Forceへ繋がる物語   作:紅乃 晴@小説アカ

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chapter.31「ブレイク ザ ワールド(1)」

 

 

第三管理世界「ヴァイゼン」

 

各次元世界の窓口である空港で、一機の定期便が第一管理世界「ミッドチルダ」に向けて出発準備を進めていた。

 

搭乗人数と輸送貨物の膨大さから、定期便は相応な大きさを有しており、質量の大きさから地上からの転送はできず、次元空間航行をするにもひとまずヴァイゼンを離れ、宇宙空間に脱してから行う必要がある。そのため、定期便は滑走路から飛び立ち、そのまま地上を離脱することが運航ルートであった。

 

その日も定期便は予定通りに利用客と物資を詰め込んで最終チェックを行ってから指定された滑走路へと進んでいた。

 

定期便の動力は魔力を駆動源としていて、そのクリーンなエネルギーは多くの艦艇にも使用されている。緊急時に別動力のジェットエンジンも搭載はしているが、基本的に魔力由来の推力で事足りる。もちろんパイロットもそのことを熟知していた。

 

異変に気づいたのは技術長だった。

 

「機長、スラスターの圧力が規定値より下がっている」

 

コクピットにある横並びのパイロットシートから、技術長の言葉を受けて機長と副機長が驚いた顔をして振り返った。出発前の最終チェックでは何ら問題はなかったはずだ。今も機体に警告も出てはない。

 

スラスター圧力が規定値より低いとはいえ、運航スケジュールもあるので遅延は許されない。その状況を素早く判断した機長はすぐに管制チームへ通信を開いた。

 

「こちら、LA-085便。技術長からスラスター圧が規定より低下している報告を受けた。他警告はないものの、安全のために再度チェックを……」

 

その言葉を遮って、コクピットで警告音がけたたましく鳴り響いた。副機長や技術長も慌ててコンソールに目を走らせる。コンソールには魔力駆動のエンジンから警告やエラーを示すメッセージが溢れていた。

 

こんなことは初めてだった。低圧力で出力維持をしていたスラスターも一気にパワーダウンし、動力も非常電源へと切り替わっている。

 

なんだ?何が起こっている?若干の混乱がある中、機長は管制チーム側から応答があることに気がついた。

 

《LA-085便!こちら管制チーム!ただちに飛行を取りやめ!待機滑走路まで下がってくれ!》

 

「管制チーム、何があった?状況がわからない!」

 

《いいから早く待機滑走路に行ってくれ!非常電源を使って構わない!いいから早……》

 

「予備電源使用、待機滑走路に移動します!」

 

同じく管制チームの話を聞いていた副機長が素早く機体をコントロールして待機滑走路へ移動させて行く。機長は「頼む」と操縦を長年共に歩んできた副機長に任せ、管制チームと通信を試みようとしていたが、どのチャンネルも通信がダウンしていることに気がついた。

 

管制チームの焦り具合からして只事ではないと直感的に理解していたが、何が起こっているのか……すると、すぐ前にあった着陸用滑走路で轟音が響いた。

 

「なんだ!?」

 

「あれは……!」

 

着陸用滑走路に目を向ける。そこには通常の飛行では考えられない速度と角度で着陸を強行していた定期便の姿があった。その便は他の管理世界から「ヴァイゼン」へ戻ってくる機体だった。着陸の衝撃でライディングギアは折れていて、機体底部と滑走路の摩擦で火花を上げながら機長たちの眼前を横切って行く。

 

あのまま滑走路に進んでいたら、あの着陸する機体と衝突は免れなかっただろう。

 

轟音が響き渡る。その不安は乗客がいる空間にも伝わっていて、急に出発を取りやめたことや、機体が前に進まずに後ろに下がったことで、その不安はより大きなものになっていた。

 

一人の乗客が不安を紛らわせるために窓から外の景色を見た。そして、空を見上げて声を振るわせる。

 

「あれは……なに……?」

 

窓の外から見えた空。

 

そこには上空で着陸待機をしていた船たちが、突如として動力を打ち切られ、急激に降下している異様な光景が広がっていた。

 

魔力が急激に消失するワールドダウンシステムの影響は、すでに多くの次元世界に出始めているのだった。

 

 

 

 

 

 

「C.C.Oか。原理はわかった。だが御せれるか?」

 

「そこはヴォルケンリッターの騎士たちの力量に期待と言ったところでしょう」

 

ミッドチルダ。首都クラナガン近郊に位置する時空管理局地上本部。

 

まだ指揮機能が満足に回復していない状況の中、訓練施設にはシグナムを筆頭としたヴォルケンリッターの騎士たちがいた。

 

対ワールドダウンシステムのためカルナログから持ち込まれたのはP.M.F発生器(Pro Magi-field)が五基、そしてシグナムたちのアームドデバイスに合わせてセッティングされたC.C.O(クローズ・コンバット・オプション)の更新データだ。

 

それを託されたソーサラーズのメンバーがミッドチルダに到着したのは1日前で、シグナムたちのアームドデバイスの更新は、地上本部に残っていたマリエル・アテンザ技術部主任が突貫で調整をしてくれた。

 

シグナムが愛剣であるレバンティンを展開すると、刃がやや大型化し、内燃魔力を効率よく運用するための冷却装置、そして持ち手の箇所には防御装甲としてナックルガードが追加されている。

 

ヴィータのグラーフアイゼンや、ザフィーラの手装甲、シャマルのクラールヴィントにも、魔力が制限される環境下でも能力を落とさないための追加装甲や措置が施されている。

 

鞘から半身ほど抜いたレバンティンを納刀してから、シグナムは眼前にあるものを睨みつける。

 

管理局地上本部から目視で見える距離に現れた巨大な受信装置。地下から地面を割って現れたそれこそが、直前の通信です主人であるはやてから聞いていた「中継器」というものだろう。

 

すでに管理局の地上部隊が偵察に出たのだが、同時に現れたレプリカントによって偵察隊が撃退されている。現在、管理局側でも迎撃準備をしているが、指揮系統が不安定な故か、その動きにある迷いは大きかった。

 

「すいませんが、私にできることはここまでです。後のことは皆さんに頼みます 」

 

徹夜でシグナムたちのデバイスを調整したマリエルと一緒に、カルナログから情報と戦うためのツールを持ってきた男性は申し訳なさそうな顔でそう言う。

 

マリエルとその男性は十二分に役目を果たしてくれた。ここから先は自分たちの仕事だ。

 

「主人と一緒に戦えないのは心残りではあるが……」

 

「あたしだってアイツにリベンジしたいけどさ。はやての守りたいものを、あたしたちが守らないとな」

 

「無論だ」

 

シグナムの言葉にヴィータと、そしてザフィーラが同意する。全員、ダインシーファを取り逃がしたことや手痛くやられたこともあって、可能であればアーズガルドに同行し、はやてと共に戦いたかった。

 

だが、今このミッドチルダでまともに戦える戦力を有するのはシグナムたちヴォルケンリッターのみだ。時間稼ぎと破壊が必要な中継器を見過ごすわけにはいかない。

 

「タイマーはすでにセットされているけど、私たちの役目は中継器の破壊と、ここにいる敵戦力を引きつけることにあるわ」

 

今回、後衛に回るシャマルのいう通り。シグナムたちの腕には他のソーサラーズの実働部隊が身につけているものと同じタイマーが備わっている。

 

カウントはすでに進んでいて、他の拠点でも攻撃が始まっているはずだ。

 

「状況を把握し、満足に動けるのは私たちだけだ。やるぞ」

 

「わかってるっての!いくぞ、アイゼン!」

 

通信は全く使い物にならないが、まだ魔力は不安定になっていない。ワールドダウンシステムの影響が大きくなる前にあの中継器を一気に破壊する。

 

シグナムとヴィータは飛び上がって、ザフィーラは地を駆け抜け、ビルを飛び越えながら一気に中継器へ距離を縮める。

 

【敵性反応確認、迎撃する】

 

シグナムたちが中継器に近づくと同時、中継器の周囲に展開していたレプリカントたちがシグナムたちに狙いを定める。

 

明確な敵意を肌で感じながら、シグナムとヴィータは管理局の観測隊がいる最前線へと到着する。

 

「ヴォルケンリッターの騎士のみなさん!?」

 

「ここから先、邪魔するものは全て障害とみなす!戦う意志のない者は下がれ!」

 

観測機器を持っていた局員たちの返答を聞かず、真っ先にヴィータが機動性を発揮したグラーフアイゼンを構えてこちらに向かってくる敵陣へ突撃を決行。轟音と爆砕音が響き渡る中で、シャマルやザフィーラも行動を開始して行く。

 

「癒しの風よ!」

 

「鋼の軛!テオオオアーーッ!」

 

ヴォルケンリッターの騎士とレプリカントによる市街戦へ発展して行く戦い。戦闘力を碌に持たない観測隊の前に出たシグナムの方にもプラズマキャノンを構えたレプリカントが迫る。

 

鋭い呼気を吐き出すと同時、シグナムは納刀していたレバンティンを抜き放つ。その居合のような一閃で、迫っていた三体のレプリカントを一気に上下に斬り払った。

 

「こい、意思のない人形たちよ!ヴォルケンリッターの騎士の力、味わうがいい!」

 

紫炎の光を内部に漲らせるレバンティンを正眼に構えながら、シグナムは声高らかに宣言する。

 

戦いは始まったばかりだ。

 

 

 

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