ドボルベルクを捕食し終えた後、食べられない余分な箇所を切り落として巣へと持ち帰った。
しかし巣で待っていたのは、ルドロス達の残骸と、それを見つめる事しか出来ていない、寂しそうに鳴く生き残りのルドロス達だった。
……うんうん、よくやってくれたねハンターちゃんは…………さて、どれぐらい減ったのやら。
亡骸を数えつつ眺めると、その体から牙や爪、未熟な海綿体や鱗や皮が剥ぎ取られているのが解った。それを見て、ルドロス達が
海に入り、体を洗いつつ水分をチャージ。亡骸を回収する。
生き残りと協力して穴を掘り、そこに亡骸を埋めていると、逃げていたルドロス達が帰ってきた。警告を聞いて即座に逃げた、無傷の古参メンバーとその子供。その後に運好く生き残ったルドロス達だ。
よく生き残ったな。そう言うと、一部のルドロス達から激怒の鳴き声が放たれた。群を守れなかった事になるからだろう、その責める声を止めるルドロスは居なかった。
しかし、俺の後に隠れていたドボルベルクの残骸を見ると、責める声が段々と小さくなって行く。その巨体を見て、俺が助けにこなかった事に悔しいと感じつつも、仕方が無いと思ったのだろう。
だが、一度湧いた不信感はどうすることもできなかったようだ。一部のルドロス達は俺に背を向け、どこかへと去って行った。
……うん、まぁ全部想定内だ。しかし、これで大繁殖の問題は解決した訳だが…………やっぱりモヤモヤするなぁ~!
雌のルドロスや子供が殺される事も覚悟の上だったし、それで見限られて群が減るのも想定内だった。
だがしかし、全て自身に責任があるとはいえ、湧き上がるこの苛立ちばかりはどうしようもなかった。
そもそも何で俺が遠慮なんかしなけりゃいけないんだ? 大繁殖に大量発生は自然にも起こってるじゃないか。それを、俺だけが駄目だと? 馬鹿言うんじゃねぇよ! クソッ……中途半端に前世のモラルが思考の邪魔をしてやがる……。
何なんだこの感覚は……あれか、解離性同一
クソッ……今になってハンターちゃんに間引きを押し付けた罪悪感が心を蝕んで来やがる……。
でもね、そうしないとね?
「増え過ぎはヤバいからちょっと減らすね?」
とか言って、卵を踏み潰したり雌や赤ちゃんルドロスを突然殺し始める群のボスとかいう、一番いちゃいけない存在になっちまうんだ。そっちのがキツイわ!
……そもそも、ここは弱肉強食で、強者こそがルールの世界だ。そして俺は、今のところではあるが、強者の立ち位置に居る!
その俺が好きに生き、理不尽を押し付けようとも──俺もまた、さらなる強者に理不尽を押し付けられ、無惨に死ぬ存在でしかないんだ!
ただそれが今じゃないだけだってのに……こいつらも……ハンターちゃんもッ……! 個人の不満をぶつけて来てさぁ!!
俺は、望んで
気が付いたら死んでて、卵にいて、そして死にたくないから生きてきたんだッ!
そもそも俺は最初からこいつらにハーレムに入れとも、子供を産んでくれとも望んでなんか───ッ…………いや、この思考はダメだろ。考えちゃいけないことだ。
頭に湧いた考えを殴り飛ばす。
自分が前世で受けたことも無い、成り行きで成った父親という存在の、その責任と義務に混乱していたとしても、こいつらは俺の嫁であり、子供だ。
そもそも、今世ではちゃんと父親がいたじゃないか。頼れてカッコいい、自慢の父親が。
その自慢の父親はこんな無様だったか? ……そんなわけない、カッコいいよ……ほんと……。
……自分でも気付いてなかったけど、結構まいってたんだな、俺は……。
元人間としての自分と、ロアルドロスとしての自分。
前世のルールと、今世のルール。
人の考えと、モンスターの考え。
そこに経験のない群のボスとしての責務に、父親としての責務。それらで雁字搦めになり、更に板挟みされ、辛く苛々が募り続けたんだろう。
……だが、それでも越えてはいけない一線はある。
……クソったれなことに、自分には次がある。次こそは、間違えない。……次こそは……か。
苛立ちや罪悪感を消化するため、岸壁を削りルドロス達の墓を作ってみた。
水流ブレスを調整しながら放ち磨き上げた墓石に『ルドロス達の墓』と文字を彫り上げ、冥福を祈る。
自己満足でしかないが、少しは気が晴れた……そんな気がした。
それはそれとして、未だに胸がモヤモヤとするので、何かに強く当たりたい気分だ。
ストレスの解消法が戦いしか無いのが悩みだな。交尾に逃げる訳にもいかないし、飯もワイルド過ぎるし。
すると、ちょうどよく挑発する様な咆哮がモガの森に響いて来た。
音の感じからしてエリア5番だろう。そこは俺の縄張りでもあるので、堂々と自分の縄張り宣言をされたなら撃退せざるを得ない。
ルドロス達にドボルベルクの捕食許可を出す。
しかし、今までなら悠々と齧りに行くルドロス達だが、今回ばかりはそんな元気が無いようだ。
「ピィー!」「ピュイー!」「ウオウッ!」
その中から三匹のルドロスが飛び出し、ドボルベルクの残骸に齧りついた。それは、三匹の雄のルドロスだった。
真っ先に齧りついたのは、真面目な雰囲気のルドロスだった。何時も最初に俺の言う事に返事をする、真面目なやつだ。
身体に付いた無数の細かな傷を見るに、上手く戦えていたようだ。
次に齧りついたのは、何時も一歩引いた立場にいるルドロスだ。俺の言う事を鵜呑せず、疑問を持って考えるやつだ。
身体に傷は無いものの、左目に大きな傷がある。恐らく、ハンターちゃんの攻撃から誰かを庇ったのだろう、勇敢なやつだ。
最後にゆっくりと齧りついたのは、のんびり屋のルドロスだ。何処にも傷が見えないが、未熟な海綿体がカラカラに乾いている。恐らく限界までブレスを吐き、二匹を援護をしていたのだろう。身の程をよく知っている、賢いやつだ。
こいつらが生き残ったことを喜びつつ、俺は未だに挑発を続ける鳴き声の主と戦うため、急いで向かった。
この話は
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