「オレチャマも乗りたいっチャー!」
「ワガハイも乗りたいっンバ! オマエだけズルイっンバ!」
大水獣に乗りたがるチャチャとカヤンバを両脇に抱え、モガのハンターは交易船に乗ってモガの村を出てタンジアへ向う。
そんな道中、交易船の斜め後ろを泳いでついてくる大水獣を見て、それに乗って村に現れたハンターを羨んだチャチャとカヤンバは『
「駄目だって。大水獣も“嫌”って言ってたでしょ?」
「……ブ~」
「──隙ありっンバ!」
「あ、こら!」
「ズルイっチャ!」
チャチャに意識が向き、モガのハンターに隙が出来た。そこを見事について腕から抜け出したカヤンバとチャチャは船尾へと向かい、波によって跳ね上がった瞬間に大水獣へとジャンプした。
「チャ~~~~!!」
「ンバ~~~~!!」
(なんだぁ!?)
急に顔へと飛び込んで来たチャチャとカヤンバに驚く大水獣。しかしすぐにそれが何で何故飛んできたのかを察し、対処に動く。
(さんざん乗りたいって騒いでたもんな……まったく。海原で小さいの乗せて泳ぐの危ないってのに……)
「乗ったっチャー!」
「グッドロケーションっンバ!」
(……そうだな、ならもっといい景色みせてやるか)
「ンチャ?」
「ンバ?」
トサカを掴むチャチャとカヤンバを振り落とし咥える。その一瞬の出来事に理解が追いついていないのか、二人は呆然としている。
(さて、船の速度からして角度はこれくらいで、ブレスの威力は……強めかな?)
「な、何するつもりっチャ!?」
「ヘルプミー!!」
(チャチャンバ砲、発射ァ!)
「アブブブ!?」
「ンバババ!?」
大水獣のブレスに押し出される事で発射されたチャチャとカヤンバは、見事な力のコントロールによりモガのハンターの元へと落ちるのであった。
そんなこんなで交易船はタンジアへと到着。しかし、このまま大水獣を連れて行っては余計なトラブルが起きる。
なのでタンジアギルドを視認できる位置に大水獣を待たせる事にしたようだ。
「ここで待ってて、上陸許可貰ってくる。許可貰えたら合図は大銅鑼──大きな音で知らせるから、ゆっくり来てね」
(なる早でたのむね。泳ぎっぱなしも疲れるんだよ)
大水獣の了承の返事に頷き、モガのハンターを乗せた交易船はタンジアへ着港、停泊する。
「オヌシの健闘を祈るゼヨ!」
「ありがとう船長。行ってきます」
交易船の船長に見送られ、沖で泳ぐ大水獣に不安がる人々を宥めながらモガのハンターはギルドへ向う。
「ん? ……お、おいあれ!」
「どうし──ロアルドロスだ! しかもデカい!」
「ほんとだ……ありゃデカい! 」
「『デカさ』はどうでもいいーー!! ギルドマスター、港にロアルドロスがー!!」
「あー、落ち着けハンター諸君。アレは大丈夫なやつじゃよ……たぶん……」
案の定、ギルドマスターに伝えてはいたものの、港へ現れた有名なモンスターの登場に皆浮き足立っていた。
「ほんとに来ちゃった」
「見る度に大きく成ってますニャ」
「そのうちジエン・モーランと同じになるニャ」
「ふふ、そりゃ良いね」
そんな中、大水獣をモガのハンターの次に知っているユクモのハンターは、一人テーブルに座り食事をしていた。
そうして慌てる人々を肴にゴエモンとシチベエと軽口を交わしていると、そこへモガのハンターが登場。
「ギルドマスター」
「おう、来たかモガのハンターよ。して、首尾の方は?」
「問題無しです」
「──そう、か……ふぅ……気が軽くなったわい……!」
ギルドマスターは大水獣を連れてきたモガのハンターに慄きつつ、その大水獣が対グラン・ミラオスへの仲間と成った事に喜びを表す。
「して、モガのハンターよ。用意は済ませたかの?」
「はい、ここで挨拶を済ませれば全て」
「うむ、ではこれより煉黒龍グラン・ミラオスの討伐作戦、その最終準備に入る。……暫らく時間がかかるから、話しは済ませておきなさい」
「はい。あ、それとギルドマスター。大水獣をここに呼んでも良いですか?」
モガのハンターより放たれた一言に、ギルドマスターはカウンターから落ちたのだった。
港内でゆったりと泳ぐ大水獣の耳に、タンジアギルドに設置された大銅鑼が放つ轟音が届いた。
(大銅鑼が鳴ったってことは……行っても大丈夫そうだな)
顔をギルド側に向けて見れば、モガのハンターが手を振って呼んでいる。
(驚かせない様に静かに行くか)
モガのハンターを背に乗せた時の様に、ゆっくりと泳ぎ港と浅瀬へと向う。
最初は大水獣を見て物珍しそうにしていた人々だったが、次第に大水獣の全貌を見てその強さを身体で理解し、その度に顔が引き攣り、青褪めていく。
(やっぱ緊張するな、無駄に力入ってるか?)
水に浮かぶ姿に「大きいな」と言った者は、大水獣が浅瀬へと体を上げ、見える面積が倍以上になり理解が追い付かず硬直。
(うわ、面積デカいから一歩ごとに波が出やがる)
岩壁を撃つ波の音に、ある者は後退り、ある者は背を見せ逃げ出し、ある者は無意識に武器へと手を伸ばしていた。
(ふふふ、怖いか? 俺も怖い。ハンターいっぱいいる~~~~!)
動きを止め、目を細めてハンターを見下ろす大水獣。僅かに漂う一触即発の空気。
しかしそれを振り払う様に、モガのハンターが当たり前の様に大水獣へと近付き、続いてユクモのハンターが歩み寄り、何時もの様に挨拶して見せた。
「準備に時間掛かるから、暫く休んでて」
「やあ、相変わらず大きいね君は」
(了解ハンターちゃん。そして久し振り、ユクモのハンターちゃん。そっちも相変わらず──成長している!?)
「目線を下げるニャ」
「気持ちは解るニャ」
(いや、だってさあ……ねぇ?)
モガのハンターの言葉に頷き、ユクモのハンターへ挨拶を返しつつ目を一部に奪われる大水獣。
そんな凶悪なモンスターのイメージと掛け離れた姿と、さらに人と意思疎通が取れている様子に、周囲の者は唖然とするのであった。
シー・タンジニャのテーブル席。その位置が大水獣の頭の位置と丁度良いので、モガとユクモのハンター達はそこで食事を取る事にした。
「ピンクキャビアとキングトリュフの炒め物で」
「はいニャ、一番良いのを用意するニャ。はなむけですニャ」
モガのハンターは大水獣に言われた通りに耐性を上げる食事を注文した。すると、シー・タンジニャ側の計らいか、両方鮮度抜群な物で作ってくれると言う。
「ありがと。頑張るね」
「ニャ。気をつけるニャ」
続いてウェイターのアイルーはユクモのハンターへ注文を取る。傷が完治していないため、グラン・ミラオスへ挑戦できないユクモのハンターは、ある目的の為に防御力と
そして、ダメ元の一言を付け加えた。
「じゃあ、私はマスターベーグルとロイヤルチーズの炒め物。それも一番良いので!」
「はいニャ、でも一番良いのは本日モガのハンター様限定ニャ」
「……ふふ、ちぇー」
不貞腐れる様な声と不釣り合いな笑みを浮かべるユクモのハンター。
何が嬉しいのか、モガのハンターへ「良かったね」と微笑んでいる。
(いいなーハンターちゃん達、いいな~)
「良いかニャ? ……ニャ。ご注文は何にするニャ?」
(え、いいの!?)
大水獣が邪魔にならない程度にチラチラ見ていると、それを察したウェイターのアイルーがキッチンを一目見る。するとキッチンからOKの合図が出たので、注文を取ることにしたようだ。
「ボクが順番に食材の種類と調理方法を言っていくニャ。食べたい物と調理方法の時に頷いてほしいニャ」
(解った! じゃあ肉と酒を煮込んで
そうして大水獣が選んだ組み合わせで選んで出て来たのは、大皿いっぱいの龍頭のブレスワイン煮込みだった。
(ビーフシチューみたいだ。テンション上る~!)
こうして、大水獣とハンター達は最後になるかも知れない食事を楽しむのだった。
【体力が上がった】【スタミナが上がった】
【攻撃が上がった】
【ネコの火事場力が発動!】
【ネコの解体術【大】が発動!】
(溢れる……昂る……ッ! ハンターちゃん、猫飯の効果って凄いな!)
食事を全て食べきった大水獣だったが、その効果により全身の筋肉が僅かに隆起。腕部も赤く染まり、大水獣は謎の全能感を感じていた。
「え、何それ知らない。怖……」
「アハハハハハハ!」
(未知の現象!?)
ドン引きした様子のモガのハンターに、好敵手が簡単に強化されたのが面白いのか大笑いし出すユクモのハンター。
そうして和気藹々とした雰囲気のテーブル席を、他のハンター達は遠目に眺めるしかできなかった。
何せその席には、一人とオトモ二匹で古龍を幾度も討ち倒した伝説達と、その伝説すら打ち負かす
本人達はなんとも思っていない様子だが、その身からは安易に近づく事を考えられない重圧の様な何かが滲み出ていた。
「お前ら、凄かったんだな……その、今までスマン!」
そんな大水獣の恐ろしさを直に感じた事で、過去に大水獣へと挑み惨敗したハンター達を嘲笑った者達が謝罪して回っていた。
「いや、いいさ。アレの恐ろしさは挑んだ者にしか分からないからな」
「クルスの言う通りだ。因みに火属性を無効化してきたりするぞ」
「積極的にガンナーを狙うし、弾も奪った武器で切り落としたりするわ」
「どう、勝てそう?」
「……無理だ。すげぇよ、あんたら」
その後も様々な事が起きた。物足りなさそうな大水獣に、モガのハンターがこんがり肉を与えたり。
そんな光景に我慢の限界が来たのか、モンスターやロアルドロスをメインに研究している研究員が突撃したり。
そうしている間に、グラン・ミラオス討伐の準備は完了。先程までタンジアを包んでいた賑やかな雰囲気は鳴りを潜め、皆が思い思いな言葉をモガのハンターと大水獣にかける。
こうして一同は、一人と一匹の勇者に敬意を表し、船出を見送るのであった。
次回か次々回で最終回です。