fate/extra melt blossom   作:もっこもこの埃

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幕間
分岐点


 

 

三回戦が終わった

優しい結末、彼らしいと言えばそうかもしれない

友人、そう彼は言った

聖杯戦争という殺し合いの中で、そんな冗談みたいなことを本気で言って危険を承知で手を差し伸べる

そんな彼を私はよく知ってる

 

ずっと見ていたもの

それが私の記憶じゃないとしても

知っている

けれど…

どうしても、

いくら努力しても、

私はソレを理解できない

私にとって人間はただの経験値、溶かして飲み込む錠剤、だからペラペラ喋っても不愉快なだけ

貴方以外の総てが私には無価値に映る

貴方が大切に拾い上げるものが

私には理解できない

できるはずがない

だってメルトリリスは完成されてる

そう、私は完璧よ

他人を必要としない、私だけで完結できる

 

だから、私は負けた

恋をしたから、貴方を欲しいと願ったから

 

間違いよ/知ってる

これは夢/分かってる

 

もう少しだけ…

 

 

ああ、それにしても

言ってくれるわね、あのチビっこ

 

少し前にサーヴァントが残した言葉が、

思いのほか頭に残っていることに少しの苛立ちを覚えながら、白野の後を歩いていると

 

「やはり、駄目か。さすがに決戦場のセキュリティは他とは違う」

 

人がはけて静かになった校舎にどこからか声が響く

声のした方向、

【視聴覚室】

閉じたドアからは微かに光が漏れていて

中に人がいる様子だから

とりあえず姿を現して白野の傍に立つ

勢いよく開かれたドアから、知っている顔が現れる

 

「っ…ユリウスっ!」

 

漆黒の衣装に身を包んだ男

前にくだらない奇襲をかけてきた暗殺者

そして、かつてBBを騙し白野を助けた男

 

正直、こいつのことはよく分からない

少なくともあちらの記録では白野に敗北して死んだはず

そしてここでも、見る限り白野を助けるようなことはないと思うのだけど

まぁ、なんにせよ裏でコソコソやられるのは不愉快なのだけど

 

「…貴様か、まだ生きていたとはな。運の良い奴だ」

 

そう言ってユリウスは白野の横を通り過ぎていく

 

「っ…はぁ、はぁ」

 

緊張が解けたのか息を整える白野を後目に、

普段閉じられている視聴覚室の中を覗いてみる

 

「白野、あれ」

 

白野を呼んで中を示す

一見なんて事ない場所

けれど、明らかにプロジェクターの周囲に魔力が揺らいでいる

すると、

 

「っ!?…くっ」

 

気になったのか白野はプロジェクターに触れ、その場に膝をついて崩れる

 

「ちょっと!何してるのよ!」

 

「ご、ごめん。よく分からないけど…大丈夫」

 

相変わらず危機感がないというか

そんな様子に少しだけ安心する

よく知っている彼

いや、それより

 

「白野、アレ。

あの根暗、ずいぶん好き放題してるみたいね?」

 

白野が触った拍子に起動したプロジェクターが、スクリーンに映像を映し出す

 

「これ、まさか」

 

「決戦場、ね。

まったく笑えるわ、王様が必死に公正であろうとする裏で平然と汚いことをする手下共、ホント気色悪い」

 

決戦場を映し出すソレは、

ちょうど誰かの戦いの様子を見せる

あれは確か…

 

「凛と、ラニ、か。いいのかこれ」

 

「いいわけないでしょ?こんなの見れたら情報筒抜けじゃない」

 

決戦では皆本気で戦うでしょうし、

戦い方はもちろん下手すれば真名までバレることになる

そんなのをムーンセルが許すわけない

それにしても、

 

「案外やるものね、凛も」

 

完全にセキュリティを抜けている訳じゃないのか、サーヴァントの姿はぼやけていてハッキリとは分からないけれど戦況は分かる

お互いの実力は拮抗しているようで、少しづつ凛の方へと傾き始めている

 

「悪くはないけど、さすがに単調すぎね」

 

しかし、ラニのサーヴァントが距離を広げると突然、激しく映像が乱れる

 

『すみません、師よ。任務続行不可能と判断し、最後の命令を実行します』

 

『なっ…』

 

映像が戻ると膨大な魔力がラニに集束していく、様子が見れる

令呪の使用、いやそれ以上に

 

『嘘でしょ?アトラスのホムンクルスってそこまでするわけ?』

 

『あー、こりゃやべーんじゃねぇか?嬢ちゃん』

 

『やばいもなにも、超やばいわよ。第五真説要素(エーテライト)よアレ、あんなモノ解き放ったら勝敗もクソもないじゃない』

 

ラニの身体には元々そういう機能が備えられていたんでしょう、手に入れられないなら壊してしまえ…分からなくはないけど無理があるわね

 

「どうなってるんだ、これじゃ」

 

「ええ、あのままいけば吹き飛ぶわね。もっとも、あそこまでやってもムーンセルには傷一つ付かないけど、せいぜい決戦場を消し去るのが関の山ね。ホント人間らしい滑稽な考えね」

 

「なっ…それじゃ」

 

『どうするよ、嬢ちゃん』

 

『決まってるでしょ!ランサー、頼んだわアレなら保護も働いてないでしょ』

 

ま、そうするしかないわね

あの状態なら決戦場のマスター保護は適応されてないでしょうし

それでも、無事じゃすまないでしょうけど

それより…

隣へ目をやり、白野の顔を見る

ああ、やっぱり

その表情は、

 

「メルト」

 

「…ええ、できるわよ。少なくともこことあの決戦場は繋がってる、令呪を使えば無理やり通り抜けることもできるわ」

 

そう、貴方はそういう人

この状況なら絶対に助けようとする

だから、言い出すよりも先に答えを出す

 

「でも、分かってる?行きと帰り、二つ令呪を使うことになるその意味が」

 

私は知っている、貴方の答えを

だからこれは、意味の無い質問

ただ、私が確認したかっただけ

自分の命綱とも言える令呪をかけるだけの価値が

あの女共にあるのか

貴方の口から、言って欲しかっただけ

 

「ああ、分かってる」

 

「そう…なら、覚悟しなさい。二人とも、なんて言ってたら私たちまで巻き込まれるわ。だから、助けられるのはどちらか一人、もう片方は諦めなさい」

 

白野は一瞬、考えたあと

令呪を起動する

体が引っ張られるような感覚とともに視界が黒く染まる

次の瞬間、今にも爆ぜそうな爆弾の目の前に移動していた

 

「なっ…」

 

「…っ!バーサーカー!」

 

突然の乱入者、どちらにとっても想定外のイレギュラー

そんな状況にもホムンクルスは最適解で対処する

 

「メルトっ!」

 

向かってくるバーサーカー、

こうなると助けられるのは

 

「白野っ、令呪を寄越しなさい!しのぎ切るわよ!」

 

直ぐに異常をセラフが感知して介入する、

だからそれまで時間を稼げばいい

 

令呪一画分のブースト、

それでもなお

 

「っ!!…冗談っキツイっての!」

 

迫る一撃をギリギリで躱す

冗談じゃない、こんなもの当たれば一撃で死ぬ、かするだけでも死に繋がる

今の私じゃまともにやり合えない

 

「だから、嫌いなのよっ!筋肉ダルマはっ!」

 

半ばヤケクソで放った一撃がバーサーカーを掠めると同時に、勢いよく弾き飛ばされる

 

「メルト!無事かっ」

 

「んなわけ、ないでしょ」

 

正直、これ以上はもたない

いくら、白野の指示があってもどうにもならない

でも、何とかなったわね

 

タイミングよく障壁が下りる

 

《警告》

異常を検知

対象者の強制退出を実行

 

赤い障壁と共にそんな警告表示が現れる

ただ…

 

「白野っ!!」

 

間に合わない

あれじゃ強制退出よりもはやく爆ぜる

セラフの障壁は意味をなさない

紙みたいに諸共焼かれることになる

令呪を使わせたのは間違いだった?

いや、でもそうしなきゃあの筋肉ダルマを止められなかった

このままじゃ…

 

「おーおー、カッコつかねぇなぁ坊主。

馬鹿げてるが、他に出来るやつもいねぇし。仕方ねぇ」

 

「ランサー?」

 

凛が呼びかけるよりも早く、

青い猟犬は駆け出した

障壁を越えて、その槍は…

 

「味方諸共ってのは気に入らねぇが、大した覚悟だ。冥土の土産に貰っていきな。ゲイ…ボルグッ!!」

 

高速で決戦場を駆け抜けた朱色の槍は、

臨界点に達したラニの心臓を寸分違わず穿ち抜く

 

「っ…いってぇ〜、あのヤロウ容赦なく持っていきやがった」

 

ランサーはその場に座り込む

その体はラニの心臓を貫く刹那、バーサーカーによって右半身を両断され既にその霊基は崩壊しはじめて

もう、あれじゃ助からない

それを白野も理解してる、だからその顔は…

 

「はっ、そんな顔すんじゃねぇよ。坊主には感謝してるんだ、かっこ悪い話だが正直、嬢ちゃんを守る算段がなくてな。おかげで助かったぜ」

 

強制退出が始まる中、一瞬ランサーへと手を伸ばそうとした白野へ声をかける

 

「ま、嬢ちゃんはめちゃくちゃ怒るだろうけどな。そこは大人しく受け入れてくれ、手を出したんだから責任はちゃんと取れよ?…しかしまぁ、俺こんなんばっかかぁ。

いや…ま、今回は当たりだったか。悪くなかったぜ、嬢ちゃん」

 

そんなことを言って笑ったまま、ランサーは光にのまれる

視界が白く染まる

体を引っ張られるような感覚と共に衝撃に襲われる

 

気づけば元いた視聴覚室へと戻っていた

 

「はぁ…白野、無事?」

 

「あ、ああ大丈夫。っ凛は!?」

 

そんな声に、傍らに目を向ける

床に倒れている凛にこれといった傷は見当たらない

 

「平気よ、気絶してるだけ。保健室にでも放り込んでおけばいいわ」

 

「そうか、よっかた…はぁ」

 

安堵の表情を浮かべる白野

本当に、どうしようもなく優しくて、お人好しな人

この夢もあと少しで終わるわ

だから、どうかせめて…その時まで

 




■決戦場のルール
1.サーヴァントはサーヴァントにのみ攻撃出来る
2.マスターはサーヴァントとマスターを攻撃出来る

ex/recordの追加ルートはなんだと思います?

  • レオルート
  • 自鯖エルキドゥ
  • ccc関連
  • その他新規ルート
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