Forceへ繋がる物語   作:紅乃 晴@小説アカ

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chapter.29「ブリーフィングの一幕」

 

 

 

「全員揃っていますね?では、作戦を説明します」

 

ひとまず、ダインシーファから直接連絡が入ったという想定外な事態から色々と脱し、ようやく全員の足並みが揃い始めた。

 

管理局とは隔絶した組織、それがソーサラーズだ。

 

最初の頃……まだ組織とも言えなかったとき。管理局を辞したトレイルと共に方々へ足を運び、次元世界の至る所に残るダインシーファの足跡を追っていた。

 

そんな探索の日々の中、彼の思惑によって被害を受けた者、彼の目的を知って正義感で参加する者、そしてソーサラーズの活躍によって助けられた恩から参加する者も少しずつ増えていって、今や組織内の人員は膨大なものとなっている。

 

もちろん、時空管理局と比較すれば雀の涙ほど開きはあるものの、次元世界で時空管理局を除いた組織としては一番大きな勢力となっているはずだ。

 

この作戦に参加してくれた時空管理局所属のアースラ、クラウディア。そしてソーサラーズが有するエンデュランスの三隻。その中の次元航行船で一番巨大な船はエンデュランスだ。

 

L-U級と呼ばれるエンデュランスは傑作艦艇であるL級の設計を踏襲しつつ、次元世界の外縁部を調査することも考慮して建造された船で、船体各所には長期航行となることから移住ブロックが増設されているし、船員も増えることから大きなブリーフィングルームも用意されている。

 

作戦の実働部隊となる魔導士たちは連絡船でアースラとクラウディアから連絡船を使って集まり、エンデュランスのブリーフィングルームにつめている。

 

300人程度なら収容可能なブリーフィングルームだが、その三分の二しか人員は埋まっていない。

 

つまり、作戦に参加する人員はこの程度ということだ。

 

作戦を説明するために全員の前に出て見渡しつつ、その悲観的な考えを追いやりながら作戦を説明する。

 

「今回の作戦、一言で言えば奇襲作戦です。つまりタイミングが全てを決めることになります」

 

大きな光学式モニターに映る次元世界の地図をさらに拡大し、3箇所にマークを表示する。全員の視線がモニターに注がれる中、マークを一つ一つポインターでなぞる。

 

「ラルドニア、ブルックアイルズ、そしてミッドチルダ。それぞれの世界にはワールドダウンシステムを効果的に発揮させるための中継機があり、すでにそれらは稼働準備を進めています。我々の任務はラルドニア、ブルックアイルズに向かい、中継機を破壊することです」

 

「ミッドチルダの中継器はどうするのですか?」

 

話を聞いていた魔導師の中、ブリーフィングルームの一番前の席に座っている空戦魔導師の女性が軽く手を挙げて質問をしてきた。

 

その質問に壇上のそばに控えているスタッフに視線を送ると、すぐに頷き、光学式モニターに別の写真が表示された。

 

そこにはC.C.O仕様に改造されたデバイスを受け取っているシグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマルが映っている。

 

「すでに別部隊が行動中です。ミッドチルダの中継器の破壊は彼らに任せます」

 

カルナログのロストロギア保管施設での襲撃。その後から別行動をしていたソーサラーズのメンバーはすでにミッドチルダに到着していて、きたる作戦に向けて準備を進めてくれている。

 

八神はやてに仕えるヴォルケンリッターの騎士たちも全快しているし、彼女たちは時空管理局でも名を轟かせる強力な戦力だ。その戦力を時間をかけていたずらに分散するより、ミッドチルダの中継器破壊を任せる形で落ち着いたのだった。

 

「敵は奇襲に備えて防備を固めていて、我々はその防備を突破し中継器を破壊することになります」

 

「厳しい戦いになりそうですね」

 

「ええ、そしてその戦いこそが我々の最大の目標でもあります」

 

率直な思いだった。その言葉にブリーフィングルームに詰めている魔導士たちは全員顔を見合わせる。認識に違いがあったら困るので、ここは丁寧に説明をしていく。

 

「3箇所にある中継機への同時奇襲。それで敵の注意と戦力をこちら側に釘付けにします」

 

敵が虎視眈々と準備しているところへの奇襲。その効果は絶大だ。中継器がなければいくらワールドダウンシステムがあろうとダインシーファが目論む「人」と「魔法」の分離という夢には届かない。

 

中継器を別の拠点で再建すれば解決するかもしれないし、たとえその場しのぎのものであったとしても一時的な停滞をダインシーファが認めないなら、彼の保有する戦力はなんとしても中継器を死守するはずだ。

 

だから、三つの中継器に攻撃を仕掛けて、ダインシーファの戦力を分散するため、中継器へ送り込む戦力そのものを「囮」として使う。

 

「本作戦の最終目標。奇襲開始と同時刻に、ポイント・ガンマ……別名、【アーズガルド】へ本隊を突入させ、敵本拠地にある「ワールドダウンシステム」そのものの破壊を目指します」

 

静かな部屋の中、自分だけの声が響く。誰も言葉を発さずにまっすぐこちらを観て真剣な表情で言葉を聞いてくれている。

 

「3箇所への同時奇襲。敵戦力を分散させ、敵の指揮系統が混乱する中で本拠地も襲撃する。……つまり、この作戦で最も重要なことがタイミングとなります。すでに次元世界の各所でワールドダウンシステムの影響がで始めていて、連絡手段が断たれつつあります。なので作戦自体は次元世界標準時間で実施。出発前に全員のタイマーを作戦開始時間へ合わせます」

 

選出された魔導士たちの腕にはアナログな腕時計が備わっていて、それはこの作戦のために用意された代物だった。作戦開始時間までのカウントダウンと、作戦開始からカウントを加算していく機能のみが備わっていて、通信や他機器とのリンク機能はない。

 

そのカウントの開始時間を合わせることで通信やネットワークを介さなくても全員が作戦遂行状況を時間軸で判断できるようにするためだ。

 

「そこから先はそのタイマーが全てです。遅れは許されません」

 

「アーズガルドへの突入部隊の選出はどうなんですか?」

 

「敵本拠地を抑えるのです。我々の持ちうる最大の火力、突入能力を持つ者を人選しています」

 

アーズガルドへ突入する部隊の役目はこの作戦の最重要で、生半可な戦力では目標なんて達成できない。加えてアーズガルドに残存している戦力も不明なため、突破力、殲滅力、制圧力を有する人員を割り当てることは必須。そして、それら能力を有する人材はすでに確保している。

 

高町なのはを筆頭とした管理局の元機動六課の面々と、ナンバーズからチンクと聖王教会からシスターセインが参加してくれている。

 

そしてソーサラーズからは魔力リソースに制限がなく、殲滅力と突破力に秀でた筆頭戦士、サガミ・バルディオとジャン・ソリオ・ハムナマ、実戦部隊を率いてきたボウマンが参加する。

 

この作戦を説明しているキィナ・ナズミも陣頭指揮を取るために現地部隊に加わる予定だ。

 

三つの中継機へ戦力の大半を向けている。本拠地に向けられる人員数は限られる。なので持ちうる能力が高いものを優先的に投入している。

 

「各人員にはアームバンドを渡します。ラルドニアはイエロー、ブルックアイルズはグリーン、ミッドチルダはブルー。作戦も各アームバンドの色をチーム名とします」

 

ここから先は通信は当てにならない。腕につけたアナログタイマーとアームバンドが仲間であることの印だ。……過酷な作戦だとも理解している。帰ってこれない可能性だって捨て切れない。

 

しかし前に進まなければ、未来はない。

 

「みなさん、危険な任務への志願を感謝します。……どうかご無事で。健闘を祈ります」

 

敬礼を打つとその場にいる全員が立ち上がって敬礼を返してくれた。少しの間を置いて敬礼を下すと、全員が各持ち場に向けて出発準備へと入っていく。空になったブリーフィングルームの壇上で思わずため息を吐いた。気が重い。そうとしか言葉がでない。

 

「みんなわかった上でこの作戦に参加している。あまり気負うな」

 

部屋の壁際で事を見ていたトレイルがそう言葉をかけてくれるけど、気持ちが軽くなることはなかった。

 

「わかってますけど……この作戦を準備したのは私たちですから」

 

「だからこそどっしりと構えておかないと全員が不安になるだろう。皆、気持ちはわかるが少し落ち着け」

 

管理局を辞したあの日、道を共にしてきたトレイル。もともと人を指揮することに慣れていた彼とは違い、こちらは人は指示を出すことなんてソーサラーズが発足してから初めてなのだ。それも危険性の少ない任務ではかく、死の確率が非常に高い任務だ。どっしり構えられるほどの精神的なタフネスさはまだ備えていない。

 

「トレイルさんは逆に落ち着きすぎです。でも……慌てて事態がいい方向に行くなら良いんですけど。そうもならないから……困ったものですね」

 

「三拠点に戦力分け、最高戦力を敵本陣に……本音を言うなら全部を敵本陣に向けたいところだが……中継器はどうあっても見過ごすことはできない」

 

「ねぇ、トレイルさん。この戦い……勝てますか?」

 

「……どうだろうな」

 

思わず肩の力が抜ける。その様子にトレイルの横にいたリンディ提督が困ったような笑みを浮かべているのが見えた。

 

「ここは勝てると言わないとですよ」

 

「我々は準備をしてきたつもりです。ただ、それで足りているかなどはわかりません。残念ながら私はそこまで楽観主義にはなれないものでして」

 

リンディ提督にそう返すトレイルには正直なところ同感。ダインシーファの力は強大。古くから存在する神と言っても過言ではない相手だ。そんな強大な存在に勝てると断言するのは難しい。

 

「ただ……」

 

「ただ?」

 

「ダインシーファの鼻っ面に一発キツいのを叩き込みたいと思ってますよ」

 

トレイルの言葉に一瞬キョトンとしたリンディ提督だったが、すぐに笑顔に変わっておもしろそうに口元を指で隠しながら楽しそうに言葉を返した。

 

「その意気地が大事なのかもしれませんね」

 

そのやり取りを見ていたクロノ提督がわざとらしく咳払いをして、ひとつトレイルに提案を出した。

 

「世界はこの作戦の両翼に乗っていると言ってもいい状況です。ならば、何を信じて戦うか……それを改めて示すことが重要なのではありませんか?」

 

「……了解した。だが、それを言うのは私たちじゃないだろう」

 

そう言ってトレイルはモニターに写っているアーズガルドへの突入メンバーを見上げる。そこにはこれまでの物語を象徴する3人の女性の顔写真が映し出されていた。

 

 

 

 

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