思い付いたら離れなくなったので書いて投げていきます。
よろしくお願いします。
潮の香り。さざ波の音。ここは孤島の浜辺。
「オゥッ、オゥッ」
「ピィーー」
アシカやワシの様な鳴き声。ルドロスの鳴き声だ。
あーはいはい水ね、ほら飲みな。
首を下げれば、ルドロス達がスポンジ状の
「アオッ」「……」「zzz」
俺の息子であるロアルドロス達が見回りから帰ってきた。……一匹は相変わらず寝ている。お前ほんとにロアルドロスか?
それはそうと、お疲れ息子達。
息子達を労い、今日も俺を観測する気球を睨み付ける。
これが俺の──少し不思議なロアルドロスに転生した男の一日の始まりだった。
■
ん~~なんだぁ? 朝か?
パキパキとかガサガサといった騒音に叩き起こされる。しかも部屋まで揺れ始めた。
地震か!? ……はぁ?!
せっかくの休みだってのに最悪だ。
だが飛び起きて目を開けると、そこには白く光る壁があった。
何これ……ん?
壁に触れようと手を伸ばしたが、どうも様子がおかしい。そもそも視界がおかしい。
人間の視界より広い視野に、それに映る黄色い鱗と小さな鉤爪。
……まさかッ……!
本能の赴くままに壁に鼻先をぶつける。すると、いとも簡単に壁が割れた。
瞬間、外の空気が中に流れ込んできた。
砂の臭い? 海の臭いもする。
「ピィーー!」「ピィーー」「ピィー!」
聞こえてきた生き物の声。恐る恐る壁から顔を出すと、その鳴き声の正体が分かった。
黄色い鱗。独特な形状の尻尾。イグアナの赤ちゃんの様な姿のその生き物に、俺は見覚えがあった。
……ルドロス!?
ルドロス。モンスターハンター
モンハン3か……懐かしいな~。
俺が懐古に浸っていると、幼体らしき複数の生物が同じ方向に向かって吠え始めた。
ん? そっちに何が……デッカ!
幼体が吠えている方を見ると、巨大なルドロス達が俺達を見下ろしていた。
え、デッカ。いや俺達が小さいのか……いやヤバくね? 大丈夫なのこれ!!?
視界を覆うイグアナフェイスに慌てていると、そんなルドロス達の後ろから何かを咥えたルドロスがやって来て、俺達の前にそれを突き出してきた。
何これ……クンクン、生臭……魚か!
エサらしきそれの確認をしていると、兄弟姉妹らしき赤ちゃんルドロス達が我先にと砂を登りだした。
はえーすっごい。……じゃねえや! 食いっぱぐれる!
俺も慌てて砂を登る。体は人間からガラリと変わっているものの、何故か違和感なく動かせた。それならばこっちのものだと兄弟姉妹を蹴落とし足場にしながら、俺は一番にエサに食らいついた。
ろくに血抜きもされてない生魚! 味は……うんまい!! ぬ、追い付いてきたか兄弟姉妹! だがこれは俺のだ! うお、何をする推定母親ルドロス! 俺はまだ食い切っておらぬぞ?! ああ、分け合って食えってことね、了解──しない! 俺は腹が減っている! 身体も兄弟姉妹の中で一番デカいので消費カロリーが足りぬのだ! ええい邪魔をするな推定母親! ぬおおおおおっ!!!?
あれからエサを独り占めしようとして親らしきルドロスに幾度となく邪魔されながらも、エサの四分の一を喰らい尽くした俺は、周囲の観察を始めた。
ルドロスに転生したのはまぁ良いとして……ここ何処だよ。
周囲を見渡してみるがその景色に見覚えも無く、目に映るのはルドロスと砂浜と海ばかり。
……まあいいか、よろしくなァ!
ピィ! と愛らしい鳴き声を放った俺は、団子のように固まって眠る兄弟姉妹を放置して、追加の食事をするため波打ち際へと向かった。
食事の際に目を付けていたのだ! 見付けたぞ、名も知らぬ蟹よ!
四肢をダバダバと回し、ルドロスらしからぬ直線加速を決めて蟹を捕らえる。ルドロス達から変なものを見る目で見られているが、知ったこっちゃない。
へへへ、お前さん俺の掌よりデカいじゃないの。食いでがありそうで助かるぜ。ほら諦めろ! エサになれ! 自切しろ! したな! よし、いただきます! ……うんまい!
自切した蟹のハサミや脚をパリポリと食べる。何故か前世で食べた蟹より僅かに美味しく感じた。殻ごとかじり砂ごと咀嚼しているにもかかわらずこれだ。
頂点捕食者に、俺はなるッ!
この世界のグルメを楽しみ尽くす。この時の俺はそう誓ったのだった。
「オゥッ」
すると、推定母ルドロスがそんな俺の首を咥え持ち上げた。
何をするッ! 食事中だぞ!
そう言う意思を込めて「ピィー!」と鳴くと、何やら推定母ルドロスから意思が流れ込んできた。
──それ、毒。
……ほなしゃーないか。
何となくピリついてきた口から唾を吐きながら、俺は蟹の姿を脳に刻んだ。二度と食うかクソッタレ!!
■
そうしてあれから時は過ぎ。俺は立派なロアルドロスに成っていた。
いやー不安だったぜ? 人外転生はバチコイだけども、TSは性自認や立場的に嫌だったからなー。大きくなるにつれて首の未熟な海綿体が膨らんできた時はすっげー安心したぜ。
そして俺は自分が雄だと分かると、強くなるべく何よりもエサを食いまくった。幼少期は兄弟姉妹とエサを奪い合い、足りないと浜辺の蟹を食い、まだまだ足らぬと鉤爪や尻尾で貝を掘り当て、岩から貝を剥がして食べたりした。
ついでに魚やイカやウニにも手を出し。しかし、その殆どが毒で推定母親に止められたけれども。
ただ食い散らかしてただけじゃないぜ? 身体も鍛えに鍛えまくったんだ。
ルドロス達が泳ぐ側で高速で泳ぎ、砂浜を一日に何度も往復して足腰を鍛えたんだ。狂走エキスさまさまだ。
なに? なんでそんなに強くなろうとしてるかだって?
この世界はあのモンスターハンターの世界だぞ? 常に命の危険が付き纏うこの世界では、どれだけ強くても損にはならないからな。
そうして泳ぐ力を鍛える為に魚を追いかけて食ったりしたある日、俺は無駄に獲りすぎた獲物を時に兄弟姉妹に分け与えたりした。
いや、何かルドロスとかロアルドロスの視線が呆れから徐々に厳しくなってきてさ、理由を聞いたら俺はエサを食い過ぎらしいんだ。兄弟姉妹の分を。道理で兄弟姉妹が小さいわけだ。ごめんて。
お陰で兄弟姉妹には嫌われるし、エサに有りつこうと近寄ったらルドロス達に吠えられたりしてさ。唯一優しいのは親父であるロアルドロスだけだぜ。飛び乗って水吸いまくっても微動だにしないし。……てか親父ちっちゃくね? いつの間に縮んだのさ。……あ、俺がデカい。
……とは言え、俺はもう巣立ちの時らしい。誰よりも喰らい誰よりも鍛えた俺は、気が付くと親父を超えるほどの巨大なロアルドロスに成っていたのだ。
……実はこの独り言も気持ちの整理をするためにやってたんだ。だっていきなりなんだぜ!? いつも通り泳ぎを鍛えてエピオス引き摺って帰ったらさぁ! 兄弟姉妹を含むルドロスに出て行けコールされたんだよ!?
元人間で未だに人っ気が抜けない俺は超傷付いた。あれだよ。グループに戻ったら一人だけ露骨にハブにされた気分だ。……許さんぞあのクソガキ共が……!
……それはさておき、その時の俺は巣立ちなんてかけらも頭に無くてさ。親父にどうしてか聞いたわけよ。ロアルドロスの鳴き声で。そしたら親父は俺に向かって立派な者を見る目をした後、一吠えして水ブレスを放ってきたんだ。
それで漸く察した俺は、親父や母親、兄弟姉妹に向かって別れの一鳴きをした後、餞別にエピオスをぶん投げて渡して海に出たって訳よ。
……まあ、直ぐに浅瀬に引き返したけど。
だってやばいんだぜ!? 意気揚々と沖に出て「新天地やー!」って意気込んだは良いが、沖は冷たいし、四方は水だし遠くが見通せないから怖いしで。そこで初めて自分が海洋恐怖症だって分かったんだ。深蒼の海底見て泣いちゃったからね。
そうして俺は浅瀬を伝って泳ぎ、時に海の断崖から海底を見てチビッたり、時に崖から落ちて来たアプトノスをつまみ食いしたりして泳いだ。何かジャギィも落ちてきてて笑ったよね
そうして俺は、見覚えのある新天地に到着。
カツオが泳ぎ、石の柱が立ち並ぶ浅瀬。そして前世で幾度となくモンスターと戦った海岸。
……ここは……孤島だ。
モンスターハンター3のメインフィールド。孤島に俺はたどり着いたんだ。
評価と感想をよろしくお願いします。