ロアルドロスに転生した話   作:黒木箱 末宝

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今話はアンケートの結果に従い5000文字となっております。
……キリは良いのか悪いのかわかりませんが、どうぞお楽しみ下さい。


密猟者再びな話

 何処かの国のとある公爵領。その海辺に建てられた豪華絢爛な別荘に、似つかわしくないならず者達が集まっていた。

 大広間に合わない素朴な長テーブルの上には、様々な酒や食い物が並べられており、それを様々な存在が好き勝手に飲食いしていた。

 

 見た目相応の野盗の様な姿の者が酒をかっ喰らい、洗練された騎士の様な佇まいの者は静かに食事を取っている。

 戦いとは無縁そうな細い体の人間は、居心地が悪そうにしながらもちゃっかり高めの肉に手を伸ばし、何処か険のあるハンターの様な者は何時も通り早食いをしてしまい、手持ち無沙汰に武器のチェックを始めた。

 そして部屋の隅には、首輪に繋がれた人間と、それの側で飯を食う、手脚の足りない獣人達がいた。

 

「お前らぁ! (ちゅう)もおおおおおおく!!!」

 

 そんな不可思議な空間を割くように、一人の大男が壇上に上がり見た目相応の大声で視線を集めた。

 

「ようこそ集まってくれたなろくでなし共! 俺がそのろくでなし共のボスであるポーチャーだ!」

「ポーチャー……クククッ、変な名ま──」

「うわああ!?」

 

 発砲音が広間に轟いた。そして、ポーチャーの名前を笑ったならず者の頭が弾け飛び、中身を床に撒き散らした。

 見ると、不機嫌な顔をしたポーチャーが大型の銃を抜いていた。

 

「お、今日は早かったな。ほら」

「チッ! 持ってけクソったれ」

 

 ポーチャーを知るものからすれば何時もの通過儀礼だ。

 そしてそれはいつしか賭けの対象になる程に、ポーチャーの名前を笑う者が撃たれるまでが密猟団の中ではお約束の光景となっていたのだ。

 

「はぁ……おめでとう! お前達の取り分が増えたぞ!! 寛大なる亡骸に拍手!!」

「ありがとう馬鹿野郎!」

「サンキュー亡骸ァ!」

 

 慣れた密猟団員だけが、拍手と声援を無惨な死体に送る。

 人一人の犠牲を以て、密猟団のボスであるポーチャーのヤバさが全員に伝わった。

 

 それを皮肉げに笑いながら、ポーチャーは銃をホルスターに仕舞う。そして、演説の続きを始めた。

 

「此処にお前等を集めたのは他でもない、()()()()より大仕事を頂いたからだ」

 

 かのお方、大仕事。ポーチャーの言葉に一喜一憂するならず者共。しかし、一憂する者も含めた全員の目は、獲物を狙う獣の如く煌々と輝いていた。なんなら笑い声すら漏れている。

 

「ハッ! 良い目をするじゃねぇかテメェら! そうだ、この大仕事を終えたなら、テメェらは全員遊んで暮らせる金を手にする事が出来るッ!」

 

 近くにあったテーブルをバン! と叩き、ポーチャーは依頼書を掲げて見せた。

 

「一億(ゼニー)だ! それも、全員に一億が支払われる大仕事!」

 

 一億z。その提示された報酬に、各所から歓声と口笛が響く。既に取らぬ竜の肉算用を始める者や、突然掲げられた希望に祈る者さえ出始めた。

 

「だが当然、そんな大金をここにいる全員に支払われる程かのお方は金持ちじゃねぇ。受け取れねぇやつも出て来る」

 

 ポーチャーの皮肉げな言葉に“嘘を吐いたのか?”と、“かのお方を馬鹿にしたな?”と鋭い視線が集まる。

 しかし、今からやろうとする()()に馴染みのある者は、静かに笑っていた。

 

「何せ、今回のターゲットは【大水獣】。とある孤島に住み着いた、デカくて賢い化け物だからだ」

 

 大水獣──その名を耳にした者達がざわめき始めた。

 

 曰く、古今無双の怪物。

 曰く、水獣に似ている新種の古龍。

 曰く、ハンターズギルドも手を出せない異常種。

 

 一部の者からすれば、御伽噺に挑む様な話だった。それも夢のある話ではなく、ジョークを本当とする様な遮二無二なもの。

 しかしその存在に覚えのある者は、もしもの時に得られる名声や復讐を果たせることに笑みを浮かべている。

 そのどちらでもない者は、間抜けにも口を開けて流れに身を任せている。

 

「そうだ、そんな化け物が今回のターゲットだ。大金の意味と、お前等が集められた理由が解っただろ?」

 

 ならず者達は、その言葉で集められた理由を理解した。

 此処に居る者は密猟団のメンバーに始まり、公爵の私兵に金に目がくらんだハンター。借金に飲まれた民、先の無い犯罪者や奴隷に死にかけの安い獣人達。

 

 そう、命を賭けて一発逆転を狙う()()()()()()()()()()()()()

 

「一億zは、()()()()()()()()()()()()()()ッ!」

 

 ドン!! とテーブルを殴る音が広間に響く。ざわめきが収まり、注目がポーチャーへと集まる。それに笑みを返し、今度は余裕の態度で語りだした。

 

「だからお前等──生き残れ! なんとしてでもターゲットを捕らえろ! それが出来る手段を、かのお方は俺達に用意して下さった!! 行くぞ野郎共、これが終われば……お前等は自由だぁッ!!!」

 

「「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」」」」

 

 本来ならこうは行かない。しかし、貴族と伝の有る裏の界隈で名の知れた密猟団のボスが、その伝から直々に手段を与えられたと言う。

 

(前回の失敗でギルドにも足を掴まれ掛けて、俺達の団にも傷が付いちまった。裏の世界で舐められたら終わり……公爵の旦那にも急かされて、()()()()()まで寄越されたとありゃ失敗はできない……こいつらを捨て駒にしてでも、大水獣を必ず穫るッ!)

 

 そうして、屋敷の地下を通り進んだ先──崖をくり貫き作られた秘密の港には、ならず者達が慄くものが用意されていた。

 

「見ろ! 片門十発の最新式大砲を積んだ戦艦が四隻!! 大水獣を確実に仕留める()()()()()のブツを積んだ大型輸送船が一隻。合計五隻の船団だ!」

 

 国が使う様なガレオン船が四隻に、フリゲート艦が一隻。

 そして、それらを操縦する船員を含めたものが、今回の作戦の為に秘密裏に用意された、公爵の私的な船団だった。

 当然、こんなものを動かせば早々に悟られる。だが公爵はこれを『夜間航海の輸送と護衛の訓練』として公式に国に申請し、受理されている。例え密猟が成功しようが失敗しようが、その全てを偶然の事故の結果として処理する腹積もりなのだろう。

 

「……全く、見栄なんか張っちまって」

 

 ポーチャーは誰にも聞こえないような声量で呟いた。

 現公爵は三男として産まれた所為で、上二人の兄や姉達とは違う、最低限の教育や物のみを与えられて育てられた。その結果、彼は権力欲や物欲を拗らせてしまった。

 そして彼は、より自分の欲望を満たす為に公爵の地位を狙い始めたのだ。

 その時に使える手駒を集めるため、彼は道楽息子のフリをして町を歩いていた。そんなある日に、ポーチャーと彼は出会ったのだ。

 

(スラム街で出会った繋がりがこう成ろうとは……)

 

「待ってろよガング。これでお前は、クソったれの貴族共に公爵として認められる……後少しだ……!」

 

「…………」

 

 ポーチャーの呟きを間近で聞いていたギルドナイトは、大水獣に対する事故死静観(プランE)を目論んだ。

 

 だが、本来の目的は密猟団の捕縛と討伐だ。

 

 しかし、公爵関与の証拠を密猟団のボスが漏らしたので、情報を報告する必要が出た。

 そうして、ギルドナイトは作業をするフリをしながらこっそり離れ、伝書鳥を使い密書を飛ばすのだった。

 

 

 

 ■

 

 

 

 波の騒ぐモガの海。何やら不穏な気配を察知した俺は落ち着く事ができず、眠れぬ夜を過ごしていた。

 いったいこの胸騒ぎの正体は何なのか。ラギアクルス亜種は討ち倒したし、この先の脅威はナバルデウス亜種や()()()()()()くらいだろう。

 ナバルデウス亜種なら相応の気配がする筈だ。しかし、未だにそんな気配は感じられず、地震も起こっていない。

 

 ……いや、思い出した。この粘着くような悪意の有る視線は──密猟者か! ……まったく、懲りない奴らめ。

 

 気付いてしまえば早いもの。うだうだと愚痴を呟きつつ、ルドロス達を起こす。

 一度襲撃を経験している生き残りのルドロス達()目覚めも早く、動きも従順で直ぐに避難を始めた。

 

 だが新たに群れへと加わったルドロス達は、安心しきった表情で俺の側で未だに夢の中にいた。

 

 ……ハンターちゃんやモンスターに狩られて、嫁のルドロスは五匹に、子供に至ってはあの三義兄弟しか残っていない。だから、少しなら増やしても大丈夫と群れに受け入れたんだが……多分こいつら死ぬな。

 

 だが見捨てるのは寝覚めが悪い。叩いたり吼えたりして起こすと、新妻ルドロス達は寝惚け眼で海へと入っていった。

 

 これで(ひと)安心かな。……ん、何だぁ?

 

 波打ち際で寝転がりながら夜の海を眺めていると、遠くに見慣れないシルエットが浮かんでいた。

 

 ……何だあれ? うーん、水を切るような波の飛沫に大きな体。風を掴む様な大きなヒレ……いや()か……──帆船? なんでこんな時間に?

 

 体を起こして帆船を注視すると、その後にも四隻の船が見えた。そしてその船団は、一番大きな帆船を中心にして横腹を俺に向け、エリア10番の沖に停まった。

 帆船の上では、人が激しく行き来している。そして船の側面から砲門が現れた。

 

 ハハッ! 派手にヤル気じゃねぇの、そんなに俺が欲しいか?

 

 発射された砲弾を水流ブレスで撃ち落としながら、俺はルドロスの避難が完了するまでの迎撃戦を始めた。

 

 

 

 想像以上かつ簡単に砲弾を撃ち落とせているが、それでも撃ち漏らしはでてくる。それに貯めていた水も少なくなってきた。

 

 このままじゃ埒が明かん。面倒だが、打って出るか。

 

 大砲の切れ間に水中へと飛び込む。するとそこには、砲弾やその衝撃波によって粉々になっているルドロス達の残骸があった。

 

 ……ああ、新妻達の方か。水中なら安全だと思ったのか?

 

 出会って数日しか経っていないので、そこまで心にはダメージがなかった。だが、それでもこのルドロス達は俺の妻に成った存在。それを狩るわけではなく、無駄に殺されたんだ。

 

 ……これから思い切りやり返すが──文句は聞かんぞ。

 

 海水を限界まで吸収し、圧縮する。それを何度も練習した結果、俺は水中に於いて無敵に近い力を手に入れた。

 

 水中に居る間だけだが、俺は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 相手に恐怖を味わわせるため、海面に姿を現しながら砲弾を軽く躱す。直撃弾や至近弾を撃ち落とし、それ以外を避ける素振りも見せず放置する。

 まるで全ての砲弾が俺を避けているように見えるのだろう。甲板からこちらを見ている船員の動きが鈍くなっており、僅かに見える表情に畏怖が浮かんでいた。

 

 動きの鈍った船員の所為で、砲弾の雨に切れ間が出来た。その隙を利用して、必殺の一撃を準備する。

 

 海から限界まで水を吸収すると、尻尾で水を真下に向かって掻き、上半身を安定させる。

 体内の水袋に限界まで水を貯め、それを全身の筋肉を使って超圧縮する。(たてがみ)がギシギシと音を立てて絞られて行き、限界まで圧縮された水は熱を持ち、青い光を帯びて放たれた。

 

「ガアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 必死に尻尾で水を掻いているにもかかわらず、水流ブレスの反動で少しずつ後退してしまう。

 

 しかし、その威力は絶大だった。

 

 敵船団の先頭から後方までの全ての船に向かって放たれた全力の水流ブレス──超圧縮水ブレスは、敵帆船の側面を抉り飛ばし、全ての大砲を破壊したのだ 。

 それどころか、大型の帆船を除く全ての船を上下に切り分けてしまった。

 崩れた船の残骸によって、大砲の弾が次々と誘爆を始める。

 それを花火と揶揄して眺めていると、大型の帆船が不自然な動きを見せた。内側から船を破壊して、巨大な何かが迫り上がってきたのだ。

 

 それは、船の殆どを占める程に巨大な大砲だった。

 

 船員や見た目の統一感の無い者達が、必死になって歯車を押して動かしている。

 緩慢な動きで巨大な大砲が動き、その砲口を此方へと向けて来た。

 

 ……何だっけあれ……どっかで見たこと有るような……?

 

 超圧縮水流ブレスの反動で動けない俺は、回復するまでの間にそれを眺めることしかできない。

 

 すると船の後方から、鎖を付けた人間が燃えながら何かを運んで来たではないか。

 その悍ましい光景に驚いていると、その何かが大砲の下部へと入れられた。だが運んでいた人間は力尽きたのか、海へと蹴り捨てられていた。

 

 何か嫌な予感がする……それに、あのやたら高火力な石炭と巨大な大砲──あ、思い出した! あれは対巨龍砲……マズイッ!?

 

 痛む体を無理矢理動かして潜航する。だが次の瞬間に海底が巨大な光に照らされた。

 そして、その直後に起きた特大の爆発によって、俺は波に飲まれて意識を失うのだった。




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