引っかかる所もあるかもしれませんが、どうかご容赦下さい
「グオオッ!?」
後ろで大きなラギアクルスの鳴き声が聞こえた。見ると、ハンターちゃんがランスで不意打ちに成功していた。
やるじゃんハンターちゃん! よし、俺も負けてられないな!
「グオウ!」
余所見している俺にチャンスと見たのか、小さいラギアクルスが噛み付こうと首を下げてくる。
……わざとらしく隙を晒せば攻撃してくるんだ。これまで戦ったモンスター全てに通じたカウンター技だ。
小さいラギアクルスの胸を押し込み、その反動で上半身をそらす。そして勢いそのままに尻尾を振り上げて、小さいラギアクルスの下顎をサマーソルトで跳ね上げる。
「グオオンッ!?」
タックルで岩場に押し込まれた小さいラギアクルスは、サマーソルトによって跳ね上げられた頭を岩壁に打ち付け、目眩を起こす。
チャンスだな。そう思って隙だらけの喉元に噛み付こうとした瞬間、小さいラギアクルスと目が合った。
マズ──!
「ッグオオオオオオーーー!!」
小さいラギアクルスは、貯めに貯めた電気をここで放出した。
蒼雷で海が白む。その雷光に、思わず目を閉じてしまった。
──ッ……やるじゃない!
俺のやり方を学んだのか、小さいラギアクルスは自身の隙を利用して俺に雷撃を放ったのだ。
しかし、寸前で雷撃を避けることが出来た。僅かにかすったものの、自身の雷耐性のお陰か極僅かに痺れた程度で済んだ。
そして隙だらけの俺を見逃す訳もなく、小さいラギアクルスは
……もしこのまま攻撃を受ければ、例え雷耐性が高くとも目や神経が──最悪脳が焼かれて、俺は死に至るだろう。
──そうかい、成る程。
「グオオオ────ッ~~~~?!?!」
バチン!! と、海中を拍子が響いた。
頭に迫りくる死の攻撃を、首を引くことで避ける。
ならばと胸元に噛み付こうと近付くその攻撃を、俺は拍手をする様にしてラギアクルスの口をはさみ、強引に閉じた。
……謝るよ、ラギアクルスくん。君はバカじゃない。
何なら俺の方が馬鹿だったな。何せ、
そりゃ怒るわけだ。
自身の恥ずかしさに怒りが込み上げる。鉤爪がラギアクルスにズブズブとめり込み、口がミシミシと音を立てて軋み始め、牙にヒビが入るピシピシといった音が辺りに静かに響いた。
「ッ~~~~!?」
体を必死に振って俺を振り払おうとする小さいラギアクルス。
それに合わせて振り子のように引っ張って泳いでやれば、小さいラギアクルスの脳が大きく振り揺れて、首がミシミシと異音を立て始める。
ここで君の首を軸に俺が回転すると、鰐のデスロールが如き威力で君の首がへし折れるけど……どうする?
「ッ~~グ、グウウウウ~~!!」
ジワジワと滲みる死の気配に、小さいラギアクルスは必死に唸る。
「ッ!? グオオオオッ!!」
すると、その声を聞いた番の大きなラギアクルスがハンターちゃんを無視して突撃して来た。
このまま小さなラギアクルスを振り殴り付けても良いが、軸が合わないので仕方無く離して避ける。
すれ違いざまに大きなラギアクルスの胸を引っ掻いて、部位破壊したかの様な傷を付けた。当たりどころが悪かったのか、血が多く流れた。
「オオッ!」
「クオオオン……!」
互いの傷を舐めて癒そうとするラギアクルス達。それを眺めながら、俺はハンターちゃんの側に泳ぐ。
ふむ、見た感じダメージは少なそうだね。……ところで水中で回復薬って……ああ、そう飲むの。凄いね人類。
「グルルル……ゴアアアア~~~~!!」
「ゴオオオオオォオ!!!」
二匹のラギアクルスによる咆哮が轟く。
俺も咆哮を放ち音をぶつけて耳を守る。ハンターちゃんは……あ、盾で防げるの。凄いね。
怒りに蒼雷を纏う大きなラギアクルスが、此方を睥睨するかの様に泳ぐ。その側を回るようにして小さなラギアクルスが泳いでいる。
何をしているのかと見れば、小さなラギアクルスが体を動かすことで発電し、大きなラギアクルスへと電気を渡しているじゃないか。
野生動物が電気を操っている。凄いね大自然。
「ッ……ゴアアアアア!!」
「ッ……ガアアアアア!!」
そうして互いに充電を終えたラギアクルス達が、覚悟を決めた様な、決死の表情を浮かべて突撃して来た。
……何だが猛烈にイヤな予感がする。
なので俺は突撃を避けるついでに妨害するため、ゲームの頃から好きだった帯電し輝くラギアクルスの背殻を剥ぎ取ろうと手を伸ばした。
──バヂンッ!!
しかし背殻に爪が触れた瞬間、高圧電流が爪に流れたのだ。
あ痛ぁッ!? え、爪先溶けたんだけど……マズイッ!?
溶けた爪に気を取られていた所為か、ラギアクルス達の行動から目を離してしまっていた。
「ゴアアアアアアアアアア!!!!」
「ガアアアアアアアアアア!!!!」
ラギアクルス達がエリアをグルグルと泳ぎ始めたのだ。
それだけなら普通に警戒するだけだったが、エリアの中心に渦潮が発生、そこに向かって引っ張られ始めた。
大きなラギアクルスが外縁を周り、小さいラギアクルスが内縁で高速で泳いでいる。その流れの差によって発生した渦潮だが、奴等の攻撃はそれだけで終わらない。
コイツらはどこでこんな技をッ!
バチバチと何かが顔を刺激する。見ると、ラギアクルス達が流した血と鱗に奴等が流した雷が帯電している。それが渦に飲まれて中心に集まり、雷球を作り出していたのだ。
その渦潮は徐々に大きくなり、周囲を泳いでいたクラゲを吸い込み雷球に接触。生きながら分解されてゆく。
エリアの隅を泳いでいた鮫すら引き寄せられ、雷球によって水中で焼き殺されてしまった。
ざけんなテメー!自然現象に喧嘩売ってんじゃねーぞコラー!!
「ごばっ!?」
「ニギャー!?」
雷球を背にして突進を放ち、全力で逃げているにもかかわらず吸い込まれているハンターちゃんを掴んで抱え、流れそうになっているチャチャを咥えて泳ぐ。
別のエリアか外に逃げようとしたが、間に合いそうにない。
岸壁に四肢を踏み締めてハンターちゃんを──
その直後、背後で限界までエネルギーの貯まった雷球が大爆発を巻き起こした!
「グオッ!?」
「んん~!?」
「チャガァ~~~~!!!?」
グオオオオッ!! 背中とか尻尾がビリビリするッ! チョー痛てぇ!!
大爆発による電撃と激流が背中を撃つ。
だがしかし、耐性と体の大きさ故かそんなに影響がないようだ。
チクショウ、やりやがったな! ……あれ、ラギアクルス達は?
このまま隙を晒し続けるのはマズイと後を振り向く。しかしそこには、舞い上がった砂埃と不気味な静寂しかなかった。
……どこからでも来やがれ。返り討ちに──あー……まあ、そうだろうねぇ。
外からの海流で砂埃が流れ、爆発地点が顕になった。
しかしそこには、壁に叩きつけられた瀕死の大きなラギアクルスと、瓦礫に潰されて死にかけている小さいラギアクルスの姿があった。
あの決死の表情……刺し違えるつもりだったのか。
とは言えこのまま放置するのも忍びない。何か手は……。
周囲に使えそうな物を探してみると、隣に丁度よい大きさの武器を持つハンターちゃんが。
良し……介錯しもうす! いけ、ハンターちゃん!
「ごぼッ! うばあ!?」
間抜けを晒したラギアクルス達を介錯すべく、大きなラギアクルスに向かってハンターちゃんを爪に引っ掛け槍のように投げる。
俺が何をしたいのか理解したかわからないが、ハンターちゃんは俺が引っ掻いて削いだ胸の傷に向かって突進。大きなラギアクルスの心臓を突き刺し、とどめを刺したのだった。
はー終わった終わった。疲れた~!
ラギアクルス達を討伐した……まあ、討伐した俺は、ヘロヘロのハンターちゃんを背に乗せ、ラギアクルス二体を咥えたり爪に引っ掛けたりして引き摺って泳ぎ、海岸へと向かっていた。
い〜よいしょお! よし、到着。ほら降りなハンターちゃん。ハンターの最後の仕事が残ってるぞ。
「……え、何? ……あ、剥ぎ取り……」
爪でラギアクルスの鱗を剥いで見せれば、ハンターちゃんはフラつきながらもラギアクルスにナイフを突き立てた。
剥ぎ取りを済ませ、狩猟成功の合図である信号弾を上げてたハンターちゃんは、大きなラギアクルスの上に乗って休み始めた。
それを横目に見ていた俺は、ルドロス達に囲まれていた。
「オウッ!」「オウッ」「ピィー!」「アオッ!」
ん、なになに? こんな凄い獲物を獲ってきて尊敬? 交尾? ……後でね。
「ハンターさーん! て、うわ!」
「大丈夫、彼等に手を出さなければ攻撃はされないから……たぶん」
回収しに来た人員をよそ目に、小さいラギアクルスを引き摺って食べたり、ルドロスに与えたりした。
ハンターちゃんとの協議? により受け取った。助けたお礼だとかなんとか。
「ああ、ラギアクルスが食べられて……」
「良いの。お礼だから」
「え、お礼? ……まあ、ハンターさんが良いなら構いませんが……」
さて、ラギアクルスを倒したなら、アイツが出てくるな。地震に備えねば。
こうしてモガの森の戦いは一旦の区切りが付いた。しかし、これは混沌に陥るモガの森生活の、ほんの始まりに過ぎなかったのであるッ!
──こうび!
……後でね!!
評価と感想をよろしくお願いします。