閃光のリベリオン   作:塩焼きイワシ

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イエヤス「見よ! イエヤス様の華麗なる復活劇!」
アリア「貴方は犬と猫どっちが好き?」
イエヤス「話の流れ無視すな!」
タカアキ「魚だ」ドヤァ
アリア「さすが、予想通りの回答ね。ちなみに私は家畜(ブタ)が好きよ♥」
イエヤス「……俺、お前らとやってけるか不安になってきた…」


6

 ドクの家に戻ると、その持ち主が何故か外に出ていた。玄関口の壁にもたれかかり、煙草を吹かしていたが、タカアキたちの姿を確認すると笑顔を浮かべて二人を出迎えた。

「よう。勝ったみたいだな。随分ボロボロだが」

「運悪くナイトレイドに出くわしてね。ザンク自体は楽勝だったわ」

 アリアがザンクから回収した帝具を渡すと、ドクは満足そうに微笑んだ。

「さすがだ。よくやった。ご褒美と言っちゃ何だが……」

 言葉尻を濁して、ドクはタカアキを見た。意図がわからず、タカアキは首を傾げる。

「バンダナ坊主がついさっき目を覚ましたぜ」

「あ……ほんとか!?」

「嘘言ってどうする。一応一通りの説明はしといた。……お前さんと二人っきりで話したいそうだし、行ってやれ」

 言われなくとも、タカアキは玄関を勢いよく開けて、イエヤスの病室に駆け込んだ。

 その様子を見守っていたアリアが口を開く。

「全部説明したの?」

「ああ」

「逃げなかったのね」

「逃げたくてもなぁ。一週間寝たきりなんて、相当体力落ちてるぜ」

 ついさっき目を覚ましたばかりで食べ物もろくに口にしていない。その上、筋肉をほとんど使っていなかった。体力低下は当然だ。しばらくはかなりのリハビリが必要だろう。

「ま、それにタカアキの坊主にどうしても言いたいことがあるって言ってたしな」

 だから逃げんだろ、とドクは煙草を最後まで吸いきり、火を消した。

 

 

 タカアキが部屋に駆け込むと、確かにイエヤスは身体を起こしていた。開いた窓から満月を眺めている。タカアキが入って来たことに気が付くと、一瞬嬉しそうな顔をしたが、表情はすぐにまた雲ってしまった。

 タカアキに関しては喜びが大きく、駆け寄ってイエヤスを抱き締めるほどだった。

「おわっ!」

「イエヤス……! よかった。目を覚ましてくれて!」

 イエヤスの温もりを感じ取り、確かにイエヤスが生きていることを確認したタカアキは、感極まり涙まで流し始めた。

 イエヤスも最初こそ驚いたが、ぎこちない動きながらもタカアキと包容を交わした。

 それも少しの間でイエヤスはタカアキの肩を掴み、ゆっくりと引き離した。

 その行動の意味が理解出来なかったタカアキは首を傾げた。

「アキ……そう言ってくれんのは嬉しいけど、俺にそんな資格はねぇよ」

「なに、言ってんだ? イエヤス」

「俺、お前を騙してて……タツミも。タツミに、人殺し、なんてさせようとしちまって……」

 イエヤスは目を伏せると、懺悔するかの様にポツリポツリと語り出した。タカアキはイエヤスを落ち着かせると、最初から話す様に促した。

 深呼吸をしたイエヤスは、ゆっくりと、しかしどこか噛み締めるかの様に話し出した。

「俺は、俺とサヨは実は革命軍に所属してたんだ」

「革命軍?」

「ああ。あのナイトレイドを抱えてる、反政府軍だ」

 イエヤスが言うにはナイトレイドは革命軍の一部に過ぎず、他にもいくつか暗殺集団や、戦闘集団を抱えているらしい。

「そこの命令でお前の村……マツラ村での監視任務を受けたんだ」

「監視? 誰の?」

「お前だよ、アキ」

「お、俺!?」

 意外な返しにタカアキはすっとんきょうな声を上げる。

「革命軍はお前の中に眠る“何か”について知りたがっててよ。同年代の俺やサヨがその任務に就くことになったんだ……」

 イエヤスとサヨがマツラ村にやって来たのはおよそ四年前。その間、二人はタカアキやタツミの友人を装い、ずっと監視を続けていたことになる。

「俺たちはずっとお前を騙してた! ただ監視を命じられただけなのに、ダチみたいに接してて……悪かった! 許してくれなんて言えねぇけど━━」

「イエヤス」

 頭を下げたイエヤスの上からタカアキの声がかかる。何かしら罰が下る━━そう思い、身をすくめたイエヤスだったが、

「俺はダチだと思ってるぜ、お前のこと」

「え……」

 かけられた優しげな言葉に、放心して顔を上げた。

「何だよその顔? 今さらだろ。俺はお前をダチだと思ってるし、お前も俺のことダチだと思ってくれてると思ってる」

「そ、そうだけど、俺は……」

「友達に“なった経緯”が大事なんじゃなくて、“なった今”の方が大切だろ?」

 どう交友関係を築いたかではなく、どう築き上げてきたかの方が遥かに大切だ、と語るタカアキ。

「むしろ俺は親友……だと思ってるけどな。イエヤスは、そんなことないのか?」

「お、俺も━━俺もお前を最高のダチだと思ってる!」

 気が付くとイエヤスは涙を流していた。嬉しくて。

 任務と思いつつも、段々と惹かれていった相手にそんな風に思ってもらえていて。

「あの四年間……喧嘩したり、一緒にイタズラしたり、危険種を倒したり……。遊んで修行して、笑って泣いて怒ってそしてまた笑って……」

 友達と築き上げてきた日々は変わらない。

 過去は変えられない。失った人は還らない。流れた時間は戻らない。

 だがそれは悪いことばかりではない。人と人が積み重ねてきた関係は、誰にも壊せない。

「お前と出会ったきっかけが嘘でも! 過ごした日々が嘘じゃないって思いてぇ!」

「ああ……もちろんだ」

 再び、今度こそしっかりと、二人は包容を交わした。

「四人で過ごした日々が、色褪せる訳ねぇだろ」

 イエヤスは決壊したダムの様に両目から溢れる涙を、止めようとすることなく流し続け、タカアキの胸で泣いた。

「……ありがと、な」

 しばらくしてようやく涙が収まったイエヤスが、かろうじてタカアキが聞き取れる音量で言った。

「何がだ?」

「タツミに人殺しをさせないでくれて……」

「あー……」

 言われてあの夜のことを思い出す。タカアキがアリアに斬りかかったあの時のことだ。

「声をかけられたとか、飯を食ったら、なんて嘘だ。出任せだった。アリアは最初から俺たちのこと知ってたんだろうな」

 イエヤスは複雑そうな顔をしていたが、それ以上に満足そうだった。

「ああいう風に言えば、タツミが仇をとってくれるって、思って。サヨが死んじまって大分混乱してたんだな……」

「でも多分だけど……心のどこかで信じてたんじゃないか? 俺が止めること」

「おう……今は、そんな気がする」

 サヨが拷問にかけられ、死んでいった光景はまだ若いイエヤスにとってはかなりのトラウマになっただろう。革命軍で訓練を積んできているとはいえ、しょせんはまだ子供だ。

 ある程度時間を空けている今だからこそ冷静になれてはいる。しかし、サヨが死んでしまった瞬間からタツミたちが倉庫に辿り着くまでの時間はほんの僅かだった。

 だがそんなショックの中でもイエヤスは、タカアキに対する信頼を失ってはいなかった。タカアキは今はそれを何よりも嬉しく思っていた。

「ふう、あんまり薔薇チックな展開は遠慮してほしいわね」

 ふいにかけられた可愛らしい声に、二人は一斉に振り向く。開けっ放しの扉の隣にアリアが立っていた。

「あ、お前、ノックぐらいしろよ」

 タカアキは呆れ顔で身体を向き直した。

 アリアは開いた扉を意味もなくノックし、澄ました顔で続けた。

「個人的な話も終わったみたいだし、そろそろ本題に入りましょうか」

「本題?」

「ええ。私が捕まえた革命軍の狗二匹……あなたたちが続けてきた監視対象の力についてよ」

 アリアを睨み付けていたイエヤスの目がますます厳しくなった。と言っても、レオーネの殺気すら受け流したアリアにとっては蚊が刺すほどでもなかったが。

「オネストの命令で調査を始めたけど、個人的にも気になるのよ。教えてくれないかしら」

 アリアはゆっくりとした歩調で、ともすれば優雅な足取りでイエヤスに近付いた。表情こそ柔らかな笑みだ。だが、本当は笑っていないことは誰の目にも明らかだった。

「もちろん、お願いじゃなくて命令ね。拒否権はないわ。あの女と同じ道を歩きたくなかったらさっさと言うことをオススメするわね」

「おいアリア」

 四針を取り出しイエヤスに向けるアリアから庇う様に、タカアキが間に割って入った。

「邪魔よ。死にたい?」

 可愛らしい笑顔から一転。タカアキが後退りするほどの冷たい視線を向けた。

 本気だ。タカアキは悟った。下手をすればイエヤスが殺される。そして自分も。脇腹に深い傷を負っていることを考えれば、状況的に不利だ。

 だが引き下がる訳にはいかない。大切な親友を傷付けさせない……その思いを胸に、タカアキはアリアを睨み返す。

「イエヤスに何かするつもりなら、許さねぇぞ」

「あら、ちょっとお話を聞くだけよ。ちょっと、ね」

「四針ちらつかされると、さすがに信用出来ねぇんだけど……」

「いいぜ、アキ」

 今にも戦いに発展しそうだった二人を止めたのは、意外なことにイエヤスだった。

「アキにも聞いてもらいたかったし、話すことにするよ。もう俺は革命軍でもないしな」

「いい子ね。後で首輪をプレゼントしてあげるわ」

「いらねぇよ! バカにしてんのか!」

「家畜からペットに昇格してあげようと思ってたんだけど。お気に召さない?」

 売り言葉に買い言葉……ではなく、単純にアリアがいつものノリで、慣れていないイエヤスがヒートアップしている状態だ。タカアキは「アリアはこーいう女だから」とイエヤスをなだめて話を聞くことにした。

 タカアキ自身、正体不明の謎の力については知りたかった。凄まじい力を発揮するので、時には頼りにしてしまっていたが、やはり怖いことには変わりない。

「結論から言うと、あの力について詳しいことは分からなかった」

「残念。ガッカリ。無駄な引き延ばしありがとう。はいさようなら」

「こここ、この女ぁ〜!」

「まあまあ……」

 イエヤスの告白に落胆したアリアによる辛辣な言葉ラッシュ。病み上がりだが、イエヤスが思わず殴りかかろうとしてしまったのも当然だ。

「詳しいことは分からなかったけどよ、色々判明したことはあるぜ!?」

「何よ。言ってみなさい」

 アリアの言葉に合わせてタカアキが頷く。イエヤスはそれを見て頷き返した。

「アキが“力”を使ってる時は、別の人格が出る」

「マジで!?」

 実際にその場面に会ったアリアはすでに知っていたことだが、その間記憶が飛んでいるタカアキにとっては初耳だった。

 そのタカアキの反応を見て、アリアが眉をひそめた。

「知らなかったの? ということは、コイツには教えなかったワケね」

「……それについては任務は関係ない。タツミとサヨと三人でアキには言わないでおこうって決めたんだ」

「なんで教えてくれなかったんだよ〜」

「だって、よ……」

 イエヤスは一旦目を逸らした。

「もしかしたら、もしかしたらだぜ? 万に一つ、いや億に一つの可能性として過去にすんごく辛いことがあって、そのせいで別人格を作り上げちまってたかもしれないじゃん?」

「私が過去に拷問したやつの中にもいたわね。別人格作って、自分は自分じゃないって現実逃避して。可笑しいの」

「ちょっとあんたは黙っててくれないかな?」

 と、タカアキが言ったら、笑顔を保ちつつ無言で四針を刺されそうになったので、平謝りした。

「でもその言い方だと、別人格と力については別物の様に聞こえるけど?」

 何度かタカアキの頭を踏みつけて満足したアリアは、イエヤスに向き直った。

 イエヤスはイエヤスでサヨのトラウマが甦って少し涙目になっていた。この瞬間から、イエヤスは絶対にアリアには逆らうまいと心の中で決めた。

「そ、そう仮定してるんだよ。ほら、思い出してみてくれよ」

「嫌よ。何で私が命令されなきゃいけないの」

「アキが力を使う場面を思い出して頂きたく存じます、はい」

 アリア=恐いと彫り込まれてしまったイエヤスは、心の中と反してへりくだってしまう。

「まずアキから何かこう……得体の知れないオーラみたいのが出るだろ?」

「……そうね。力を使う前には必ず感じたわ」

 人間が関わってはいけない様な暗黒の気。タカアキは力を使う際には、からなずそれを発していた。

「それが高まった直後にアキの別人格が顕れる……訳だが、その人格から恐いものを感じたか?」

「言われてみれば……特に何も」

「そうだろ? だから俺たちはこう仮定した」イエヤスは大きく息を吸い込んで一呼吸置いた。

「アキの力と別人格は別の何かだ、ってな」

「別の何か……か」

 タカアキ自身全く力については知らず、さらに別人格については先ほど知ったばかりだ。

「あ、じゃあ質問。俺の別人格は名前名乗ってなかったか? 自分の出生とか。何でもいいけど」

「ああ、それなら━━」タカアキの問いにイエヤスはすぐに答えた。「ダンテ……そう名乗ってたな」

「ダンテ……?」

 聞き覚えがあり、アリアはあごに指を当てて記憶を探り始めた。

「千年前の英雄だろ。始皇帝の一番の部下だった将軍だ」

 声の持ち主はドクだった。

「あら、寝るんじゃなかったの?」

「タカアキの坊主の怪我診なきゃいけねぇと思って、仕方なく起きてきたんだよ。それで死なれちゃ寝覚め悪いしな」

 眠そうに一つ大きなあくびをかましつつ、ドクは言った。本当に眠るつもりだったらしく、いつも着ていた白衣は脱いでいた。

「そうだ! 剣閃(けんせん)!」

 ドクの言葉でタカアキも思い出し、手を叩いた。

「東方一閃流の開祖でとんでもなく強ぇって、親父が言ってたな」

「一閃流の名の通り、一瞬で敵兵を葬ったらしいからなぁ。付いた二つ名が剣閃だ」

 ちなみに帝具は使ってなかったそうだぜ、とドクは付け加えた。

 帝具なしで帝具使い級の強さを誇るなどよっぽどだ。現時点で帝国最強と呼ばれるエスデス将軍に勝るとも劣らないかもしれない。

「本当にそうならナイトレイドを圧倒してたのも頷けるわね。……普通に考えたらあり得ないけど、自分で別人とも言ってたし……」

 鎧の帝具を纏ったブラートに手も足も出なかったタカアキが、人格が変わった途端にブラートだけでなく、ナイトレイド全員を圧倒してみせた。剣閃と言われれば納得もしてしまうだろう。

「四年間でアキは俺たちの前で三回ダンテを出してる。覚えてるか?」

 イエヤスに訊かれ、タカアキは頭をひねる。

「ん……確か二年前のタツミが危険種に殺されそうになった時と、兄貴に殺されかかった時と……」

「あなたの人生って結構波乱万丈なのね……」

 よく自分や周りが死にかかるやつだなと、アリアは若干引き気味だ。もしかしたら、そのせいで人の死を拒絶するようになったのかもしれない。

「あ、それと村に変な危険種が現れた時だな。そん時以外は意識して出した記憶がある」

「よし。自覚はあるな。親父さんの話だと、お前が最初にダンテを出したのは十くらいの頃って言ってたぜ」

「そっか、親父もやっぱ知ってたか」

 タカアキの父親は東方一閃流の使い手で、タカアキらに指南した人物だ。一番長く近くにいたのだから、知っていて当然だった。

「……まったく、親父といい、お前らといい、こんな訳分からん力持ってるやつ突き放さずに、ましてや心配までしやがって……」

「今さらだろーが。……多分、誰かさんのお人好しがうつったんだよ」

 歯を見せて笑ったイエヤスに、今度はタカアキが感謝した。ドクはそのやり取りを見て「青春だなぁ」と呑気に呟いていた。

「話を戻すけど、アキの力はアキの別人格とは別のもの━━無関係って訳じゃなさそうだが、大元は別の何かだって結論を四年間で出した」

「さっき言ってた、力を使おうとした直後にダンテが顕れるって話ね」

「その通り。つまり、だ」

 イエヤスは再び溜める様に間を空けた。

「アキに何らかの理由で千年前の英雄が宿っちまってる。アキが恐ろしい力を使う際に、それを抑えるため替わりにダンテが顕れる……と、俺は仮定してみてる」

「なるほどな。ダンテ自体は本人だって考えてる訳か?」

 イエヤスの推理にドクは一旦頷き、イエヤスに疑問を投げかけてみた。

 イエヤスはそれに頷いてみせる。

「って言ってもまあ、ダンテがそう言ってたんだけどな」

「そこまで訊いたなら力のことも訊きなさいよ」

「……訊いたけどそれについては一切答えてくれなかった。深い理由がありそうだったから、しつこく訊きもしなかったしな」

 実際問題人が触れていいものでもなさそうだ。タカアキも自覚はしているだろうが、かなり危険なものであることに違いはない。

「……俺の力については分かった。どーせダンテに訊いても答えてくれないだろうし、ま、せいぜい利用させてもらうさ」

 タカアキはそう言うと笑ってみせた。結局は今まで通りで変わらないということだろう。

「それで今度はこっちの話なんだけど……」

「ドクから聞いた。タツミをナイトレイドから取り戻すんだろ? もちろん俺も手伝うぜ!」

「本当か!? 助かるぜ!」

「おう、このイエヤス様に任せとけって」

「調子に乗ってるとこ悪いが、まずは一週間寝たきりだった体力を回復するんだな」ドクは再び眠そうにあくびをすると、タカアキの首根っこをひっ掴んだ。

「そしてお前さんは脇腹の治療だ。さっさと行くぞ」

 仔猫の様な体勢でタカアキは治療室へと運ばれていき、残された二人は同時にため息をついた。

「俺は……正直お前を赦せそうにねぇ」

 さっさと出て行こうとしたアリアに、イエヤスは言った。イエヤスの脳裏にサヨとの━━いやタカアキとタツミとサヨとの四人で過ごした情景が浮かんだ。

 もう二度と戻らない、懐かしい日々を。

「だから?」

 アリアはあくまで冷静だ。ポーカーフェイスを保った顔からは思考は読めない。

「でもアキを助けてくれたみたいだし、俺も……」

 イエヤスはベッドの上で動きにくい身体を無理矢理動かして、アリアの方へと身体を向けた。そして━━

「だから、ありがとう」

 そして頭を下げた。

 それを一瞬横目で見たアリアは、すぐに視線を外して部屋の外へと足を向けた。

 ドアノブに手をかけ、閉めようとしたが、そこで手が止まった。

「私は借りを返しただけ。勘違いしないで。もしあのバカとの友情ごっこが嘘だったら、その時は容赦なく狩るわ」

 ようやくアリアは部屋の外に出て扉を閉めた。

「だから、さっさと顔を上げなさい」

 アリアは閉まる直前に、そう言い残したのだった。

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