ロアルドロスに転生した話   作:黒木箱 末宝

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タンジアG級ハンター達と楽しく遊ぶお話

 奪い取った大剣を杖にして立ち上がり、今までとは一味違うと分からせるため咆哮を叩き付ける。

 

「ッマズイマズイマズイ!」

「ルース~!」

 

 リオが焦ったようにレイナの元へと駆け寄り、代わりにローズが咆哮によって弾き飛ばされたルースを助けに駆けた。

 

「何がマズイッ!?」

 

 突然大声を出しながら寄ってきたリオに、ストレスから怒り混じりにレイナが問えば、リオは「忘れたの!?」と驚いた様子で答えた。

 

「報告書でもあったけど、大水獣は武器が使える! そして、武器を持った大水獣は普段よりヤバい!!」

「……みたいね」

 

 必死な様子のリオを見て逆に冷静になったレイナは、大剣の柄に両手を乗せ立ち見下ろしている俺の姿に、納得した様に頷いた。

 

 ……もういいかい? じゃあ行くぜ、今度は俺がハンターな!

 

 大剣引き抜いて逆手に持ち、武器を構えるリオとレイナに襲い掛かる。

 

「くッレイナ!」

「ええ!」

 

 リオが盾を構えてレイナを守り、レイナはその後ろから火炎弾をしゃがみ撃ちしてくる。

 連続で放たれる火炎弾を、俺はブレスで迎撃したり避けたり、大剣で防いだり切ってみたりしながら突撃する。

 

「切るのは違うでしょ!?」

「なんなのよもう!!」

 

 やってみたら出来ちゃったんだから仕方ないでしょ!

 

 そんな文句も込めて大剣を叩き付けんと振り上げると、リオが盾を構えて攻撃を受け流す姿勢をとった。

 

「重っ!? オワアアア!?」

 

 だがしかし、それは無謀な行為だ。モンスターの膂力と大剣の威力、雷属性。それに加え確りとダッシュによる加速がのり剣の刃を立てている。

 結果、盾は砕け散り、持ち主であるリオはその破片と共に飛んでいった。

 

「リオッ! キャアッ!?」

 

 そして、リオがシールドでいなして尚強力な一撃を受け、レイナは盾にしたヘビィボウガンごと岩壁へと叩きつけられた。

 

 呻くリオと気絶したレイナを眺めつつ、俺は大剣を左腕に持ち替え、その勢いを利用して横に振るった。

 

「ぐっ、こんのぉ~!」

 

 その攻撃は、側面から襲い掛かってきたローズのハンマーとぶつかり鍔迫り合いが発生する。

 しかし、ローズは大剣を逸らすでもなく、そのままハンマーを押し込んでくる。まるで俺を釘付けにするみたいな。ああ、もちろん今も釘付けだぜ。この後に海でデートでも──

 

「今よ、ルース!」

「ああ!」

 

 俺の背中を何かが駆け上がる。見ると、ルースがはぎ取りナイフを掲げ、突き刺そうとしていた。

 

 ()()()()は後発のアクションでしょうが!

 

 背中──というより鬣──を刺された。それくらいではチクチクする程度で済むが、もし顔にでも来られたら無事では済まないだろう。

 

「な、ぐわっ!?」

「ルース!?」

 

 その場で転がってルースを落とし、乗り状態を解除させる。さて、仕切り直し──だっ!?

 

 しかし、ルースを落として向き直った俺の、大剣を持つ手に火炎弾が直撃。熱と痛みに驚いて大剣を落としてしまった。

 

 まさかと気絶していたはずのレイナのいる方を見ると、リオに支えられながらヘビィボウガンを構えるレイナの姿があった。

 

「……どうしたレイナ?」

「くッ、さっきのでボウガンが壊れたッ!」

 

 何度も引き金を引いたり、ヘビィボウガンを揺すったり叩いたりしているレイナ。誤作動を疑っていた様だが、コッキングレバー──リロードの度に引く棒──を引けない事に気付き、ようやく武器が壊れたと分かった様だ。

 

 その動きから見るに、ヘビィボウガンを盾にした時にバレルかチャンバー──撃つ前に弾が収まる場所──が曲がり、火炎弾の熱で薬莢が溶けてくっつき弾詰まりを起こしているのだろう。レイナはコッキングレバーを叩いたり脚で踏みレバーを引こうとしているが、結局上手くいかず諦めた様だ。

 

「ボウガンが壊れた!」

「俺も盾を壊された! ルース!」

「どうすんのルース! アタシのハンマーもヒビ入ってんだけど!?」

 

「……撤退だ」

 

 俺がレイナの行動を眺めている隙に、急ぎ武器を回収していたルースが言う。

 ルースの大剣は、モンスターである俺が想定外の力で振り回した結果、刃がボロボロになり、それ以外にもガタがきている様子。

 

 そんな切れ味ゲージが真っ赤であろう武器の状態を仲間達に伝え、状況からクエスト続行不可と判断して撤退するようだ。

 

「撃退は失敗だが、今回の情報は後に繋げられる。撤退!」

「くやしぃ~!」

「弁償しろ大水獣!」

「オレの盾も!」

 

 タンジアから来た四人のG級ハンターは、各々好き勝手に捨て台詞を吐きながら、閃光玉を投げ、煙玉やモドリ玉らしき色の臭くて煩い玉を投げて逃げていった。視覚、嗅覚、聴覚を妨害する物なのだろう。

 

 俺は遠ざかるシルエットを眺めながら、これから巻き起こるであろう、大変だが楽しい日々の始まりを感じていた。

 

 

 

 ■

 

 

 

「──これが、俺達が得た大水獣の情報、その全てです」

 

 タンジアの港──そのギルドカウンターの前で、G級ハンターのチームである三界の挑戦者達(トライ・ランダーズ)が、ギルドマスターに大水獣との狩猟で得た情報を報告していた。

 

 本来なら個室で行われていた報告、それが集会所で行われているのには理由がある。何せ相手はロアルドロス。二つ名付きかつ特殊な個体とは言えど“所詮は他より大きなロアルドロスだ”と、これまでの逸話を本気に捉えていないハンターやギルド職員が大半にいる状況だ。

 そして更に、狩猟に特別な許可が必要な他の二つ名個体と特殊個体の情報が、一定ランクを超えなければ教えられない事にも原因があった。研究や個体数の保護、実力を見誤ったり、功を焦るハンターがでないよう情報を秘匿した結果、一般のハンターはそれらの脅威を明確に理解できないのだ。

 

 実際に、紅兜を“所詮はアオアシラだろ”と侮ったハンターがどれだけ犠牲になった事か……。

 

 その為にトライ・ランダーズには、己等の敗北内容を広場で語らせ、恥を晒させてしまう事になる。しかし、それをギルドマスターに伝えられたルースは必要な事だと受け入れ、皆に聞こえる様ハッキリとした声でこれまでの事を語って見せた。

 

 ルースの語る内容に、最初は笑いをこぼしていたハンター達。しかし語られる突飛な内容と、それらの証拠である傷付き壊された武器を見せられ、次第に笑えなくなり、表情に真剣味を帯び始めていった。

 

「うむ……矢張り大水獣は……いや、ワシが決めるのはいかんか。……ルースよ、お主から見て大水獣は──()()()()()()?」

 

 ギルドマスターの言葉にルース達は顔を顰め、耳をそばだてていたハンター達はギョッとしたり表情でギルドマスターを見た。

 ギルドマスターの言っている事が理解出来てしまったハンターは驚愕したり、眉根の皺をより深くしている。

 

 そして、ルースは口を開けたり閉めたりしながら言葉を選び、ハッキリと答えた。

 

()()()。他の報告書を読んだ限り、今回の大水獣は戦っていません──前回と同様、()()()()()()()……」

 

 ルースの脳内に、大水獣が戦いの最中に見せた表情が浮かんだ。そして自分達と対峙した大水獣の顔には、普段狩猟するモンスターが見せる様な敵意や殺意は無く、ハンターが賭事や飲み比べの時に見せる様な、本気の遊びを楽しむ表情に酷く似ていた。

 

「──そうか……過去、大水獣はその巨体に見合わず臆病だと報告があったが……()()()()()()()()()()()()()()()と言うことかのぅ……」

 

 ギルドマスターの言葉が嫌に響き、静寂が訪れる。

 

 しかしその静寂を晴らすように、ギルドマスターが白湯の入ったジョッキを呷り、ハンター達を鼓舞する様に言った。

 

「とは言えじゃ。舐められたままではよくないし、何より面白くない!」

 

 ギルドマスターの言葉に、周囲にいるハンター達が「そうだ!」「面白くねぇ!」「ハンターナメんな!」と口々に叫ぶ。

 

 そんな時だった。タンジアの港からギルドへ向かって、皇海龍の装備を纏うランス使いのハンターと、嵐龍の装備を纏う太刀使いのハンターが現れた。

 

「あれは……古龍の装備っ!?」

「しかも両方とも古龍だ……間違い無いっ!」

「ぬぅっ……あ、あれが噂に聞く、古龍を単身で討ち取ったという英雄……!」

「知っているのかサンダーボルト……!?」

 

 突如としてタンジアに現れた二人の英雄にざわめくハンター達。

 そして、ギルドマスターはその二人に向けて特別狩猟許可書を差し出し、ニヤリと笑って言った。

 

「良い所に来たのぅ。()()()()()()()。お主達、ちょっと全力で遊んでみんか?」

 

 ギルドマスターから差し出された特別狩猟許可書を受け取った二人──ユクモのハンターとモガのハンターは、片方は覚悟を決めた笑みを浮かべ、片方は漸く戦える歓喜に歯を剥いて笑っていた。




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■オマケ
ボツネタ:ディノバルド✕ケツバトラーの話。
ケツバトラーを見て“これディノバルドいけるじゃん!”と書いたが、そもそもケツバトラーを知らないので、どちらの世界で書くにせよボツに。
使えるなら使っていいですよ!
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