白いドレスの少女。
それはMHP2GのG3クエストにて、とある古龍の討伐を依頼するとんでもない存在だ。
その依頼を受け、目的地である塔の天辺へと向かうと、そこにはモンスターハンターの世界で神と呼ばれる存在──祖龍ミラボレアスが舌舐めずりをしてハンターを待っていたのだ。
上記の状況と狩猟対象の見た目から、この白いドレスの少女こそが祖龍の分身、または祖龍そのものだと噂されていたのだが…… 。
(それが今、俺の目の前に……)
件の少女は何が楽しいのか、月光を浴びて輝く白い足で海水を蹴り、パシャパシャと飛沫を立てて遊んでいた。
何の素材か分からない、白く透ける古風なデザインのドレス。その裾を持ち上げ楽しそうに遊ぶ少女、その艷やかな脚に思わず目が惹かれてしまう。
まるで見せ付けるかの様に、細く愛らしい指が蠱惑的に少女の肢体を撫であげる。
湧き上がる“欲しい”という欲望を抑えつけながら少女を眺めていると、その純白の印象とは真逆の真紅に輝く龍眼と視線がぶつかった。
『うふふ、
一層魅力的な微笑みを浮かべ、自身の身体を自慢する様に舞う純白の少女。
少女自身が発言するとは思えない『お気に入り』という言葉。その真紅に輝く瞳を見るに、古龍との共鳴現象だろう。
しかし感じる古龍の気配と、身体を磔にするような重い威圧感からして、共鳴によって竜人族の少女を操る本体は、かのネカマでド変態な古龍で間違いないようだった。
(……中身が
『……不敬』
(アバッ!?)
溜め息の混じる呆れの思考を読んだのか、ムッとした表情の少女が手を振り下ろすと、大水獣の頭に弱めの赤雷が落ちて来た。
■
(……で、何しに来たんだよ。それと異界の落し子ってのは俺の事で間違いないのか?)
大水獣の質問を無視して『ダンスの練習はおしまい?』と問い掛ける少女。そんな少女は、先程の大水獣の思考が気に入らなかったのか、麻痺して倒れているその鼻先に真顔で水を掛け続けている。
足で水をかき上げる度にチラチラと見えそうで見えないスカートの中の禁域に意識を逸らされる。
このまま眺めているのも良いかと考えた大水獣だったが、次第に身体を押し潰す圧力が増し、赤い雷が身体を撫で始めたので、何とかして問いかけの内容を考える。
そして大水獣は『鍛えないで何してるの?』と少女の発言を推測した。
確認の意志を込めて、少女の真珠の様な爪先や太ももから視点を上げ、見下す様な目を見れば、少女とその奥に居るであろうアレは否定しなかった。間違いではないのだろう。
(……別に? 奴と俺はなんの関係も無いし、戦う必要がないって気付いただけだよ)
どこか吐き捨てる様に言った大水獣の言葉を読み取ると、少女はドレスの裾が濡れるのも気にせずしゃがんで大水獣の視線を近付け、まるで拗ねた子供に問いかけるかのように言った。
『でもお前は、それに気付いたのに落ち着かない』
内心を言い当てられ驚く大水獣。
そして、少女は更に続けて大水獣の不安を言葉にして表した。
「君の出現と干渉によって、
(……)
「……良いこと教えてあげる。このままじゃあの子も──それどころか、あの村も、港も危ないわよ」
(それは……!)
「そうなる原因……思い当たる節があるでしょ?」
思い当たる節があり過ぎて黙る大水獣。
何せ、孤島に関わるクエストのほぼ全部が大水獣によって未然に防いだり、先に対象を捕食もしくは撃退してしまっていたからだ。
更にモガの森に現れる個体も、大水獣によって思わぬ成長を遂げた個体や大水獣そのものによって狩られている。その食べ残しや残骸を回収する事で特産品を得ていたモガのハンターは、積極的にモガの森で狩りをする事は少なくなっていた。
そして、修行の際に狩ったモンスター。彼等彼女等も、本来ならG級の星一クエストでターゲットになる個体だった。しかし、大水獣がその悉くを排除してしまった。
(……それでもさぁ……ハンターちゃんは主人公だぜ?)
『……ふーん、怖いんだ』
(はぁ……?)
それでも煮え切らない態度の大水獣を少女は煽る。
麻痺と圧力で身動きできない大水獣の耳元で、大水獣の頭を撫でながら、少女が悪戯に囁き始める。
『残念だけど、仕方ないものね。何せお前はただの人で、今は狩られる側のモンスター……』
(……何が言いたい……?)
『確かこう呼ぶんだったかしら? ──“敗北者”と』
(ッ!?!?)
嫌に聞き覚えのある単語をぶつけられ、記憶でも読まれたのかと焦る大水獣。
『世界を恐れて逃げ出して、狭い
(お前──!!)
『──また逃げるの?
その一言で大水獣は──ロアルドロスに転生した男は思い出す。自身の前世、その出来事。そこから逃げ出した、どうしようもない
そして嫌な事から逃げ出し続けた結果、男を待ち受けていたのは、逃げる事が許されない世界への
(………………ってや──)
『ん~?』
(やってやろうじゃねぇかよ! 今度は逃げなきゃいいんだろ!? 簡単な事じゃねぇか……
身体を蝕む麻痺を打ち破り、大地に貼り付ける威圧感を押し返して立ち上がる。
そうして、今までで一番の笑顔を浮かべる少女に向かって覚悟を言い放つと少女は『退屈させたら許さないんだから』と赤雷を落とす。
咄嗟に避ける大水獣。すると、白いドレスの少女は、その気配ごと存在しなかったかのように消えていた。
大水獣は月に向かって吠える。その咆哮の意味は本人にしか分からないが、今はそれでよかった。
そしてその咆哮を自身への挑発として受取り夜の孤島に上陸した白海竜が吼える。そんな白海竜へ向かって、大水獣はラージャンの如くラリアットをかまし、海中でプロレスを開始するのであった。
■
「『大水獣に異様な動き有り』か……」
大水獣の奇行は当然ギルド側も観測しており、まるで焦るように鍛える大水獣に何かが有るとギルドは考え、もしもの備えを急がせる。
そんな大水獣の前に、ギルドマスターから話を聞いたモガのハンターが現れた。
「『様子を見てこい』って言われ来てみたけど……何してんの?」
「何か大きくなったっチャ?」
「ヘビー&ビッグンバ!」
(おっすハンターちゃん。見ての通りご飯だよ)
白海竜を捕食している大水獣に驚くモガのハンター。「そのままでよければ聞きたいんだけど」と前置きをし、最近始めた修行の様な行動やその理由を聞こうとする。
(何でそんな事を──いや、気になるか。俺注目されてるらしいし、そんなのが変な事してれば調査の必要がでるわな)
白海竜の残りをルドロス達に食べる許可を出し、大水獣は浜辺に爪で文字を書き始めた。
『禁忌が目覚め、そいつを狩る必要が出てきた。名はグラン・ミラオス。タンジアに言い伝えが残る大地とか火山みたいな大型の古龍だ』
「──禁忌が……え、狩る? グラ……何で知って、古龍!?」
(お、ちゃんと伝わってる)
モガのハンターに教えて貰った文字で、受け止めきれるであろう量の情報を書き出す。文字を読んだ反応から察するに、問題無く伝わっている様だ。
モガのハンターは両手で顔を覆い大きな溜め息を吐くと、ハンターノートを取り出して書き出した文字を写し出す。
そして全てを書き写し、書きミスや脱字がないかの確認を終えると、大水獣に半目を向け「何で知ってるの?」と問うてきた。その後に嫌な予感がしたモガのハンターだったが後の祭りだ。
(あ、そりゃ気になるか。でもなー前世知識って言っても説得力に欠けるし──あ、そうだ)
『知っている理由は、白の禁忌から教えてもらったから』
「白の禁忌?」
モガのハンターの質問に頷いて答えると、何やら見逃せないらしく、ページを新たにして並行して写し書きを始めた。
『人の歴史上で伝説として書かれている黒龍伝説。その更に上と言っても過言ではない存在』
「黒龍伝説って……じゃあ、伝説は伝説じゃない……?」
(そうだよ。ちゃんと今もシュレイドにいるみたいだぞ? そっちから視線増えたし)
大水獣は(今更一つぐらい良いか)とヤケになって開き直り(ネタバレ楽し~!)というテンションで更に続ける。
『そんな黒龍を超える、神と称えられるモンスター。その名は──』
「……その名は?」
『祖龍ミラ──』
かの者の名前を書き出そうとしたその時だった。
大水獣は背筋を撫でる死の気配から逃れるため、文字を覗き込んでいたモガのハンターとチャチャ&カヤンバを殴り飛ばし、大地を砕く威力の赤雷を回避した。
「何が──え……?」
突然殴り飛ばされ困惑し、直後に島を揺らす轟音に呆然とするモガのハンター。状況を確認するため急いで起き上がると、さっきまで自分達が居た場所に大きなクレーターが出来ているのを見付ける。
暫く経ってもなお目視出来る赤雷の残留に、天を仰ぎ見る大水獣。
クレーターとなる前、そこに書かれていたモノと何処からか放たれた、ただのモンスターでは放つ事さえできない程の赤い雷に焼かれたことで、モガのハンターは焦燥感に駆られる。
「ねえ、何を書いたの!?」
『照れ屋らしい』
湧き上がる恐怖に大水獣へ問いただそとするモガのハンターだったが、しかし“駄目だったか”と物怖じしない大水獣の様子を見て落ち着き、直後に書かれた文字を読んで落ち着いたようだ。
「照れ屋……?」
(そう。照れ屋なバ美肉変態古龍──アバッ!?)
「うわっ!? 火が!」
大水獣の内心を読んでか、仕置をするかのように赤雷が落ちて来た。そして麻痺する大水獣から跳ねた火花がハンターノートへと移ると、禁忌を書き出したページが焼け落ちてしまった。
「……ねえ、今回の事も含めて報告しなきゃいけないんだけど、大丈夫そう?」
摩訶不思議な現象については今更かとため息を吐きつつ、この情報をギルドに知らせて良いか聞くモガのハンター。
(カァッ!! ──んあ、報告? 良いよ、ついでに伝言よろしく)
気合で麻痺を治した大水獣はモガのハンターに頷くと『その時が来たら俺も狩りに参加する』と書き記し、厄海の方角を静かに睨むのだ。
白いアレ
皆さんご存知の祖龍。大水獣が産まれる前から観ていました。
異界より落ちて来た異物に眉を顰めていたが、変な力(チート)も持ってないし世界を荒らさずに順応して普通に生き始めたので放置していた。
この個体(他にいるのか?)は穏便なため、余程の事がなければ観てるだけ。
★イャンガルルガ、イビルジョー、激昂ラージャン、シャガルマガラ等々世界に大きな影響を与える存在が普通に生存を許されているなら、恐らくそう言った生態だったり生きるのに必要な行為なら関与しないんじゃないかな?しらんけど。
白いドレスの少女。
白いアレのお気に入り。出自や見た目など何もかもが謎。
★このお話に擬人化・人化タグは無いので、共鳴で操られているという設定。確定して無い内は自由だぜ。