Forceへ繋がる物語   作:紅乃 晴@小説アカ

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chapter.17「レリック奪取 中」

 

 

「やはり行くつもりかい?」

 

ゆりかごに似た玉座がある施設の地下。レプリカントの製造施設も兼ねているその広大な地下の一室で、自身の装備をチェックしていたアノンに、入り口から入ってきたダインシーファはそう問いかけた。

 

レプリロイド。それは言われたことを言われたままに遂行するレプリカントの司令塔となるべく、より高度な自己判断システムが組み込まれた個体だ。脅威レベルを自身で判断して、その結果で最適に脅威を排除する。レプリカントに命令し、そして自らの手でも。

 

レプリロイドにはレプリカント以上の戦闘能力も付与されていた。これは魔法犯罪者によって司令塔たるレプリロイドが破損させられないようにする防衛策でもあり、万が一レプリカントが制御下を外れ、半ば暴走状態となった時の鎮圧するための抑止力の意味合いもあった。

 

またレプリロイドは「ワールドダウンシステム」の環境下でも問題なく動作するために魔力に依存した制御機器から脱却しており、強靭な内部骨格と人工筋肉、そして内蔵されたイオンバッテリーから得られるエネルギーで様々な武装を使うことができる。アノンの場合は肩口に備わる固定武装のプラズマキャノンなどに当たる。また、彼女が点検する装備も中近距離に特化した武装だ。鈍重で長物、取り回しは悪いが圧倒的な破壊力を持つそれは、魔法が使えない環境下でこそ真価を発揮する。

 

チェックを終えた武装を量子化し記憶スロットに格納したアノンは入ってきたダインシーファに表情が乏しい顔を向けた。

 

「あの者たちは必ずご主人様の計画の障害となります」

 

「そうだろうね。彼らは必ずここにくる」

 

「それがわかっているのなら、なぜ対処しようとしないのですか」

 

その言葉は平坦であったが、ダインシーファにはその語気に「怒り」のようなものが混ざっているように思えた。アノンもまたレプリロイド。人のような自我はないというに、その違和感を感じながらも、ダインシーファは当初から変わらない言葉を返した。

 

「言ったはずだよ。彼女たちがここに辿り着くことこそが、この世界の命運なのだと」

 

その言葉は、あまりにもダインシーファ自身を冒涜しているとアノンには思えてならなかった。

 

「私には理解ができない。障害となるなら排除しなければ……我らの存在理由に意味などない」

 

この計画にいったいどれだけの労力を費やしたのか。10年?30年?いや、もっとだ。この世で起動したアノンの知る限りでは、ダインシーファの計画は壮大であり、その試行錯誤の年月は100年でも足りないほどだ。ようやくその試行錯誤の成果が身を結ぼうとしているのに、なぜ計画の破綻を呼ぶような要素を野放しにしているのか。

 

並列化された複雑な判断処理能力を持つアノンでも、ダインシーファの行いを理解することは叶わなかったし、脅威は脅威としか認識できなかった。

 

装備を整えてアノンは部屋から出ようとする。

 

「君は君自身の意味のために戦うのかい?」

 

「それが、レプリロイドとレプリカントの生まれた意味です」

 

ダインシーファの言葉にそう返して、アノンは自身が警戒する「脅威」を排除するために部屋を出る。目標は少数でワールドダウンシステムへの対抗手段を得るべく行動している。相手が準備を整える前に叩く。それが1番の解決策であるとアノンは判断していた。

 

「忘れないでくれ、アノン」

 

部屋から出たアノンの背中にダインシーファは言葉を投げかける。

 

「振り上げた拳も、抜いた刃も、誰も傷つけずに済ませることができるということを」

 

無理だ。アノンはすぐにそう判断する。

 

脅威は脅威でしかなく、排除すべき障害だ。相手が抵抗するというのなら暴力で制圧し、解決するしかあるまい。そう結論づけたアノンは目的の地に一直線に向かえる「次元跳躍装置」へ向かう。

 

「振り上げた悪意と憎悪、そして暴力……それを飲み込めることこそが……人を人たらしめる意味だ」

 

そして同時に、その矛盾が飲み込めないアノンも、そしてダインシーファ自身も、自らが人になりうることはないと改めて自覚する。

 

遠ざかるアノンの気配を感じながら、ダインシーファも部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

第4管理世界「カルナログ」西部。

国際空港に隣接する形で作られた時空管理局の施設群。

 

敷地内にある古代遺失物の保管施設内で、応接室に案内されたなのは達は、施設の職員や責任者と面談を行っていた。

 

聞くことは直近で施設で起こったトラブルは無いかや、近隣施設に不審者がいなかったか、急な停電や動力ラインに異常はないかという質問が主であり、その問いはすでに施設責任者が回答しており、問題なく保管施設は運用できているという結論であった。

 

「管理局のエースオブエースや、八神司令にハラオウン執務官にお越しいただき、とても心強いです」

 

そう言った施設職員の目は安堵や緊張以外に尊敬や憧れに似た熱がこもっている。それも当然で、なのはやフェイト、はやては今や管理局では英雄的な存在であり知らぬものは居ないほど。地方の管理局支部では噂に尾が付き羽が付きと、半ば伝説に近いものにまで昇華されているほどである。

 

施設職員で若年の彼女からすると、なのはたちは映画の大スターや、名選手で、会えば一緒に写真を撮ってサインを求めるほどの存在で、今はそのファンサービスを望む欲を必死に押さえ込んでいるほどであった。

 

そんな熱視線を受けながらも、はやてはひとつ咳払いをして言葉を整えた。

 

「とにかく、ここが無事で良かったです。管理局施設内でもここは重要施設ですから」

 

「この施設は外部との通信が途絶しても独立した管理システムで運用されますので、保管されている危険な古代遺失物が外部に流出することは防げる構造となっています」

 

施設責任者からの説明では、この施設そのものが緊急時はシェルター化し、内側から外に出ようとする古代遺失物を封印。さらに内部には全域展開型の凍結魔法を転用した封印魔法発生器もあるので、暴走した古代遺失物を瞬時に凍結することもできる。ただし職員の安全が保障できない点から凍結魔法による内部の封印は最終手段とされている。

 

その最終手段の前段階で様々な安全機構が盛り込まれてはいるが、内部の暴走に対しては鉄壁の守りを有する施設となっていることは事実だ。

 

「確かにこれは安心ですね」

 

「移設してから10年間、無事故無災害ですからね!この鉄壁の防衛システムならテロリストの侵入なんて跳ね除けて……」

 

そう力強く説明する施設責任者の背後。応接室から出ると事務室と監視室、そして地下の保管施設がある。

 

扉から離れた上座に座るなのはたちは、その扉が理外の力で吹き飛ばされ、その扉を吹き飛ばしたものが応接室の壁を突き破っていく様子をはっきりと目撃する。

 

目を疑いたくなるような光景と轟いた衝撃音と振動の襲来は、ほぼ同時であった。

 

「のおおおお!?」

 

素っ頓狂な声をあげ、豪華とは言わないが座り心地は良いソファに腰掛けていた施設職員と施設責任者は吹っ飛ばされた扉に吸い上げられるような形でソファごと宙を舞う。

 

咄嗟になのはたちも立ち上がり、吹き飛ばされた職員を受け止めるが、その視線は破壊された入り口に注がれていた。

 

「おや、高町なのはとその他面々……都合がいい、貴女達もここで排除します」

 

入り口に散らばる瓦礫の破片を踏み砕きながら入ってきた存在。

 

レプリロイド、アノン。

 

なのはとフェイトは昨日の一件で目撃していたのですぐに相手が誰なのかを判断できたが、はやては相手が誰なのかわからなかった。だが、三人とも共通して初めて見たものがあった。

 

女性のシルエットを崩さないように配置された白を基調とした装甲、肩に備わるプラズマキャノン、そして昨日にはなかった身の丈を大きく上回る「ランス」が、その手には握られていた。

 

強化骨格と人工筋肉によって細腕には似合わない胆力で長物を振るうアノンに、なのはは咄嗟に叫んだ。

 

「伏せて!」

 

フェイトははやてと抱えていた施設責任者を、なのはは隣にいた施設職員に多いかぶさる。伏せるというより倒れ込んだ全員の頭上を、風切り音と共にランスの穂先が横切る。その一薙で部屋にあった調度品や家具、壁、照明が暴風に巻き込まれたかのように吹き飛び、バラバラになった。

 

「ひゃああああー!?」

 

悲鳴をあげる施設職員、歯を食いしばって耐える施設責任者。両名とも魔力を持たない非戦闘員だ。なのはたちもこの事態にバリアジャケットを展開しようとしたが、すでにその反応は鈍く、レイジングハートもバルディッシュも魔力供給が上手くいかず、はやてと共にいたリィンフォース・ツヴァイも気分が悪いのか顔を青ざめさせていた。

 

(ワールドダウンシステム……!)

 

三人とも、その絶大な効果を体感していたが、情報を知った上でも抗いようのない絶対たる機能だと理解させられる。魔力が使えない以上、この状況を打破するのは困難を極めた。

 

「おい」

 

そんな中、なのはたちの反対方向、応接室の奥側まで吹っ飛ばされた存在が飛び出す。ランスによる二撃目を繰り出そうとしていたアノンの動きを止め、逆に相手を応接室の入り口まで押し返した。

 

「よくもやってくれたな」

 

倒れ込んだなのは達の前に立ったのはボウマンだった。

 

頭から血を流しつつも、酸素マスクを装着して魔力を供給し、その右手には刃渡り40センチほどの手斧のような形状をした「アームドデバイス」が握られていた。ボウマンが意思を通すと、手斧形状のデバイスから質量を持った刃が記憶スロットから生成される。

 

〝片方しかない〟デバイスを手にして睨むボウマンに、アノンはランスの穂先を相手に向けるよう構えて言葉を吐いた。

 

「時代遅れめ。貴方の役目はとうの昔に終わってます」

 

「そうかい。なら勝手にさせてもらう!」

 

言葉の応酬から暴力の応酬へと切り替わる。アノンから突き出されたランスの穂先を、ボウマンは質量刃の切っ先で補足し、その狙いを外させる。外れたランスはなのは達が座っていたソファを軽々と貫きつつ、今度は横に振り回して距離を詰めようとするボウマンの行方を潰した。

 

貫かれていたソファは遠心力で抜け飛び、這う体で部屋の入り口に向かっていたなのはたちの近くに着弾。叩きつけられた衝撃で骨組みもろともバラバラになった様子を見て、施設職員は気絶しそうだった。

 

継続して暴力の応酬を繰り広げるアノンとボウマン。そんな二人の戦いになのは達は言葉を失っていると、応接室の外から悲鳴のような部下達の声が聞こえてきた。

 

「なんでもいいけど、ここで暴れるのはやめてぇえー!」

 

「ロストロギアが!ロストロギアが封印されてるから!ど、動力源は!?もしかして全部シャットダウン……!?」

 

入り口で二人の応酬を見るや悲鳴をあげるティアナとスバル。二人とも酸素マスクをつけておりバリアジャケットを展開しているものの、圧倒的なパワーでゴリ押すアノンと、巧みな技術で攻撃を躱しつつ隙を狙うボウマンの戦いに割り込めないでいる様子だった。

 

ティアナとスバルの悲鳴を聞いて、思い出したようになのは達は施設責任者を見る。すぐに責任者は連絡用の小型端末を操作すると、そのまま三人が求める情報を伝えた。

 

「非常用の予備電力が作動しているようです!ですが内燃式の本当に最後の予備電力なんで、防護壁とかは無理ですよ!」

 

「つまり?」

 

「施設が壊れればアウト!」

 

「ロストロギアが振動に反応して起動したら?」

 

「その時もアウト!」

 

「あかんやつやん!」

 

思わずはやてがそう叫んでしまう。施設側からすれば、最終手段である全域展開型の凍結魔法による封印措置があると考えているのだが、ワールドダウンシステム環境下でその封印措置が確実に作動するかは不明。

 

その話を聞いていたボウマンは、ランスの横薙ぎを避けて一気に肉薄。そのまま飛び蹴りを放って無理やりアノンを部屋の外へと後退させる。

 

「とにかくここから離さないと……」

 

「あ、あの……私たちは……」

 

最悪の状況に遭遇した施設職員達は不安げな顔でなのは達を見る。するとフェイトがそっと肩に手を置いて、安らぎを与えるような暖かな声で語りかけた。

 

「大丈夫。ここは任せて。貴女は早く離脱して応援を呼んできてほしい」

 

思わず見惚れてしまうような表情と声色に、不安と恐怖心に苛まれていた職員達の顔色は良くなるどころか赤くなっているようにも見えた。

 

「は、はわ……はひ、わ、わかりました!」

 

慌てて立ち上がると、非常用の避難通路に逃げていく職員達。それを見送ったフェイトに、なのはとはやてはジッと視線を送っていた。

 

「な、なに!?」

 

「いや、イケメンが役に立ったなぁって」

 

イケメン!?と悲鳴のような声を上げるフェイト。そのはやての言葉になのはもウンウンと頷く。イケメンとは男性に適用される言葉とは限らない。フェイトのような魂までもイケメンな存在もいるということだ。

 

そんな三人のすぐ近くに、ボウマンが顔からダイブするように墜落する。スバルもティアナも近接戦闘でなんとかしようとしているが歯が立たず、リボルバーナックルの一撃を避けられ、カウンターで横っ腹に重い一撃を受けたスバルは、近くの鉄製の扉を大きく凹ませるほどの力で叩きつけられる。

 

「遊んでないでさっさと手伝え!」

 

顔からいったにも関わらず鼻血程度で済ませたボウマンの怒声に似た声に促されて、なのはたちもカバンに入れていた酸素マスクを装着。さっきまで一切展開できなかったバリアジャケットを身につけて、すぐ近接戦闘に備えた。

 

「全員、C.C.O起動!はやてちゃんとティアナは後衛!残りは前衛!以上!」

 

「広域魔法が取り柄の私からすれば、この状況やと役立たずやからなあ!」

 

「呑気に言ってる場合ですか!?」

 

距離をとって仕切り直すなのはたちに、頭上でランスを数回転させ、石突で床を叩くアノン。その衝撃はなのはたちの体は軽く飛び上がるほどで、床には深々とヒビが入っていた。

 

「主役たちが揃い踏みとは面白い。ならば私と〝グリルパルツァー〟の組み合わせをとくと味わうが良い!」

 

なのはたちは時間制限60分と限られる中、その言葉と共に飛び出すアノンとの激闘を開始するのだった。

 

 

 

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