見たか! 余はカッコいいであろう!   作:息抜きのもなか

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06.そうして飛躍は続いていく

 お母様、お父様、私の部屋の掃除は終わりましたか。

 途中で漫画とか読んで手が止まっているようなことはありませんか。どれだけ昔を懐かしんでいただいても構いませんが、私が戻るまでにはちゃんと綺麗にしておいていただけると助かります。

 

 いえ、まだボロ雑巾にはなっていません。

 初戦はひとまず何とか切り抜けましたので。

 咄嗟に投げた煙幕弾が効いたようで、スナイパーライフル持ちのお二方の同士討ちが発生したおかげで私は念のため持ってきておいたハンドガンでもう一人の制圧に成功しました。

 接近戦に持ち込んだので多少の手傷はありますが、まあ許容範囲内でしょう。

 しかし困ったことに階下から足音が聞こえるんですよね。

 階段へと続くであろう扉の裏に陣取って、制圧した相手から入手した戦利品であるアサルトライフルを構えます。こちらも本来の愛銃とはタイプが違いますが、スナイパーライフルよりは随分と扱いやすいです。連射が効きますし、まあまあ射程があるので雑に撃ってもヒットするのが有り難いですね。

 

「――失礼」

 

 扉から無防備に飛び出してきたヘルメット団の方の襟首を掴んで扉の影へと引っ張り込みます。

 そのままバランスを崩したお相手が事態を把握するよりも前に彼女の腹にアサルトライフルの銃口を突きつけ残弾を撃ち込みます。マガジンが空になるまで撃ち切れば、物言わぬ躯の出来上がりです。いえ、気絶しただけで死んではいないはずです。ヘイローも壊れていないですし。

 弾を撃ちきったアサルトライフルを放り出し、今気絶した子が持っていたアサルトライフルに持ち替えます。わらしべ長者というやつですね。現地調達とも言います。

 

「喰らえ!」

 

 アサルトライフルの連射音で接近の足音を聞き逃していたようです。

 閃光と爆風が私の視界を占領し、何か硬い鉄の塊がこちらにぶつかってきました。爆弾、手榴弾をぶつけられたようです。であれば、ぶつかってきた物はビルの扉でしょうか。傷付いた仲間がいるというのに、随分なことをするものです。

 視界と聴覚が役割のサボタージュを決め込んでいる中、私はとっさに残っている煙幕弾を足元に叩き付け、自身の防衛を図ります。

 しかし流石に扉の裏にいるということは既知の事実だったようで、数うちゃ当たる作戦で攻められているのか被弾を避けることが叶いません。

 身を屈めて当たり判定部分を小さくして頭を腕で庇えば多少マシになりました。視界が戻るまで扉から距離を少しだけ取るように動いて少しでも被弾を避けるように動きます。

 足が何かに当たります。戻りつつある視力で全力で分析を試みれば、それは先ほど私が不意打ちで倒したヘルメット団の方でした。彼女も手榴弾で少しばかり吹き飛ばされたようです。

 どうしましょう。

 トリニティの生徒にあるまじき考えが浮かんでしまいました。

 ですが、背に腹は代えられません。多少不名誉な称号が増えようと、寮に戻ればボコボコになることが確定しているのであればもうどうとでもなれの精神で行きましょう。

 

「な、お前卑怯だぞ!」

「ここは戦場です。利用できるものがあれば、利用します」

 

 ええ、例えそれが気絶した敵だとしても。

 良い盾が手に入りました。情に訴えることもできて、銃弾が貫通することはほとんどない。そう考えると、この戦法はキヴォトスという場所において最適解なのでは? まあ倫理的によろしくないことは理解していますので、こういう多対一の危機的状況下以外では使用するつもりはありませんが。

 物語があるとすればもしかすると私は悪役なのではと思わないでもないですが、盾(人間)を構えたまま階段へ向かって進みます。三人組だったようで一人がこちらに回り込んで来ようとしていましたが、そちらにアサルトライフルでの攻撃を向けて気絶させることに成功します。

 

「クソがッ!」

「突撃じゃあ!」

 

 埒が明かないと接近戦に持ち込もうと踏み込まれたので、手榴弾を盾と共にその場に落としながら後ろへ下がります。

 その子、もう結構ダメージ受けているので手榴弾なんて喰らわせて大丈夫でしょうか?

 私と同じような思考に至ったのでしょう。二人は盾の役目を果たしていたその子を護るように手榴弾とその子の間に身を滑り込ませ、結果手榴弾をまともに喰らうことになりました。

 うん、戦い方が汚い(ダーティ)。トリニティの分派のトップの姿なんでしょうか、これ。

 伸びている間に奪い取ったアサルトライフルでとどめを刺し、わらしべ長者を続けます。

 それにしても運が良い。同士討ち然り、手榴弾の被弾然り。扉一枚挟んでいたとはいえ、目と耳を覗けばほぼその扉が直撃した以外は大したダメージを貰わなかったのは幸運でした。

 先の誤射もそうですが、なかなか今日は天運に恵まれていますね。

 

「ヒィ……!」

 

 階段に歩いて向かえば、外の惨状を見ていたヘルメット団の子が戦意喪失したのか体を震わせてこちらを見ていました。

 にっこり笑って見せれば、より怖くなったのかストンと座り込んでしまいました。あまりの恐怖に腰が抜けてしまったようです。可愛いですね。

 その反応になる気持ちもわからなくはないですが、心外だった気持ちもあるので撃っておきましょう。元より敵ですし。気絶したのを確認して、それわらしべわらしべ。

 階段を音を立てないように降りて、周囲を探ります。

 彼女たちが下から上がってきたことを考えれば、ここにもっと団員たちが居てもおかしくないはずです。詰め所のような扱いなのか、作戦の要の拠点か、あるいは狙撃要員とその護衛部隊が配置されていただけか。一番最後であれば嬉しいことこの上ないのですが、なんとなく張りつめた空気を感じます。

 もしかすると本隊が来るべき場所、ここだったのでは?

 そうなると実質私一人で敵の本拠地に踏み込んでしまっているのではないでしょうか。それは不味い。非常にまずい。このままではプエラ分派の皆さんではなくヘルメット団の皆さんにアルミ缶のようにベコベコにされてしまいます。こっちは精神攻撃じゃなく物理攻撃だと思うので病院送りが避けられないのもマイナスポイントです。

 

「一旦連絡を……ん?」

 

 視界の隅で何かが動きました。

 距離を取りながら、そちらに銃を構えます。

 

「……誰」

 

 呼びかけて出てくれば良し。出てこなければ慎重に攻略して制圧を。

 そんな物騒なことを考えていたら、物陰からヘルメット団の格好をしたツインテールの少女が飛び出してきました。ヘルメット団の特徴たるヘルメットは被っておらず、代わりにツインテールの両方が白と緑のリボンで括られています。

 それに彼女には、私の故郷にいたにしては珍しいものが存在しています。

 

「……翼」

「た、助けてください! いきなりトリニティ自治区内で襲撃にあってしまいまして、何人かは本で殴って制圧できたのですが、余りの人数に圧されてしまって……!」 

 

 キヴォトスの特定の種族しか有していない翼。トリニティ生に多く見られるそれは、私の故郷ではめったに見られません。私が周囲から敬遠されていた一つの要因たるそれを有しているということは、確かに彼女はトリニティ生なのかもしれません。

 ヘルメットも被っていませんし、服装が変わっているのは、本隊の方に潜入させていたみたいに拉致した子の身ぐるみをはがしていると考えると説明はつきます。

 しかし嘘だったら後ろから撃たれることになるかもしれませんし、ひとまず気絶させてから運ぶ方が楽な気がしますね。

 そう思ってリツカさんからお借りしている銃を向ければ、彼女は慌てたように手を動かして弁明を始めました。

 

「わ、私は円堂シミコって言います! 図書委員会に所属してる一年生です! この服はヘルメット団のものですが私のものではなくて! 連れてこられた時には既に着替えさせられてまして!」

 

 シミコさんは捲し立てるように自分がここにいる理由と現状に対する説明を始めます。

 うん、でもそれを聞いてしまうともしそれが本当だった時に信じずに撃った無能の烙印を押されてしまうので、早めに黙ってもらうことにしましょう。

 私が構えたのを見て、シミコさんが目を瞑ります。

 この近距離です。スコープなど見なくとも命中させるのは難しくないでしょう。この辺だろうと当たりを付けて雑に引き金を引きます。

 サイレンサーで減衰された発砲音。

 続いて、ドタリと人が倒れる音。

 

「……え?」

 

 シミコさんの、ずっと後ろからそれが聞こえました。

 ……外しました。はい、この距離で、当てられませんでした。

 流石に慣れていないスナイパーライフルで照準を絞るのサボってはいけなかったみたいです。次からはちゃんとこの距離だとしてもスコープを覗くことにします。ええ、恥ずかしいので。

 本当は顔から火が出るほど恥ずかしいですが、何もなかった振りをしてシミコさんの横を通り過ぎて人が倒れた音がした方に向かいます。まるで元からそのつもりだったとでも言うようなとぼけ方をすれば、騙されてくれたりしないでしょうか。

 

「ま、全く気づきませんでした。後ろから狙われていたなんて」

 

 後ろから追いついてきたシミコさんが言います。

 私も気付いてませんでした、とは言いません。これ以上私の失態ポイントを加算するわけにはいかないのです。

 変な方向の勘違いが進む気もしますが、この際そこは甘んじて受け入れるしかありませんね。

 

「あ、この方、鍵を持ってますね! さっき歩いているときに途中の部屋で捕まっている方を見かけたんです! もしかしたらこの鍵でそこを開けられるかも!」

 

 シミコさんがすごい期待を向けた目でこちらを見てきます。

 いえ、私はまだ、あなたのことを信用したわけではないのですが、そんな目を向けられましても何も出せないのですが。

 無言の見つめ合い。

 気まずくなってしまいまして、結局頷いてしまいました。罠かもしれませんが、もし本当に人質が捕まっているのなら解放して早々に撤退できるかもしれません。

 不安は残りますが、彼女が通ってきた道を戻るのであればこの状況下で無暗に動くよりはまだいくらか安全かもしれません。袋叩き用のモンスターハウスに案内されたときは、シミコさんを速攻で制圧してキヴォトス人という優秀な盾を使わせて貰うことにしましょう。

 そういえば、ミタカさんはそろそろ合流ポイントへ到着している頃でしょうか。

 できれば手伝ってくれると助かるのですが。まあ、ポイントとは少しずれているので入口に見張りでも立っていない限りは気付かないとは思いますが。

 はい。一人きりでも、頑張りますとも。




やっと原作キャラが登場しました。
多対一なので仕方ないですが、主人公の戦い方が汚い。主人公の姿か? これ。
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