見たか! 余はカッコいいであろう!   作:息抜きのもなか

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新章開始。分派にスポットが当たります。ようやくあらすじ詐欺をやめるとも言う。


第三章 プエラ分派の愉快な日常
27.そうして夜鷹は渡りくる


 お母様、仲直りをするのにはお話しすることが一番だと仰っていたのを覚えていますか。

 当時の私は喧嘩をするような相手もおらず、自分には関係のないことと気にしていなかったことですが、最近になってようやくその大切さを実感しているところです。

 

 プエラ分派の中でも、私たちに腹を立てている方がいらっしゃいます。

 たまに首長室に殴りこんできて因縁をつけて、リツカさんにさんざん馬鹿にされて、帰っていく子です。

 理由を考えるとまあ仕方がないかなといつも嵐が過ぎるのを傍観していたのですが、やはり自分の行動を変えると決めたわけですから、こういうところから始めていかなければなりません。リツカさんが少しばかり先週末から元気がないのも私が動くことにした一因でもありますが、実はそちらは本題ではありません。

 

押上(おしがみ)トコさん。あなたに一つ、お願いが」

 

 そんなわけで正義実現委員会の射撃場にぞろぞろと引き連れてやってまいりました。いえ、私が連れてきたのはミライさんぐらいでして、トコさんにくっついてきたのは金魚の糞と言いますか、腰巾着と言いますかとりあえず私の意図するところではありません。

 本当はサクラコさんにお願いしてシスターフッドのを借りに行こうとしたのですが、途中でツルギさんに見つかってしまいましてウチのを貸すから面倒を起こすなと言われてしまいました。実際来てみたらいろいろと試せるものが多いものですから、たまに借りていいかと聞いたら渋い顔ですがOKをいただくことができました。

 何でも知らないところで強くなられるより武器や動き方などを観察できた方が対処がしやすいとのことで、私だけでなく分派の人も使って良いそうです。今まで分派の方々はちゃんとした施設で訓練を行ったことがないそうですので、こちらとしてもありがたいところです。

 

「ねえ、本気ですの? 私ですわよ? 首長になれとは親から言われておりましたが、後ろでふんぞり返ってればいいという認識でしたのでほとんど訓練なんてやったことがないのですわ」

「そうなんですね。ですが、あなたは強くなります。私よりも、遥かに」

 

 私の言葉に、トコさんが疑い半分驚き半分の微妙な表情で固まりました。確かに私も半ば敵対と呼んでいいような相手からの言葉など、そう簡単には信用することができないでしょう。

 ですので私はひとまず手を動かしてもらった方が良いと思いまして、ショットガンを拾い上げて彼女にお渡ししました。

 訓練に慣れていないとは言っても流石にキヴォトスで暮らす身ですから銃器の扱いはお手の物。

 彼女は普通に的の真ん中を射抜き、第二射、第三射もほぼ寸分違わぬ位置を撃ち抜いておりました。ですがまあこれは当然です。可能な限り的が近くなるような状態でセットしていただきましたから。まずはできるということを実感してもらうわけです。

 機械を操作しまして、今度は中距離程度、ショットガンの一番良い間合いよりは少し長めの間合いのところで撃っていただきます。

 

「いきなりこんな離してできるわけ……え!? 当たりましたわ!」

 

 うん、やはり筋がいいですね。あのとき撃たれなくてよかったなと心から思います。

 押上トコ。私と同い年。次期プエラ分派首長になるはずだった女の子。花羽リツカという存在の登場によって自身が天下を取るはずだった未来が台無しになった女の子。彼女が私の名を騙るリツカさんに突っかかっているのは、次の首長が辰カタネという人間だと理解しているからに他なりません。

 つまるところ、私のひきこもりの二大要因の一つとなった子。私を周囲から孤立させたくせに、私の事を覚えてすらいないという()()()()()()野郎です。

 そんな彼女ですが、なんといつかの温泉開発部との戦いには参じておりませんでした。

 理由は先程の彼女の発言が全てかと思われますので割愛しますが、まあなんともったいないことをしていたものです。プエラ分派のトップと首長補佐の関係を考えれば、彼女が戦えないわけがありませんから。

 

「ミライさん、火力指数はいかがですか」

「目を見張る数字ですよ。プエラだったら現時点で五本指には入るかと」

 

 最近首長室の賑やかしの一人となりましたミライさんは、なんとトリニティでは珍しいデータや機器の扱いがとても上手いお方でして、なぜミレニアムに行かなかったのかと考えてしまうような逸材でございます。

 ミタカちゃんは武器の知識だけはあるのですが、まあプエラ分派らしいと言えばそうなのですが少しばかりポンコツですので。考える頭はあるんですがちょっと外れていると言いますか、自己完結している部分が多いと言いますか。平たく言えば、やっぱりポンコツという言葉が似合います。

 トコさんに銃を変え的を変え撃っていただいて計測している諸々の数値は、ちゃんとした訓練をしてないとは思えないぐらいには高水準を叩き出しています。ちょっと目を離した隙に動きが複雑で的に当てるのが難しい高難易度モードまでやり始めてるのはウチの分派らしいおばかさんだなと思わざるを得ませんが。

 それでも、彼女は強いです。少なくとも、いつもここで訓練している正義実現委員会の方々が、その動きを止めて目を輝かせるぐらいには。

 

「楽しかったですわ! リツカさん、次は何の武器を触ればよろしいこと?」

「先ほどの反動の様子を見ていると、もっと反動がありそうなものでも行けそうですね」

 

 ミライさんからそんなことを言われてしまったので、私はロケットランチャーでも試してみるかと彼女にお渡ししました。

 わかってます。多分正義実現委員会さんとしてはネタとして置いていたんだってことは。

 でもちょっと見てみたいじゃないですか。ロケランを持って戦場を走り回ってスタイリッシュアクションをやってしまうお嬢様。

 そんな訳で半ば押し付ける形で彼女にロケットランチャーを使ってみるように促したのですが。

 

「オーホッホッホッホ! これ最高ですわ~!」

 

 本人と何が噛み合ったのか、笑ってしまうぐらい高速で飛んでいくロケットランチャー使いの姿がそこにありました。火力指数は倍率を掛け間違えたのではと思う文字通り桁違いの値。

 お母様、お父様、私は化け物を生み出してしまったかもしれません。

 

 そんな今日の日中のことを思い出しながら、退院後は日課となりました深夜徘徊――もとい散歩に勤しみます。ブラックマーケットまで走った一件以降は身体が運動を欲しておりまして、こうして皆に見つからない時間帯に体を動かしているというわけです。

 あの私のタイムアタックはそれなりに目撃情報があったらしく、人目のある場所は流石にやめてほしいとリツカさんからお小言をいただいてしまいました。その結果現在の私は人目の少ない道を探しながら歩き回る毎日です。

 加えてセリナさんからも脱走のときに傷口が開いてしまったことが原因で怖い顔で怒られてしまいまして、一カ月後までランニングどころかジョギングも禁止と言いつけられてしまえば私も歩くことしかできません。ですのであと二、三週間は今後のランニングルートの確保を目的にいろんな道を練り歩くつもりです。

 

「こんな時間に、何をしているのですか?」

 

 人目のつかないところを歩いていたと思ったのですが、いつの間にか後ろから声を掛けられてしまいました。

 少し暗い道を歩きすぎたかもしれません。人が隠れている場所や飛び出してくる可能性を考慮すれば、人気(ひとけ)がなくとも見渡しはいいところにしないと危ないですね。

 そんな教訓を得た私が振り返りますと、そこにはスクール水着姿のピンク色の女子生徒さんが。

 

「??????????????」

「おや? 何かおかしなものでも見ましたか?」

「……いえ、何でもありません」

 

 理解できない情報が頭に飛び込んできたために少しばかり混乱しましたが、ここはトリニティ。

 言わずと知れたマンモス校ですので、いかにお嬢様学校と言えどこういった方は少なからず居てもおかしくはありませんね。それに上層部の方は政治でストレスも溜まるでしょうから、開放的になりたいときもあるのでしょう。

 結論。そっとしておいてあげましょう。

 

「道を、探していました」

「道、ですか?」

「先程聞かれたことの答えですよ。何をしていたのか。人気(ひとけ)の少ない道を、探していました」

 

 きょとんとした仕草を見せる少女は、しかしこちらから目を逸らしません。

 正直に答えたのですが、あまり納得してもらえていない気がします。

 こういう時は同じ質問を返すと話が進むらしいので向こうの理由を、やめておきましょう。先程の反応を見るに対ウイさんの私みたいな反応を返される気がします。自分でやるのは良いんですが人から受けるとたまったもんじゃありませんからね。

 しかしランニングルートを発掘するのも楽ではありません。

 こうして変態さんの通路だとばったり会ってしまう可能性もありますし、知らず知らずのうちに立ち入り禁止エリアに足を踏み入れてしまうかもしれませんから。地元でたまには気分を変えてみようと思ってルートを変えたらとある家の前で警備員さんに囲まれるという不測の事態に遭遇したこともありました。当時はジャンプで()(おお)せましたが、ここだと問答無用で撃たれかねません。

 

「この先は、ティーパーティーのセーフハウスがある場所です。あまり近付くと目を付けられてしまいますよ?」

「おや、そうだったのですか。これはご親切に、どうも」

 

 危ない危ない。

 早速虎穴に飛び込んでしまうところでしたね。彼女の助言がなかったら進んでいたところだったので、感謝をしなければ。

 ランニングルート作成用に使っている地図アプリを開きまして、ピン立てしてNGを記入しておきます。私の行動の何が面白いのかすごく視線を感じますが、特に悪びれる要素はありませんので次に向かう方向を確認します。

 変態さんがのそりと出てきた影の方はまだ向かっていませんね。まだ今のところ候補に入ってるルートには接触しませんが、もしかすると別のルートから寮の方に戻れるルートがあるかもしれませんので、今度はそちらに向かうとしましょうか。

 アプリを閉じて、ポケットへと仕舞い込みます。ランニングルートは目と体で覚えるものです。ずっと地図見ながら走るなんて危ないですからね。

 

「あなたは、トリニティが好きではないのですか?」

 

 突然、おかしなことを聞かれます。

 思わず彼女の方を見れば、その表情に少しばかり曇りがあるのが見えました。迷いと少しばかりの恐怖も見えるでしょうか。先程のセーフハウスを知っていることといい、会ったことはないですがティーパーティーのお偉いさんなのかもしれません。それならばストレスもきっと多いはず。こんな行動をしてしまうのも仕方がないのかもしれません。

 似たようなシチュエーションで、ミカさんに話しかけられたことを思い出します。

 こう見ると随分とミカさんに似ていらっしゃいますね。髪の長さとか、背丈とか、まな板の私が持たないどこかとか。

 お顔は全然違いますね。持っている雰囲気も。

 ですが私にできることは、正直に答えることだけですので。

 

「あまり好きとは、言えませんね」

 

 彼女がもしティーパーティーのお方で、トリニティを良くしようと頑張っているのだとしたら、これをそのまま伝えてしまうのは大変心苦しいのですが。

 頑張ることを決めたとはいえ、私にとって嫌な思い出があるのは事実ですし、そう人の心は変わらないのが本当です。いろいろな方の私に対するあらぬ誤解が解けているわけではありませんし、居心地が良いとは口が裂けても言えません。

 

 目を瞑って私の答えを噛み締めている彼女の横を抜け、ランニングルート開拓に戻ります。

 明日はいよいよ、分派の新しい標準装備を選びに行きます。モエさんおススメの店がミタカちゃん提案の店にありましたので、そこに行くことにしたのです。

 モエさんのモモトークが追加されていたことに気付いたのは、ミライさんが首長室に来るようになってモモトークの交換を行ったときでした。友達リストにモエさんの名前を見つけて、思わず二度見したものです。

 モエさんやRABBIT小隊の皆さんはとても親切です。ブラックマーケットの一件が結局私の悪行として取り沙汰されてしまって謝罪すると『やったことが正義なのは変わらない』と許してくださいましたし、武器について相談したらコスパのいいのお店まで教えてくださいました。

 それも含めて最近は周囲の人に恵まれているな、と思います。

 なので先程の質問の答えももしかすると、一年後には変わっているかもしれません。




サブタイトルに迷った結果なぜか夜鷹をチョイス。
夜鷹は夜行性の鳥です。特に意味は、あるかもしれない。

変態さんは補習授業部が始まって楽しくなり始めてるぐちゃぐちゃな状態で主人公に会ってます。

追記:ぎゃああああ名前ダブったあああああ!(CODE:BOXイベントネタバレ)
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