ロアルドロスに転生した話   作:黒木箱 末宝

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前々話【一匹/一人】の【ロアルドロス/人間】の話を削除し、VSブラキディオスの話と統合しました。
感想やここすきをくれた方には申し訳ありません。

詫び更新です。


VSジンオウガの話

 昼のモガの森。そのエリア十番で、俺はもぎ取ったブラキディオスの頭を眺めつつ、手加減について考えていた。

 俺はより強くなる為の方法として、大量に食べて、戦い鍛えるという手段を取っていた。だが相性の問題があったとは言え、俺はブラキディオスを単独で、かつ難無く倒す事が出来たのだ。

 

 なので、これ以上に強くなる為の糧は必要ないかも知れないと考えた。

 実際、狩ったドボルベルクやブラキディオスの肉がまだ残っている。これ以上の殺生は、捕食もしないような無益なものになるだろう。

 

 うーん……よし、これを食い終わるまでは狩りを控えるか。

 

 そうして静かになった浜辺で寝転びながら、手加減の練習として死体に集る虫を的に極小水ブレスで遊んでいた。

 すると、ハンターちゃんが現れた。

 

「あ……ッ……」

 

 僅かに緩みのある雰囲気からするに、恐らく資源集めに来たのだろう。俺を見付けて気不味そうにするが、俺は特に気にしていないので普通に挨拶する。

 

 ようハンターちゃん。それジンオウS装備? 似合ってるね~ー……ヘソと内腿を拝見させて頂いても宜しいでしょうか?

 

 そんな俺のセクハラにも気付かずに、ハンターちゃんは手を上げて返事をしてくれた。

 

 ……何だその目は。切り替えが早すぎてキモい? ……いやー、責任とかどーとか言ったけどさ、そもそもまだ人としての意識が強過ぎてね。ルドロスと言う爬虫類にもその子供にも、奪われたら全てを滅ぼす──なんて程の愛着がわかないんだよ。この感覚を例えるなら……そうだな、めちゃくちゃ懐いてきて撫でて愛でてた野良猫が、ある冬の朝に冷たくなってるのを見たような気分だな。………悪い、やっぱ辛えわ……。

 

 仇を討つ様子を見せない俺を睨むルドロス達に、伝わるかどうか分からない言い訳を垂れる。それはそれとして復讐うんぬんには「まだその時ではない」と言って嗜める。……そして、ハンターちゃんが着ていたフルジンオウS装備に、何かが引っかかった。

 

 だがそれは、海に飛び込むハンターちゃんの尻と純白の下半身装備に目を奪われ、更に強く文句を言ってくるルドロス達によって、その引っ掛かりは彼方まで飛んで行ったのだった。

 

 復讐がお望み? なら強くなって自分で挑みな。

 それでも? ……ハンターちゃんが()()()()()()()でね。

 

 

 

 そしてその日の夜のこと。()()()()に震えつつエリア5番に見回りをしに来たが、そこで蛍の様に飛んでいる雷光虫がやたらと騒いでいたのだ。

 その光景にどこか懐かしさを感じて眺めていたら、隣のエリアから大型モンスターの足音が響いて来た。

 その方角に顔を向けると、雷光虫が惹き寄せられるように足音の方へと飛んで行く。

 体にぶつかりバチバチと雷光を零す虫に顔を顰めつつ、足音の正体に合点がいき、溜め息を吐いた。

 

 興奮しているのか荒い息を吐き、漏れ出る蒼雷によって、碧色の鱗と黄色の甲殻、白い体毛が照らし出される。

 

「ウオォォォォォォン…………グオオオオオオッ!!!」

 

 発された電気に惹かれて雷光虫が集まると、電気を受けて超電雷光虫へと活性化。その電気エネルギーを利用して、その大型モンスターは初手から全力の状態(超帯電状態)へと移行した。

 

 雷狼竜──ジンオウガが現れた。

 

「グルルル……」

 

 全身に付いた細かい傷や、苛立ちに混じる焦りに似た雰囲気から察するに、このジンオウガは、縄張りを追い出されたようだ。

 

 だからって優しくは出来ないがな……オラァ行くぞぉ!

 

 先ずは強気の姿勢で咆哮を放ち、争う意思をぶつける。

 大概のモンスターならこれで縄張り争いが済む事もあるが、早々に上手く行く事も無い。

 

 それなら仕方無い。手加減の練習相手になってもらおうか。

 

 ジンオウガと同じタイミングで駆け出し、そのままぶつかる──その寸前、ジンオウガは前脚を叩き付け、それを起点に斜め上へと一回転。尻尾で薙ぎ払ってきた。

 

 俺は思わずその尻尾に飛び付いてしまった。ジャンプすることで衝撃を減らす為の行動だったが、それが思わぬ起点と成った。

 あまりにも既視感のあるその状態は、ウラガンキンやドボルベルク相手にその力を利用し、攻撃に転用した時の動きそのものだったのだ。

 

 胸元の(たてがみ)に含まれる水をクッションに利用し、衝撃を殺してジンオウガの尻尾を受け止める。

 そして上へと押し飛ばされる力を体を捻る事で方向を曲げ、逆にジンオウガを放り投げる事に成功した。

 

「ウオンッ!?」

 

 敵を叩き飛ばすつもりが、自身が飛ばされていた。そんな現象にジンオウガは驚き、空中でワタワタと暴れる無防備な姿を晒す。

 そんな隙を放置する訳もなく、俺は水流ブレスをチャージし、ジンオウガが着地するその瞬間に放った。

 

「ギャワンッ!?」

 

 受け身を取ろうと備えていたジンオウガに、水流ブレスがブチ当たる。

 前脚を撃たれたジンオウガが、バランスを崩して転んでしまう。だが距離が遠かったためか、ブレスによるダメージは少なく、追撃するにも間に合いそうにない。

 

 余裕を見せるようにゆったりと歩き、ジンオウガに近付く。

 

 これで分かっただろ。俺の方が強──まだやるか!

 

「ウォン!」

 

 起き上がったジンオウガは依然として闘志を滾らせており、そのまま超電雷光虫を放ち、ぶつけて来た。

 

 チィ! 熱っ!?

 

 四発中三発を水ブレスで迎撃したが、一発くらってしまった。そして着弾点から熱を感じ、一瞬怯んでしまった。

 

「ウォン! ギャン!?」

 

 その隙に飛び掛かってきたジンオウガを水流ブレスで撃墜しつつ、熱の正体を察して警戒する。

 水を含んでいるとは言え、本来から雷耐性も高いロアルドロス(自分)に何故雷が効いたのか。それは鬣に含まれていた水が電気によって揺さぶられる──要は電子レンジの原理で温められ、その瞬間に水が沸騰したからだ。

 

 前に電気をくらったのは……ラギアクルスと戦った時か。確か超帯電状態のジンオウガの電気は、ラギアクルスのそれと匹敵するらしいな。道理で痛い訳だ。

 

 だがその警戒すべき電気も雷光虫ありきの力だった筈。なので、その力の源である超電雷光虫を殺す事にする。

 

 とは言え、どうすっかな~……雷光虫はジンオウガの背中に居るわけだから……そこを狙うか?

 

「……グルルル!」

 

 手玉に取られているのが気に入らないようで、ジンオウガは唸りながら雷光虫を集め始めた。

 

 それを隙と見て水流ブレスを放つも、難無く避けられた。

 ならばと組み付こうにも、雷撃を射たれて近付けない。

 

 このまま睨み合うのも面倒だし、ちょっと強引に行ってみるか。

 

 水流ブレスをチャージしつつ、ジンオウガに向かって駆け出す。

 当然ジンオウガも警戒し迎え撃とうと右前脚に電気を溜める。だがそれが、俺の狙いだったのだ。

 

 ジンオウガの前脚が届く間合いに入った、その瞬間。

 

 全力の雷を纏った掌底が落とされる既の所で、鍛え上げた両腕を全力で振るい、大地に腕をめり込ませて急停止。

 

 眼前に落ちる、まるで落雷の如き掌底。そこから走る雷撃を耐性に物を言わせて受け止める。

 そして、掌底と共に下がって来たジンオウガの頭目掛け、俺は水流ブレスを放った。

 見開かれるジンオウガの目と目が合った。

 

「ギャン!?」

 

 砕け散るジンオウガの角。制御が乱れ、散り散りになる雷光虫達。

 通常の状態へと戻ったジンオウガは、自身の角が砕けたのが信じられないようで、何度も何度も前脚で角を撫で、不揃いなそれを確認している。

 

 そんなジンオウガを完全に負かすため、未だに混乱しているその横顔を思いっきりぶん殴る。

 

「アオッ!?」

 

 顎を殴られ、受け身に失敗して背中を晒しもがくジンオウガ。

 その背中目掛けて、俺は調整した水流ブレスを放ち超電雷光虫を洗い流し始める。

 その際、高圧洗浄で出来た傷に、雷光虫が放つ電気が滲みてダメージを受けている様子。

 洗浄しているのかアーク溶接をしているのか分からない、ジンオウガの悲鳴と雷光弾けるシュールな光景の中、縄張り争いの決着がついた。

 

 

 

「クオォンッ……!」

 

 ジンオウガは悔しげに吠え、脚を引き摺りながら逃げ出した。そしてその背を見送るデカイやつを睨みつけると、リベンジをするために強くなる覚悟を決めた。

 

 その背中に、ほんの僅かではあったが()()()()が走った。




主人公のルドロス達に対する気持ちを分かりやすくしました。
ちゃんと……伝わった?
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