ロアルドロスに転生した話   作:黒木箱 末宝

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ロアルドロス亜種の初登場を修正した時に気付いたんですが、下手するとこの状況にMHP3の主人公もちょのちょこ来そうなんですよね。
……どうしよう。


紫水獣の話

 物騒になってしまった夜のモガの森。そのため夜も見回りをする様になった俺は、空中戦を始めたリオレイアとその亜種を眺めつつ、平穏な日々を過ごしていた。

 

 ……まあ、今のところ俺の群れに犠牲者いないし。平穏平穏。

 

 そしてその日の夜、事件が起きた。

 

 ……何だ? 何か嫌な臭いが……毒の臭い! またドスフロギィかっ!

 

 鼻を突く不快な臭いに目覚めた俺は、上流から流れる水が紫色にそまっている事に気付いた。

 

 ……水が全て紫色に染まる……成る程、ついに来たか……。

 

 それを見て暫し原因について探ると、あるモンスターが候補に上がった。そして俺は、ルドロス達に12番エリアに退避するよう言うと、原因を追い出すために動くのだった。

 

 

 

 エリア10番から遡り、紫色の水を辿って到着したエリア2番。

 

 そこには滝の水を浴びる、紫色の(たてがみ)を持つ白い鱗のロアルドロス──ロアルドロス亜種がいた。

 

 ……来ちゃったか、紫水獣よ。なあ、大人しく出てってくれないか?

 

「ッグゥオォーーーー!!」

 

 俺の頼みに対する返答は、敵意の交じる咆哮だった。

 

 紫水獣が突進してくる。俺はそれを受け止めようとしたが、既でやめて避けた。

 

 案の定、紫水獣が着地すると周囲に毒の混じった水がばら撒かれた。ほんと、自然界での毒は厄介だ。だがそれが、()()()()()()()()()()

 

 紫水獣の吐く毒液を避け、突進を避け、走り回ろうとした時だけ水ブレスを顔にぶつけて怯ませる。効かなくとも目を狙った攻撃は怖いだろう。

 

「ッグゥオォァァァァ!」

 

 紫水獣は毒の攻撃が有効ではないと分かると、肉弾戦に切り替えてきた。

 

 噛みつき攻撃。突き出された顔なんか殴るしかないぞ。

 首が伸び切ったタイミングで思い切り横っ面を殴る。バゴン! と良い音を響かせ、紫水獣は目眩を起こす。

 

 隙だらけの紫水獣の頭を何度も殴るが、四回目で毒を吐き出して妨害してきた。

 事前に察知して避けたが、調子に乗って殴り続けていたら食らっていただろう。

 

 引っ掻き攻撃。そもそもリーチが短いので無意味。

 尻尾で横から殴り付けて転ばせる。だが戦い慣れたのか、体勢が整うまで毒を吐き続けて対応していた。

 

 リーチに気付いた紫水獣は、尻尾による殴打を繰り出した。

 そして俺はそれを難なく受け止め、力の限り引っ張った。

 

「ピャーンッ!?」

 

 情けない声を上げるが、それも仕方ない。何せ、尻尾は脊髄の延長線にあるものだ。

 それを力いっぱい引っ張られると、それだけで関節が外れるか痛むだろう。

 蛇の締め方が同じだな。首を持って尻尾に掛けて引っ張ると、全身の関節が外れて動かなくなるんだ。

 それと同じ様に、紫水獣も尻尾の関節が外れた様子。下半身の踏ん張りが弱まった。

 

 この時点でどれだけ気概のあるロアルドロスでも逃げ出す筈なんだが……何故か紫水獣は逃げる様子を見せない。

 

 ……なあ、何がお前をそうさせる。死んだら意味ないだろう?

 

「ッ……!! ガアアアアア!」

 

 紫水獣は尚も攻撃をしてくる。一度体を引き、勢いを付けてのローリングタックルだ。

 毒を含んだ鬣による一撃。普通ならタックルごと食らうだろう。……でも俺、ちょっと跳べるんだ。

 

「ッ!?」

 

 渾身のタックルが避けられたからか、驚いた表情で紫水獣が振り向く。その顔に、俺の尻尾が直撃した。

 

「ガアッ!?」

 

 クリーンヒットしたようで、紫水獣がフラついている。それでも紫水獣の目は死んでおらず、まだヤル気のようだ。

 

 ……そうか解った。お前がその気なら、俺もお前を殺すよ。

 

 紫水獣を睨みつける様にし、トサカを最大まで上げる。

 

「グルルル……ッ!?」

「グオオオオオオオオオアアアアァァァァーーーー!!!!」

 

 そしてフラつきの治まった紫水獣に向けて、全力の咆哮を叩きつけた。

 

 

 

 「ガアアアアア──ギャン!?」

 

 走り飛び付いてきた紫水獣の頭を掴み、全体重を掛けて叩き付ける。そのまま口を開けないよう下顎に鉤爪を食い込ませる。これでもう毒は吐けまい。

 

 そして紫水獣の頭を持ち上げると、何度も、何度も力いっぱい地面へと叩き付ける。

 

「ッ~~~~!!」

 

 必死になって抵抗する紫水獣。だがその度に力の角度を変えて抵抗の向きを逸らして力を分散させる。

 するとどうだろう。首に負荷が掛かり過ぎたためか、紫水獣の抵抗が徐々に弱くなってきたのが分かる。それに下顎が砕けたようだ。

 

「ッアアアアア!!」

 

 すると、紫水獣が思い切り頭を引いたではないか。

 砕けて支えのない下顎が、食い込んだ鉤爪によって引き裂かれる。

 

「……ヒュー……ヒュー……!」

 

 下顎の無くなった紫水獣が、それでもなお闘志を持って睨み付けてくる。

 

 ……いったい何がそこまでお前を……!

 

 案の定。散々毒液を出したからだろう、紫水獣の鬣が萎み、乾いてきた。その隙を逃さず、俺はタックルで紫水獣を押し倒した。

 

「グオオオオアアアアーーーー!!!」

 

 このまま首を折って楽にしてやる。……何ッ……!?

 

「ヒュィーー!!!」

 

 俺達の戦いを見て聞いているであろう周囲へ向けて勝利宣言をする。だが、紫水獣はそれでも尚、俺に闘志を向けて咆えた。

 

 ──だから、殺した。

 

 両前脚と身体移動を利用した、全力の首折りだった。

 

 

 

 あ~疲れた~……にしても、こいつはどうして死ぬまで戦いを挑んで来たんだ?

 

 俺は辛そうに戦うロアルドロス亜種に同情しつつ、何故こんな存在が産まれたのかを考えた。

 

 ロアルドロス亜種は、毒を自ら生成していた。そう考えた時、俺はある生き物の存在を思い出した。

 

 それはフグだ。フグは卵巣の時点で毒に塗れており、稚魚はその毒に塗れた臍嚢(さいのう)──卵黄が入った袋を栄養として、エサが取れるようになるまでそれを糧に生きて行く。

 そして、エサに含まれた毒が生物濃縮によって濃くなり、やがて人々が知る毒フグへと成長する。

 

 だが、フグ毒が含まれていないエサで育てられた養殖のフグは、フグ毒を保有していないとか。

 

 と言うことは、ロアルドロス亜種は毒を有する親のルドロスから産まれ、そして餌に毒素が含まれているものを多く食べた結果が亜種化なのではないかと考える。

 

 ルドロスの亜種がいない理由? 恐らくいたとしても、幼少期の内に毒に耐えられず死ぬか、群れに入れずろくにエサを取れず──何なら更に毒エサを食べて濃度が上った毒や変質した毒で死んでいるんじゃないか? しらんけど。

 

 ……そう考えると、俺も危なかったかもしれないな。

 

 俺は幼少期の頃の事を思い出した。

 腹が減って齧った蟹や貝や海老、雲丹や小魚などに毒が含まれていたこと。しかし、それを親ルドロス達が止めてくれた事を。

 

 ……てことはだ。食性に毒物を選んでも止められない状況か、毒エサを食べざるを得ない状況が、ロアルドロス亜種を生み出している……?

 

 ……やっべ~~兄弟姉妹は大丈夫か!? エサ不足とか思い当たりしかないんだけど!

 

 そこで俺は嫌な事を思い出してしまった。孵って直ぐに兄弟姉妹を押し退けてエサの四分の一を食らったこと。その後も親に止められない限りひたすらに兄弟姉妹の分まで食らい続けていた事を。

 

 ……もしかしたら、こいつもそんな兄弟姉妹の行き着く先だったのかもしれないな。

 

 俺は考えた。もしやこのロアルドロス亜種は満足に餌が与えられず、致し方なく毒を保有する獲物を食べて生き残った個体ではないか……?

 

 その割には結構大きいけど……いや、そうか。毒エサの方が狙われることなく悠々とエサを食えるなら、その保有栄養素は多い筈だ。

 それならこいつの大きさにも説明が付く。……まあ、考察の域をでないが。

 

 そこでは、自分の子供がそうなったらどうするかを考えた。だが直ぐに、飢えない程に餌を穫れば良いと考えを固めた。

 

 ……そして、もしくは……この手で子供を……チッ! 嫌な気分になったな……。

 

 もしもの時を覚悟して、俺は体に付いているかもしれない毒を洗いに滝へと向かった。

 

 

 

 そして翌日、我が子が誕生したのであった。




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