テラ生まれの狼系シリオンがインターノットで配信者になる話 作:MINTO_GUM
謎の生物と三人の”推定:人”、どちらかを助けると言われれば当然後者だった。
(感染生物に似てる気がするけど……)
さっき牽制で使ったアーツはしっかりと謎の生物を吹き飛ばせた。であるならば通常の戦闘で充分対処可能だと思うのだけど。
「すっ……すっげぇぇぇ!!見たか今の!!正しくヒーロー!!あのスターライトナイトもかくやの登場だぜ!!」
「ちょっとビリー!助けが来てくれたからってまだ終わってないんだから!!戦いに集中する!!」
「……」
後ろの三人(二人)が凄く煩い。ロドスにいた時と比べて全く緊張感の無い戦場に気を緩めそうになるが迫り来る謎の生物に意識を切り変えブレードを叩きつけて両断する。
(物理耐性は低い……ならこのままでも……)
そう考え次の敵へ狙いを定める直前、さっき両断した生物にノイズのようなものが走り光の粒子になって消えたのを見てしまった。
「っ──!?」
それはまずい、ここがテラでは無く相手が感染生物では無い可能性の方が高いけれど、粒子になって消えるならその粒子はあまり吸わない方がいい。
(となれば殲滅より撤退……)
「そこの三人!!」
さっきの喧騒のおかげで言葉が伝わるのは確認済み、声を上げれば三人がこちらに顔を向ける。
「ここから出るためのルートは!?」
「キャロットならある。あっちの方に突破出来れば」
三人のうち一人、緑の服を着た銀髪の少女が指を指す。
その方向を確認する間もなく私はアーツを発動しその方向にいる生物を吹き飛ばした。
「なっ……手をかざしただけで……」
「考えるのは後!逃げるわよ!」
三人を追いかける形で包囲網を突破する。背後から何体か追いかけてくるがその度にアーツで吹き飛ばしていく。
「あそこを通れば……!」
そんな少女の声に安心して正面を向くとそこには形容しがたい穴のような壁のようなものが浮いていた。
(ま、まさかあの中に……)
その予想通り三人は穴の中に飛び込んでそのまま消えていった。
それを見た私は遅れて穴の中に入り───
「──ぅわぁっ!?」
突如重力が背中側に働き地面に叩きつけられる。その衝撃で動けないでいると先に呼吸を整えていたのか三人のうちピンクの髪の……かなり自信のありそうな見た目をした女性から手が差し伸べられていた。
「ありがとう、おかけで助かったわ」
「いえ……当然のことをしたまでです」
感謝の言葉にロドスで定型文になりつつあるセリフを返して手を取る。
力を借りて立ち上がると三人の内最後の一人、機械でできた体を持つ人(?)が興奮気味に近付いてきて──
「お前すっげぇやつだな!!あんな簡単にエーテリアスどもをぶっ飛ばしてよ!!口上も最っ高だし!!俺には分かるぜ……お前もスターライトナイトの大ファンだってことがな!!」
「えっ、えっと……」
「ビリー!相手が困ってるでしょ、引っ込んでなさい!」
突然のマシンガントークに困惑しているとピンクな人がビリーと呼ばれていた機械人形をひっぱたき後ろへ放り投げられた。
「こほん……あいつの事は気にしなくて良いわよ。アタシはニコ、邪兎屋っていう何でも屋?をやってるからいつでも……い、つ、で、も、依頼してきていいからね」
そう言ってニコと名乗った女性は私にパンフレットのようなものを渡してくれた。受け取って読んでみるとウルサスや龍門、その他色んな国の文字に近い文字が使われていたが何とか読めた単語を口にする。
「新エリー都……?」
「何?なんか気になることでもあるの?」
「いえ、新エリー都なんて都市の名前、
「「…………」」
その瞬間、周囲が凍りついた気がした。ニコやビリーだけでなく少し離れたところにいた名前を聞いていない少女までもがこちらを「信じられない」といった様子で目つめている。
何かとんでもない事をしてしまったと気付いた時にはもう遅く、最初に放心状態から復帰したニコが眉間を指で抑えながら口を開いた。
「ちょっっと待ってね……あんた今、新エリー都を知らないって言ったの?」
「……はい、申し訳ないのですが」
「そ、そうじゃなくて!あんた、ここがどこだかわかってるの?」
「いえ……それも全く……」
「おいおいなんだよそれ、まるで映画とかに出てくる異世界人じゃねーか」
ビリーのそのセリフでハッとする。確かチェルノボーグ事変の後、テラとは違う世界から来たという小隊がいた気がする。
となるとやはり、ここはテラでは無い別の世界……ということになるのか。
「ちょっとビリー、それはさすがにアニメや漫画の見すぎよ。確かに見慣れない服装だし
「あの……本当にそうかもしれません」
「ね?彼女もそうだって……なんですって?」
「なのでその……私はその異世界人?っていう人なのかもしれない……です」
◇ ◇ ◇
「──ふぅん、テラと言う大陸に
私の住む世界のある程度の説明を聞いたニコは顎に手を乗せて「うーん」とうなりを上げていた。
「こことは違う大陸”テラ”、
邪兎屋が持っている車の中で運転していたビリーが要点をまとめてくれる。本当はもっと話せることはあるけれど、今は要点をまとめる方が大事だ。
「それで、Hodophilaxさんはロドスアイランドと言う製薬会社で、鉱石病を治す研究をしている組織にいる。それで合ってる?」
そう言ってビリーの言葉を引き継いだのはアンビー・デマラ(車に乗る前に教えてもらった)。ニコと同じ苗字だけど親族では無いらしい。……話が脱線しかけたが二人の会話にしっかりと返事をしておく。
「その認識で合ってます……こんな事言うのもどうかと思うんですが、本当にこんな話、信じてくれるのですか?」
「それも含めて、今からそー言うのに詳しそうな人のところに行くのよ」
私の質問にニコが答える……専門家という言葉にはあまりいい思い出がないけど大丈夫だろうか。
「それと、私たちにはタメでいいわよ。敬語だとムズムズするわ」
「……社交性があまり無いんだね」
「いきなり失礼ね!!あるわよ!私にもオ・ト・ナ・のビジネステクニックがねぇ!!」
「……フフッ」
「アンビー!?」
そんな話をしながら車に揺られること数十分、目的地に着いた頃には邪兎屋の面々とはそれなりに仲良くなっていた。
特にニコはその見た目や言動の割に親しみやすい性格や根の優しさが滲み出ていて、この感覚はドクターと話している時に似ている気がした。
「さっ、着いたわよ!」
「……Randomplay?」
「新エリー都ヤヌス区六分街のビデオ屋、マイナーなものやマニアックなビデオを取り扱ってる」
アンビーの説明を聞いて真っ先に思い浮かんだオペレーターの顔を振り払いつつ三人に倣って店に入る。店内はアンビーの言う通り普通のビデオ屋に見えた。
見慣れないビデオ形式が気になって色々と見ているとカウンターの横にある扉から一人の青年が現れた。
「いらっしゃい……なんだビリーか、それに邪兎屋のみんなも」
「店長!大事件だぜ!」
「なんだい?遂に宝くじが当たって借金が返せるようになったとかかい?」
「違うわよ!しかもそれじゃ事件じゃないじゃない!そうじゃなくて……ホロウで人を見つけたの、それも身元不明のね」
ニコと”店長”と呼ばれた青年が話し合いを始めたのでそこに向かう。店長は私を見て「彼女がかい?」とニコに目配せした。
「そうよ、詳しい話は中でしましょ……今回ばかりは、私も”面倒事”だって認めざるを得ない状況だしね」
「……わかった、君がそこまで言うなら中で話そう。リンも居る事だしね」
そう言って店長はカウンターの横にあるスタッフルームらしき部屋へと案内してくれた。
部屋の中は簡易的なソファとテレビ、大量のモニターとコンピュータ、そして作業台とただのビデオ屋のスタッフルームには見えなかった。それを裏付けるように大量モニターは様々な情報を映し出しており唯一デスクの上に置かれたモニターには私が目覚めた時に居たあの空間と似た場所が映し出され、それを青髪の少女が微動だにせず見つめ続けていた。
「……リンは今仕事中だから、先に概要を聞かせてくれないか」
「いいけど、説明するのは私からよ。Hodophilax、貴方はそこのソファで寝てなさい」
「いえ、私から説明しますよ。その方が情報も……」
「今モニターにがっついてる方が起きたら結局また説明するし、ホロウから出て真っ直ぐ来たんだから少しは休んでなさい」
ニコはそう言ってテレビの前に置かれたソファを指さした。流石にそうする訳にも行かないので断ろうとしたが店長からも「それなら休むべきだろう」と言われてしまい渋々ソファに横たわる。
すると直ぐさま抗えない眠気が襲ってきて想像以上に疲れていた事を思い知るよりも早く私は意識を手放した。
これが私の、新エリー都での最初の一日だった。
アークナイツ側のキャラを登場させても良いのかとても迷っています。