今回はグロ描写注意です。
「ガアアアッ!?」
雄々しさの欠片もない、悲鳴混じりの咆哮。
途端、力を失った様に垂れ下がり、ピクピクと痙攣するイビルジョーの下半身。
俺は更に万全を期すため、鉤爪をグリグリと動かし脊髄を断って行く。
「ガアアアアアッ!? ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!?」
どうにか俺の行動を止めようと小さな前脚をバタつかせ、首をグリグリと動かすイビルジョー。
その度に腰に激痛が走る所為か、痛みと怒りのループで発狂しかけている。
鉤爪からも体温の上昇を感じる。
目の前にある背筋も盛り上がり、赤く浮かび上がってきた。
「──コ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!!」
怒りの咆哮が轟く。しかし、イビルジョーは動けない。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
イビルジョーが限界いっぱいに首を振り、ブレスをかけてくる。
だが、ロアルドロスに龍属性は効かないんだ。
とは言え高エネルギーには変わりない。ブレスを避けるため、体を反対側に倒す。
するとどうなるか。尻尾を掴みながら倒れる俺にイビルジョーの下半身が引っ張られ、結果的に脊髄を断裂する事が出来たのだ。
「キ゛ャ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!?」
ブチブチ、ゴギン!
イビルジョーの腰の筋肉が千切れ、骨が外れた。
今までで一番悲痛な叫び声を上げ、遂に上半身を伏せてしまった。
その隙にイビルジョーから離れる。
振り向くと、イビルジョーが涙を流しながら「クウ……クウ……」と泣いていた。
……前世でさ、俺も腰をやらかした事があるんだ。
軽く痛めただけで、今までの生活全てが崩れ落ちた様な気分だった。
何か行動する度に痛みに怯えて、動く事そのものが恐怖に変わったんだ。
「……グウウッ……! グオオオオオオ………!!!」
それを俺は、より酷い形であいつに押し付けてしまった。
狩るためでも無く、縄張り争いのためでもなく……。
ただイビルジョーが怖くて、死にたく無いがために、俺はイビルジョーに中途半端な事をしてしまった。
イビルジョーは小さな前脚を大地に突き立て、元凶の俺目掛けてゆっくりと……ゆっくりと近付いてくる。
「グウウ……!!」
その目から龍気が漏れ出始めた。怒りの時とは違う、まるで飢えているかのような──生に渇望した怨霊の様な姿だった。
やがてイビルジョーは、その大顎で大地に食らいつくと、上半身の力だけで微動だにしない下半身を振り上げ、俺目掛けてて──
危ねぇ!!?
咄嗟にローリングして、ハンマーの如く振り下ろされたイビルジョーの下半身を避ける。
こいつ……使い物にならないからってなんて無茶な──
そうして振り向いて見たイビルジョーは、口先を残した全てが龍気に飲み込まれていた。
うわああああああああああ!!? 何だこれ! 何なんだそれはッ!?
垂直に開き迫るイビルジョーの大顎を、無理矢理体を動かして避ける。
そして、必死になって距離を取り、俺は
口先を除く上半身の全てが龍気で飲み込まれており、その中で真っ赤な目だけが怪しくボンヤリと浮かんでいる。
動かなくなった下半身を引き摺りながら、短い前脚を大地に突き立て地を這う……それだけなのに、酷く恐怖心を煽る、未知の姿のイビルジョー。
怒り食らうイビルジョーとは違う……仇の魂まで食らわんと這う、怨霊のイビルジョーだ。
「ホ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛……!!」
地獄の底から聞こえてくるような悍ましい咆哮を放ちながら、イビルジョーが大地を跳ねて食らいつこうと飛び掛かってくる。
それをローリングで避ける。
すると、イビルジョーは受け身も取れずそのまま地面に叩きつけられた。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛…………!!」
叩きつけられた衝撃で、無防備な下半身が酷く捻じれ、異音を放つ。その度に、イビルジョーは痛ましい鳴き声で叫ぶ。
見た目の悍ましさに恐怖したが、奴は既に死に体。
見れば、怪しく光る目が弱々しく点滅しており、口先からは空腹状態の時とは違う、血の混じった唾液が止め処なく溢れている。
……そんな姿を晒して尚、諦めて死ぬのでは無く俺を殺そうとするのか。
その痛ましい姿に介錯をしてやりたくなるが、俺には決定打が無いんだ。
見る限り奴の首は強靭だ。そう簡単に圧し折れはしないだろう。
ならこの鉤爪でとどめを刺すか? 無理だ。徒に傷付けて苦しめるだけだ。
飛び掛かるイビルジョーを避けながら、何とか奴を苦しみから開放する術を考える。
……ただの個人的な感傷だが、ここでこいつを残して逃げるのは忍びないんだ。
そうして悩んでいると、ハンターちゃんが戻って来た。
異様な姿のイビルジョーに一瞬怯みつつも、ハンターちゃんは懐から何かを取り出して、投げる素振りを見せる。
「目をつぶって!」
そう言ったハンターちゃんの言葉に、何をするか察して従う。
すると閃光が瞬き、イビルジョーの視界を一時的に奪ったのだ。
「オアアアアア…………!!」
「あれは……イビルジョー……?」
「ヤバいっチャ……」
「まさしくデビルっンバ……」
苦しみ藻掻くイビルジョーを見て呆然とするハンターちゃん達。
そこで俺は、ハンターちゃんを見てある作戦を思い付いた。
まあ、作戦なんて上等ではないがな。
俺はハンターちゃんの背負う、ラギアクルスの素材で作られたランスを咥えて取る。
「ッ!? ちょっと……!」
ごめんねハンターちゃん。借りて──いや、貰ってくわ。
ランスを取り戻そうとするハンターちゃんを置いて、俺はイビルジョーに向かって走り出す。
ランスを咥えているからバランスが悪いが、それでも不格好ながら前に進めている。
「──コ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛…………!!!」
俺の進む音を聞いて、イビルジョーが此方を向く。だが視線の焦点が合っていない。
すまんイビルジョー! 介錯!!
イビルジョーの噛みつきを飛んで避け、その勢いと俺の重量と重力加速度をプラスして、弱点属性のランスをイビルジョーの背中に突き刺した。
■
異形のイビルジョーを仕留めて、何日か経ったある日の夜。
突如として、イビルジョーの咆哮が轟いた。
それだけなら“またイビルジョーか”と流していたが、イビルジョーの咆哮の後に、自身を呼ぶルドロスの悲鳴が聞こえた事で飛び起きた。
ルドロスのピンチか!? 夜は
そうしてダバダバとコモドドラゴン走りでエリア5番に行くと、そこにはハンターちゃんと戦うクルペッコと、その亜種がいた。
「ッロアルドロス……! ……何だ、あんたか」
「何か焦ってるっチャ」
「落ち込み始めたンバ」
……何だ、クルペッコとクルペッコ亜種か……脅かしやがって……!
周囲を確認するが、ルドロスもイビルジョーもいない。
俺を呼ぶルドロスの叫び声も、その後に聞こえたイビルジョーの咆哮も、全部クルペッコ達の仕業だったようだ。
てゆーかさ……クルペッコ亜種が孤島にいるってことはさ……ああ、あはは……この世界3Gで確定だ……はははは……!
「ギョワーー!」「ギョワッギョワッ!」
……じゃかましいわ! このクソ害鳥共が! この場で死ねぇ!!
「「ギャバァァアアア!!!?」」
こうしてこの世界がMH3Gと確定した事に落ち込んだ俺は、此方に尻(尻尾)を向けて挑発してハンターちゃんに押し付けようとする害鳥共を、ジャンピングダブルラリアットで叩き潰してシバキ回すのだった。
叩き潰したクルペッコ達は、ハンターちゃんと折半した後に夜食として頂きました。
美味しかったです!
オマケのボツネタ。
・イビルジョーにランスを突き刺すが、最後っ屁に自分の全てを燃やし尽くして龍属性のビーム(オストガロアのやつ)を一瞬だけ空に放つ。
・命を燃やし尽くしたのでグズグズに崩れ落ちるイビルジョー。
・そのビームを見たギルドが騒ぎ、強力な龍属性エネルギーを感知して古龍(設定無し)が孤島へと飛来する。
★没理由。
・文字数が好みじゃなくなる。
・付箋としても布石としても利用する気が無く、しかもストーリーが乖離し過ぎる(チートロアルドロスルート)。
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