あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
「ペロスペローくん! 元気にしてたか!」
甘い空気を吸って、ここが
お菓子で舗装された道をなんとなく歩いていれば、向こうに馴染みの顔を見つけたので、手を振りながら小走りで近づいた。
腕があるので、まだ敵対してない頃のペロスペローくんのはずだ。
いずれ会うだけで睨まれることになったとしても、仲のいいうちはそれを楽しんでおくに限る。
ペロスペローくんは当然、和やかに対応してくれた。
「未だにおれをくん付けで呼ぶのはアンタくらいなもんだぜ、ペロリン」
「私にとってはいつまでたってもかわいい坊やさ」
たとえ身長がとっくに追い抜かれ、ものすごく見上げなければならなくなっていたとしてもだ。
最近みんな発育が良くて、3mを越える知り合いが多すぎる。私は見上げすぎて首が痛い。
「リンリンのはじめての息子だものな。いやあ、いつのまにか子供出来ててあのときはひっくり返ったんだ……」
リンリンが赤子を抱えているのを見たとき、誘拐の他にカニバリズムという文字がよぎり大混乱した。
その赤子はちゃんとリンリンと血のつながった息子だったが夫の姿は見えず、それも混乱の元である。
「おれに会うといつもそれだな」
「いつだって感無量だよ。立派になったなあ」
それから長女であるコンポートが生まれるまでもものすごく早くてひっくり返ったし、なんなら私は時間軸をめちゃくちゃに飛び回っているせいで、ペロスペローくんの次に出会ったリンリンの子供は人魚のプラリネちゃんで、そのときにはすでに20人くらい子供がいて失神するかと思った。
あんなに小さかったリンリンが大家族を持つようになるなんて……いや、小さい頃から小さくはなかったのだが……。
いけない、シャーロットの皆に会うとやけに懐かしい気持ちになってしまうな。
知り合いの子供っていうだけで、歳をとらない私でも老いを感じさせてくれるからだろうか。
「甘い飴はいかがかな?」
「わーい」
歳を感じて早々、ペロスペローがペロペロの実で作ってくれた飴を喜んで受け取ってしまい、完全にガキのムーブをしてしまった。
しかし彼の作る飴はおいしいし、見た目も美しい。
今日の飴は美しい虹色のグラデーションをしたペガサスの形をしている。非常にアートだ。
知り合いのペガサスを思い出すな……彼はウマウマの実を食べた鳥だけれど……。
「しかし珍しいな。いつも招待したって来ないだろう」
「……ああ。今も招待されてきたわけじゃないんだけれど、私ってなにに招待されてんの?」
「これから結婚式だぞ、ペロリン」
……誰の結婚式だろう。飴を舐めながら考える。
どちらにせよリンリンの娘か息子のことだろうから、本当に時の流れというのは早い。
これからは友達の子供どころか、友達の孫をもっと頻繁に目にするようになっていくのだよな。
「できる限り出席したいが、それまでいられるかはわからないよ」
「相変わらずの多忙だな」
私は肩をすくめた。忙しさを決めるのは私ではなく悪魔の実である。
結婚式に出席するとなると、さすがにもう少し綺麗な服を着ないといけないだろう。
私は常にいたって普通な服を着るように心掛けているため、ここでそのリズムが崩れるのは困るな。
……うーん? でもそういえば、プリンとサンジの結婚式のとき、参加者は意外と皆普段着だったような気も……あれはサンジのこと殺すつもりだったから結婚式ではないというカウントか?
普段着で参加してもいいタイプの結婚式なら参加しようかな……ああ、その場合新郎か新婦が暗殺されるのか? いやかも。
「そうだペロスペローくん、リンリンにあれやめるように言ってくれないか? 結婚式だのお茶会だの、私がいないときマザー・カルメルの写真の隣に、私の写真立て置いてるだろ」
私は普段、写真に写らない。
私という存在が露呈するだけで面倒なことになるからだ。
こんな人がいたらしいよ、という口伝だけでも面倒なことになるというのに、私が写った写真なんぞがあったらもっと面倒だ。何千年前から同じ姿でいるんだこいつ、となったらとても困る。
しかし、かつてのリンリンがどうしてもというので、私は彼女のかわいさに負け、撮らせてしまったのだ。
「あれ私もう死んでるみたいで面白すぎる」
息子でも言う事聞かせられないなら、私には無理だろ。