閃光のリベリオン   作:塩焼きイワシ

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タカアキ「あー! アリアが俺の缶詰食った!」
アリア「別にいいでしょう? 空いてたんだし」
タカアキ「空いてたんじゃなくて、空けてたんだ。それはな、サヨといつか二人で食おうぜってボトルキープしてた缶詰なんだよ!」
アリア「ツッコミどころが多すぎるわ」

イエヤス(何で原作でも二次でもサヨばっかり出てくるんだ…俺も早く出番が欲しい…)




それから一週間が過ぎ、そろそろイエヤスも目覚める頃だろうという時間が経った。しかし、首斬りザンクは姿を現さなかった。

 何度偵察を繰り返しても、夜の帝都には不気味な闇が広がるだけだった。

 それも当然で、いかんせん帝都が広すぎる。その広さは二十万平方キロにも及ぶ。

 一応、痕跡はいくつかあった。警備隊や一般人の遺体。首斬りと言われるだけあり、その全員が首と胴体が離れていた。二人が遺体を発見した頃には、ザンクの姿はなかった……といったこともままある。

 その間にも、医者にも関わらず情報通なドクに、ナイトレイドの情報は入ってきていた。

 警備隊の隊長……鬼のオーガと呼ばれる手練れや、大臣の縁者。それらがナイトレイドに葬られたことなどだ。ナイトレイドは帝都で着実に暗殺を成功させていた。

 タカアキはそれに歯噛みしつつも、じっと耐えた。もしかしたら、アリアの方が腹が煮えたくっていたかもしれないが。

 アリアは表情を表に出さないのでタカアキにはどうなのか、さっぱり分からなかった。

 そうして都合八度目になるザンク捜索に出た。

 しかし今回ばかりは少々事情が違った。

 ドクの情報では、ナイトレイドがザンク討伐に動き始めたそうだ。アリアはこれを好機と見ていた。

 一種の賭けだが、ジンクスから考えてザンクがナイトレイドを狙う可能性は低い。しかしザンクは首を斬りたいはずだ。なら夜を無用心に出歩いている一般人か、仕事で警備をしている警備隊。または帝具持ちでない、見た目は一般人のタカアキとアリア。

 この状況で狙われるなら、高い確率で自分たちだと踏んでいた。

 はたして、そんなアリアの読み勝ちか、ただのザンクの気まぐれか。

 ついにタカアキたちの前にザンクが姿を表した。

 厚手のコートに身を包み、他人を見下した笑みを顔に張り付け、獲物を前にしてその口を三日月の様に裂き開いた。

「やあ、こんばんは。殺し屋に辻斬りと、物騒な夜だねえ」愉快愉快、とザンクが下卑た笑いを見せる。「こんな夜にカップルで出歩くなんて、危ないよお?」

 全身から殺気を放つザンクを前に、二人は冷静だった。

「ほんとだ。ノコノコ釣られて出てきたな」

「言ったでしょう? 私の勘は当たるのよ」

 辻斬りである自分を前にしても怖がらない二人を見て面白くなかったのか、ザンクは張り付けていた笑みを消して両腕の裾から剣をせり出させる。

「随分余裕だねえ。腕に余程自信があるのかな? だが無駄だね!」

 ザンクは大仰に言い放つと、額に備え付けられた作り物の目を指差す。

「こいつは始皇帝が造りたもうた超兵器、帝具だ。知ってるだろ?」

「ああ。それが?」

「それが? たわけたことを言うなぁ」

 タカアキがザンクの言葉を切って捨てると、ザンクは腹を抱えて笑い出した。

「こいつの名は五視万能スペクテッド。こいつにかかればお前たちの行動などまる分かりだ」

「へぇ、本当に? ならこいつが次にする行動を読んでみなさいよ」

「何で俺なのかなぁ」

 言いつつも、もともと前に出る気だったタカアキは、アリアの一歩前に出る。そして得物を構え、ザンクを見据えた。

 目の前の敵をにらみ、思い描いたことは一つ。

「……なるほど」それを見てザンクはクク、と喉を鳴らす。「明日は魚が食いたいと思っているな」

「完璧じゃねぇか!」

 心が読まれたことに驚き、驚愕の表情を見せるタカアキだが、

「いや、待て。今から殺り合うのに、何故魚のことを考える!? ほら、何故か急に(すずき)について考え出すし」

「な……!? 心が読めるのか!?」

「ああ。五視の能力が一つ、洞視。表情から考えていることを読める。……じゃなくて」

 ザンクはそこで一端言葉を切る。「心が読めるのかなんて言いつつ(まぐろ)の頬肉が食いたいとか考えてるじゃないか。何なのお前」

「辻斬りに常識を疑われてるわよ、家畜」

 ザンクが素でつっこみを入れざるを得ないほどの非常識っぷりを発揮するタカアキ。ペースに呑まれかけたザンクは、はっとしてタカアキたちから距離を取る。

「……恐ろしいねえ、まったく。どうやら自分の土俵に敵を引きずり込むのが得意の様だ」

 ザンクは再び愉快愉快、と笑う。

「おしゃべりは好きだけど君らと話すと泥沼かな。スペクテッドの能力が一つ、未来視。こいつでさっさとケリを着けよう」

 ザンクは両手の剣を構え、一気にタカアキへと肉薄した。さすがに手馴れており、刃はタカアキの首筋を狙っている。

 タカアキも東方刀を腰に構え、迎撃体勢を取るが、

「フフ、甘いなぁ!」

 受け身と見せかけ攻撃したタカアキの刃を軽く躱し、ザンクは辛うじて反応したタカアキの頬を切り裂く。

「なに━━」

「どうだ? 未来視は筋肉の動きから相手の行動を予測出来る。お前たちに勝ち目はないよ」

「結局ペラペラしゃべるのね。おしゃべり好きの男ってキモいわ」

 勝ち誇るザンクをアリアの辛辣な台詞が襲う。

「……なあ。もう少しオブラートに包むってことをしないか? 人として」

「仕方ねぇよ。口開けば毒しか吐かねぇもん。あの女」

「辻斬りに人間のなんたるかを説かれるなんて……身ぐるみ剥がされて天下の大通りを歩かされつつ、犬の様に這いつくばれと皇帝に命令されるくらいの屈辱だわ。よし、殺しましょう」

「……俺はどこからつっこんだらいいんだ?」

「気にしたら負けだと思うぜ」

 驚きを通り越し、ついに呆れ果てて肩を落とすザンクに、タカアキは優しく肩を叩く。

 辻斬りについてはザンクを赦すことは出来ないが、この際だけは同情したタカアキだ。

 またもやペースに呑まれたことに気付き、ザンクはタカアキの手を振り払い、たたらを踏んだタカアキを投げ飛ばした。

「君の方が厄介そうだ。彼氏の前に潰してあげるよ」

 ザンクは再び洞視を発動。アリアに焦点を絞り、彼女の考えを読み取った。

 瞬間だった。

 ザンクの顔がみるみるうちに青ざめていく。しまいには変な声を発しながら、身体をふるわせ、肩を抱いて地面に座り込んでしまった。

「お前……何かすげー恐ろしい事考えてんな?」

「ふふっ、さあ? 別にあなたを拷問になんかかけてないし。ザンクもちょっと可愛がってあげようかしら、なんて考えてるだけよ」

「待って、俺何で被害受けてんの?」

 自然な流れで(アリアの想像だが)拷問を受けていたことに疑問符を浮かべるタカアキ。

 その間にザンクがアリアの頭の中を覗くのを止め、フラフラしつつも立ち上がった。

「全然愉快じゃないなあ。これは死刑決定だな」

「あ、立ち直ったぞ」

「もしかしてもっと惨いのブチ込んでほしいのかしら。それともやっぱり実際に……」

「いや、マジで止めようぜ。死にそうだから」

 先ほどまるで変わらない二人のやり取りを、ザンクはまるで聞こえないかの様に歩を進める。

 その血走った目が見つめているのはタカアキだ。その目を見て、タカアキは背筋に寒いものが走るのを自覚した。さすがに警備隊をも殺めている辻斬り。殺気はなかなかのものだ。

 だがそれ以上に他の何か━━勘にビンビンとくる危ない雰囲気を感じとっていた。

「スペクテッドはその名の通り、五つの能力を持っていてねえ。遠視、洞視、未来視に透視。そして……」

 ザンクが不敵に笑い、彼の額にあるスペクテッドが輝きを発し出した。

 警戒し、構える二人。

「そして幻視! こいつでお前は終わりさ!」

 その発光が強くなり、タカアキの目を眩ました。

「……何をしたの?」

「別に? 夢を見せているだけさ。一人限定だが、効力の高い……な」

 アリアは素早く周りを見渡す。━━変わった様子はない。だが、そこで気が付いた。

 タカアキが動いていない。

「まさか━━」

「ふふ、そうだよ。その小僧に幻視を使った。今頃俺が最愛の人に見えているだろうねえ」

 言われ、アリアはタカアキを振り返る。ザンクを見つめたまま、やはり微動だにしない。その瞳は驚きに見開かれている。

「さあ、小僧は終わりだ!」ザンクが叫び、タカアキに迫る。

「だ……」

 その時、タカアキの唇が僅かに動く。目はしっかりとザンクを見ている。

 ザンクはそれに勝利を確信し、タカアキに飛びかかった。

「愛しき者の幻影を視ながら死ね!」

 ザンクの剣は綺麗にタカアキの首筋へと伸び━━。

「……誰だ、お前!?」

 そのままバランスを崩し、地面へと突き刺さった。

 その様子にはっとなり、タカアキはザンクを助け起こす。

「おい大丈夫か? てかザンクはどこ行った?」

 その助け起こされたザンクに向かって、アリアが四針を放つ。辛うじてザンクは避け、二人から距離を取った。

「って、何やってんだよ、アリア!」

「あれがザンクよ。あなたは幻に引っかかってるの」

「へ? いや、ザンクはオッサンだろ? あの娘は女の子だし……」

 わたわたとし出すタカアキに、アリアは苛立たしげに眉をひそめた。

 対するザンクは驚愕しきっていた。幻視が効いているのに効いていない。こんなことは初めてだった。

「何故だ……どういうことだ!?」

 知らずザンクは叫んでいた。叫ばずにはいられない。

(ぎょっ) !? 女の子がザンクになった!」

「何その生臭そうな驚き方」

 一方タカアキは急にザンクが現れ戸惑いを隠せない。

「もうお前らが何言おうが、俺はつっこまん! 何故だ! お前には一番愛しい者が見えた筈だぞ!」

 それを聞いてタカアキは一瞬固まり、悩み始める。

「う〜ん……いやでも見たことない娘だったけどなぁ。可愛かったっちゃあ、可愛かったが……」

 唸るタカアキだが、記憶の棚をひっくり返しても該当者は見付からない。

「くっ……ぅおおおぉぉぉぉ!」

 そんな考える間を与えないと言わんばかりに、ついにやけくそ気味になったザンクがタカアキたちに襲いかかる。

 タカアキ……またはアリアの首を狙い、一直線に突っ込んで来たのだ。

 それが不味かった。ついに本気を見せたザンクに、アリアが何の対策もしない訳がない。

 不意にザンクが弾かれた様に仰け反った。頭から突っ込んだザンクにとってはかなりの衝撃で、彼は体を反り返らせながら一瞬気を失った。

「帝具に頼ってばっかいるから。こんな単純な罠にかかるのよ」

 ザンクが頭を弾かれた理由……それはアリアが仕掛けたワイヤーだった。ちょうどザンクが突っ込んで来た時に、ザンクの頭━━正確にはスペクテッドが着いている額━━の高さにワイヤーを張っておいたのだ。

 スペクテッドが無ければ即死。

 アリアはザンクが気絶した一瞬を見逃さず、スペクテッドにワイヤーを絡めてザンクから奪い去った。

 決着は着いた。

 一瞬とは言え、気絶したザンクに容赦するような二人ではない。

 ザンクが気が付いた時には、タカアキが東方刀を構えてザンクに肉薄していた。

「これは今まで殺された人たちの分だ!」

 タカアキはそのまま鞘付きの東方刀でザンクをカチ上げる。空中を舞うザンクだが、彼が向かう先に張ってあったワイヤーマットが彼を逃がさない。

 ワイヤーで組まれた弾力性抜群のマットが、宙を舞ったザンクを地上へと弾き返す。

「そしてこれは━━」

 地上には当然、

「馬鹿にされた魚たちの恨みだああぁぁッ!」

 魚馬鹿が待っていた。

「東方一閃流ニの型……」

 逆袈裟斬りを左右から一つずつ一瞬で放ち、最後に中央を突く。東方一閃流のニの型。

秋月(しゅうげつ)!」

 空中で受け身も取れず、地面に衝撃を逃がすことも出来ないザンクは、一閃流の技を見事身体で受けた。

 薄れ行く意識の中、思ったことは一つだけ。

「お、れが……いつ……」

 魚を馬鹿にしたのか。

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