fate/extra melt blossom   作:もっこもこの埃

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三回戦
道標


 

 

夢をみている

 

甘く優しい、幸せな夢

醜く、残酷な夢

 

また、貴方に逢えるなんて

多くの心を溶かし、多くの命を飲み込んだ

 

こうして貴方の隣に立てるなんて

愛しい人を、大切な貴方を傷つけた

 

本当に夢のようだわ

おぞましい毒の怪物

 

わかってる夢はいつか終わるもの

夢から覚めて現実を見なければならない

現実…

 

あの日からずっと私を写し続ける鏡

そこに写る怪物こそ本当の私…

わかってる

 

そんなことは…はじめから

 

けれど…

あと少し、もう少しだけ

貴方に私を見ていてほしい

 

怪物ではなく、

女の子として、私を…

 

そう願って私は必死に鏡を覆い隠す

 

『大切なものだ』

そう言った貴方、それが一体何なのか

記憶の、過去の無い貴方が一体何を得たのか

私には分からない

けれどあの時、貴方が見せた顔は…

決戦場に残された貴方の表情を、

私は知っている

ここではない、遠い世界

私ではない、私の記憶

ずっと見ていたから、

優しい人、本当にどうしようもなくお人好しな貴方

自分じゃなく、他人を想って苦しんでいる

何故そこまで他人を思うのか、

私にとって価値あるものは貴方だけ、

他の人間なんてどうでもいい

だから、私には貴方の痛みを理解できない

きっと、貴方は一人でその痛みを抱えて進み続けて、

その先で自分なりの答えを見つけるのでしょう

貴方は強い人だから

私とは、違う…

 

けれど…

なにか、せめて少しだけでも

貴方の役に立ちたい

私は、どうしたら…

貴方を役に立てるのかしら

 

 

★★★★

 

 

★★★★

 

 

三回戦/一日目

 

 

朝、目を覚ますと

枕元に置いていた携帯端末が無い、

身を起こし見回してみても見当たらない

いや、それだけじゃない

メルトリリスの姿もない、

霊体化しているのでもなく、困惑が一瞬で焦りへと変わる

なにかあったのか、そう考えて立ち上がろうとした瞬間、マイルームの扉が開く

 

「まったく、人使いが荒いわね…って

あら白野、起きたのね。これ、借りたわよ」

 

メルトリリスは両手で携帯端末をこちらへと投げる

上手く動かない手でぎこちなく投げられたそれは、

自分の手元ではなく少し離れた布団の上へ落ちる

 

そんな様子を見ていたメルトリリスは少し怪訝な表情を浮かべた後、自分の傍へと腰を下ろす

 

「メルト、何かあったのか?」

 

「別に、貴方の寝顔を眺めるのも飽きたし、少し暇つぶししてただけよ。アルバイトってやつね。」

 

アルバイト…そういえば言峰がそんな貼り紙を作っていたような

 

「そうだ…これ、あげるわ」

 

メルトリリスがどこからか取り出した物をこちらへ差し出してくる

これは…人形?

見覚えのあるその姿は間違いなく、

目の前にいるメルトリリスそのものだ。

パッと見ただけでもよくできているのが分かる

 

「これ…」

 

「よくできているでしょう?

手に入れるのに苦労したわ。アクション映画一本分、具体的には3レベル分の活躍をしてきたわ」

 

ドヤ顔を浮かべるメルトリリス

確かにとても良くできているのは自分にも理解できる

 

「…えっと、ありがとうメルト」

 

くれるというのなら、ありがたく貰っておくとしよう

受け取った人形を枕元に座らせる

 

「さ、それじゃ今度は私の番ね」

 

うん?

私の番…それはつまり

 

「あら、タダであげるなんて言ってないけど?」

 

「…知ってると思うけど、俺あまりお金ないよ?」

 

「はぁ?お金なんていらないわよ、いつかの海賊じゃあるまいし。対価は一つ、この戦いの賞品、聖杯にかける願いを一つ追加しなさい。別に、大したことじゃないわ。

ドールショップを建ててほしいの」

 

ドールショップ…

 

「そう、ドールショップ。

私ね、人形が好きなの。えぇ、マニアと言っていいほどにね、それもただのマニアじゃないわ、正直言って偏執的とも言える程よ。だから、そう夢と言っても過言ではないわ、巨大なドールショップを作る、世界中からあらゆる人形を集めた最大規模、最高品質の大型ショピングモール…勿論人形専門のね。そして何よりも、既製品の販売だけじゃなくオーダーメイドでの特注品も受け付ける。これは絶対外せないわね。

そして、そのために世界トップレベルの職人を集める、せっかく自分好みの人形を頼んだのに出来がお粗末じゃ笑えないわ」

 

興奮した様子で語るメルトリリス、

彼女の意外な一面、はじめて見るそれは、

自分にはどこか、とても輝いて見えて…

 

「そういうわけよ、ムーンセルを使えばとても簡単なことだわ。さてそれで、私の夢、かなえてくれるのかしら?白野?」

 

ああ、そうか

また、彼女は自分を気遣ってくれているのだ

先の見えない自分に、目印をくれた

目的を…願いを託してくれたのだ

 

「わかった、任せてメルト。必ずその夢を叶えるよ」

 

「ええ、必ず…勝って叶えなさい?

約束を破るなんて、最低よ?」

 

そう言ってニヤリと微笑むメルトリリス

 

ああ、本当に凄いとしか言えない

英霊、そう呼ばれる者は皆なにかを成し遂げた者なのだろう、まさに英雄その行いが善であれ悪であれそれぞれが確固たる自分を持っている

自身というものが無い、過去が欠落した自分には、

それが余計輝いて見える

いつか…その輝きを、自分も手にすることが出来るのだろうか

 

そんな、朝のやり取り。

 

 

二階掲示板にて対戦相手の発表を行います

 

対戦相手の発表を告げる知らせに、

自分たちはマイルームを離れる

 

★★★★

 

 

二階の掲示板に貼られた白い紙、

そろそろ見慣れた光景

 

 

マスター:岸波白野

マスター:ありす

決戦場:三の月想海

 

 

ありす…

それが次の対戦相手の名前

 

「今度はお兄ちゃんがあたしと遊んでくれるの?」

 

掲示板を眺めていると、後ろから声をかけられる

振り返ってみると、見覚えのある白い少女が立っていた。

幼い少女、どこかとても儚げな…

この子が次の対戦相手なのか

 

「そうねあたし(ありす)。今度は長く遊べるといいわね」

 

なんて声をかけようか悩んでいると、

黒い少女が姿を現す

ありすと同じ姿をした少女、

双子…だろうか

 

「うん、今度はいっぱい遊べるといいね!あたし(アリス)

 

「でも、今度は何をして遊ぼうかしら」

 

「鬼ごっこにかくれんぼ、やりたいことはいっぱいあるわ」

 

白と黒の少女はこちらを無視して、

二人で楽しげに話し続ける

 

「本当、迷ってしまうわね、あたし(ありす)

 

「だけど急いで決めなきゃね」

 

「そうだ、クイズとかいいんじゃない」

 

「そうねあたし(アリス)、楽しそう。じゃあ早速準備しなきゃ」

 

「そうしましょ」

 

そんなやり取りの後、

二人の少女は一瞬で姿を消してしまった

 

ありす…あんな幼い少女が一体何故こんな戦いに参加したのだろうか。

年齢や理由はどうあれ、ここにいる以上は一、ニ回戦を勝ち進んだマスターであることに変わりはない、戦うしかないのだ

 

そして、もう二人…

掲示板を見た後、顔を合わせすぐに別々の方向へと去っていった。

ああ、言葉は無かった、けれど理解できた

遠坂凛とラニこの戦いで彼女達のどちらかが死ぬ

その事実だけははっきりと…

 

 

★★★★

 

 

第一暗号鍵(プライマリトリガー)を生成

第一層にて取得されたし

 

 

アリーナの扉の前に、二人の少女が立っていた

 

「あ、お兄ちゃん」

 

「来たわね。それじゃあ始めましょ、あたし(ありす)

 

「そうね、あたし(アリス)。頑張ってね、お兄ちゃん」

 

「ええ、頑張って?大丈夫、簡単なクイズだもの」

 

そう言うと白黒の少女達はすぐに消えてしまった

 

「…なんなの?意味がわからないのだけど」

 

確かに、ありすが一体何をしようとしているのかいまいち分からない。

クイズ…と、言っていたが、いったい?

 

「ひとまずアリーナに行ってみよう」

 

「そうね」

 

アリーナへの扉をくぐる

 

 

★★★★

 

 

三の月想海/一層

 

 

「なによ、ここ。陰気臭いわね」

 

アリーナの内部は今までのものと違い、構成する障壁を植物が飲み込んでおり薄暗く、森のような景観になっていた

 

「…とりあえず、進んでみようか」

 

メルトリリスと共に森のようなアリーナを進む

 

なにか、忘れているような

本当に…このまま進んでいいのだろうか

けれど…

頭に浮かんだ少しの違和感はすぐに消えていった

 

 

アリーナを進みはじめて少しした頃、

後ろを歩いていたメルトリリスが話しかけてくる

 

「ねぇ、白野。ところでこれからどうするわけ?」

 

「どうって、それは…」

 

今、メルトスの言葉がなにか変だった様な…

それに、自分たちは何故こんな…

どうしてここにいるのか、思い出そうとすると頭に靄がかかる

 

ふと、足元に紙切れが落ちていることに気付き、拾い上げる

 

あなたの名前はなに?

 

「ッ!?…」

 

紙に書かれた文字を見た途端、酷い頭痛に襲われる

 

自分の名前、それは…

どうしてかそんな簡単な答えが思い出せない

 

白野?ちょっと、大丈夫?白野っ!」

 

メルトリリスが隣でなにかこちらに向かって叫んでいる

酷い頭痛で言葉が頭に入って来ない

 

自分の…なまえ

 

「おれ…は…」

 

分からない…

なにも…頭が…

 

白野っしっかりしなさい。…ああ、もう何だってこんなことになってるわけ?とにかくここを出た方が良さそうね、ほら白野っ手を握って、こっちよ」

 

メルトリリスがなにかを言いながらこちらに手を差し出してくる

分からない、彼女が誰なのかも、

酷い頭痛で彼女の言葉も何一つ理解できない

けれど、それは…

差し出された彼女の手を取る

 

真っ白に塗りつぶされた頭は、

どうしてか、そうすべきだと、

それだけは、はっきりと理解していた

 

 

★★★★

 

 

「はぁ…はぁ…っ…」

 

「…なんだったのよ、あれ」

 

メルトリリスに引っ張られなんとかアリーナから脱出することが出来た

 

「分からない。進むにつれて頭に靄がかかって、色々なことを思い出せなくなって」

 

「あのちびっこ共の仕業ってわけ?」

 

頭痛も治まり、靄がかかっていた思考も今ははっきりしている。

それに、自分の名前も、

 

「そうだ、そういえば…これ」

 

ポケットに入っていた、紙切れを取り出す

 

あなたの名前はなに?

 

そう書かれた紙、

これを見た途端、頭痛に襲われはじめた

 

「名前?…これがクイズってこと?」

 

「そうなのかも。でも、自分の名前がわからなくて…」

 

そう、あのアリーナの中で自分は名前すら忘れてしまっていて。それは、恐らくアリーナに入って最初に違和感を感じた時から思い出せなくなっていたのだろう

もし、これがありすの言っていたクイズであるならこれを解くことでアリーナの仕掛けも解除されるのかもしれない

しかし、自分の名前を真っ先に忘れてしまう状況でどうしたら…

 

「そう言えば、あの時メルトがなにか言っていたけどなんだったんだ?酷い頭痛で頭に入ってこなくて」

 

「なにって、ずっと貴方の名前を呼んでたのよ」

 

「俺の名前?」

 

自分はメルトリリスのことさえ分からなくなっていたのに、彼女は自分の事を忘れずにいたのだろうか

 

「俺はメルトのことも忘れてしまってたんだけど、メルトは俺の事を覚えたままだったのか?」

 

「…そういえばそうね、貴方のことは覚えてたわ。

けれど、私の声が届かないようじゃ意味もないわね」

 

そう、あの紙を見ると頭痛に襲われると考えていいだろう。

となると自分だけで何とか名前を答えなければ

 

とにかく、今日はもう休もう

明日、また対策を考えるとしよう

 




■ドールマニア
メルトリリスのSG。彼女の人形愛は異常なほどである、彼女自身偏執的と認めているように狂気じみており、彼女の猟奇的な行動は多くのプレイヤーをドン引きさせただろう

ex/recordの追加ルートはなんだと思います?

  • レオルート
  • 自鯖エルキドゥ
  • ccc関連
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