ロアルドロスに転生した話   作:黒木箱 末宝

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狩られて狩っての話

 大きくなってきたルドロスに纏わりつかれながら、俺は雄のルドロス達に教育を始めた。

 目の前には、海綿体が発達し始めた一回目の卵のルドロス達がいる。あのガノトトスの戦いを眺めていた3匹だ。

 

 いいかお前達……死にたくなければ──逃げろ! 近付いてくる人間からは特にだ! ……解るか?

 

「……ピィー!」「ピュイ?」「アー……」

 

 それぞれ個性的な返事をするルドロス達。

 疑問に思いつつも了解と答えるやつ。

 仲良しにしてるのに何で? と疑問を向けるやつ。

 何かを察したようなやつ。

 ……最後のルドロスが何か人臭いが……まあいいか。俺みたいなやつもいるし。

 

 “何で?”と言う理由を教えよう。そもそも、俺達モンスターに人間から近付いてくる時は、その殆どが俺達を狩りに──つまり、殺しに来てる時なんだ!

 

「ピッ!?」「ヒャー!?」「オウ」

 

 そもそもこの世界は弱肉強食──強いものが好き勝手して生きている世界だ。力こそが正義であり、敗北者は文句すら言えない……殺伐とした修羅の世界──それが、このモンスターハンターの世界なのだ!

 

「ピッ? ピュイ!」「ヒィー!」「オウ!」

 

 なになに“それなら俺達は大丈夫”? “強い俺の息子だから”……?

 

 …………ククククッ……ダハハハハハハハッ!!

 

「ピッ!?」「ピュイッ!?」「ウオウッ!?」

 

 突然爆笑し始めた俺に、目の前のルドロス達どころか、付近のルドロス達も驚いた様子で見てきた。……この際だからちゃんと伝えとくか。

 

 クハハッ……いいかお前達、勘違いしてたらマズイから言っとくぞ……確かに、今の俺は強い! 並のモンスターならブレス一発で殺すことが出来る程に……。

 

「ピィィィ!」「ピュイー!」「オウッオウッ!」

 

 俺の言葉に“そうだそうだ!”と興奮したように鳴くルドロス達。……やっぱ分かんねぇか。

 

 だがな──()()()()()()()()()()()……。

 

「ピッ!?」「ヒャー?」「……オーウ……」

 

 賢い奴等はそれで察した様子。……初期のハーレムメンバーに、のんびり屋のルドロス……こいつらは生き残るか?

 

 つまりだな、俺がいなかったらお前達を守れないから、ヤバそうなら真っ先に逃げろって事だ。何せ──

 

 そうして、ルドロス達に知識を刷り込んでいたその時だった。何やら森から無数の鳥が飛び立ち、その直後に木が倒れる音が鳴り響いたのだ。

 

 ……木か……ハンターちゃん、狩りのペース早くない? ……まあいいか。……おい、お前達!

 

「オウッ!」「ピュイ!」

 

 ハーレムの序列トップのルドロス達を呼び出し、俺は()()()()を残して、獲物の元へと駆けるのであった。

 

 

 

 何時も通りのエリア5番。そこで待機していると、目当てのモンスターが、巨体を揺らしながら現れた。

 

 そいつは水牛の様な角を持つ、背中に苔を生やした獣竜種──ドボルベルクが、モガの森に現れたのだ。

 

「ウオウッ──ガアアアアアアアアアア!!」

 

 俺を目にした瞬間、ドボルベルクは咆哮を上げる。

 その巨体に見合う咆哮が、俺の耳孔を打った。

 

 ドボルベルク……前世(まえ)から思ってたんだ、そのコブ……美味そうだな!

 

「ッオオォ!」

 

 捕食しようとする俺の意思に気付いたのか、ドボルベルクは角を地面に突き立て、そのまま突進して来た。

 それをあえて受け止める。これも強くなる為のトレーニングだ。

 

 ンンッ! ッオオオ!? 少し押されてるッ!?

 

 角を抑えてるにもかかわらず、ドボルベルクは少しずつだが俺を押し込み始めた。力比べは僅差で負け……このままでは押し飛ばされるだろう。

 

 でも俺ね、人だったんだよ!

 

 片方の角を押しながらもう片方の角を引き、回転して突進を避ける。

 

「アアアッ!?」

 

 すると押し込む相手を失い、尚且つバランスを崩されたドボルベルクは、半回転しながら倒れ、弱点のコブを無防備に晒した。

 

 よし、このままコブを──ん、足音……ハンターちゃんか。

 

 立ち上がろうともがくドボルベルクを他所に背後を見ると、このエリアにハンターちゃんが現れた。

 

「…………」

 

 しかし様子が変だ。ハンターちゃんは何故かチャチャとカヤンバを連れておらず、挙げ句に申し訳なさそうな顔で海側のエリアへと向かって行ったのだ。

 

 ……ああ、成る程。ついにこの時が来たか……んじゃ、警告でも。

 

 これから何が起こるか察したので、此方を見ているハンターちゃんに頷いて理解を示した。

 それはそれとして、ボスとしての務めが遂行できないので、その趣旨の警告を咆哮として放つ。

 

「オオオオオオオオオオーーーー~~~~~!!!」

 

 トドの雄叫びに、鷲の鳴き声が混じった様なモンスターの咆哮。

 これを聞いて逃げないアホや、実力の分からない弱い子には……申し訳無いが今日死んでもらう。

 

 ……お気に入りのルドロス達や賢い子達が生き残れば良いな……まぁ、それはそれとして──悪いねドボルベルク。

 なんか胸がモヤモヤして荒れてるからさ、強めに当たるね!

 

 

 

「オオオオッ!!」

「ガアアアッ!!」

 

 再び、ドボルベルクが突進を放つ。

 俺はそれを受け止め、首を圧し折ろうと、角をハンドルの様に捻る。

 

「ウゥ……オオオッ!」

 

 一回目で学んだのだろう。ドボルベルクは尻尾を振る事で遠心力を発生・利用し、俺を引き剥がしたのだ。

 

 チッ! やっぱその尻尾は厄介だな。……現実(いま)なら切れるか?

 

 前世ではゲームだったために、設定されたようにしか戦えなかった。だが今は現実で、ドボルベルクは目の前に居る。

 

「カアッ!!」

「──ガアッ!?」

 

 尻尾を切断するつもりで、水流ブレスを関節らしき場所に放つ。しかし、水流ブレスは尻尾の表層を軽く切るだけで、ドボルベルクが怯んで終わった。

 

「ウオウッ!」

 

 その反撃か、ドボルベルクが尾槌を叩き付けてくる。

 一瞬見えたドボルベルクの尻に、ウラガンキンと同じ様にするか考えた。

 だが、ドボルベルク相手に尻を狙うのは危険だったりする。

 

 尾槌の一撃を転がって避け、部位破壊を狙って水流ブレスを放つ。

 ……だが、駄目! 表層に生える苔や積もりに積もった甲殻や皮が、水流ブレスを受け止め力を分散させている。

 

 ん~駄目か~! うーん、まさか水流ブレスが致命傷にならんとは……どうしたもんかねぇ。

 

 ならばと尾槌にのしかかってみるが、僅かにヒビが入っただけで問題にもなっていないようだ。

 

「オオオッ!」

 

 ん? あ、おいおいおい、こいつ回りだしたぞ!

 

 尾槌にくっついた俺を引き剥がしたいのか、ドボルベルクが尻尾を振り、回転し始めた。

 

 だが、しめたぞ! これならあれが出来る!

 

 そうして、回転のリズムを読んだ俺は、一番遠心力の掛かるタイミングで尻尾を引っ張った。

 

「アアッ!?」

 

 するとドボルベルクはバランスを崩し、勢い余って岸壁に突撃してしまった。

 

 よし、今だ! ───ッこれも駄目かぁ~!

 

 頭を打ち目眩を起こしているドボルベルク。

 その隙に脚や側面に水流ブレスで攻撃するが、やはり表面の苔や弾力の強い分厚い皮に阻まれ、決定打にならない。

 

 ……いや、まてよ? もういっそのことこのまま齧り付けば良いか……うん、そうしよ。

 

 そう決めると、俺は尻尾からドボルベルクによじ登り、コブの分厚い皮を剥がして齧りついたのだ。

 

 ……うんま~い!! 凄いぞ、上質な牛の脂身を凝縮した様な味がする!

 

「ガッ──ガアアアアア!!!?」

 

 生きたまま食われる恐怖にドボルベルクが暴れ始めるが、構わず食う。それだけ美味いし、何よりコブはドボルベルクの弱点だ。止める理由が無い。

 

 そうしてコブを食べ続けていると、ドボルベルクが回転攻撃を始めた。落とされてはかなわんと鉤爪を食い込ませると、ドボルベルクは更に加速し、飛翔した。

 

 うおおおおおっ!? と、とんだ!?

 

 巨体が巨体を背負ったままの飛翔。それに驚いた所為か引き剥がされ、高所に放り出されてしまった。

 

 クソッ、かなり高いな! だが俺にはロアルドロス流着地術が──あ、しまった! ブレス使い過ぎて水が足りないッ!?

 

 落下が始まり焦る。だがその時、この状況を打開するべく駆け巡った思考が、ある答えを引き出したのだ。

 

 ありがとう、怪獣の御大!!

 

 俺は空中で受け身を取ると、今ある全ての水を水流ブレスとしてチャージし、真下に発射した。

 水流ブレスは圧縮した水を勢い良く発射する。そして当然、反動が発生するので、それを利用して水流ジェットの様にしてゆっくり降下する。

 

 なお、水流ブレスの着弾先は、地面にめり込んで動けないドボルベルクの頭である。

 

「ガッ……ガアアッ!?」

 

 そうしてドボルベルクは、水流ブレスを頭に受け続けて頭蓋が割れ、脳が破壊された様だ。

 

 

 

 さて、いただきます! ……うん、やっぱ美味いな! ……ん、ハンターちゃんか。

 

 殺したドボルベルクを捕食中、ハンターちゃんが辛そうな顔で現れた。

 

 ……クエストクリアか……お疲れ様。ありがとね。

 

「──貴方はッ! ……クッ……!」

 

 何時も通りに鳴いて挨拶する。そうしたら、ハンターちゃんが武器を手にし──抜くのを止めて帰って行った。

 

 さり際の残り香に、血の臭いが混じっていた。




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