あっちへふらふら、こっちへふらふら。
私は不思議なきのみを食べてから、根無し草になった。
場所も時間も関係なく、あちこちに飛ばされる。
それでも平気なのは、帰る場所があるからだ。
サニー号の上だ。
停泊中らしい。きょろきょろ見渡すと、ここがシャボンディ諸島であることがわかった。
首を傾げる。麦わらの一味とここにいたとき、私はサニー号に乗っていなかったか。
ここにもう一人の私はいない。
体調もいつも通りで、そんな
あの時の私はうだうだしながらも結局はサニー号から降りて、渋々人間屋に向かい、いろいろとあった。その時間軸でもない。
ええと、結局あのあとどうなったのだったかな。
私は黄猿と、なぜかいっぱいいたくまと、混戦になって、うっかりレイリーを斬り刻みかけて怒られたのは覚えている。彼が耄碌してなくて本当に良かった。
過去を思い出しながらサニー号の船べりで頬杖をついていると、
「な……なんだって……!?」
これほど真面目なサンジは珍しい。
女の前で目をハートにしていないなんて、異常事態だ。
「どうした? 襲撃か!?」
私は周囲を確認したが、敵対勢力は見当たらなかった。
瞬間、サンジは竜巻のように回転しながら私に近づいてきた――目はハートだ。
「ここは天国に違いねェ……! 目の前に天使がいる、本物だ!」
「私を天使と呼ぶのはきみだけだ。だから私も、きみといるときは天国にいるみたいだよ、サンジ」
いつも通りか、と安堵しかけるが、サンジの鼻から血が垂れてくる。
それも普通の量ではない。彼のシャツが一瞬で真っ赤に染まったのをうっかり眺めてしまってから、私はようやく焦った。
「2年経っても変わらない天使ちゃん、ラブ!!!」
「血が止まらないが!? ちょ、チョッパー!!」
反射的にサンジの鼻をつまんで押さえるが、吹き出す血は止まらない。
むしろこのまま押さえていると、たまった血液で彼の鼻――どころか顔が爆発しそうであった。
私が呼んだことで走ってきたチョッパーが、私に向かって叫ぶ。
「だめだ一回離れろ! こいつ女への耐性を完全に失ってる!」
「なに!? 一体なにがあったんだ!?」
チョッパーにタックルされ、サンジから引きはがされる。
押さえる手が無くなったことにより、とてつもない勢いでサンジの鼻から血が吹き出す。
サンジは鼻血でちょっと浮いた。なにこれすごい、新技?
しかし出血は出血だ。もう致死量を超えている気がするし笑い事ではない。
「サンジ、きみ大丈夫か? 私のせいか?」
「おれを心配してくれる天使ちゃん……♡」
「接触禁止ー! 今は喋るのもダメだ!」
チョッパーの手により、サンジの方が隔離されて行った。
輸血でもされているかもしれない。大丈夫だろうか。
自分のものではない、仲間の血で汚れている手を見て、呟いた。
「はじめてあんなにドキドキしたよ。これが恋か?」
「いや、血を見たせいだろ。お前絶対それサンジに言うなよ」
「ああ……うん」
フランキーにたしなめられ、私は口を閉ざした。
これからは、サンジに対する軽口を控えなければなるまい。
特に会った時からヒゲの形が変わった方のサンジ……私は人の年齢に疎く、2年歳を重ねた程度ではあまり違いがわからないため、わかりやすい目印があると助かる。
よく見ればなんとなくの年齢はわかるが、よく見る前に会話がスタートすることが多いのだ。
そうか、ここは
手の血を落としてから、私はフランキーを見てハッとした。
いつか見た手配書の姿ではない。
フランキーが人間に見えることに安堵した。それでもかなり鉄っぽいけれど。
「きみ、大きくなったなぁ」
「スゥパァ~~、だろ?」
「うん。かわいい」
半分サイボーグになっていようが、私の背丈をはるかに超えていようが。
幼い頃を知っていると、みんなかわいく見えるものだ。おっきくなったなぁ。
フランキーのボディがマッチョに改造され、本当に大きくなっているというのもある。
私の発言を聞いたロビンが、顔を青ざめさせた。
「価値観が狂ってる……脳に腫瘍でもできたのかしら?」
「発想が恐ろしいよ、ロビン」
「チョッパーに診てもらったほうが良いわ」
「……そんなに?」
フランキーに対してかわいいと言うことが、そんなに異常事態なのか。
アイスバーグに言った時も、理解できないというリアクションだったしなあ。