ロアルドロスに転生した話   作:黒木箱 末宝

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評価、感想、ここすきをありがとうございます!

……ディアブロスに転生して女ハンターと乗り(意味深)する話書いてたら遅れました!


密猟者が現れた話

 とある薄暗い酒場。

 その奥の席で、怪しげな男達がある依頼書を片手に、酒を飲みながら薄ら笑いを浮かべていた。

 

【特殊ロアルドロスの狩猟】

 

「へへへッ……たかがロアルドロス一匹に40万z(ゼニー)とは……よっぽどの物好きか?」

 

 ヘラヘラ笑いながら、男──ピッチャーが言う。実際、ロアルドロスの狩猟金額に比べると破格の報酬金だった。だがそれには、大きな理由があった。

 

「お前……いい加減、獲物の事は調べろ。コイツは最近有名になりだした【大水獣】だ」

 

 神経質そうに眉間に皺を寄せる男──ブラコニーが言う。

【大水獣】──それは特殊ロアルドロスに付けられた渾名であった。

 現在観測されているロアルドロスの中で群を抜いて大きく、賢く、そして強い。 群れの数でさえ、観測史上初だと研究者が騒ぐ程の特異性を持つロアルドロスなのだ。

 

 最新の情報では、あの恐暴竜イビルジョーを単独で討伐したとの話も流れて来ている。

 

 そして、報酬金が高い理由が他にもある。

 

 【大水獣の狩猟依頼】……これはギルドを介さない依頼だった。

 

 そう、この男達は密猟者だ。

 しかし、ただの密猟者ではない。とある国々の貴族達に伝のある、実力のある密猟者達だ。

 

「今の所──いや、絶対に次が現れないって程の個体だ。大金を支払ってでも、こいつの素材や剥製を欲しがる奴がいるって事さ」

 

 店の最奥の上座から、この密猟者達のリーダーであるウィルダーが言う。

 

 実際に今回の依頼は、とある国の公爵からの依頼だった。

 

「へへへッ成る程な、それで俺達に話が来た訳だ……」

「ああ、そういう訳だ。だからこそ確実に獲物を捕らえるために──」

 

 ピッチャーに文句を言おうとするブラコニーを、リーダーであるウィルダーが止める。

 

「そうだ、獲物の情報は重要だ。任せたぞブラコニー」

「……了解、リーダー」

 

 ブラコニーは僅かに口角を上げ、それを隠すようにため息を吐きながら頷いた。

 

 そんな頼りになる部下に微笑みながら、ウィルダーは酒を一気飲みして立ち上がる。そして宣言する。

 

「よし、お前達行くぞ! 何時も通りとっとと終わらせて、パーッと豪遊しようぜぇ!!」

 

「「「「「「オウッ!!」」」」」」

 

 男の号令に、店にいた十数人のハンター達が立ち上がる。

 

「…………」

 

 そうして酒場からゾロゾロと出ていく密猟者達を、一人の男が見つめていた。

 

 

 

 ■

 

 

 

 ……なんか視線を感じる。

 

 ハンター達を撃退して暫く。その後も日常に変わり無く、時折視線は感じるものの、ハンター達が俺を捕らえようとする雰囲気は感じなくなった。捕獲を諦めたのか?

 

 それはそれとして、なんか用かハンターちゃん。

 

 モガの森のエリア10番。そこで日向ぼっこをしていると、ハンターちゃんがチャチャ達を連れて現れたのだ。

 ただ何故か、申し訳無さそうにしながらモジモジしている。何か欲しいものとかあるのか?

 

「……その、ハンター達から色々……あー、獲物を得たでしょ? アレの回収依頼を指名でされて……断れなくて……」

 

 あ、ふーん。そういう事か。あのハンター達も直接取りに来れば良いのに。

 

 それで、どれを返して欲しいんだ?

 

 ハンター達から獲ったポーチやらナイフやらが置いてある場所までハンターちゃんを案内する。そしてそれらを見た後に首を傾げて見せる。これで通じるだろう。

 

「その……全部返して欲しいらしいんだけど……」

「オウッ!?」

 

 ハァ~~~~!? あいつら無様晒し挙げ句にハンターちゃんに尻拭いを依頼したのかよ!……それはまぁ分かるがよぉ、俺の獲物を全部返せだとぉ!? ……舐めてるねぇ、舐め倒しているねぇ……!

 

 ハンターちゃんに伝わる様にトサカを立てながら、タンジアのあるだろう付近を睨みつける。

 

「あ、待って! 村は関係無いから!」

 

 すると、ハンターちゃんが勘違いして慌てだす。睨んだ方向にモガの村があるようだ。覚えとこ。

 

 取り敢えず違うと伝えるため首を振り、獲った大剣をアゴで指す。それで伝わったようで、ハンターちゃんは安心した様にため息をついた。

 

「村の事は気にしてないんだ……良かった」

 

 そりゃね? 今んとこモガの村に危害を加えられたこと無いし。何ならハンターちゃんの存在とか子供達からのサシミウオで心情プラスよ?

 

 トサカを下ろして話の続きを促す。ハンターちゃんが真正面から来たなら、何かしら話があったからなのだろう。……ロアルドロスと話に来るハンターとはいったい……?

 

「あのハンター達は交換を提示してきたの。ポーチとナイフ、大剣の交換を条件に、あの荷台一杯の肉と魚を渡すって」

 

 それであんなの引っ張って来たのか。ハンターちゃんの後を見ると、怯えた様子のアプトノスと、その言葉通りに生肉と魚で一杯の荷台がある。……何か荷台から研究者らしき人の頭が見えるが? あ、目が合った。

 

「……それで、どうだろう……?」

「…………」

 

 本来なら有り得ない事だ。返せと簡単に言うが、モンスターからすれば獲物の横取りのような物。ハンターちゃんはそれを理解しているから、あんな申し訳無さそうにしていたのだ。

 

 ……手ぶらで来たなら拒否していたが、手土産付きならまあ……良いか。アイテムポーチとハンターナイフが付いたベルトを牙に引っ掛け、大剣を咥えてハンターちゃんに渡す。

 

「え、良いの?」

 

 驚きつつそれらを受け取るハンターちゃん。……本当なら断るんだけどね、()()がね?

 

 不服そうに唸り声を上げつつ、俺は海を見るように誘導する。そこには、地や海のそこかしこで過ごすルドロス達がいた。

 

「え──ああ、うん」

 

 ドン引きした様子のハンターちゃん。チャチャやカヤンバ達が静かなのも、その光景を見て固まっていたからだ。因みに、見えてないだけでまだいたりする。エリア11番とエリア12にもいて、更にその周辺の海域にも……。

 

 そう、取引に応じる理由は、俺の群れが大きくなり過ぎたからだ。……本来なら雌を拒めば済む話だが、前世が童貞の経験不足で、雌のフリ方が分からないんだ。一度抱いちゃったから情も湧くし、その殆どが身重だから捨てるに捨てれないし……。

 

 そうしてルドロスの今後とか考えちゃったらね、もう全ルドロス養って行くしかないじゃん。……全く、モテ期が今世とかどうなってんだか……。

 

 ……ハンターちゃんとかが俺の見てないところでこう、何とか頼める? 無理そう?

 

 そんな情けない俺に何か言う事もなく、ハンターちゃん達は荷台を置いて戻って行った。

 

 群れの事……何とかしなきゃな……。

 

 

 

 何日か経ったある日の夜。その日は何時も観察しているハンターとは違う、俺を悪意を持って捕らえようとする不穏な意思を感じた。

 

 ……ん~? 何だろう、それぞれが弱いんだけど、いやに数が多くて、しかも何故か捉えきれない……ヤキモキするぜ……。

 

 ハンターなら狩りに来いよと思いつつも、俺は何時も通りに見回りに行く事にした。

 

 そうして到着したエリア5番だが、そこには異様な光景が広がっていた。

 地面は謎の霧で覆われており、その霧からは強力なマヒダケの香りと、生物由来の毒の臭いを感じる。臭いから察するに、麻酔ガスか何かだろう。

 

 これ吸ったらダメなヤツだな。幸いなことに比重が重くて沈んでるから、地面に顔を近付けて吸わなきゃ大丈夫だろう。

 

 周囲を確認すると、不自然に寝ているジャギィや、地面に密集しているおかしな様子の虫達を見付けた。ジャギィ達が生きてることから、この霧は麻酔ガスで間違いないようだ。

 

 ……ふむ、成る程。このやり方と数……ハンターじゃないな。……てことは、密猟者か! ……どれ、ちょっと誘ってみるか。

 

 あれれ~? ジャギィが無防備に寝てるぞ~?

 

 そうしてジャギィを嗅ぐふりをすると、遠くで笑い声が聞こえた。

 

 ガバガバじゃねえか。もっと隠れる努力をしろよ。

 

 ……ンン゛……うわ~、何か変だ~。やばい逃げなきゃ~……あ~~もうダメだ~~~……スヤァ……。

 

 そうして、麻酔ガスに気が付きつつ抵抗しようとするも手遅れだと、フラフラになった演技をして、息を止めて寝たふりをする。

 

「へへへッチョロいもんですねぇリーダー」

「ああ、特殊なロアルドロスって話だが、所詮はモンスターだ」

「……これで密猟が成功……何時もの事だが……うーん……?」

「へへへッ心配し過ぎなんだよブラコニー」

 

 ……マジで出てきやがった。チョロいのはどっちだよ。

 

 俺のてきとーな演技に騙されて、密猟者達がエリアの隅々からワラワラ現れ、好き勝手に言って笑い出す。

 

 ……結構いるな……ギルドは何してんだ?

 

 密猟者の数を足音などから数えていると、リーダーと呼ばれた奴が荷車を呼んだ。遠くからアプトノスの足音と車輪の音が聞こえてきた。無駄に用意がいいな。

 

 ……にしても、マスク越しに聞こえたくぐもった声が言うには、こいつらは密猟者らしい。それなら殺すか?

 

 そんな事を考えていると、上顎に衝撃を感じた。何だ?

 

「おいピッチャー、何してる!?」

「へへへッ臆病なブラコニーを安心させてやろうってんだよ。そら!」

 

 再び衝撃。ピッチャーと呼ばれている奴が俺の顔を蹴ったようだ。……ブッ殺す!! そう思った時には、既に密猟者の一人は半分になっていた。




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