見たか! 余はカッコいいであろう!   作:息抜きのもなか

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感想で名前がわからなくなって混乱するというお声をそこそこ頂いているので、活動報告の方にこの機会に整理してちょっとした解説を書きました。
ああまあ長いので(約1000字)、お目々ぐるぐるしてる人は参考程度に。
逆に混乱する可能性もあるのでフィーリングで読んでいる方はそのまま本編をどうぞ。

このタイミングでこちらの解説を作った理由は、今回の話に混乱の原因になりそうだけど後々の展開的に入れなきゃいけない描写をぶち込んだからですね。


34.そうして歯車は組み込まれる

 お母様、お父様、火事場の馬鹿力というもの、ご経験はございますか。

 私はどちらかというと根性で耐えるのがデフォルト機能として搭載されておりますので、あまりそういったものに縁が無いようなのです。まあ本来セーフティとして動かなくなるものをマニュアル操作できてしまうという意味ではある意味、火事場の馬鹿力と言えるのかもしれませんが。

 

 ミタカちゃんの指揮の下で動く我々はアリウスの精鋭と互角の戦いを繰り広げております。

 カタログスペックで劣る我々は基本防戦気味ですが、私を盾としながら攻めつつ、リツカさんの狙撃で落とすというわかりやすく明確なコンセプトを維持しております。

 とはいえ向こうの精鋭中の精鋭が残っておりますので、こちらの作戦など分かり切っているのでしょう。乱れたところは確実に一人ずつ落とされているのもまた事実。

 こちらが一人落として相手もこちらを一人刈り取って、一進一退の攻防が続いております。

 しかしなぜでしょう。先程からずっと脳内に警鐘が鳴り響いているのです。全自動致命傷回避センサーには反応はないのにも関わらず、です。

 

「ここまでの被害が出ては本隊との合流も意味はない、か。制圧した上で全員での撤退を優先することにしよう。隊長もあのザマなんだ、別の脅威を報告すればまだ温情があるかもしれない」

「しかし任務の失敗は失敗です。懲罰は避けられないのでは?」

「一人も確保されなければ文句は言われまい。聖園ミカの言うことを聞く正義実現委員会より無断行動をしている別戦力の方が任務への影響度は高い。ここで潰しておく」

 

 何やら遮蔽物の向こう側から見知った名前が聞こえてきたような気がします。

 ここでミカさんの名前が出るということは、アリウス分校の方々をここへ招き入れたのはミカさんということでしょうか。それって色々不味いのでは。ほら、外患誘致とか言うじゃないですか。

 聞かなかったことにしたいですが、報告しないとまた何か言われるかもしれませんし、朝になったらツルギさんへ連絡ですかね。でもそもそも私たちが戦ってたのについてはどう言い訳しましょうか。

 知らない勢力の存在を確認して寮から飛び出したと言い訳して信じてくれますかね。嘘ですが。

 

「行くぞ!」

 

 何やら作戦が決まったのか、遮蔽物を飛び出してアリウスの皆さんがこちらに突っ込んできました。先程の会話内容から一点突破ということはないと思うのですが、一体どういう算段なのでしょうか。

 そう思って相手を牽制していたのですが、彼らは被弾を気にすることなく横一列に並んでこちらに向かってきます。

 明確に各個撃破を目指して複数人で狙う相手を集中させているのを見て、私は彼女たちが突破ではなく全滅を狙っていることを悟りました。

 ミタカちゃんの通信が入るのと、私が皆に注意を呼び掛けるのはほぼ違わぬタイミングでした。

 

「『これが最後の攻勢です! ここを凌げば我々の勝利です!』」

 

 彼らが選んだのは突撃。誰が倒れようと最後まで止まらない、スペックのゴリ押しによる決死の攻勢に出たのです。

 単純ですが、スペックで劣る我々には少しばかり厳しいものがあります。

 最初から大人数でこれをやられていたら少し厳しかったと思いますが、それをさせないための火炎放射器での足止めだったり、手榴弾での牽制だったりでなんとか凌いできた状況でした。

 この人数になってからも阻止するために私がかき乱していたのですが、一度自陣に戻るタイミングに合わせられたようです。アリウス分校の皆さんも馬鹿ではないということでしょう。この機会を逃すまいと実行に移してきました。

 今も私に近付かれたくないのか三人がかりで囲むように牽制攻撃を受けてしまいまして、距離を詰めることが叶いません。

 そうしている間にも一人ずつ着実に削られています。

 ですがこちらも手は残しています。温存してきた切り札があります。こういうタイミングで使うのにぴったりの特大火力が。

 

「……舐めやがって」

 

 私の耳が捉えたのは、こちらに向かってくる横一列のアリウスの皆さんとは違う位置からの声。

 怨嗟に塗れたその声音から言い知れぬ恐怖を感じて、その声の主を探します。

 声の主はすぐに見つかりました。視界の隅に動いている影を見つけたのです。それはリツカさんに撃ち抜かれて脱落した、アリウス分校の部隊のリーダーさんでした。起き上がることはできないのか、腕だけで少しずつ動いていたみたいです。

 もう戦う余力はないはずです。

 しかし、ずっと脳内で鳴り響いている警鐘が、あの生徒を止めろと叫び続けます。

 

()()()さん!」

『っ! 私も気付いた!』

 

 やっと見えました。

 その手に持っている爆弾は、何ですか。

 その禍々しくおぞましい気配がするものは、何ですか。

 どうしてそれを、分派(うち)の子に向かって投げようとしているのですか。

 

 被弾に構わず、リーダーさんのいる場所へ向かいます。

 致命傷なんてどうでもいい。あの爆弾を止めないと取り返しのつかないことになる。

 半ば確信に近いその予感だけを信じて飛び込んで手を伸ばして、少し、間に合わない。

 

『弾いた!』

 

 既に手から離れている爆弾に対して狙撃を成功させたリツカさんの声が聞こえました。

 それでもまだ警鐘は鳴り止みません。ですが僅かばかりだけでも浮いたその時間があれば、スプリントが苦手な私でも届きます。

 跳躍した私が伸ばした手は届かず、しかし体勢を崩しながらも伸ばした足がそれに触れて、私は思いっきり上に向かって蹴り飛ばしました。

 

「よく、ここまで耐えました。美味しいところは差し上げますよ――トコさん」

 

 体勢を崩しながら落下する無防備な私に鉛玉の雨が降り(そそ)ぎます。翼で守ろうにも漏れが出て、終いには脳天に一発貰って、頭を揺さぶられてしまいました。

 それでもこちらに意識を向けられたので、彼女に時間を作れたので、十分でしょう。

 フリーになった切り札が、照準を合わせて引き金を引きました。

 

「チェックメイト、ですわ!」

 

 私が背中から地面に叩きつけられると同時にロケットランチャーの爆発音が轟きます。

 少し遅れて、私が上に蹴り上げた爆弾が炸裂し、地面から跳ねて少し浮いた私を焼きました。

 その熱を浴びながら思います。これは上に蹴り上げて正解だった、と。存在ごと否定して焼き切ろうとするような悪意を浴びるのが自分だけで良かった、と。

 爆風の端を掠めただけで頭の奥がズキズキと軋むようなこの痛みを味わうのですから、その威力を余すことなく味わったらどうなっていたのか考えるのも恐ろしいです。上に跳ね上げたおかげでその光に呑まれたのは空中に放り出されていた私だけのようで、周囲に倒れている子たちは敵味方問わずその被害は被っていないようでした。

 被弾した左耳の上辺りから血が滴り流れているようですが、無理を通して体を起こします。

 

「状況は、……終了のようですね」

 

 先程のトコさんの一撃で完全に沈黙したのか、被弾したアリウス生徒が起き上がってくる様子はありません。

 私は半ば言うことを聞かない身体を引きずりつつ、まだ意識がある人間の下に向かいました。

 

「先程の爆弾は何ですか」

 

 その頭にショットガンを突きつけ、問います。右腕は反応がなかったので、左腕のものだけで。

 ガスマスクの外れたアリウスのリーダーさんは満身創痍の私に恨めしそうな視線を向けて、ぶっきらぼうに言葉を吐きました。

 

「……教えるかよ」

「そうですか」

 

 私も取り繕う余裕など既になく、淡白にそう返すことしかできません。

 引き金を引きます。一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。もう一発。

 悪寒。

 右方向、下からの攻撃の予感に右手の銃で対応しようと試み、すぐにそちら側が制御を手放していたことを思い出し回避を選びます。しかし、先程の爆弾の影響が大きいのかまともに体を動かすことが叶わず、そのまま右側頭部に被弾してしまいました。

 その勢いで地面に激突し、視界が歪みます。

 

『……まだ起きてるやつが残ってた。生きてる?』

 

 スナイパーライフルの狙撃音が響いて、そのすぐ後にリツカさんから通信が入りました。

 左腕一本でどうにか身体を持ち上げて、その視界に映る両腕の実在だけは確認します。所謂(いわゆる)乙女座りの姿勢を取り意識があることを伝えながら何とか息を整えつつ、靄がかかる視界の中でそこに手ごろな頭が転がっているのを認めます。

 まだ動く左腕でそこに狙いを定めて、ただひたすらに、引き金を引きました。

 念入りに。念入りに。もう何もできないように。

 

「……首長補佐。それ以上は」

 

 第二部隊の隊長さんの声がします。左腕を掴まれましたが、やめるわけには行かないのです。

 リツカさんの一撃ですら昏倒しなかったお相手です。先程の爆弾のように何を隠し持っているか分かったものではありませんし、私の銃の火力ではどこまでやっても安心はできませんから。

 制止を振り切って引き金を引こうとする私を見てか、次の瞬間、目の覚めるような狙撃音と着弾音が左腕の先で響きました。

 それから咎めるような声の通信が届いて、私の暴走を中断させます。

 

『……対象沈黙。これでいい?』

「ええ。お手数を、おかけしました」

 

 おかしい。つい五分前までは被弾もほぼしていない状態で五体満足で動いていたというのに、今や動くところの方が珍しい有様です。

 最後までやり切ったのは良いものの、今回はリツカさんとミタカちゃんの手柄ですかね。トコさんもよくあの場面まで他の小技だけで戦ってくれていました。特別賞はあるかもしれません。

 しかしあのよくわからない爆弾の影響か、自分が感じている以上にダメージを貰ってしまっている気がします。いえ、どちらかと言えば頭部への二発の被弾が原因でしょうか。そもそも全身に大量に被弾しているのでその時点で感覚がおかしくなった可能性も捨てきれませんね。

 勝ちこそ拾ったものの、やはり戦うべき相手ではなかったのかもしれません。

 

「すみません、報告は、ミタカちゃんとカタネさんに、お願いしても、良いでしょうか」

『あ、当たり前です! リツカ先輩は救護騎士団にすぐに向かってください!』

 

 やっぱりリツカさんの銃を持っていないときの私は、碌な目に遭いませんね。

 彼女が戦闘に参加してくれたからこれで済んでいるのだと考えると、本当ならばもっと無残な結果だったのかもしれません。

 ああ、そうだ。

 これだけは伝えなくては。

 個人回線を開き、血を流しすぎて回らない頭で言葉を紡ぎます。

 

()()()さん、あなたも、分派(うち)の子ですからね」

『……そう』

 

 それだけ言って満足したのか、私は体の制御を失って後ろに倒れました。

 まだ日の出が遠そうな空を見ながら、またセリナさんに怒られるかな、なんて考えます。

 分派の皆さんにはカッコ悪い姿ばかり見せてしまっているなと気が付いて、もう少し頑張ろうと決意を新たにしながら、私は目を閉じました。




たった一話でこんなボロボロになる主人公おる?
リーダーさんが持っていたのはもちろんヘイロー破壊爆弾です。火事場の馬鹿力で投げられたものなので何もしないとトコさんに直撃してました。
とまあこんなところで3章は終了。幕間を挟んでいよいよエデン条約調印式です。
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