Forceへ繋がる物語   作:紅乃 晴@小説アカ

25 / 40
どんどん進めるで


chapter.21「新たなる者たち」

 

 

 

なのはたちがいる総合医療センターから数百メートルの位置。片田舎の街にある広い公園に突如として鉛色の光が降り注ぎ、それを起点にゲートが開く。

 

普段と変わらない生活をしているカルナログの人々にとってその光景は異様であり、手に持っている端末でその光景を撮影しようとする者もいたが、突如として通信回線や端末の機能がシャットダウンされていく。

 

ゲートが現れたと同時、その周囲一体はワールドダウンシステムの影響下に置かれる。魔力動力で動く全てのものが動きを止め、それらに頼っていたインフラも機能不全に陥り、その困惑は混乱に変わり、そして街の至る所でパニックが起こり始めた。

 

さっきまで動いていた乗り物、通信機器、でんりょくまでもが動きを止める中、ゲートから足を踏み出すトゥリーは総数25体のレプリカントを従えながら眼前に見える医療センターを見据える。

 

「マスターが計画の障害になると言ったほどの脅威。威力偵察をするのも必要だよねぇ」

 

生体ユニットとデバイスのAIを組み合わせたレプリカントは、姿を人に模したことで装備や武装を目的に合わせて組み合わせを変えることで汎用性を高めている。制圧戦に特化したプラズマ銃と装甲を身につけるそれを指揮するのが、レプリロイドだ。

 

レプリカントを従え、指揮に徹する。レプリロイドはこういう運用が前提で、単騎で挑むというのはあり得ない戦術だ。

 

そのあり得ない戦術でなのはたちに挑んだアノンだが、その性能は決して劣るものではなくランス状のクラニアムを使った突貫力はレプリロイドの中でも群を抜いている上に、プラズマキャノンを組み合わせた高い近中距離の戦闘能力を誇っている。

 

そんなアノンが行動不能に陥るまでやられたのだ。

 

シンセサイドプログラムの中で対魔導師を想定して作られたレプリカント、レプリロイドにとって、アノンを撃破したなのはたちは充分な脅威となっている。

 

単騎で敵に挑むほど頑固ではないが、トゥリーにとっても、そして残ったダーにとっても、ダインシーファの計画を妨げるものは排除すべきという考えには同意していた。

 

それにまだ確立されたばかりのシステムであるレプリカント。汎用性に特化したそれを使った実戦の運用データの収集もやっていて損はない。

 

レプリカントとレプリロイドの組み合わせは強力無比。その力の差を見せつけられて、障害たる相手の心が折れるならその程度。威力偵察をするにはこのタイミングがベストだった。

 

「囲い込みは成功。あとは相手の出方を見ようか」

 

幸い、医療センターの周囲は大きな道路に囲まれているので見つからずに接近するのは困難ではあるが、すでにゲートを通じてトゥリー指揮下のレプリカントは市街地に展開済み。医療センターの西側からジリジリと距離を詰めている。

 

さて、相手はどう動くか。トゥリーは指揮所として構えた陣地の中で、医療センター内にいるはずの相手の考えをイメージするのだった。

 

 

 

 

「はやてさん、今後の現場の指揮で貴女に頼る機会も多くあります。なので対レプリカント戦での指揮経験を今ここで積んでもらいます」

 

「え、あ、はい!わ、わかりました!?」

 

医療センターの屋上に敷設された簡易的な指揮所で、なのはたちの中で唯一キィナに同行を求められたはやては、そんな彼女からのいきなりの言葉に肩を振るわせて応じた。

 

すでに周囲一体はワールドダウンシステムの影響で魔力が使えない状況であるが、指揮所内に設置された通信機器類は全てバッテリー駆動のものを採用されていて、キィナから渡されたインカムも問題なく機能している。

 

はやてのスキルは夜天の書と膨大な魔力による制圧魔法でもあるのだが、その本質は冷静な状況判断能力と最前線での指揮能力だ。その二つの素養があるからこそ、相手の嫌なタイミングで決定的に力を削ぐ制圧魔法を放つことができるし、現場にいる部隊の柔軟な運用も可能になっているのだ。

 

ワールドダウンシステム影響下では自慢の制圧魔法は行使が困難であることから、キィナを含むソーサラーズ指揮者たちは、現場でダイレクトに部隊指揮ができるはやての能力に期待をしていた。

 

「全員に通達。今回の戦いは防衛戦です。敵が医療施設内に侵入しないように防衛に徹してください。敵の撃破は可能な範囲内で。まずは敵を近づけないことが重要となります」

 

キィナが音声を通すと向こうから是と答えが返ってくる。すでに敵はこちらを囲むように展開しているが、その方が都合が良かった。

 

レプリカントの運用データはまだまだ少ない点もあって、相手の動きから今回の出現は実戦での部隊運用テストという側面があるのはすぐに理解できた。もし一本槍と化して数の暴力で防衛ラインを越えられていれば、被害が多くなることは免れなかっただろう。

 

すでにレプリカントによる散発的な攻撃が開始されている中で、ソーサラーズ側も実戦運用のテストを行うことにしま。

 

「ボウマンが奪取してくれたものをここで使います。担当者はP.M.F(Pro Magi-Link Field)発生器を起動!魔導士の底力を見せつてやりましょう!」

 

そうキィナが指示をすると、ソーサラーズに属する魔導師たちがあらかじめ渡されていたP.M.F発生器を起動させる。内部に収められたレリックからは問題なく魔力が溢れ、発生期を中心に周囲へ濃密な魔力を有したフィールドが生成された。

 

フィールド内で魔導師たちはストレージデバイスを展開し、魔力スフィアや収束魔法が使用できることを確認し、通信に応じる。

 

「魔力運用、問題ありません!」

 

その言葉と共に、魔導師たちの攻勢が強まる。息を吹き返したように反撃を開始する魔導師たちに、レプリカントを指揮していたトゥリーは興味深そうに相手の戦術を観察していた。

 

「へぇ、そういう手を使ってくるんだね。ただ、それは想定の内だよ」

 

その言葉の後、すぐに変化は起こった。レプリカント、そしてレプリロイドも魔力がない環境下での活動ができるように調整されている。だが、魔力が使えないとは言っていない。P.M.F発生器のフィールド内に入ったレプリカントたちの動きは一気に活性化した。魔力スフィアとバインド魔法が飛び交い、限られた空間内で目まぐるしい空中戦が繰り広げられていく。

 

通信機越しに攻勢を強めている相手の報告を聞いたキィナは相手の手強さに思わず眉間に皺を寄せる。

 

「やはり魔法があるからと言って優位に立てるわけじゃないか」

 

元々の話、シンセサイド・プログラムは次元世界の治安維持を目的としていて、レプリカント、レプリロイドは共に魔法犯罪者を取り締まるため、対魔導士を想定して作られている。

 

敵が魔法を使う以上、それを取り締まる側も魔法を用いた攻撃で対抗するのが当然。それに加えてレプリカントたちの魔力運用は一般的な魔導士の技量を凌駕していた。レプリカントは高度なAIを搭載したデバイスに手足を与えているようなもので、命令に従い、合理的に敵を攻撃するそれに迷いなんてなく、速やかに任務を遂行するためにその能力は高い水準のものとなっているのも必然だった。

 

みるみる削られていく防衛ラインの状況にモニターを眺めていたはやての顔に焦りが映る。

 

「このままじゃジリ貧になる……」

 

敵は分散しているものの、防衛ラインにいるソーサラーズの魔導士たちが各個撃破されたら、次に行われるのは医療センター内の制圧だろう。中にいるはやての友人であるなのはやフェイト、ソーサラーズの実働部隊を指揮するボウマンに至ってはまだ目を覚ましていない状況で、侵入されれば応戦できる状態ではない。

 

まだ防衛ラインが維持されている今なら、はやてが出てP.M.F発生器のフィールド内で制圧魔法をフルで使用する選択肢も選ぶことはできる。

 

そう判断したはやてが身を動かそうとしたが、その行先をキィナが肩に手を置くことで押し留めた。

 

「はやてさん、今から向かったって遅い。それに指揮官は無闇に指揮所を離れるものじゃないよ」

 

「でも!防衛ラインが突破されたら元も子もないじゃないですか!今のうちに反撃しないと……」

 

留まるよう言葉をかけるキィナにはやては反論する。ワールドダウンシステムの強烈さを知り、そしてダインシーファ、レプリロイドの力を知るはやての中には、明確な焦りがあった。それゆえに気づいていなかった。キィナの目にある余裕さ、そして敵を堰き止めることに徹し、必要以上に反撃しない防衛ラインにいる魔導師たちの動きに。

 

「ナズミ指揮官!カルナログ大気圏外より飛来物あり!高速で当空域に接近中です!」

 

オペレーターの言葉に、キィナは「予定通りのタイミングね」と返す。その状況に困惑しているはやてにキィナはニヤリと笑みを浮かべて言葉を放った。

 

「言ったでしょ?防衛戦だって」

 

カルナログの外。宇宙からやってきた飛来物は輸送艇だった。大気の摩擦熱に対応するために閉じていたウイングが開かれ、空気を割いて降下し続けるのはストライクヴェクター輸送艇。次元世界において傑作機である輸送艇は、魔力が使えない環境下も考慮して熱機関であるラムジェットエンジンを搭載している。轟々とジェットエンジン特有の噴流音を撒き散らしながら飛来するそれを見上げるレプリカントたちは、その機影から飛び降りた二人の影をみた。

 

輸送艦の後部ハッチから飛び降りた二人は、土煙をあげて攻勢を強めていたレプリカントの群れの中へと着地する。

 

「聞いてはいたが随分と賑やかなことになってるな!ハムナマを示す絶好の機会だ!」

 

「ジャン、もう少し口上はどうにかならなかったのか?」

 

土煙の中から現れた存在。一人は二対のショートランスの片割れで一体のレプリカントを串刺しにし、もう一人は背中に斜め掛けした剣を鞘から引き抜く。

 

「外縁部調査隊所属のサガミ・バルディオ、ソリオ・ジャン・ハムナマ、現着!」

 

サガミ・バルディオ。

 

ソリオ・ジャン・ハムナマ。

 

彼らこそ、ボウマンに双璧するソーサラーズの最高戦力であり、ワールドダウンシステムに対抗しうる「魔剣」を持つ〝騎士〟と〝戦士〟であった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。