15.そうして部品は検められる
お母様、私に初めて銃を与えてくださったときのこと、覚えていらっしゃいますか。
私はまさかお母様が使っていた銃を使うことになるなどと思っておらず、心底驚いた覚えがあります。最近は押入れの肥やしになっておりますが、ちゃんと手入れはやっておりますのでいつでも扱える状態です。
自分の使うものはちゃんとメンテナンスせよとの教え、今でも
さて、世間では連邦生徒会長の失踪が公式に発表されまして、その連邦生徒会長が用意していた超法規的機関――連邦捜査部『
何やら相談事や要望に応えてくれるそうなのですが、プエラ分派としては特に頼むこともありませんので、こちらからは特に連絡しておりません。
というか普通の生徒とのやり取りがようやくまともにできるようになってきた私に年の離れた大人とコミュニケーションを取るとか土台無理な話では。やめてリツカさん面白そうだとか言う理由で連絡入れないで私が死んでしまいます。
とまあそんな一幕もありましたがひとまずプエラ分派は正常です。
もう少し分派として盤石であるためにはいくらか改善をしなければならない場所はありますが、弱小分派は弱小分派として力を持たず庇護を求めるというのも一つの手です。分派単体でいろいろ回せる方が健全な状態ではありますが、急ぐような話ではないということです。
「あ、そのパーツかなり傷んでしまってますね」
いつもリツカさんとミタカちゃんが談笑しているソファに座って銃のメンテナンスをする私に、ミタカちゃんが声をかけてきました。
指を差した先にあるパーツは、以前確認したときにもダメージが残っていた部品です。手に取ってちゃんと状態を確認してみると、まだ使えないことはないけどいつ故障して動作不良を起こしても不思議ではない、ぐらいの状態まで悪化していました。
予備のパーツがあるのならば交換してしまった方が無難です。
しかしこの部品というか銃自体といいますか、パーツの型が大分古いものなんですよね。口径と使用弾薬こそ現代のものを使用できてはいるのですが、パーツに関しては最近販売されているそれとはかなり勝手が違っているのです。
故にこの銃のカスタマイズが少ないのは
リツカさんに聞いてみても替えのパーツは持っていないとのことだったので、交換するのであれば売っている店を探しに行かなければなりません。
「それナギサ様から受け取ったものなんですよね? だとすると壊しちゃまずいですし、古い部品を扱ってるお店に聞きに行くしかないですかね」
「え、そうだったんですか! 凄い物じゃないですか!」
お茶を淹れているリツカさんが漏らした情報に、ミタカちゃんが興奮したように声を上げます。
ちなみに私もその情報については初耳なんですが。え待ってくださいこの銃もしかして壊したらナギサ様からの圧がもっとひどいことになるのでは早く言っておいてくださいよ。
ミタカちゃんに気付かれないようにリツカさんへジト目を送りながら、銃の他のパーツの手入れを進めます。気持ち普段より丁寧に慎重に扱ってしまったのは仕方がないことだと思います。
すべての部品を検めて手入れを終えた私は、元通りに銃を組み上げていきます。
「どうします? 交換パーツ探しにはいつ行きます? 私はあまり戦えませんが、こういうパーツを見るのが大好きなんです! 古いパーツとか見るの楽しみですね!」
意外ですね。ミタカちゃんにこんな一面があったとは。
何だかいつもよりキラキラしている気がします。正義実現委員会に私のことを布教していたときと同じぐらいの
交換パーツ探しでしかも置いている店もわからないとなるとまとまった時間が欲しいですね。
今日はまだまだ書類も残ってま「今から行きましょう!」来週に時間を作って*1、リツカさん何を仰っているのですか。ミタカちゃんも目を輝かせないでください。
ミタカちゃんが部屋にいるようになってからこういうことが多い気がします。リツカさんの悪乗りもそうなのですが、単純に私の意見が通りずらくなっているんですよね。私とリツカさんだけの場合は何か意見がぶつかった場合は妥協点の探り合いだったのですが、ミタカちゃんという存在が登場してからはリツカさんがうまくミタカちゃんを取り込んで数の暴力で私を殴ってくるのです。
立場上私が首長なので最終決定権は私にある、と思いきや
故に抵抗するには弱々しい「首長の花飾りをつけているのはリツカさん」という理屈で権力拮抗論を展開していたのですが、こちらも分派首長秘書という肩書をいつの間にか獲得していたミタカちゃんによって黙らせられることになりました。
そういうわけで、最近の私は推されて押されて圧されまくっているわけです。
「今からですか! いいですね! 私ちょっといろいろ準備してきます!」
ミタカちゃんが首長室を飛び出して行ってしまいました。これは今日出かけるのは半ば確定事項ですかね。
こうなったからには仕方がありません。今日の午後は潰れるつもりで動くことにしましょう。
そうだ、お店を回るのであれば分派の装備を併せて見繕ってしまってもいいかもしれません。先日の温泉開発部との戦闘を見返して気付いたのですが、分派の皆さまが使っている銃が少し型落ち品といいますか、良いものではあるのですが少し扱いが難しいものであったり、ブランド力はありますが値段を考えるとパフォーマンスに難があったりするものなど、いろいろと足りていない部分があるものばかりだったんです。
それが好きで使っているというのなら良いのですが、資金上の問題で買えていなかったり外面を取り繕うためであったりするのならばどうにかしてあげたいと思うのが首長としての感情。
また、温泉開発部との戦いで作戦が上手く機能しなかった理由に、想定よりも相手を倒しきれていない場面が多かったことが挙げられまして、使いやすくそれなりに威力がある銃を皆様に支給することができれば武力面も少しばかりの改善ができるのではないかと思っています。
幸い、予算については私とリツカさんの仕事の中で少しばかり改善されつつありますので、今後の予算を切り詰めれば高級品でない限り買い換えても問題ない範囲のはず。
最悪今回は自腹になってしまったとしても、分派の標準装備にしてしまえば来年からは支給品としてティーパーティーへ予算申請が可能になりますし、交換パーツも経費で落とすことが可能になります。それを考えるとやらない手はありませんね。
「であれば……」
デスクのパソコンで分派所属の名簿から銃の必要数を数えます。
この方はアサルトライフル、この方はマグナム、この方はショットガンで、ああでもこの方は結構視野が広い方だったので、スナイパーライフルをお勧めしてもいいかもしれません。この方は逆でスナイパーライフルを持っていましたが前で戦った方がいい気がしますね。この方は一撃必殺みたいなロマンを狙う方なので、いっそロケットランチャーとかもいいかもしれません。
そんな風に武器ごとに必要な数のメモを終えたところで、ミタカちゃんが「準備完了です!」と戻ってきました。何だかいろいろ詰め込まれたリュックを背負っていますが、何が入っているかは聞かないでおきましょう。恐らくマニアックなものばかりで、見てもわからないでしょうから。
私は特に準備もないのでデスクを立とうとしたのですが、ふと思いついたことがあったので一度席に座りなおします。
優先度は低くなるのですが、防衛用の装備をいくらか準備してもいいかもしれないと思ったのです。正直分派で防衛戦をすることなんてお母様が武勇伝のように語る正義実現委員会との衝突ぐらいしか思いつかないのですが、そんなものはやらない方が良いに決まっています。
ただ、最近は『七囚人』と呼ばれる矯正局から脱獄した方々だったり、SRT特殊学園の実質的な閉鎖に反対して独善的な活動を続ける部隊があったりと物騒な話には事欠きません。
何かが起こってからでは遅いですし、念には念を入れておきましょう。
「リツカ先輩、そろそろ行きま――防衛装備……? まさか本格的にどこかと事を構える準備をされているんですか!? お手伝いします!」
いやあの、違うんです。普通にただの思いつきなんです。
この装備は火力がでるとか罠はこれがおススメとか、すごい参考になるしありがたくはあるんですがそこまでするつもりじゃないんです。
リツカさんも腹抱えてないで反論してください。あなたもナギサ様から睨まれるの嫌でしょう。
暴走気味のミタカちゃんを抑えるためにちょっと苛立ってますムーブをしながらパソコンの電源を落とします。銃を持ってそのままカツカツと足音を鳴らしながら扉の前まで移動し、ついてくる足音がなかったので振り返りました。
するとミタカちゃんが先ほどの位置で立ち尽くしたまま、泣きそうな顔で震えていました。私が想像していたよりも随分と怖がらせてしまったみたいです。
あとでお詫びに何か一つ好きな装備を分派用に買ってあげることにしましょう。
「行きましょう」
声を掛け、部屋を先に出ます。
ついてくるリツカさんはまだ何か可笑しいのか、目尻に涙を浮かべながら息を乱しています。そこまで面白いこと、ありましたかね。
後ろからミタカちゃんが駆け寄ってくる足音を聞き、一つ安心しながら歩を進めます。
無計画で歩き始めてしまいましたが、最初はどこに向かいましょうか。ついさっきあんな対応をした手前ミタカちゃんには聞きづらいですし、雑にスマホで地図検索でもかけてみましょうか。
地図上で評価が高い店を選び、ここからの経路を確認します。繁華街からは少し外れた位置ですが、そこそこ大きな通りに位置してますし迷うことはないはずですね。
口コミは一件もないですが、まだオープンして間もないようですし評価自体は高いですからきっと大丈夫でしょう。
新章突入。章分けは文量が主人公次第でわからないので完結後にやろうかなと思ってます。
そろそろ先生が出てくるんですが、先生(プレイヤー)の掲示板形式って見たいですか?
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本編の息抜き的な感じで欲しい
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本編完結後にまとめて投稿の方が良い
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いらない