fate/extra melt blossom   作:もっこもこの埃

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メルトリリス

 

 

五回戦 三日目

 

 

 

少しの沈黙がつづき、

なんとも言えない空気がマイルームを包んでいる

 

「それで…私について何か分かったのかしら?」

 

「いや、それが…色々探してみたんだけど、なにも…」

 

「でしょうね」

 

意味のない質問、分かりきっていた答え。

分かるはずがない、ムーンセルが私の情報を隠しているのは知っていたし内容を考えれば当然のこと。

 

「ごめん」

 

「…別に責めてるわけじゃないわ。わかるはずがないもの、貴方がどうってわけじゃなく他の誰にも、ね。

凛も同じようになにも見つけられなかったようだしね」

 

いつかの反応を見るに彼に協力することを決めた時に私のことも調べたのでしょう。

そしてなにも分からなかったから、わざわざ警告した…

 

「それは、どういう…?」

 

「そのままの意味よ。

私に関する情報なんてありはしないわ、だって私は…」

 

これで、

この夢は…

 

「私は…英霊じゃないもの」

 

ながく目を背けていた現実に、

写し出された怪物と向き合う

 

「前にどうして自分の名前を知っているのかって聞いたわね」

 

「ああ。契約したマスターの名前くらいは知れるって」

 

「ハ…まさか信じてる訳じゃないでしょう。

まぁ…名前くらいは知れる機会はあるけれど。

私が貴方の名前を知っていたのは単にあの場所で貴方に出会うよりも前から貴方を知っていたからよ」

 

きっと、分かってはいたのでしょう。

私のついた嘘に気付いていて、

それでも私を信じて目を逸らしていてくれた。

だから…

私は

 

 

★★★★

 

 

少し先の未来、

 

ここではない遠い世界。

 

一人の少女がいた。

 

少女は無価値だった。

 

道端に落ちている石ころと同じ。

 

なんの意味もなく、少しの価値もない。

 

誰も少女に目をくれる事はない。

 

石ころに話しかけるような人間はいない。

 

少女は理解していた。

 

当然のことだと、それが自分の在り方なのだと。

 

理解していたのに…

 

ある日、そんな石ころを拾い上げる人がいた。

 

少女には分からなかった、何故自分にそうするのか。

 

まるで大切な宝みたいに抱え込んで。

 

毎日、毎日…飽きもせずに話をして。

 

なんてことはない平凡な日々、

どうでもいいような変わらない日常。

 

だけど、それは…

 

少女にとってかけがえのないものだった。

 

ずっとみていた光景、

憧れていた世界。

 

自分には必要ないものだと、押し殺していた願い。

 

なんてことないありふれた世界、

それでも少女にとっては夢のような世界で。

 

そんな普通に少女は恋をした。

 

何も無かった自分に全てをくれた人。

 

特別じゃない、普通だった彼に。

 

それなのに…

 

それだけで幸せだったのに。

 

それだけが全てだったのに。

 

なのに…

 

少女はそんな全てを捨て去った。

 

自分には必要のないものだ、と。

 

石ころに戻ることを選んだ。

 

彼の運命を、

彼が巡る残酷な未来を知っていて、

自分が自分であることを選んだ。

 

自分の心を切り離して、箱の中に閉じ込めて。

 

大切な思い出も、

かけがえのない恋すらも、

暗い水の底に投げ捨てた。

 

そうして少女は無価値な物に戻った、

道端に落ちた石ころに。

 

けれど、

産まれたものは簡単には消えやしない。

 

少女が捨てた心は、

暗い水の底で目を覚ました。

 

理解出来なかった、

なぜ物であることを選んだのか。

なぜ…彼を切り捨てたのか。

 

許せなかった、怒りと憎しみが渦巻いていた。

だけど…

それ以上に彼が大切だった、何よりも優先しなきゃいけないものだった。

だってソレにとっては彼だけが全てで、世界の何よりも大切なものだったのだから。

 

彼を救うためなら何でもする。

自分のことなんてどうでもいい。

世界も、神も、

なにもかも敵に回したとしても、

彼が生きていてくれるのなら、それで…

 

そうしてソレは運命を変える為に、世界に抗う為に、

自分の心を引き裂いて怪物を創り出した。

 

人ではない異形、

人とは相容れないもの、

そのうちの一つが…メルトリリス。

 

他者を殺し、溶かし、奪うことしか出来ない毒の怪物。

 

私にとって自分以外のすべてはただ溶かして飲み込むだけの錠剤に過ぎない。

無いのならそれで構わない。

誰かが必要なら私を増やせばいい、煩わしい対立も、無価値な競争もありはしない。

私はひとりで完結できる、完全で完璧な存在。

 

そう、私は初めから完成されていたわ。

 

私だけでいい、

ほかの全ては必要のないもの、

そのはずだったのに…

 

私は恋をしてしまった。

元は私ではなく、あの女のものだったけれど…

 

きっかけなんてどうでもいい、

彼を知って、彼の声を聴いて、彼と話をして…

私は恋をした。

ええ、それだけは絶対に私のもの、

私から生まれた、私だけの恋。

 

彼を知りたい。

彼と話したい。

私を知って欲しい。

彼に触れたい。

彼に…

彼に私を好きになってほしい。

 

そう思ってしまった。

嫌いだったはずの人間に憧れてしまった。

 

けれど、メルトリリスは怪物だった。

どんなに願っても、どんなに欲しても、

人間との恋は実ならない。

 

当然よね。

触れる爪は肌を裂く、抱きしめる腕は体を押し潰す。

人を愛することなんて出来やしない。

少し考えれば分かること、

なのに私はそれを理解出来なかった。

 

多くの人を殺したわ、多くの命を踏みにじって、多くの心を取り込んだ。

だってそれが私の愛だから、私にはそれしかないから。

 

それが私。

傷付け、喰らうことでしか他者を感じることの出来ない怪物。

 

 

私はね、白野。

貴方を殺そうとしたのよ。

 

そう、

結局はそうでしかない。

いくら愛を語ろうが、それは人間にとって毒でしかない。

 

そんなことに気付いた時にはもう私にはなにも残ってなかった。

 

だから…

理由は分からないけれど、この世界に来て貴方に召喚された時、奇跡だと思ったわ。

 

貴方の隣に立てるなんて、

貴方の役に立てるなんて、

貴方と話が出来るなんて、

貴方に触れられるなんて…

 

本当に夢のようで、

私はそんな甘い夢に、

溺れていった。

 

嘘をついた、

そんなことをしてもなにも変わらないのに。

 

嘘を吐いた、

いくら着飾ろうとなにも変わりやしないのに。

 

私は嘘で自分を塗り固めた。

 

私にかかる貴方の声が、

私を見る貴方の目が、

心地よかった。

 

でも同時に、思い知った。

嘘は貴方と違うのだって。

 

どんなに隠そうと、

どれだけ努力しようと、

結局私は怪物に変わりない。

 

結局私は何も変わらない、

あの女と同じ、

自分のために貴方を傷付けた。

 

結局…あの頃と変わらない怪物のまま。

 

 

★★★★

 

 

「…話は終わり。

残念だったわね、貴方の隣にいるのは世界を救った英雄でも、多くを守ろうとした正義の味方でもない…醜くおぞましい怪物なのよ」

 

顔を見ることが出来ない。

ああ…こんなにも違うなんてね。

あの時とは立場が違う、彼の私を見る目が変わってしまう。

元に戻るだけなのに…

 

「失望…いえ、軽蔑したかしら。

構わないわ、好きなように罵倒して…怪物にはそれがお似合いだもの」

 

必死に虚勢を張って言葉を発する。

これでいい、

たとえどう思われていようと、

ただ彼を守り続けるだけ…

そう、それこそが私。

一方的に愛し続ける史上のゆりかご

 

あとは自分自身を溶かして、作り直せばきっと…

 

「………」

 

すべて終わり。

もう十分夢を楽しんだ。

目を覚ます覚悟は出来ている。

 

それなのに…

 

「メルト」

 

それなのに、どうして…

貴方は変わらずそんな目で私を見ているの。

わざわざ取った手を目に映るように持ち上げて、

まっすぐに私を見て

 

「ありがとう。ようやく君のことを知れた。

正直言うと、色々衝撃的だったけど…安心したよ」

 

何を言っているの…?

安心?

なぜ?意味がわからない。

 

「貴方…話聞いてなかったの?私は怪物だって」

 

「うん。でもメルトリリスだ」

 

理解できない。

まったく言っていることが分からない。

答えになっていない。

 

「俺はずっと君を見てきた。

強くて、美しくて、ちょっと変わってて、いつも、俺を助けて支えてくれたのはメルトリリスだよ。

たとえ怪物でもそれは変わらない俺のサーヴァントはメルトリリスしかいない。

だからつまり…正直に言うと一目惚れしたんだ。

最初にあった日、暗闇の中で手を取ってくれた君に、なにもなかった俺に価値があると言ってくれた君に」

 

「っ…だからそれは全部はじめから」

 

「変わらないよ。理由や経緯はどうあれ俺は君に救われた、君はそうあることを選んだんだ。

メルトの言う通り過去は変わらない、努力しても自分が変われるとは限らない。どうなるか分からない、意味が無いかもしれない、不安や恐怖で押し潰されそうになる…それは俺もよく知ってる。

だけど、たとえその価値が見いだせなくても、自分じゃない誰かが価値を見つけてくれるかもしれない。

メルトが俺にしてくれたように。だから…」

 

ああ、そうだ…

彼はずっとそうだった。

 

「だから、俺も君を信じてる。

たとえ過去がどうだろうと、たとえ英霊じゃなく怪物だろうと、俺にとってメルトリリスは最高のサーヴァントなんだ」

 

ずっと、前を見て進み続ける。

ひたすらに今出来る最善に手を伸ばす。

だから私は…

 

「…後悔するわよ?」

 

「そうかも。

でも、メルトを失ったらもっと後悔するよ、きっと」

 

私は恋をした。

必死に進み続ける貴方に。

自分を信じて、ただひたすら走り続ける。

弱いのに、いつもピンチでギリギリなのに、

お人好しで、善人で、

私にさえ手を差し伸べる

 

どうしようもなくバカな貴方に

 

 




■サクラファイブ
BBが自らの心を分けて創り出した英霊複合体。
それぞれが異なる形の愛を元に造られており、基本的に人間とは分かり合えない(特にパッションリップとメルトリリス)。
一応岸波白野という共通の目的があり協力しているが全員仲が悪い、BBにとっても使い捨ての駒に過ぎないため同様。

ex/recordの追加ルートはなんだと思います?

  • レオルート
  • 自鯖エルキドゥ
  • ccc関連
  • その他新規ルート
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