fate/extra melt blossom   作:もっこもこの埃

4 / 40
はじまり 2

 

学校の屋上、そこには…

一際目立つ赤い服を着た少女が目に映る

彼女は…

 

「一通り調べてみたけどおおまかな作りは予選の校舎と変わらないのね」

 

ブツブツとつぶやきながら壁や床をベタベタと触っている美少女…あれはきっと遠坂凛だろう。

直接の面識は無いが噂には聞いたことがある、

容姿端麗、成績優秀な月海原学園のアイドル。

あぁ、そういえばこっぴどくフラれたと思わしき慎二にずいぶんと愚痴られた記憶もある。

 

けれど、それらのイメージはすべて予選のために与えられた仮初の設定であり、

今ここにいる彼女は違う

聖杯戦争、128人による殺し合い、

未だ実感を持てないその事実を彼女のまとう空気が自分に突き付けてくる

ふと、こちらに気付いた彼女が近づいてくる

 

「あら?…ねぇ、そこのあなた。そう、あなたよ。

ちょうどいいは、まだキャラの方はチェックしてなかったのよ。ちょっと動かないでね」

 

不意に伸ばされた彼女の指先が頬に触れる

 

「へぇ、温かいんだ。生意気にも。

…あれ、おかしいわね。なんだか顔が赤くなっているような気がするけど」

 

彼女の顔がぐっと近づいて、

もう少しで鼻がくっつきそうな程に…

顔にかかる吐息は温かく、ベタベタと無遠慮に方や腹を触る手は細くしなやかで、先程までまとっていた空気がまるで嘘のように感じ

拒む事も出来ずただじっと彼女の白い指を見つめていた

 

「ちょっと…人のマスターにベタベタ触らないでくれる?」

 

不意に声が響く

いつの間にか姿を現していたメルトリリスが横で

遠坂凛を睨んでいた

 

「へ…?マスター…ってえっ!嘘ッ!?」

 

彼女は驚いて後ろへと飛び退く

 

「サーヴァントって事は…要するに…。

ちょっと何笑ってんのよ!あんた気づいてたんなら言いなさいよ!……なっ、痴女とか言うな!!」

 

顔を真っ赤にして話している、姿は見えないがおそらく彼女のサーヴァントがなにやら茶々をいれたのだろう

 

「だいたい、そっちも紛らわしいんじゃない?マスターの癖してそこらのNPCと大差ない影の薄さってどうなのよ。ぼんやりした顔して、まだ予選の学生気分が抜けてないんじゃない?」

 

そう言われても、自身の記憶が戻っていない以上つい昨日まで学生やっていたら急に訳の分からない戦いに巻き込まれた状態で自分としても困っているのだ

そう口に出すと

 

「え…うそ。記憶が戻ってないって

それかなりマズイわよ。

聖杯戦争のシステム上生きて帰れるのは勝ち残った一人だけ、途中退出は許されてないわ。

たとえ今までの記憶が、経験が戻っていなくても貴方は……まぁ、でも私には関係ないか…どうせ、いつかは倒さないといけない敵なわけだし」

 

彼女の心配げな声が、急に醒めた。

ふと、なにかを思い出したかのように

所詮自分以外は皆の聖杯を奪い合う敵

そも心配する必要は無い、ライバルが消えるのならむしろラッキーというもの

 

「ま、ご愁傷さまとだけ言っておくわ。

あなた、本戦に来る途中どこかで魂の欠片でも落としたんじゃない?

ロストしたのか、リード不能になってるだけか、

後で調べたら?

ま、どちらにしてもその調子じゃ勝ち残るのは無理でしょうけど、あなた覇気がないっていうか、全体的に現実味がないのよ。

そんな状態で勝てる程甘い戦いじゃないわよ」

 

そう言って彼女はこちらに背を向ける

 

「は?何この女、自分から絡んできておいて

ムカつくわね、ここで串刺しにしてやろうかしら」

 

後ろでメルトリリスがなにやらブツブツと呟いているが、自分はただ沈黙するほかない

『このままじゃ勝てない』その言葉を否定する事は出来なかった。

自分は記憶喪失、という事だろうか…

いずれにせよ今はただ目の前の現実を受け入れるしかない

 

★★★★

 

屋上から続く階段を降り一階につくと、

不意に声をかけられた

 

「ここにいたか。

本戦出場おめでとう。

これで君は正式に聖杯戦争の参加者となった」

 

その声は、知っている

確か…予選の最後に案内をしていた…

声のした方向へ目を向けると

 

「こうして会うのは初めてだな。

私は言峰綺礼、この聖杯戦争の監督役を務めている。

なに、事を円滑に進める為のシステムのようなものだ、

私に限らず生徒会の者や間桐桜等も皆、過去に存在した人物を元につくられたAIにすぎん」

 

AI…そう言われれば確かに皆そう思えるような気もするが、

しかし…その服装、首にかけた十字架のネックレスは

もしかして神父なのだろうか

学校に…神父…

 

「先程も言ったが我々は過去の人物を模してつくられている

元の私は以外にも…どうやら、敬虔な信徒だったようだなもっとも、丁寧に教会まで備え付けられているのは私も驚きだが」

 

教会…そういえば本校舎の裏手にそんなものが建てられていた憶えがある

そういえば、わざわざ声をかけたということは何か用があるのだろうか?

 

「あぁ…本来、予選突破の際に伝えるはずだったのだが

話をする前に君が気絶したのでわざわざ出向いてやったのだ」

 

それは…

いや、本当に申し訳ない

 

「まぁいい…この様なことは本来無い、というより有り得ないのだが、君に何者からか、祝辞が届いている。

"光あれ"と」

 

どこの誰かも分からない、何者かから贈られた言葉

ただ…その言葉には"君に期待する"とそんな祈るような気持ちが込められていた

 

「さて、今日この日より、君たちマスターはこの先にあるアリーナという戦場で戦う事を宿命付けられた。

この戦いはトーナメント形式で行われる、

一回戦から七回戦まで、それぞれに六日間のモラトリアムが設けられその間に相手を殺す算段を整え、七日目に相手マスターとの最終決戦が行われ勝者は生き残り、敗者にはご退場頂くという訳だ。実にシンプルな仕組みだろう?

何か聞きたい事があれば伝えよう。

最低限のルールを知る権利は等しく与えられている」

 

聞きたい事、それは…

 

 

言峰神父から聖杯戦争のルールについてある程度の説明を受けた。

そういえば…

 

「対戦相手は一体いつ決まるんだ?」

 

聖杯戦争のルールは把握したが

肝心な事…自身が戦う相手がまだ決まっていない

 

「何?…ふむ、どうやらシステムにエラーがあったようだ。

まぁ、なにせギリギリの通過だったのでなこちらとしても

正直迷惑、もっと余裕を持って突破しろ、等と思ったりするが…なに、心配しなくとも明日までには手配しておこう」

 

「それはそっちの職務怠慢じゃ…」

 

酷い言われようである

咄嗟にでた抗議の言葉は容赦なく無視され…

 

「それから、最後にもう一つ。

本戦に進んだマスターには個室が与えられる。

君が予選を過ごした教室の隣、2-Bが入り口となっているので携帯端末をかざすといい。

さて、これ以上長話をしても仕方あるまい。

アリーナの扉を開けておいた、

今日の所はまず、アリーナの空気になれておきたまえ

アリーナの入り口は予選の際、君も通ったあの扉だ。

では、健闘を祈る」

 

そう言って言峰神父は立ち去っていく

アリーナ、か…

これ以上する事もないので、言われた通りアリーナに行ってみようか

 

★★★★

 

アリーナに行こうと思ったのだが

何となく再び遠坂凛の元を訪れている

 

「…あのね、さっきも言ったけど私たちは敵同士なの。

だからあんまり馴れ合って欲しくないのだけど

…はぁ、まぁ仕方ないか、記憶がないんだから少しでも情報は欲しいわよね。

いいわ、基本的な知識だけなら教えてあげる。それでいいでしょ?」

 

凛からこのセラフと呼ばれる仮想世界について、

そしてウィザードについての説明を受けた

 

「もういいの?

そう、アンタがいいって言うなら別に構わないけど。

じゃあ、これで終わり。もう私の所にあれこれ聞きに来ないでよね。私とあなたは敵同士馴れ合ってても良いことなんて一つもないでしょ?

あなたもこんな所に来てないで残された時間を大切にした方がいいんじゃない?」

 

そう言って彼女は再び背を向ける

確かに彼女の言う通りだ、

そろそろアリーナなに向かうとしようそう思い階段を降りると…

メルトリリスが話しかけてくる

 

「ねぇ、先にマイルームを見てみない?」

 

「マイルーム?」

 

「そ、これからそこで過ごすのでしょう?

ならどんなものか早いとこ確かめておきたいじゃない?」

 

確かにこれから拠点となる場所がどんなものか気になりはするが、しかし…言峰神父は2-Bと言っていたつまり…

 

「言っても教室でしょ?」

 

「そうだけど…もしかしたら中身はスイートルームかもしれないわよ?」

 

そうなのか?

確かにそうかもしれない

なんだか自分も気になってきた…

 

 

そんな期待は当然…あるはずもなく

 

「教室だね…」

 

「えぇ、教室だわ」

 

扉を開けた先には、

なんの変哲もない教室がひろがっていた

まぁ…わかってたけどね

 

ほんの少しだけ気を落としてアリーナに向かっていると

後ろから声をかけられ、もとい肩をガッチリ捕まれ捕獲された

 

「ちょーどいいところに!!

ねぇねぇ、白野くん…ちょっと先生のお願い、聞いてくれないかなー?」

 

振り返るとよく知る顔がいた

藤村大河、予選では自分のクラスの担任だった教師だ。

たぶん、恐らくだがこちらに拒否権はないのだろう…

 

「えっと…なんですか?」

 

「実はさー、竹刀をなくしちゃってね。

用具室に置いておいたんだけどいつの間にかアリーナに紛れ込んじゃったみたいなの、だから代わりにそれを取ってきて欲しいんだけど…あ、もちろんお礼も渡すよ、そうねー…あ!そういえば用具室に何故か新品の布団が置いてあったんだけどそれでどう?」

 

「任せてください!!」

 

とても素晴らしい提案に元気よく返答する

マイルーム、当分の間あそこで休息をとる事になると言うのにあれでは疲れが取れそうも無い

 

「ホント?ありがとー。それじゃあとりあえず一回戦の間に届けてくれればいいから、よろしくね」

 

先程とは打って変わって少しの期待を胸にアリーナへと向かう。

 

★★★★

 

廊下の先にある扉の前に立つ

すると、メルトリリスに声をかけられる

 

「白野、先に言っておくことがあるわ。

私、レベルが大幅に低下してる…なんならスキルもまともに使えない状態よ」

 

突然明かされた事実

レベル1、つまり大幅に弱体化しているという事だろうか

だとしたらいったい、なぜ…

 

「言っておくけれどレベルに関しては貴方のせいよ?

サーヴァントは契約したマスターの状態に引っ張られる、貴方が記憶喪失、要するにまったく経験がない状態だから私も同じ様に経験値がゼロの状態、つまりレベル1になったって事」

 

そうだったのか…

自分の記憶が無い事がそこまで影響していたなんて…

 

「まぁ、でも気にする事はないわ。

私、レベル上げは得意なのよ、だから…

貴方は精々私のリハビリがスムーズに進むようサポートしなさい」

 

そう言うとメルトリリスはさっさとアリーナへと入っていってしまう

彼女がそう言っているのだ、気にしていても仕方ない

とにかく、自分に出来ることをやらなければ

メルトリリスの後を追ってアリーナへと入る

 

扉を抜けた先、

そこには…

暗い闇のなか、青白く光る半透明の障壁で象られたダンジョンが広がっている

 

「ここが…アリーナ」

 

眼前に広がる光景に少し立ち竦んでいると

先に入っていたメルトリリスに声をかけられる

 

「突っ立ってないで、さっさと行きましょう?

レベル上げ、頑張らないと本当に負けるわよ?」

 

メルトリリスの言葉にハッとして足を進める

少し進むとフヨフヨと宙に浮かぶなにかを見つける

予選の時とは少し見た目が違うが…あれは恐らく

 

「あら、ちょうどいい雑魚がいるわね。

適当に蹴散らして経験値にしましょうか

さ、指示は任せるわ」

 

そう言ってメルトリリスは攻勢プログラム(エネミー)へ滑りだす

 

★★★★

 

アリーナの道中何度か見かけたエネミーを倒していると、

少しではあるが確かにメルトリリスの力が増しているのが分かる、レベル上げが得意、とは言っていだがなにかそういった能力でもあるのだろうか?

 

「なぁ、メルト。

君はレベルが上がりやすくなるスキルか何かを持ってるのか?」

 

「あぁ、そうね…本当は違うものなんだけど、得られる経験値を増やせるのよ」

 

やはりそうなのか、そんな便利なスキルを持っているなんて

…しかし、本当は違うというと…

 

「もしかして、本当はもっと凄いスキルだったのに…俺のせいで…」

 

「は?違うわよ、これは単に…

て言うか、貴方気にしすぎよ?前にも言ったけど私は特別なの、特別なサーヴァントを呼ぶには相応のハンデが必要になるのよ。雑魚を一方的に蹂躙しても面白くないでしょう?」

 

そういうものなのだろうか

 

「そういうものよ。

それよりあれ、貴方が探してる竹刀じゃない?」

 

メルトリリスの目線の先、

アリーナの終わり出口にあたるポータルの前の床に竹刀が無造作に転がっている

なんと、こんなあっさり見つかるなんて

 

「良かったわね、これで教室の硬い床で寝ずにすんだじゃない」

 

床の竹刀を拾い上げ、ポータルの上にのると

一瞬光に包まれたかと思うといつの間にか廊下の先、アリーナの扉の前に立っていた。

 

★★★★

 

アリーナを出て偶然すぐ近くに居た藤村先生に竹刀を渡し、

お礼の布団を受け取ってマイルームに敷いた後、

日が落ちて暗くなった校舎を一人歩いている

これから先の戦いへの不安か、突如放り込まれた非日常への興奮か、なかなか寝付くことが出来なかった。

 

ふと、いつの間にか教会の前まで来ていたようだ

校内に建てられた教会、なぜこんなものを、なにか聖杯戦争での用途があるのだろうか?

そんな疑問を抱いて扉を開き中へ入る

 

「おや、こんな夜更けに誰かと思えば

君がそんなに信心深かったとは驚きだ」

 

教会の中に響く声の主、

言峰綺礼、まぁ神父なのだから当然と言えば当然なのだが、

教会の中で一人佇む姿はひどくしっくりくる

 

「ここは…」

 

「うん?あぁ…残念だが君が望むようなものはここにはまだ無い。本来この場所は別の者が使うはずだったのだが手違いで今回は居ない」

 

神父の言葉に少しだけ違和感を感じる

 

「まだ?」

 

「くくっ…そう、まだな。

実の所、監督役と言っても大した仕事はないのだ。

しかし、だからといって何もしないと言うのも面白みにかける、よって私はここでちょっとした売店を営む事にした」

 

…まさか、教会の中で商売しようというのかこの神父、

本当に神父か?こいつ

 

「だが、まだ商品を入荷していいないのでな

故に君をもてなすこはまだ出来ないが、オープンした暁には必ず君の期待を超えると約束しよう。

なにせ、私には最強の購買店員という肩書きがあるのだからな」

 

神父じゃなかったのか?

というかそもそも、最強の購買店員とはいったい?

よく分からないがそこまで言うのならたまに覗きに来るとしよう

教会を後にし、マイルームへ戻る

そろそろ明日に備えて休むとしよう

 





◾︎メルトウイルス EX
不明なメラーにより出力低下
・対象から得られる経験値が上昇する

ex/recordの追加ルートはなんだと思います?

  • レオルート
  • 自鯖エルキドゥ
  • ccc関連
  • その他新規ルート
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。