オリキャラと新キャラの名前が被りました。直すのが面倒なので直しません。ご勘弁を。
お母様、お父様、お二人はあまり病院に行くのがお好きではありませんでしたよね。
実は私はそこまで病院が嫌いではありません。なぜなら病院は基本的に静かで落ち着くことができるからです。健康優良児だった私には入院の機会などありませんでしたが、引き篭もり適性が判明した今考えてみると病院は私にとって理想に近い環境のような気がしますね。
私は入学時のオリエンテーション以来になります救護騎士団の施設を訪れ、運んできた生徒――
先ほどの戦闘による手傷も理由としてはあったのですが、どちらかと言えば自分で雑に処理した翼の火傷の方が問題視されたようです。もうひと月ほど前の話なので治りかけてはいるのですが、キヴォトス人としては遅い方ですし適当にやった結果何だかゴワゴワしているのは事実だったのでおとなしく治療を受け入れます。
包帯を外した救護騎士団のお二人――セリナさんとハナエさんというらしいです――がその傷を見て顔を見合わせ、何やら目だけで会話をしています。私とリツカさんにはできなかった芸当が可能なのは、医療従事者同士通じる部分があるのでしょうか。
そんな風に呑気に構えていたら、お二人が何やら合意に至ったのか頷き合って、その首が勢いよくこちらを向きます。
あの、お二人とも、目が怖いですよ。笑顔ですけど、目が笑ってないですよ?
た、退避です! 嫌な予感がしたので退避します!
「逃げないでください! これは必要なことなんです!」
「そうです! あんまり暴れるとブスッと一発、行っちゃいますよ!」
瞬間移動かなと思うぐらいの速度でセリナさんに回り込まれ、部屋の入り口を塞がれてしまえば観念するしかありません。
まな板の上の鯉のように椅子に座って待っていれば、袖をまくられ、裾をめくられ、お母様譲りの私の柔肌が衆目に晒されてしまいます。まあ衆目と言ってもお二人とベッドで眠っているミライさんの三名しかおりませんが。
息を飲んだのはどちらだったか。眉を顰めたのは両方。
優しくも有無を言わさぬ手つきで私の前面の肌色面積を増やすセリナさんは、私の地味で適当なスポブラを気にも留めずに状態をチェックし、何やら部下っぽい生徒さんたちに指示を飛ばしています。ハナエさんの方は、待ってその注射器何ですか
「かなり傷痕が残っていますね。お噂の感じだとてっきりツルギさんみたいにすぐに治ってしまうのかと思っていたのですが、今の体の状態を見る限り回復は遅いみたいですね」
セリナさんが言う通り、今の私の身体はヘルメット団との戦闘で受けた傷がまだ完全に癒え切っておらずそれなりに痛々しく映ります。痛みはもうないので動かす分には問題ないのですが、まだまだ痕がたくさん残ってしまっている状態なのです。
ちゃんとした処置をしていないから直りが遅いというのもあるとは思うのですが、昔から傷の直りは遅いんですよね。お母様曰く『筋肉質ではあるけれど体を纏うオーラが足りない』ということらしく、要はキヴォトス人ボディとしては平均かちょっと下ぐらいの状態を素の肉体強度でごまかしているのが現在の私でございます。
翼の方にはセリナさんから指示を受けたハナエさんが軟膏を塗ってくれまして、その軟膏を朝夕に塗るように
「そんなお身体で、どうして戦いを選ばれるのですか?」
一通りの処置が終わって、手榴弾のダメージが残る腕を制服の袖で隠したり揉みくちゃにされた制服を直したりしていますと、セリナさんからそんな質問をいただきました。
私、そんな戦っているイメージありますかね。
まともな戦闘ってそれこそヘルメット団の件と今日の件ぐらいしかないはずなのですが。
私自身どちらかと言えば頭を使う方が得意と言いますか、それこそウイさんみたいに調べ物をして何かを紐解いたり映像データや履歴データから何かを分析したりする方が性に合っています。
それでも戦場に行って、ちゃんと戦っていたのは確かです。今日に関してもあの場で逃げ出してもよかったはずなのに、それが頭に過ぎることすらなく制圧することを選んだのは疑いようのいない事実ですし。
「見て見ぬふりは、できませんから」
自分で口にしたそれは、思ったよりも綺麗に腹落ちします。
皆が戦っているのに自分だけ後ろで構えているのは、なんだか落ち着きません。目の前で明らかに事件が起きていて、自分にはそれをどうにかできる可能性があるのに何もしないという選択をするのは、私の性格上絶対に後で後悔します。
自分以外の誰かがやってくれる可能性が高いのであれば放置することもありますが、一人でそんな事態に遭遇して他の助けが望めないときには、必要以上に頑張ってしまいがちかもしれません。
要は自己満足。私が面白くないから、銃を取っているだけ。
あとは珍しくそれなりの大きさのコミュニティの一員になれている実感があるので、そこに少しだけ浮ついた感情があるのかもしれません。それが喜びなのか、はたまた放り出されるかもしれないという不安なのかは、私自身にもわかりませんが。
「あ、あの!」
ベッドの方からこちらに呼びかける声。
先ほどまで眠っていたはずのミライさんが目を覚まし、体を起こしてこちらを向いていました。
もしかしたら起こしてしまったでしょうか。部屋を出ないまま私の治療を始めてしまって、少しうるさくしすぎたかもしれません。
セリナさんとハナエさんが目を覚ました彼女の状態確認に向かったので、私もそろそろお暇しようかと腰を上げます。
そこで私は目を覚ました黒髪の彼女の目線がお二人の方ではなく、自分の方を向いていることに気が付きました。どうやら先ほどの声はお二人を呼ぶためのものではなく、私に何かを伝えるためのもののようです。
何かを言いあぐねている彼女のベッドの側に椅子を持って近付き、手の届く距離で腰掛けます。
「いくつか、質問をしても?」
「は、はい」
ちらりとセリナさんたちの方を見ますが、特に私に何か言ってくることはありません。
起きたばかりだから安静にとか、そんなことを言われるかもしれないと身構えていたのですが、どうやら杞憂だったようです。
問題がないようであれば、彼女に聞きたいことを聞かせてもらうことにします。あの場で何があったのか、私もあまりちゃんとわかっていないので事実確認をしておきたかったのです。
「あそこには何をしに?」
「別の店に銃のパーツを買いに行ったら、あそこに今以上に良いものがあると紹介されたんです」
どこかで聞いた話と似ていますね。
しかも私の推測だったこの子がアルバイトだという説は間違っていたようです。だとすると強盗説もなかなか怪しくなってきます。もともとの店員がどこにもいなくなってしまいますから。
別の可能性として思いつくのは、私がブラックマーケットという場所を甘く見ていた可能性。
「紹介されたのはこの住所?」
「は、はい! そうです! 私も同じような紙を渡されました」
ふむ。やっぱりそういうことなんでしょうか。
確信を得るために、私は最後の質問を行います。
「最初に行ったのは、このお店ですか?」
そう言ってスマホの画面を見せると、彼女はコクリと頷きました。
であれば、考えられるのは楽観的な推測と悲観的な推測の二つ。
楽観的に考えるのであれば、ブラックマーケットを紹介してくれたあの片目眼帯の猫の店主さんが住所を間違えて覚えている可能性。私にもこの子にも同じ住所を教えているので、そもそも覚えている住所が間違っているパターンです。それでちゃんとパーツを売っているお店に辿り着いているので、誰も文句を言わなかったのかもしれません。
悲観的な考えは、そもそもあの場所自体が罠だという可能性です。
部品を買いに来た生徒に良い部品や生徒が望んでいるパーツがあると嘘を吐いてあの場所におびき出し、店に来た生徒を捕まえて人身売買を行ったり学校に身代金を要求したりするつもりだったパターン。電話で生徒の特徴を伝え、エレベーター扉の上にあったモニターで同じ特徴の生徒が来たら配置についてドアが開いた瞬間袋叩き。逃げることもできず違法改造した銃の火力の前に撃沈、とまあこんなシナリオでしょうか。
SRTの人たちが突入したことや店員らしき人がいなかったことを考えると、この説が一番可能性が高い気がしてしまいます。
まあ普通に悪い大人たちに騙されたということですね。
「ありがとうございます。十分です」
いい勉強になりましたが、この子のように被害者が出ている以上放置するのも良くないですね。
本当はこの後あのお店に行って店長さんとお話ししようと思っていたのですが、また変な誤解を生むかもしれませんし正義実現委員会に連絡を入れて対処してもらう方がいいかもしれません。
多少騙されて痛い目に遭っただけで殴り込みに行くほど短気ではありませんから。
「
彼女の質問に肯定の意味で頷きを返します。
ウイさんや彼女みたいな子が知っているということは、やはり私の顔は結構割れてしまっているのでは。セリナさんも何やら私のことをバトルジャンキーとでも思ってそうでしたし、変な広がり方をしていなければ良いのですが。
ミライさんはその目がその心情を雄弁に語っていて、葛藤と迷いが見て取れました。
勇気が出ないのか、はたまた私のことを信じることができないからか、口をぎゅっと力を込めて引き結ぶ彼女の言葉を私はただじっと待ち続けます。
そうして話を始める直前に少しだけ頭を振って目を瞑った彼女は、まっすぐとこちらを見つめて決意を語ります。
「今の分派で上手く行ってなくて。プエラ分派に移ることって、できますか」
なるほど。私について知っていたのは、それをずっと考えていたからなのでしょう。
拳を握り込むその姿からも、その言葉がどれだけの苦悩と覚悟をもって放たれたのかが分かるというもの。
「もちろん。
私はうまく笑えたでしょうか。怖がらせずに優しく微笑むことができているでしょうか。
安堵した様子で脱力する彼女を見て、私の手は無意識にその頭に伸びていました。優しくゆっくり、その勇気を労うようにその頭を撫でてあげます。
いきなりのことにびっくりしたような表情を見せた彼女は、しかし嫌がる素振りもなくただ受け入れてくれました。恥ずかしそうにしていた表情がだんだんと穏やかなものに変わっていき、そしてそこで張りつめていたものが決壊したのでしょう。ミライさんは静かに涙を
緩慢な動きで縋ってくる彼女を受け入れて、その頭を撫で続けてやります。
「頑張りましたね」
きっと、苦しかったはずです。きっと、怖かったはずです。
一度引き篭もりになった私には彼女の息苦しさがよく理解できるつもりです。
もしかすると今日ミライさんがブラックマーケットに行ったのも、そんな自分を変えたいと思ったからなのかもしれません。結果は振るいませんでしたが、私と会うことができましたし、手段は褒められずともその一歩を踏み出したことは褒められるべき事柄です。
学生証のことがなければ外に出るつもりすらなかった私とは違って、彼女は自分で自分の世界を変えようと試みました。その努力は称賛に値します。
だからきっと、ミライさんはこれから変わっていける。私はそう確信しています。
「――リツカさん!」
しばらくそうしていた私の耳に、叫びに似た悲壮な声が届きます。
その声に振り向けば、セリナさんが必死の形相で部屋に入ってきたところでした。
何事かと思って席を立ち、そちらに向かおうとして。
「……ミタカちゃん?」
ハナエさんに支えられて歩く、ボロボロになったミタカちゃんの姿が目に飛び込んできました。
その見ただけで分かるひどい傷だらけの身体に、頭がショートしそうなぐらい思考が回ります。
いったい誰にどこでそんなことにリュックがないあれはミタカちゃんの大好きな物たちが入っていたはずでは奪われたのか襲われたのかなぜなんでどうして何の目的で――決まってる。
「……すみません、リツカ先輩……」
あなたが謝る必要なんてありません。
悪いのはいつだって、攻撃を仕掛けた方なのですから。だから、謝らなければいけないのは私の方。狙われるなら弱い方だって、そんなことわかり切っていたはずなのに。
考えがまだまだ甘かったようです。そういう場所だと、そういう世界だと知識では知っていても実感が伴っていなかった。
自分ならば大丈夫だとそれほど重く受け止めていませんでした。
その結果が、これです。
「ミタカちゃんは!? というか、どこに行くつもり?」
救護騎士団の建物を出たところで、報せを受けたリツカさんとすれ違います。
今回の件については、忌避感を抱いて避けようとしたリツカさんが正しかったのでしょう。実際に騙されていたわけですし、ミタカちゃんという実害も出てしまいました。私も無事だったからよかったものの、SRTの方々が入ってこなかったらどうなっていたかなんてわかりません。
だからミタカちゃんのことは、彼女に任せることにします。
「銃を取りに」
その言葉で、頭のいいリツカさんは察したようです。
彼女が私を止めようと頭を巡らせているうちに、私は地面を蹴って寮へ急ぎます。後ろからの声はもう、聞こえないことにして。
本気でやるならば、なりふりは構っていられません。
手入れは完璧。いつでも使えるような準備はできています。
私はクローゼットの中に立てかけてある
主人公のメインウエポンはショットガン。ツルギ同様二本持ちでございます。この一連のエピソードの中で主人公の情報公開はほぼ終わるのでは。
ミライさんのイメージは正実モブ。見た目は正実モブですが、パテルに所属してた子のつもり。
そろそろ先生が出てくるんですが、先生(プレイヤー)の掲示板形式って見たいですか?
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本編の息抜き的な感じで欲しい
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本編完結後にまとめて投稿の方が良い
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いらない