Forceへ繋がる物語   作:紅乃 晴@小説アカ

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今週分です


chapter.22「カルナログの戦い(上)」

 

 

外縁部調査隊。

 

それは管理局内で最も過酷な調査隊と囁かれるほどの部門であり、事実管理局内での立ち位置は例えて言うなら日本の自衛隊の「特殊作戦群」に似たような立ち位置である。

 

まず外縁部調査という行為自体が危険極まりない。

 

外縁部とは文字通り、時空管理局が把握している次元世界の外縁部で、つまり未開領域を示している。そこでは新たな次元世界の発見や航路の開拓、未接触との文明との対話などが行われ、調査隊に属する魔導師の任務は多岐にわたる。

 

その任務の危険度は管理局内でも群を抜いていて、その過酷さは中央に位置するミッドチルダに属するなのはたちや、あくまで観測された領域内での環境保全を行うエリオやキャロでは想像できないレベルとなっている。

 

外縁部調査隊に選抜される条件は局員にも公表されてはいない。

 

しかし、これまで選抜されたメンバーの資格要項を知るリンディ提督やレティ提督から聞くと、35歳未満であることや、外世界調査任務に従事した経験があることや、原生生物との交戦経験、未開文明との接触経験、各種資格の取得など……その選抜条件は非常に厳しいものとなっている。

 

入隊後も魔導士としての技量のみならず、次元世界中にある文明社会や言語、民俗学から土着宗教まで数多くの知識を学ぶ必要があって、その上長期間の調査任務も当たり前。一度任務に就けば最長5年は次元世界の開拓と調査に駆り出されることになる。

 

故に、外縁部調査隊所属という肩書きだけで他の管理局員からは一目置かれる存在という訳である。

 

そして、カルナログに到着したサガミ・バルディオとソリオ・ジャン・ハムナマは、調査隊の実働部隊においてトップクラスの戦闘能力を有する……正真正銘の化け物であった。

 

「合流にはちと遅れたが、今が巻き返しの時ってやつだな!」

 

2本の短槍を持つジャンは着地した自分たちにセンサーを向けるレプリカントたちを一望しながらそう言葉を放つ。防衛する魔導師たちの反対側に降りたのだが、魔導師たちの攻撃は限定的であり、事前に聞いていたP.M.F発生器を中心に戦闘エリアが構築されている。

 

その様子をまじまじと見て、ジャンの隣にいたサガミが試しに魔力素を使う探索魔法を使おうとしてみるが、ワールドダウンシステムの影響を受けて魔力素を蒐集することも叶わない。

 

「まじで魔力が使えないんだな。こいつは確かに厄介だ」

 

そう言いつつも、サガミとジャンの顔色に焦りなどなかった。それぞれ風のようにその場から距離を取る。同時に二人がいた場所が弾けるように爆ぜる。すでに二人を敵と捉えたレプリカントたちが手に持っているプラズマ銃を放っていた。

 

サガミとジャン、それぞれが50メートルほどをほんの数秒で移動した動きに、防衛戦に徹していた魔導師たちが目を剥く。魔法が使えない環境下であるということは、肉体へ魔力的な補助を与えることもできない。つまり、酸素マスクやP.M.F発生器を使用しない限り、肉体のスペックは平時と変わらない。

 

にも関わらず、現れた二人の動きは常人のそれを逸脱していた。そして同時に理解させられる。その瞬間移動のような動き自体が二人の肉体スペックであるということを。

 

ジャンが短槍を振るうと暴風と化したエネルギーの塊が溢れ、近づこうとしたレプリカントたちの行く手を遮る。

 

そのエネルギーの発生源。イレギュラーとも言えるその正体を、レプリカントたちはすぐに看破した。

 

「魔剣使いか!」

 

魔剣。

 

それは特定の世界のみから産出されたと言われる魔石を用いて作られた剣の俗称で、管理局から見ても立派な古代遺失物のひとつとなっている。

 

魔石とは人の手を介さず、自然界で生成された高密度の魔力結晶体で、その生成純度によっても内包される魔力量は左右されるが、平均的な魔石はほんの一欠片でもミッドチルダの年間使用電力を補う魔力を抽出することができる。

 

そしてサガミとジャンの持つ「剣」と「短槍」は、刀身の精錬過程で魔石を溶け合わせて作られている武器。使用された魔石の純度も最高峰のものであり、その武器自体がレリックのように膨大で無尽蔵な魔力を生み出す性質を持っていたのだった。

 

つまり、サガミとジャンの両名はその魔剣を使う騎士と戦士であり、その能力を変われて外縁部調査隊に選抜された経緯もあった。

 

「魔剣使いか……こっちでもそう呼ばれるのも……」

 

「ちっがーう!」

 

反対側にいるサガミの言葉を遮るように、ジャンの大きな叫び声に似た否定の言葉が響き渡った。突然の声にレプリカントたちや防衛していた魔導師たちの動きも止まる。

 

そんな面々を見てジャンは「やれやれ」というふうに首を振ると、2本の短槍の穂先を地面に突き刺して、向かい合っているレプリカントたちに指差しながら強く言葉を放った。

 

「いいか!俺には許せないことが三つある!ひとつは食物を粗末にすること!ふたつ目は相手に敬意を払わないこと!三つ目は魔剣使いとか訳わからん名前で呼ばれることだ!」

 

「三つ目の許さないことが言うたびに変わる」という、もう聞き慣れたジャンの口上にサガミは死んだ目をしていたが、そんなことお構いなしにジャンは短槍を引き抜き、両手で縦に高速回転させてから構える。

 

「俺はハムナマの戦士だぁあ!」

 

……ハムナマとは?

 

サガミを除いて、その場にいる全員の頭にそんな疑問が浮かぶ。ハムナマの戦士と自称してレプリカントたちを千切っては投げ、千切っては投げるジャン。この圧倒的な暴力がハムナマなのだろうか。そんな疑問が尽きない。それはそうだろう。だって、ここにいる全員、この物語を聞くものも、みんなハムナマなどという言葉知らないのだから。

 

「よろしい!ならば説明しよう!ハムナマの戦士を!」

 

一体のレプリカントを横凪にぶん殴って地面に頭から埋めたジャンは自信満々に胸を張る。

 

「いいか!ハムナマとは我が故郷から古く伝わる戦士の証!ハムナマ族に生まれたものは天然自然の全てを愛し、そのエネルギーを持って戦う!つまり!ハムナマこそが戦士!チャンドラハース!ルギートゥス!受けてみろ!俺の肉体こそがッ!奥義!剛力ィ!回転ンンン…旋風ゥゥゥ!!」

 

……だから、そのハムナマって何!?

 

その場にいる魔導師全員がツッコミを入れたい中で、ジャンは短槍を高速で縦回転させて、そして自分自身も横に回転しながらレプリカントの群れに突撃する。魔力を発する魔剣の特性と回転エネルギーを得たその攻撃は、まさに暴風旋風と言っても過言ではなく、吹き飛ばされたレプリカントや瓦礫が市街地にある建物や街灯に直撃し、壁を凹ませたり、屋根を破壊したり、柱をひん曲げたりしていた。間違いなく被害甚大である。

 

「おおい!?ここは市街地なんだぞ!?いつもみたいにぶっ放すのはやめろ!」

 

「安心しろ!死なないように加減はしてる!」

 

「心配しかない!」

 

ジャンの持つ魔剣……短槍の形をした「チャンドラハース」は、この惨状の通りに制圧戦を得意としている。無尽蔵に溢れる魔力に物を言わせて全てを巻き上げて相手を粉砕する。

 

「咆哮」という別名を持つ「ルギートゥス」は、回転させるチャンドラハースから魔力を吹きだしながら、槍を振るう本人もブンブン回るため、まさに咆哮の名にふさわしい暴風を実現したのだった。

 

ただ、あまりにも被害が大きすぎる。外縁部の原生生物との非情なバトルでは絶大な効果を持っている技ではあるのだが、被害を広げないようにと指揮官から釘を刺されている状況で使う技ではない。

 

「飛燕……三連閃!」

 

そんなジャンの豪快な戦いとは違い、肩口から剣を抜いたサガミの戦い方は至ってシンプルだった。鞘を走らせて抜いた切先を3回翻し、襲いかかってきていたレプリカントの武器を切り落とす。

 

ただ、その剣閃の速度が異常だった。魔力を纏って物理的な現象を逸脱した速さとなった3つの剣閃は一息の中で振るわれ、まるで同時に放ったかのような精度で目標とした相手の武器に到達した。

 

バラバラと手の中で崩れる武器を見て、ならば接近戦でと腕を刃に変えるレプリカントだが、次に飛んできたジャンの槍による暴風で戦闘不能に追いやられる結末を辿った。

 

「サガミ、お前はいつになくこじんまりしてるなぁ。もっとこう、バッとやってガーッてやればいいだろ?」

 

「その結果、お前の始末書を毎回書く俺の身にもなって?」

 

擬音で例えられるジャンの戦闘スタイルのせいで、世話係のようなポジションとなっているサガミは関係各所方々に平謝りするハメになっている。調査隊の中では見慣れた光景となりつつあるが本人からしたら溜まったものじゃなかった。

 

「はやてさん!みんな、ご無事ですか!?」

 

圧倒的な力で防衛ラインにいたレプリカントたちが殲滅されていく中、指揮所に到着した輸送艇から降りてきた相手を見て、はやては顔を綻ばせた。

 

「エリオ!キャロも一緒やったんやね!」

 

到着したのは辺境自然保護隊隊員であり、フェイトの家族でもあるエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエだった。彼らもサガミとジャンと同じく別の次元世界にいたのだが、世界の危機となのはたちに協力するためにソーサラーズの打診を受けて合流し、カルナログへとやってきたのだった。

 

「いくよ、フリード!」

 

エリオはすぐに魔力が充填された酸素マスクを装備、槍型のアームドデバイス「ストラーダ」をC.C.O仕様で展開して、竜騎士の名に相応しくフリードリヒに跨って防衛戦へと加わっていく。

 

キャロは医療センターのスタッフに協力する形で支援に加わってくれている。

 

現場は一気にソーサラーズに有利な状況に傾き始めていた。

 

「よく間に合ってくれたわ。それに、この戦力ならレプリカントにも対抗できる」

 

レプリカントが試験的な運用をしていたことに対して、キィナも対レプリカント戦に向けて布石を打っていた。P.M.F発生器に、サガミやジャンのような魔剣使いによる殲滅力、そして強襲による相手の指揮系統の混乱と撃破。

 

予想通り効果は絶大で、本筋であるワールドダウンシステムの阻止作戦にも適用できることは確認できた。あとは敵を撃破すれば条件はクリアできる。

 

しかし、相手も単純ではなかった。

 

「なるほど、確かにこれは厄介な相手だね」

 

レプリカントたちが次々と撃破されていく中、その指揮系統の乱れと混乱めいた動きは〝意図的〟なものだった。一点突破せず、防衛ラインにまんべんにレプリカントを配置したのは、ソーサラーズの戦力を分散させるため。

 

いくら攻撃力や殲滅力が高くとも少数精鋭で守れる領域には限りはある。

 

だから、敵に手広く戦わせて防衛網が薄くなる場所を作る必要があった。

 

「この反応は……!?敵が一体、内部に侵入!」

 

「なんですって!?」

 

レプリカントたちが撃破される中、それらを犠牲にしてレプリロイドであるトゥリーは堂々と医療センターに侵入することに成功していたのだった。

 

 

 

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