見たか! 余はカッコいいであろう!   作:息抜きのもなか

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エピローグ
エピローグ そうして


 リツカさんが正式にティーパーティーを辞したタイミングで、私とリツカさんは入れ替わりの事を分派に正式に公表し、謝罪を行いました。

 一応信任投票的なことも行いまして、リツカさん共々現職に残留が決定。

 たまーに呼び間違えられることはありますが、仕方のないことと割り切って過ごしております。

 一番変わったことと言えば、リツカさんが自分を隠さなくなったことでしょうか。

 甘党のミタカちゃんと今日のおやつ論争を度々巻き起こしております。別々のものを食べればいいじゃないかと言ったら、一体感がなくなるから駄目だと声を揃えられてしまいました。別によくないですか。お菓子ぐらい自分の好きなものを食べれば。

 

 

「ウイさん、資料の解読をお願いできますか?」

「げ、また来たんですか? あまり状態も悪くないので郵送で送れと言いましたよね?」

「そんなこと言っていいんですか? せっかく『ウイさん頑張ってるスタンプ』が溜まったからミラクル5000を買ってきてあげたんですが……」

「なんですかそのスタンプカード……。いえ、買ってきてくれたものは貰いますが……」

 

 ウイさんのところには地下の資料室の文書の解読や復元を手伝ってもらうために、最近はまた良く足を運ぶようになりました。

 今年で卒業してしまうのが名残惜しいですが、ギリギリまで働いてもらおうと思います。

 あとやっぱりこの先輩面白い。

 

 

「ウイさんのところに持って行ったので、そのおすそ分けです」

「ありがとうございます! 部長は元気にしてましたか?」

「ええ。いつも通りでしたね。あ、今日は新しい長編に挑戦してみたいんですが、今度はコメディチックなものをお願いできますか? ちょっと歴史小説は資料解析でお腹いっぱいでして……」

「わかりました! ちょっと探してきますね!」

 

 シミコさんには時々こうして小説を見繕ってもらっています。

 リツカさんに外に出る習慣を付けろと言われて図書館に行くようになりましたが、中々読んでいると面白いものですね。

 たまにこうしてウイさんの様子を伝えるんですが、三日ぐらいこもってそうだと伝えたら風呂に入れてきますと飛んでいくことも多いです。先生もたまに来るんだからしっかりしないととシミコさんは言いますが、別に先生は気にしないと思いますけどね。むしろそっちの方が喜ぶのでは。

 

 

「なんで実弾で訓練してるのあの二人……」

「というか二人とも怪我したとこからすぐに回復するの気持ち悪いんだけど……」

「言われてますよツルギさん」

「カァハハハハハハ! 言わせとけ!」

 

 復活を経験して以降コツをつかんだ私は気持ち悪いぐらい再生力が向上しまして、ツルギさんのサンドバッグにされるようになってしまいました。

 基本的にはボコボコにされるんですが、稀に顎へクリーンヒットすることもあるので、勝率は二割ぐらいはあるんじゃないでしょうか。というか普通に私とツルギさんで撃ち合うと埒が明かないので決着は両者ともほぼクリーンヒットによるKO勝ちぐらいなんですよね。

 いつの間にか所属していないのに正義実現委員会の幹部候補に挙げられているみたいなので、そろそろツルギさんとの訓練を打ち切るべきかも。

 あ、勧誘やめてくださいツルギさん。

 次の模擬戦で(ツルギ)が勝ったら入れって、受けるかそんなもん。

 

 

「もう! 怪我が治っても傷痕は残るから無茶はダメって言いましたよね!」

「ツルギ委員長の誘いを断るのもどうかと思いまして……。貴重な機会であるのは間違いありませんし」

「もう、団長も何か言ってやってください!」

「……カタネさん、あなたのその回復能力はあなたが生還した後に得たものだと聞いています。それはつまり、以前のあなたが同じ行動をしていたら無事ではなかったということ。変化した自分の身体に胡坐(あぐら)をかき注意を怠るその姿勢、『救護』が必要なのでは?」

「暗躍の誤解が解けてもそっちは残ってるんですね……」

 

 ツルギさんとの模擬戦をすると、毎回どこから聞きつけてきたのかセリナさんたち救護騎士団の方々に運ばれてしまいます。傷の直りが遅いのは相変わらずですので、傷だけ塞がれて痕が残っているものはちゃんとケアをしろと口酸っぱく言われてしまいます。

 ミネさんとも以前のような衝突はなくなったのですが、ことあるごとに私の性根を叩き直そうと画策されています。

 もしかすると私の引き籠りマインドが見透かされているのかも。

 最短でも今年いっぱいまではちゃんと働くつもりですし、何とか見逃していただけないでしょうか。あ、卒業まで時間がないからこそ、それまでに叩き直すと。逃げてもいいですか?

 

 

「お疲れ様です。差し入れを持ってきました」

「おー! カタネちゃんの差し入れはいつもハズレが無いから助かるんだよねー」

「保存期間もそれなりに長いものが多いからすごく助かっている。ありがとう」

「いえいえ、皆さんが居なければ落としていた命ですので」

「その分は既にいただいていますし、ここまでしていただくのも申し訳ないのですが……」

「じゃあこのお肉は分派の皆さんに食べてもらいますかね」

「遠慮なくいただきます」

 

 シャーレを尋ねるついでに子うさぎ公園に足を運びまして、先日実家から送られてきたお肉をお裾分けします。ふるさと納税、とやらで手に入れたらしく、RABBIT小隊の皆さんの話をしたら食べてもらえと送り付けられました。

 ミユさんには天敵として認識されているのかあまり顔を出してくれないのですが、別に銃を向けられなければ私も流石に気が付かないんですけどね。

 RABBIT小隊の皆さんとは変な噂が出ない程度には交流を続けさせてもらっておりまして、武器の相談だったり食料の提供だったりとWin-Winの関係を続けさせてもらっています。

 一つ思うのは、この人たち以前と打って変わって先生に対して無防備過ぎませんか?

 

 

「"やあ、カタネ。来てくれてありがとう"」

「どうも。さ、私が書類を片付けるので先生は休んでください」

「"そういうわけにはいかないよ。生徒が働いているのに先生が休むわけにはいかないからね"」

「冗談も休み休み言ってください。まずは目の下の隈をなんとかしたらどうです?」

「"このぐらい全然大丈夫だよ! "」

「完全に徹夜のテンション……。じゃあ先生はそこで私の監視をするという業務をお願いします」

「"それってホントに仕事なのかなぁ?"」

「都合のいい関係で行きましょう。私も先生の事を必要であれば呼びますし、先生も私を好きな時に呼んでくだされば」

「"それはちょっと聞こえが悪いね……"」

「先生の評判を考えれば、今更では?」

 

 シャーレには度々当番に呼ばれるので出向くのですが、先生が毎回酷い顔をしているので休ませております。

 分派の子たちのわがままや厄介な事案を押し付けるのにちょこちょこ呼びつけているので、その代わりと言っては何ですが当番の際はささっと書類の山を片付けてあげているのです。ミレニアムのセミナーの人やゲヘナ風紀委員の行政官などその道のプロほどとはいきませんが、書類を処理するのはまあまあ得意な方ですので。

 しかし接してみるとなかなか先生も愉快な方でして、からかいがいのあるお方です。

 ウイさんミカさんが三年生ですし、来年のウイさん枠として真剣に検討してもいいかもしれませんね。

 

 

「ご無沙汰しています。ティーパーティーの皆さま」

「やっほーカタネちゃん。聞いたよ? ナギちゃんに告白したんだって?」

「いえ、記憶にありませんが」

「は?」

「え?」

「おや?」

「いったい何のお話でしょうか?」

 

 ティーパーティーの皆さんとは度々招かれてお話をしています。

 政治的な話はあまりやりたくないのですが、介入しないなら介入しないで()()()()()にはしていないというポーズをとる必要があるのだとか。アリウスみたいにならないようにという配慮のようですが、エデン条約の一件で態度を変えたんでしょうか。

 ミカさんとは個人的にお話しさせ(からかって遊ばせ)ていただくことも多く、定期的に彼女の口にダース分のお菓子を餌付けするゲームをしています。太るからストップと言おうとする彼女の口を塞ぐように突っ込むのがポイントですね。

 そういえば先日、皆さんきってのお願いで次のホスト候補の人と話をさせられたんですが、もしかして私、いつの間にか逃げ道を失ってませんかね?

 

 

「辰カタネ、うちの生徒はどこ?」

「お、到着されましたか。飲食店を爆破しようとしていたのでちょっと黙ってもらいましたが、大丈夫ですかね?」

「ええ、ゲヘナ生はその程度じゃ反省しないから」

「なるほど。そういえば空崎委員長もですが、三年生なのに皆さんギリギリまで現役を続けられる方が多いですよね」

「他の人の事情は知らないけど、私なんかはいるだけで違うみたいだから」

「よぉし! ここに温泉を――ひ、ひえええぇっ!!!」

「……まあ、こういうこと」

 

 空崎委員長とはそこまで頻度が高いわけではありませんが、トリニティ自治区で悪さをしたゲヘナ生の回収で顔を合わせる機会があります。

 正義実現委員会に渡そうとしたら私なら大丈夫だから交渉役やってと言われるんですが、知らぬ間に変な権限持ちになってたりしないことを願ってます。

 

 

「え、あの、私の分のミラクル5000はないのですか?」

「あー、ウイさんとシミコさんに渡した分ともう一個あったんですが、ミタカちゃんにバレて持っていかれてしまいまして」

「そんな……私では手に入れられない運命なのでしょうか」

「いえいえ、そんなはずはありませんよ?」

「カタネさん? ま、まさか!?」

「ええ。予約が取れたので、来週行きませんか? 今度はミネさんと二人で、なんて嫌ですよ?」

 

 サクラコさんとは、変わらず親しくさせていただいております。

 ただの友人として気兼ねなく話ができる関係というのは、やはり貴重なものですね。

 私がトコちゃんのロケットランチャーで生死の境を彷徨っていたときにミネさんとデートしていたのはなかなか許しがたいことですが、タイミングが悪かったですし目を瞑りましょう。

 別にお店の予約を取ったのはサクラコさんの初ミラクル5000の記憶に混ざろうとか、そういうのではありません。ええ単純な善意ですとも。

 

 

 

「それ、本当に寮の入り口(エントランス)に飾るんですか?」

 

 大きな額縁を搬入する業者の姿を横目に見つつ、満面の笑みを浮かべるミタカちゃんにその疑問を投げかけます。

 天井まで届きそうなほどの大きさの絵は、分派の扉をギリギリ通ってその居場所への定着を今か今かと待ち侘びる状態です。

 皆さんの勢いに折れてOKを出してしまいましたが、分派の寮という後世にも残っていくであろう場所に自分をモチーフにした絵が飾られるというのはなかなかに抵抗があるもので、羞恥心も多少はありますがそれ以上に自分でいいのかという疑念が尽きません。

 

「何言ってるんですか! プエラ分派でも三人しかいない復活の奇跡の体現者ですよ! 逆にあなた以外に誰がここ(エントランス)に収まれるっていうんですか?」

「もともとここには何もなかったですし、置く必要はないとおm「「「あります!」」」」

 

 思いっきり皆さんに反対されてしまいました。

 まあ別にここに私の絵があることで皆さんのコンディションが上がるなら別に構わないと言えば構わないのですが、どうせ十年後ぐらいには「この絵って何であるの?」「要らなくない?」「ぶっ壊しちゃおう!」みたいな感じで撤去されると思いますよ。

 

「諦めなよカタネちゃん。いいじゃん、カッコいいし綺麗だと思うよ」

「他人事だと思って笑ってますが、私がちょっと工作すればリツカさんが笑いものになるんですからね!」

「やだなぁ。ちゃんともうナギサさまやシスターフッドと組んで正しい史実を残せるように資料を(こしら)えてるって。ちゃんと私とカタネちゃんの入れ替わりとか、カタネちゃんが私の名で積み上げた偉業とか、事細かに正確に資料に残しておいたから」

「何でそういうところは頭が回るんですか……」

 

 ティーパーティーを正式に辞めて吹っ切れたリツカさんは、度々こういう先回りをすることが多くなったような気がします。

 心に(つか)えていた枷が外れて、本来の実力を発揮できるようになったのかもしれません。

 それにしてはやることがしょうもないですが。

 

「うーん、やっぱり私、こんな美化されるような真似はしてないと思うんですけどね」

 

 設置が完了した絵に目を向けます。

 眼前にあるのはショットガンを空に向ける銀髪のトリニティ生の姿。色的には()()()()あまり()えないはずなのですが、赤黒い雲が広がる空の真ん中、ショットガンの真上ぐらいのところだけぽっかりと覗く青空から零れる光が彼女を照らしていて、どうにも視線を離し難い引力を有しています。

 しかしこれだと私が空に穴を開けたみたいに見えますし、やっぱりちょっと違和感が。

 

「そんなことありません! カタネ先輩はカッコよかったです!」

「私たちからしたら、首長があの壁をぶっ壊したようなものですから!」

 

 まあ私は当時の自分を客観的には見れていないので、皆さんがそれでいいならいいのですが。

 一応言っておくと、「ようなもの」はそのものではありませんよ? え、知ってる? 敢えてこういう風に描いてもらった? ……はい、そうなんですね。

 おかしいですね。あの銃は手放したのに皆さんの熱量が冷めるどころか増している気がするのですが。軌道修正はできていると思うのですが、もうちょっと落ち着いていただきたいところです。

 ですがこれ程の評価をいただいているということは、素直に喜んでいいのかもしれませんね。

 辰カタネは、ちゃんと首長という務めを果たせているようです。

 

 

 拝啓、お母様、お父様。

 今度の休みには帰省します。帰省するので、間違っても絶対に寮には来ないでくださいね。




これにて一旦完結です。
長らくお付き合いいただきありがとうございました。
最後の方は更新間隔が空いてしまってズルズルと来てしまいましたが、なんとかここまで漕ぎつけました。体調崩したタイミングでいろいろ予定が狂いましたが、エタらなかったからヨシ!

今後は後日譚的なものをもしかすると書くかもしれませんが、あまり期待するのは厳禁です。
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