Forceへ繋がる物語   作:紅乃 晴@小説アカ

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今週分です


chapter.20「勇者たちに安らぎはなく」

 

 

「これまた派手にやられましたね」

 

カルナログ郊外、総合医療センター。古代遺失物保管施設に到着した増援は、施設内で戦闘を繰り広げ負傷していたなのはたちを発見。その混乱の中、外で待機していたソーサラーズのスタッフたちの手によってレリック奪取と監視を担当していたボウマン、スバル、ティアナは先んじて離脱。

 

なのはたちも増援のスタッフに紛れていたソーサラーズのスタッフの手によって手際よく搬送され、この郊外にある医療センターへとトンボ帰りしていたのだった。

 

ここにきた時よりもはるかにボロボロになっているなのはたちを見て、医療センターの医師は分かっていながらもそう言わざる得なかった。

 

なのはたちの怪我はまぁひどい。体の至る所に打撲、軽度の裂傷多数、C.C.Oを展開していたおかげで近接防御力は高くなってはいたものの、ダメージは避けられず、主に近接戦を受け持っていたフェイトとスバルも、肉体のダメージが大きかったことからベッドで横になることを余儀なくされている。

 

メンバー内で軽症で済んでいるのははやてとティアナくらいだ。

 

「あははー……久々に手ひどくやられたね」

 

「ヴィヴィオに見せられない……」

 

隣同士のベッドで上体だけ起こしているなのはとフェイトはそれぞれ口にする。とくにフェイトが言うように、ヴィヴィオにこの姿を見せたら何と言われるかわかったものではなかった。問い詰められるならまだしも、ハラハラと静かに泣かれたら何て弁明すればいいのか分からなかった。

 

「……1番の重傷はボウマンか」

 

そういって医師は振り返りながら言う。視線の先ではベッドに横になるボウマンの姿があった。頭や体のあちこちに包帯を巻いていて、医療的な呼吸補助の意味合いで酸素マスクをつけている彼は今だに意識を取り戻していなかった。

 

今回のレリック奪取作戦でもっとも重症だったのはボウマンだった。骨折まではいってないものの打撲に捻挫多数。背中を強打した影響で内臓にもダメージが入っているし、裂傷も酷いものだった。医師から見ればその状態で戦闘できていたのが不思議なくらいだった。その上で気を失った理由が失血によるものだったのだから、相当精神面がタフなのか、それとも肉体もタフなのか……。

 

「私たちの中でも、体を張って敵を相手していたから……」

 

「存外、ちゃんと前に出て盾をやってたのね。ボウマンは」

 

はやての言葉を遮るように、扉が開くと同時にそんな声が聞こえていた。なのはたちが入り口に目を向けると二人の男女が部屋の入り口に立っている。

 

女性の方はなのはたちよりも年上であり、男性の方は白髪の混ざったブロンドの髪と皺が入った顔でパッと見ても還暦を超えているように思える年齢と思えた。

 

二人は部屋に入ってくると、特に反応したのはフェイトだった。紺色に近い色の髪を後ろに束ねて揺らす女性は、灰色の瞳で驚いているフェイトを見た。

 

「キィナさん!」

 

「久しぶり、フェイト」

 

そう言って驚いているフェイトに握手の手を差し伸べて挨拶を交わす女性。そのやりとりになのはが目を瞬かせる。

 

「あ、貴女は……?」

 

「到着が遅れて申し訳ない。我々はソーサラーズの創立メンバーです」

 

そう答えたのは「キィナ」と呼ばれた女性ではない男性の方だった。黒のコートを脱ぎ、かっちりとしたスーツに身を包む二人はフェイトの知り合いであった。

 

「この人は、私が執務官になったばかりの頃にお世話になった先輩で……」

 

「キィナ・ナズミです。元執務官。隣にいるのは元執務官の室長を務めてた人ね」

 

「雑な紹介だな。トレイル・ブレイザーだ。よろしく頼む」

 

キィナ・ナズミと、トレイル・ブレイザー。

 

フェイトの紹介にあったように二人は元管理局の人間で執務官でもあった。

 

トレイルとキィナは上司と部下であり、特にキィナは犯罪経歴があったフェイトが執務官同士の中でも浮いていた中でも先輩としてフェイトとバディを組み「執務官の仕事とは何か」と教えていた時期があった。そんな二人はある事件をきっかけに管理局へ不信感と、ダインシーファの暗躍に気づき、フェイトが執務官試験に合格した翌年に管理局を辞したのだ。

 

それから連絡が途絶えていたのだが、このように再会するとはフェイトも予想外だった。

 

連絡をくれれば、混乱もなくスムーズに情報交換もできたのでは……そんな複雑な思いも渦巻く。そんな戸惑い似た感覚を覚えるフェイトに、キィナは微笑みを向けてはやてたちに向き直る。

 

「知っての通り、ソーサラーズのメンバーには時空管理局にいた人たちも多くいるの」

 

「キィナさんたちも、ダインシーファと今回の事件を止めるために?」

 

「色々と話したいこともあるけど、ゆっくりしている暇はない」

 

自己紹介も短く済ませて、トレイルは光学式モニターを展開して白色の壁へと拡大投影する。そこに写っていたのは簡易化された次元世界の地図であった。

 

次元空間に無数に存在する「世界」は大きく三つに分類される。

 

ひとつめは時空管理局によって管理、監視、交易も許可されている世界が「管理世界」。

 

ふたつめは観測、監視、有事の際は干渉して事態にあたるのが「管理外世界」。

 

最後は観測はされているものの詳しい調査や観測が困難な「遺失世界」と「準遺失世界」となる。

 

トレイルが映し出しているのは次元世界の中でも「不可視領域」というレーダーなどの観測機器が全く使用できない領域が点在する場所で、時空管理局内では「ポイント・ガンマ」と呼ばれるエリアだった。

 

「ここで高エネルギー反応が検出された。それもとんでもない値だ」

 

数値だけで見ればすぐにでも次元震が起こりかねない値のエネルギー波形が計測されている。魔力を有する測定機器や機材の全てをシャットアウトする「不可視領域」の特性上、観測や監視が困難なポイント・ガンマなのだが、そこで高エネルギーが観測された。しかもこのタイミングだ。警戒しない理由はない。

 

「管理局指揮下の各拠点も動き始めている。だが、今から調査隊を組織してポイント・ガンマへ向かうとなると時間がかかり過ぎる。たどり着く前にシステムが起動すれば……」

 

「どうなるの?」

 

「ゲームセット。私たちは永遠に魔法に触れることはできなくなる」

 

ダインシーファ、そしてレプリロイドたちが言っていた「ワールドダウンシステム」が起動すれば、全次元世界の魔力素の特性が反転し……魔法そのものが消失する。

 

キィナの言葉になのははすぐに起きあがろうと自身にかかっているシーツを捲り上げる。

 

「止めないと!いっ……〜〜っ」

 

その意思を妨げるように身体中に痛みが走る。フェイトやはやてが心配そうな目を向けてくるのに対して、なのはは大丈夫と小さく答えた。二人はすでに痛みを脱して回復に向かっているのだが、なのはの身体は治癒が遅く感じられた。それは僅かな違いなのだろうが、J.S事件の後遺症を持つなのはにとっては心に重くのしかかる違いのように思えてならなかった。

 

焦りを隠せないなのはの肩にキィナは手を乗せ、安心するように言葉をかけた。

 

「だからって無理はダメ。貴方達の力も当てにしてるんだから、今は身体を癒すことに専念して。あとで嫌というほど頼らせてもらうからね。それにもう少しで……」

 

そのキィナの声を遮り、病室の扉が勢いよく開け放たれる。全員が視線をつけた先には息を切らしたティアナがメモを片手に立っていた。

 

「失礼します!緊急事態のため連絡!南方5キロ地点に敵の軍勢が現れました!」

 

比較的敬称だったことからソーサラーズの管理室で手伝いをしていたティアナが血相を変えて報告した内容に、キィナは後ろに束ねた髪を揺らしながら病室の出口に向けて歩いていく。

 

「……これは相手も手を緩めてはくれなさそうね」

 

ソーサラーズ、そして機動六課の主力たちが負傷する中、最悪なタイミングで敵は攻めてきた。こちらも準備をしている以上、敵と同じく無防備となる。そこを攻めないという保証はどこにもない。

 

キィナ動ける魔導師と酸素ボンベをかき集めて、防衛戦に徹するよう指揮を始めるのだった。

 

 

 

 

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