。
「ルフィと別の樽に入ってから分断されてたんだけど、そっちは随分楽しそうで良いなァ」
「この話の感想それですか!?」
「だから一緒の樽でいいだろって言ったのによー。お前がいたらもっと面白かったぞ」
「さすがに狭い」
試してないが、2人が入った樽の蓋は閉まらないだろう。
いくらルフィがゴムだからといえ、ゴムの反発を受け続ける私の方はきつい。
アルビダ、未来で聞いた名のような気がするな。
有名な女海賊と、出航して直ぐに出会うとは、さすが我が船長は持っている。
それで仲間にしたい人の名は、と問う。
「海賊狩りのゾロだ!」
「海賊狩りのゾロか~」
「それだけェ!?」
「それ以上に言うことが?」
「だって海賊狩りですよ!? 海賊狩りを海賊に誘うって!」
「ダメなのか? 海賊になった海兵もいれば、海兵になった海賊もいるだろうに」
「いるんですか!?」
「あー、どっちも海軍的には醜聞だから内緒なのかな。それじゃ……海兵狩りから海賊になった人もいるだろ?」
「……それは元々海賊なのでは!?」
「……そうかもしれないな」
でも海兵狩りからなったのは七武海だから、むしろ逆でほぼ海軍では?
わけがわからなくなってきた。
「関係ねえ! おれが気に入った!」
「そうだそうだー。ルフィが気に入ったんだから仲間だー」
「いいんだそれで……」
「海賊というのは船長に従うものだ。懸賞金の額が船長とそれ以外で多く差が開くのは、海軍も同じ認識だからだろう。頭さえいなくなればほとんどの場合海賊は崩壊する」
ルフィがそうだと言えば私も頷こう。
ルフィが違うと言えば私も否定しよう。
そういうつもりで隣にいる――いないことのほうが多いが。
「まだ2人だから崩壊するも何もないけどな」
「はやく3人にしよう!」
「おー」
「この人たち、緩い……!」
我々はこの後海軍基地に乗り込み、ゾロと出会うことになる。