fate/extra melt blossom   作:もっこもこの埃

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背負う期待/秘めた願い

 

七日目 決戦当日

 

マイルームを出ると、タイミングを測ったかのように言峰が現れる。

 

「おはよう。いよいよ今日が待ちに待った決戦の日だ。準備は整っているか?ついにこの聖杯戦争最初の敗者が決まる、幸いにもまだ時間はある、存分に準備をするがいい。終わった後に後悔をしても意味が無いのだからな」

 

そうだ、今日が決戦の日。

自分と慎二、どちらかが勝ち、どちらかが負ける。

生き残れるのは勝者のみ、

今日、どちらかが死ぬ。

本当に?

未だそれは現実味を帯びることはない。

だが、それでも進む他に道は無い

 

「決戦の時刻になれば端末に通知が入る。

それまでにせいぜい成すべきことをするがいい」

 

そう言って立ち去っていく言峰。

 

まだ時間はある、

なら、もう一度あのライダーについて情報を整理しておくとしよう。

 

★★★★

 

[ライダー:フランシス・ドレイク]

かつて海賊として恐れられ、同時に英雄として称えられた人物。世界一周を達成し、スペインの大艦隊を打ち破って見せた。

 

マイルームに戻り、ライダーの情報を整理しているとふと、昨日頭に浮かんだ疑問を思い出す。

 

「そういえば、メルトってどういう英霊なんだ?」

 

メルトリリスという名前は聞いたことがない。

いったいどういった人物だったのだろうか、英霊として呼ばれたのだから何かしらをなした人物なのだろうが

 

「はぁ?…私の事を知りたい訳?

…まぁ、別に教えてあげても構わないけれど…

でも、乙女の秘密を自らの口から言わせるのは悪趣味じゃなくて?だから、知りたいのなら貴方自身で調べなさい。えぇ、そうね、それがいいわ。その方が貴方らしいもの」

 

「そう…か?まぁ、そう言うんなら」

 

そう言われては仕方ない、

自分で調べるとしよう。メルトリリスという名前は分かっているのだから簡単に見つかるだろう。

 

勿論、それはこれからの戦いに勝てればの話だが

 

そうしているうちに端末からアラームが鳴り響く、

 

決戦場の準備が完了しました

一階用務員室へお越しください

 

どうやら時間のようだ。

指示の通り一階へ向かうとしよう。

 

★★★★

 

用務員室の前に待機していた言峰の指示に従い二つの暗号鍵を扉に差し込み、エレベーターになっているらしい中へと進む。

 

扉の先には、小さな空間が広がっており障壁を隔てた向かい側には慎二とライダーが立っていた。

自分たちが入ると自動的に扉が閉まり、ゆっくりと下降し始めた。

 

少しの沈黙の後、慎二が口をひらく

 

「降参するなら今のうちだぜ?

なんなら賞金を多少分けてやってもいいしさ」

 

そんな事を口にする慎二、

慎二はこの聖杯戦争がただのゲームであり、殺し合いというのはただの脅し文句だと思っているらしい。

自分は…まだなんとも言えない、

この戦いが本当に命を懸けた物なのかどうか…

何を言おうかと悩んでいると、

メルトリリスが口を開く

 

「はっ、まだそんなおめでたい事を言ってるの?

ホントよくできた頭だこと。その上等な脳みそで負けた時の言い訳でも考えたら?あれだけ大口叩いておいて負けたんじゃ目も当てられないわよ?」

 

「なっ…」

 

メルトリリスの言葉に慎二が一瞬顔を歪ませる

 

「はっはっ、相変わらず威勢がいいねぇ。

でもどうするシンジぃ、実際これで負けたらアタシら恥さらしもいいとこだよ」

 

「…僕が負けるはずないだろ!だいたいっ、お前こそ真面目に戦えよな!ちゃんと金は払ったんだから、手を抜いたりするんじゃないぞ」

 

「そりゃ、モチロンさ。

代金分はしっかり働いてやるさ。しかしよぉシンジ、ハナから払ってくれりゃ良かったんじゃないかい?」

 

「っ…お前っ、あれだけ用意するのにどれだけ苦労したと…あ!そういえば岸波、前はちゃんと聞いてなかったけどお前はサーヴァントに何を要求されてるんだ?」

 

急に慎二から話を振られる

メルトリリスに何かを要求された事はない、

せいぜいリハビリに付き合うくらいだが、そもそもあれは自分の責任な訳で

 

「特に…なにも?」

 

そんな自分の答えに慎二は声を荒らげる

 

「はぁ!?金とか、財宝とか…なにも言われないのか?」

 

「当然じゃない、そんなもの要求するのはそこのハズレ海賊くらいよ。残念だったわね面倒なサーヴァントを引いて」

 

慎二は口を大きく開いてライダーとメルトリリスを交互に見ている

 

「誰がハズレだい。しょうがないだろ海賊の性ってやつさ」

 

「…あ、そっそうだぞ。

この僕がハズレなんて引くわけないじゃないか、

…ライダーだって酔っ払ってなければ…」

 

慎二がボソボソと何かを呟く

 

「んー?シンジぃ、今もしかしてアタシの事を褒めたのかい?かぁ〜!可愛いとこあるじゃないか」

 

「うるさいっ!少しは断酒しろって言ったんだよ!この酔っぱらい女っ!」

 

ライダーに頭をぐしぐしと撫でられ、必死に抵抗している慎二。

どうやらなんだかんだ慎二とライダーは上手くやっているらしい、案外相性がいいのだろうか?姉弟のような…

 

そんな様子を見ていると、つい自分もこの戦いがただのゲームなんじゃないかという考えが頭に浮かんでしまう。

 

そうしているうちに、

少しの振動とともにエレベーターが停止し扉が開く。

どうやら決戦場に着いたようだ

 

海底のような空間、周囲にはいくつもの船が沈んでいる。

この場所で…

 

 

Sword, or Death

with what in your hand…?

Flame dancing, Earth splitting, Ocean withering,

 

 

最初の決戦の火蓋が切って落とされた

 

<メルト、距離をとらせるな>

 

距離がひらけばライダーはあの砲撃を放ってくる、だから近接戦こちらの土俵から逃さない

 

<分かってるわ>

 

単純な出力はライダーの方が上だ、それでも至近距離での戦闘ならメルトリリスに分がある

 

少しの打ち合い、両者共に決定打を打てずに状況は拮抗している。

先に動いたのは、打開する策を持っていた慎二。

 

「これじゃ埒が明かない…ライダー」

 

「いいねぇ、任せな!」

 

慎二が放ったコードキャストをメルトリリスが躱す、その隙にライダーが回転しながら銃を乱射する。

 

まずい…距離をとられた、砲撃が…いや、

違う…なにか…

 

「ちっ!まぁ、そう来るわね」

 

メルトリリスがこちらまで後退してくる

これまでの砲撃とは違う、

宙を埋め尽くす無数の海賊船…

決戦が始まった以上、慎二も全力を出してくる…

わかってはいたけれど、

ここまでとは…

 

こんなものを、相手にしなければならないなんて…

目の前に広がる壮大な光景に知らず怖気付いてしまう

 

「…白野、最初にも言ったけれど貴方と私なら負けはないわ。だから、好きにやりなさい。貴方の思う最善を、私に託しなさい。どんな命令だろうと私はやり遂げてみせるわ」

 

メルトリリスの言葉に背を押される

そうだ…ここまで来た以上、やれるだけを

 

「ああ、やってやろうメルト!」

 

「ええ、任せなさい」

 

★★★★

 

★★★★

 

結局、モラトリアムの間あのサーヴァントについて分かったことは何一つ無い。

それでも、一つ確実に言えることがある。

あのサーヴァントは、何故か分からないが力を出せていない。岸波が余程しょぼいのか知らないが霊基出力が酷く落ちているらしく明らかに動きが意思に追いついていない。

あの様子じゃまず間違いなく宝具は撃てない、だからこっちが宝具を使えば勝負の流れはこっちのものだ。

 

「見せてやれよ、エル・ドラゴ。僕達の力の程ってやつをさ」

 

「アイアイサー。さぁ!野郎共、狩りの時間だ。嵐の王、亡霊の群れ、ワイルドハントの始まりだ!」

 

ライダーの号令と共に宝具による一斉砲火がはじまる。

 

[黄金鹿と嵐の夜]

黄金の鹿号を旗艦とした無数の艦隊を展開し砲撃と火船を合わせた圧倒的物量と火力による総攻撃

 

対抗策は、

遠坂凛が言ったように事前に大量の物理障壁を用意して耐え凌ぐか、

それを凌ぐ圧倒的火力でなぎ払う、

と言ったところか。

 

なのに…

 

「馬鹿か…あいつ」

 

「いいねぇ、正面突破かい!ホント、アンタらと戦ってると飽きそうにないね」

 

メルトリリスはライダーへと駆け上がってくる

飛んでくる火船や飛び散る瓦礫、周囲に展開された海賊船を足場にして…

 

どうかしてる、無理に決まっている。

いかに岸波の戦術眼が優れていようとろくなサポートも出来ない状態で宝具を正面突破する?有り得ないだろ…

 

それなのに…

少しづつ、少しづつ距離を詰めてくる

 

「くそっ、何やってんだライダー!さっさと撃ち落とせ!」

 

ライダーに加勢しコードキャストを放つ。

既に何度か被弾している。

それなのに…

 

立ち上る煙の中からメルトリリスが飛び出す、

ライダーの宝具をメルトリリスは突破してみせた

 

「近くで見ると案外ボロいのね!確か、ペリカン号だったかしらっ!!」

 

安い挑発、でも…

 

「言うじゃないか!吹き飛びなぁっ!!」

 

ライダーはその挑発に乗って砲撃を放つ、

放たれた砲弾は同じく放たれた斬撃によって爆発し視界を遮る

 

「ライダー…おまえっ」

 

「分かってるっての、次弾装填!砲撃用ー意!」

 

メルトリリスが黄金の鹿号に着地すると同時にライダーへと駆ける。

 

問題ない、ライダーの砲門はあのサーヴァントを捉えている。この距離なら岸波は指示を出せない、

だから…

 

<撃て、ライダー>

 

「無賃乗船はお断りだ!乗るならしっかり払っていきなっ!」

 

砲弾がメルトリリスに直撃する

それでも…

メルトリリスは止まらない

 

「なっ、イカれてるのかっ!?」

 

直撃の寸前、コードキャストで回復した?

だとしても砲撃喰らってそのまま突っ込んで来るかよ普通っ

 

メルトリリスの一撃がライダーを斬り裂く、

しかし直ぐにライダーがメルトリリスを蹴り飛ばす。

 

問題ない、傷はそう深くない。

あの程度ならなんの支障もない、

既にあいつは瀕死だ、ライダーの宝具を突破するのに何度も被弾して、いくらコードキャストで回復したところでたかがしれている。

もうまともに戦えるだけのHPは残ってない、

だから…

 

/gain_str(32)

 

コードキャストによる火力の上昇、

この一撃で終わる

 

「よくやったよ、この僕相手に一撃入れたんだ。

でも、それで終わりだっ!ライダー!!」

 

油断、

確信した勝利が判断を鈍らせる

 

「さぁて、それじゃあ派手に散らしなっ!!」

 

ライダーの叫びと共に鳴り響くはずの勝利の銃声…

しかし…それが鳴ることはなく、メルトリリスへと向けられるはずの銃口はあさっての方向を向いて…いや、ライダー自身不自然な体勢のまま硬直している

 

「ライダー、なにやって…」

 

「はっ、舌なめずりするには早いんじゃないの?…グリッサード!!」

 

メルトリリスがライダーへと滑走する

 

油断した、

互いの実力差が明白だったから、

全力を、総てを出し切った上での一撃だと、

そう慢心した

コードキャストはまだ使えない

コードキャストの連続使用はムーンセルにより制限されている

防げない…

まずい、このままじゃ…

 

必死に押し殺していた恐怖が、

現実としてその目に映し出される

 

「ライダーっ!!」

 

慎二の悲痛な叫びが響く中、

メルトリリスがライダーの心臓を貫いた

 

★★★★

 

★★★★

 

黄金の鹿号が地に落ちる

 

どうなった?

勝ったのか?

 

<メルト、無事か?>

 

ゆっくりと地に沈んでいく船に駆け寄ると

甲板からメルトリリスが降りてくる

 

「言ったでしょう?負けはないって」

 

普段の不敵な笑みを浮かべそう答えるメルトリリスに少し安堵していると…

 

「何やってるんだよ!立てよライダー!!」

 

そんな慎二の叫び声が響く

解ける様に地に沈んでいった黄金の鹿号の後には、

慎二と地に伏したライダーが残されていた

 

「無茶言うんじゃないよ、アタシゃ心臓を貫かれたんだ普通ならとっくに死んでるところさ」

 

ライダーの体を構成する霊子がゆっくりと解けていく

 

「ふざけるなよ!!こんな所で負けてたまるかっ!!

あぁ、そうだ僕は負けてない!僕のせいじゃない!」

 

「やめときなよ、シンジ。

アタシらは負けたんだ、言われただろ?これ以上は恥でしかないよ」

 

「っ!お前のせいで負けたんだぞっ!なに偉そうに…」

 

そんな慎二の声を遮るように、

決戦場が赤色の障壁によって分断される。

 

「は?…なんだよ、これ。

…うわぁっ!ひぃっ…どうなってんだよこれっ!」

 

慎二の悲鳴につられ目を向けると、

慎二の体がライダーと同じように少しづつ解けている

 

「なんなんだよっ!これっ…」

 

「シンジ。アンタも知ってるはずだろ?

この聖杯戦争で生き残れるのは勝者だけだ、

負けたアタシらに待ってるのは当然…」

 

「そっそんなの、ただの脅し文句だろっ!

こんな…ああっ!!」

 

必死に迫り来る死を否定しようとする慎二に現実を突きつけるかのようにその体は崩れていく

 

「アタシも最初に言っただろ、

『悪党の最後ってのは勝っても負けても、笑っちまうほど惨めなもんだ』って。

こんだけ立派に悪党やれたんだこの死に方も贅沢ってもんさ。ま、それでも案外悪くなかったね。それなりに愉しかったよ、シンジ」

 

そう言ってライダーは笑いながら消えてしまった

残された慎二とふと、目が合う

 

「そっそうだ。なぁ岸波っ、助けてくれよ…僕達友達だろ?」

 

慎二の悲痛な願い、

だが…自分に出来ることなど何も無い

自分が口を開くよりも早くメルトリリスが話し始める

 

「冗談じゃないわ。あれだけ偉そうにペラペラと大口叩いておいて負けたら命乞いをするわけ?

ホント、自分勝手で幼稚でどこまでも救いようのない…惨めにも程があるわ。私なら…きっと自殺しているでしょうね」

 

酷く残酷で、現実を突きつける言葉

メルトリリスの顔には普段、戦闘の際にみせる愉しげな笑みはなく、ひたすらに嫌悪に満ちていて…

 

「な、なんなんだよお前は!偉そうに、お前に何が分かるんだよっ!!無名のサーヴァントの癖にっ!!」

 

「ギャーギャー五月蝿いわね。敗北してゲームチャンプとしてのプライドが傷付いた?ああ…違うわ、あなたにそんなプライドないわよね、だってあなたはゲームチャンプじゃないもの。あなたはチャンプじゃなくて万年二位…いい加減、夢に呆けてないで現実を見なさい。あなたは負けた、これから死ぬのよ。わかった?ゲームチャンプさん?」

 

「っ…!!あ、あぁっ…嫌だっ、僕はまだっ…八歳なんだぞっ…こんなっ…こんな、まだ僕はっ…」

 

僕はまだ、何も残せていないじゃないか

 

そんな叫びを残して慎二は消え失せた

 

現実を見ていなかった者

殺し合いという事実を理解していなかった慎二

だけどそれは…慎二だけでなく、

自分もまた、今になって聖杯戦争という残酷な現実を正しく見ることが出来たのだ

友人だった男が目の前で消え、ようやく理解した

 

これはゲームじゃない、

128人の魔術師が聖杯を奪い合う、本当の殺し合い。

 

ようやく現実味を帯びたそれは、

重く自身の背にのしかかる

 

勝者しか生き残れない

途中離脱は許されない

 

「っ…はぁっ…」

 

酷い吐き気に襲われてしゃがみこむ

 

あぁ…これは、

この感覚を自分は知っている

 

全ての運命を変えたあの日、

必死に抗った…死の恐怖

 

あと六回…

今回は運良く勝つことが出来た、だが次もそうとは限らない。

 

こんなものを抱えて自分は戦えるのだろうか

 

記憶さえ戻っていない自分が…

 

本当に生き残れるのだろうか…

 

意識が闇へと沈む

体にまとわりつく恐怖はゆっくりと全身を飲み込んで…

 

ふと、背中に掛かる現実的な重みに意識を引き戻される

顔を上げると、メルトリリスが自分の背中に身を任せのしかかっている

 

「…メルト?」

 

「私…自分で言うのもなんだけど、かなり頑張ったと思うの。ただでさえレベルは下がってスキルもまともに使えないっているのに、マスターは何とか正面突破しろだの、どうにもならないから死ぬ気で耐えてくれだの、めちゃくちゃ言ってくれちゃって。おかげで体はボロボロ、ひどい有様…それでもしっかりやり遂げたって言うのに賞賛の言葉の一つもないなんて…あんまりだと思わない?…ねぇ?白野?」

 

グイグイと背中に体重をかけられる

 

あぁ…でも、そうだ

最初から自分は何もしていない

あの時も…死の恐怖に震え、必死に伸ばした手を…

彼女が取ってくれた、彼女が手を引いてくれた

 

記憶の戻らない自分を、

まともに支援することも出来ないどころか足を引っ張っている自分を、

どうしようもなく無力な自分を信じてその身を託してくれた彼女

 

そうだ…彼女も同じだったはずだ

まともに力が出せないのに、

ろくな支援も受けれないのに、

それでも彼女は、自分たちの勝利を信じていた

 

こんな自分を信じてくれた

今も、ボロボロの体でなお自分を気遣ってくれている

 

それなのに、

こんな所で怖気付いていていいのか?

いや、そんなことは許されない

 

彼女が自分の手を取ってくれる限り、

彼女が手を引いてくれる限り

 

死ぬのが怖い?

そんなのは当然だ

最初から分かっていたことだ

その上で…自分は

 

彼女の期待に応えたい

 

せめて彼女が無理だと諦めるその時まで

進み続けなければ

 

「ありがとう、メルト」

 

★★★★

 

★★★★

 

自分でもらしくない事をしているってことくらい分かってる

 

本当に自分でもどうかと思う

 

死の恐怖に怯える者に、

あろうことか「私は頑張った、だからうずくまってないで私を賞賛しろ」だなんて

 

あまりにも自分勝手で幼稚な、

なんの慰めにもなっていない独りよがりの言葉

 

きっとあいつならもっと気の利いた言葉をかけたんでしょうけど

 

私にはこれが精一杯、

だけど…私にとってこれは大きな一歩、

少なくとも彼が笑ってくれたのだから、

きっとこれは意味のある一歩なのだ

 

「あの…メルトリリスさん?そろそろ降りてくれたり…?」

 

「…はぁ?聞いてなかったの?私、とても疲れたと言ったのよ?このまま貴方がおぶって行って」

 

そう言うと、「そうですよね…はい」なんて呟いてフラフラと立ち上がって歩き始める

 

ズルズルと私の足を引きずりながらゆっくりと歩く姿が、

どうも可笑しくて

 

「ふふっ、白野?女の子一人くらい軽々おぶれなきゃモテないわよ?」

 

「いや…190ある女の子を軽々は無理じゃ…いったぁ!」

 

思いっきり彼の後頭部に頭突きをする。

 

相変わらずデリカシーのない人、だけど…

 

「まぁ…いいわ、今回は大目に見てあげる」

 

脚の装具を外す

 

異形の肉体として私に結びついていたそれは、

どうしてか彼に召喚された際に、装備品へと変わっていた。

スキルが制限されていることに関係あるのか…

理由は分からない、けれど…

 

なんて素敵な夢…

 

彼の隣に、異形の怪物ではなく

一人の少女として立てるなんて

 

どうしようもなく

甘く、幸せな夢…

 

『夢に呆けてないで現実をみなさい』

 

自身が吐いた毒に自分の体が蝕まれる

 

分かってるわよ…そんな事

分かってる

 

だけど…

 

それでも、私は…

 

 

 

揺れる背の上で少女は願う

 

もし、叶うなら

もし、許されるなら

 

この幸せな夢が

 

最後まで続きますように




◾︎メルトウイルス EX
不明なメラーにより出力低下
・対象から得られる経験値が上昇する
・対象を一時的に麻痺させる

ex/recordの追加ルートはなんだと思います?

  • レオルート
  • 自鯖エルキドゥ
  • ccc関連
  • その他新規ルート
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