見たか! 余はカッコいいであろう!   作:息抜きのもなか

21 / 61
21.そうして現実は立ち塞がる

 お母様、脇腹が痛いときって、どうすればいいんでしたっけ。

 なるほどなるほど、思い出しました。深く息をして、呼吸のリズムを取り戻すと。筋肉をつけろは、それはそうなのですが、ちょっともう遅い気がしますのでまた今度とさせてください。

 

 さあミタカちゃんを痛めつけてくださった敵組織の壊滅あと三拠点のところまで来まして、ここを攻略すればあとはミレニアムにある敵の本拠地みたいなところとトリニティに残してきたお店のお二つとなりました。

 そうなればお相手方も自分たちの組織が風前の灯火であることを悟っているため、残存勢力と財力を使って持てる力全てで抵抗してきます。

 

「っ! 違法弾です! 気を付けてください!」

 

 ミヤコさんが被弾してその尋常ならない威力に(おのの)いたのでしょう。なかなかに切羽詰まった叫びが聞こえてきました。当たらない方が良いですよホントに。私もさっき食らってめっちゃ痛かったですし。

 しかし防弾チョッキやドローン類に力を入れていないところを見ると、ここでは削れるだけ削って最後の本拠地で決着をつけようという意思が見て取れますね。

 悪寒。

 違法弾は流石に食らうとただじゃすみませんので、回避主体の戦闘に切り替えます。と言ってもそこまで回避が上手いわけじゃないですので、避けることについては全自動致命傷回避センサーの発動にお任せしております。別名、勘。生存本能ともいうかもしれませんね。

 

「ちょこまかとッ!」

 

 悪寒、悪寒、悪寒。

 なるべく最小限の動きで回避に努めます。相手が物陰に隠れたところを連射。連射に次ぐ連射。リズムよく打つ中で一つ休みを挟めばリロードの隙と勘違いした相手が頭を出したのでそこに左右の銃で同時に二発叩き込みます。

 悪寒。後ろに飛び退いて回避。

 回避先に撃ち込まれないように左右の銃で攻撃を雨のように降らして牽制します。火力不足は否めませんが、鬱陶しいと思ってくれれば御の字ですね。

 無事着地した私は遮蔽物に転がり込んでSRT製手榴弾を相手側に放り込みます。

 

『よーし、ここらで一発やっちゃうねー!』

 

 悪寒。不味い不味い不味い不味い。

 今の私はサキさんのフォローに回って本来の予定ポイントとは別の場所にいる状態です。誰もいない場所で爆発させようという算段だとは思うのですが、私がいるので少々お待ちいただければ。

 周りを見渡してもモエさんのドローンは見当たりません。

 となると壁越しか設置型か。

 攻撃が激しくなってきたので別のデスクに移動して、

 

「あ」

 

 その机の裏に、爆弾が設置されていることを見つけてしまいます。

 考えるより先に跳躍、破砕音と衝撃、やや遅れて背後から轟音と爆風。

 振り返ればさっきまで私がいた部屋がもう酷いことになっております。ぐちゃぐちゃとかの次元ではなくもう廃墟も同然。壁の一部も崩落してますし、奥に見える壁は黒焦げで床も天井も抜けているんじゃないでしょうか。

 私は咄嗟の判断により部屋を飛び出し、高度の差によって爆風の熱を感じるだけで済みましたが、問題は私の現在地。

 思わず窓ガラスを割って外に出てしまったんですよね。結果的に爆弾という致命打は回避できたんですが、七階ぐらいの高さから飛び出してしまったわけでして。

 着地、一体どうするのがいいでしょうか。

 

「そうだ」

 

 ここはいつか動画学習をしていた『高所から落下した際の格好いい着地方法、猫着地編』の実践の機会がやってきたのでは。

 窓から顔を出した敵にひたすら攻撃を浴びせながら安全を確保し、筋力と気合で空中姿勢を整えます。平衡感覚は猫ほどはありませんがひとまず姿勢は整わせました。

 後は何と言っていたんでしたかね。肉球のような柔らかいもので着地の衝撃を吸収・緩和して、着地の時にうまく筋肉を動かして衝撃を逃がしてあげればいいとかだったような気がしますね。

 生憎私に肉球はありませんので、衝撃緩和のために着地の瞬間に翼バサバサとかやっておきましょうか。

 イメージはこう、ふわっとした感じで天使が舞い降りたみたいなイメージで。

 ズダァン! みたいな音を立てると格好悪いので、トン、と軽い音に留められるといいですね。

 

「"え、ちょ、あぶなっ……"」

 

 トン。

 きれいに着地成功。日々の研鑽の賜物ですね。

 しかし着地寸前、すぐ近くから何やら声がしたような。

 もう大分夜が更けている、というか丑三つ時を過ぎていて流石に人はいないだろうと踏んでいたのですが、油断してしまいましたね。

 そう思って声がした方を見れば、中途半端にこちらに手を伸ばしたような体勢の大人の男性が、目を丸くしながらこちらを見つめておりました。彼が手に持つ袋の中身を見るにこんな時間までまだ働いていたのでしょうか。同情してしまいますね。

 その方をよく見ると何と言いますか、人好きのしそうな顔立ちをしていますね。人型の大人というだけで珍しいですし、この方は顔も普通のが付いていますのでそれなりに話題になっているかもしれませんね。残念ながら私の情報収集能力は底辺もいいところなので心当たりはありませんが。

 

「これはこれは、恥ずかしいところを見られてしまいましたね」

 

 猫着地の実践を人に見られるなんて思ってもおりませんでした。

 よく考えれば、ビルの外に出た段階で着地地点に誰かいないかの安全確認が必要でしたね。次があるかはわかりませんが、次からはこれを教訓にしなくてはなりませんね。

 しかし何故でしょう。明らかに私と正反対ぐらいの性格をしていそうなこの方に、微かに同族センサーが発動しているような気がするのは。

 引きこもり、コミュ障、気弱、このあたりは違う予感がするんですがね。

 そんなことを考えていたらRABBIT小隊の皆さんから作戦完了の報が届きました。

 

「では、またどこかで」

 

 そう言い置いて、私はヘリコプターが待機しているビルに戻りました。

 モエさんは私が落下したのをドローンで観測していたようで、ヴァルキューレに組織の人たちを引き取るように連絡した後にミヤコさんたちを拾いに行かずに待っていてくれたみたいです。

 おかげで先にヘリコプターに乗り込んで、休憩ができます。

 

「Rabbit1、帰投しました。ふぅ、流石に今回は、疲れましたね」

「はぁ、はァ、Rabbit2、帰投。避けなきゃいけないとなると、結構疲れるな」

「お疲れー」

 

 連戦続きの上、今回は被弾を避けるために動き回って慎重な進軍が求められただけに、身体的疲労だけでなく精神的な疲労も大きかったのでしょう。

 ミヤコさんもサキさんも、いつも以上に息が切れています。モエさんやミユさんは彼女たちよりかは運動量が少ないはずですが、彼女にも疲労の色が見えますね。

 運転中のモエさんはともかく、他の皆さんは次の拠点に着くまでに少しでも回復するために座り込んでいまして、中々余裕がなさそうなご様子です。しかし先ほどの拠点に行く前にブリーフィングは終えていますし、相手の抵抗が激しくなることも想定済み。

 ここはまだまだ体力の有り余っている私がムードメーカーを務めることに致しましょう。

 

「お疲れ様です。あと一息ですね。頑張りましょう」

 

 皆さんに作戦確認用のタブレットと、水分補給用のボトルをお渡しします。

 残っているのはあと二拠点。

 次に向かうのはミレニアムにある恐らく敵の首魁がいる場所です。トリニティの私が最初に訪れたお店を最後に残したのは、ある種ツルギさんを信用しているからですね。ツルギさんはどうも私の事を誤解しているみたいですので、逆に店主さんを逃げれないような状況にしていると思うんです。花羽リツカが来るまでここにいろ、みたいな感じで。

 少しだけ嫌がらせの意味もないわけではありません。一つずつお仲間が潰されて行っている報告を受け続けて、しかし頼ってしまった以上監視(ツルギさん)から逃げられない。少しずつ羽を()がれる感覚と言いますか、最後の最後に『ああ次は自分だ』ってなるの、すごく怖いと思うんです。

 私がミタカちゃんがボロボロになっているのを見たときの怖さを、少しは理解していただけていたらいいのですが。

 ともあれ、実際は次の拠点が山場。そこが終わればほぼ消化試合です。

 

「まだまだ、余裕そうですね、リツカさん」

 

 ミヤコさんからそう言われてしまいますが、彼女たちも激しい運動で息が乱れているだけで、スタミナがギリギリというわけではないでしょう。もし本当にそうであれば、こんな無茶な進軍は行わないはず。

 それに、別に私も疲れていないわけじゃありません。

 ビルからの落下後に戻ってくるまでの軽いランニングで、かなり息が整ってしまっただけで。

 連戦の中でそれなりに被弾もしていますし、結構体は痛いところばっかりです。

 

「これでも結構しんどいですよ。体も結構ガタが来ていますし」

 

 ミヤコさんが渋い顔をして目を細めます。これは信じてくれていなさそうですね。

 そのまま顔を伏せようとしたミヤコさんが急に何かに気付いたように動きを止め、その視線が再び私の方を向きました。

 嫌な予感。もしかして、私は余計なことを口走ってしまったのでは。

 ミヤコさんが立ち上がって、私の方に近付いてきます。その目は私を探るように不躾なもので、背中に嫌な汗が流れるのを感じます。

 

「私、思い出してしまったんです。先程の戦い、相手はほとんどが違法弾を使用していました。私たちですら当たれば痺れてしまうぐらいのものですから、リツカさんも回避主体の戦闘に切り替えていましたね」

 

 ミヤコさんが淡々とそんなことを口にしながら私の前に立って私を見下ろします。

 その目はもう確信があるのか、咎めるような視線が私を貫きます。

 その尋常ならない様子にサキさんミユさんもこちらに注目してしまいました。

 この場から逃げ出してしまいたいところですが現在は空の旅の真っ最中。飛び出してさっきやった猫着地をやれば逃走は可能かもしれませんが、あの時とは高さも違ければ目の前のミヤコさんを抜けなけばいけません。

 これはもう、逃げられないかもしれませんね。

 

「一度、被弾していましたね。私が注意を呼び掛ける前なので、失念していました」

「私はまだ、戦えますよ」

 

 見られていたようです。迂闊でしたね。

 ですがあの後も動けていたじゃないですか。ちゃんとやれていましたよ。

 大丈夫。まだやれます。

 

「どこを撃たれたんですか」

「右の脇腹だよ」

「……ッ!」

 

 操縦席に座っていたモエさんが、突然こちらに言葉を投げてきました。

 まさか見られていたのでしょうか。撃たれたタイミングか。はたまた応急処置をしている時か。

 いえ、どちらでも変わりませんね。見られていた時点で詰み。この方々の性格を考えるなら、ここまで明らかになってしまった時点で終わりでしょう。

 何だか一気に力が抜けてしまって、成す術もなくミヤコさんに制服の裾を捲られて、止血だけした傷口が皆の目に晒されてしまいます。

 そんな顔で見ないでください。申し訳なくなってしまいますから。

 

「致命傷を負った人間を、これ以上戦場に立たせるわけにはいきません」

 

 ミヤコさんに厳しい目で言われてしまえば、観念するしかありません。

 悪寒に目を瞑った後に聞こえた打撃音を最後に、私は意識を手放しました。




先生に反応した同類センサーはお腹風穴族でした。この時点では先生はきれいな身体ですが。

結末についてのアンケートのご協力いただいた方、ありがとうございました。
なんでおふざけで用意した選択肢に半分以上入ってるんですかね?(用意した作者が悪い)
大団円派の方が多かったので、蛇足(リツカの問題解決編)まで書き切ろうと思います。

そろそろ先生が出てくるんですが、先生(プレイヤー)の掲示板形式って見たいですか?

  • 本編の息抜き的な感じで欲しい
  • 本編完結後にまとめて投稿の方が良い
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。