Forceへ繋がる物語   作:紅乃 晴@小説アカ

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chapter.3.5「デッドマンスイッチ」

 

 

「あの実験は上手くいった。今まで一番有意義だったかもしれないな」

 

真っ暗な空間の中、一つの照明から降り注ぐ光がそこにいる存在の輪郭をはっきりと表していた。

 

そこには他の誰もおらず、細い木材を組み合わせたモダンなデザイン椅子と、小さなテーブルがあって、その机には盤面だけが載せられていた。チェスの盤面だ。まだ駒はない。白と黒の盤面だけが置かれてある。

 

「やはり、彼女たちが〝主役〟かな」

 

そう言って、ジョン・オールドマンは椅子を座りやすい幅まで引っ張って腰をかけた。反対側に座る相手は「彼女たちではないけれどね」と答えつつ、オールドマンが椅子に座ったのを見てから、脇に置いてある三つの駒を盤面に並べた。

 

ルーク。

 

ビショップ。

 

ナイト。

 

あえてキングとクイーンは置かない。その他も全て置いていない。これは陣取りゲームのための盤面であるが、今はその準備段階だった。

 

「彼女たちは見つけられるだろうか」

 

「見つけられるさ。もし見つけられなかったら、これまでと同じように世界は滅んで終わって、また最初から始まる」

 

キングの駒を親指と人差し指で挟むように持つ相手は、淡々と言葉を紡ぐ。

 

「もうすでに3度の危機を彼女は乗り越えた。これまでの過去になかった偉業だ」

 

ジュエルシード、闇の書、レリック。世界を壊すには十分すぎる力を持ったそれらは、一般的に古代遺失物……ロストロギアと呼ばれる代物だ。古代の文明が残した遺産、あるいは過去の残骸。

 

しかし、オールドマンの前に座る相手の見解は異なる。

 

「デッドマンスイッチだ。どの時代、どの文明、どの時間軸にも現れる。押せば世界が終わる。そのスイッチの残骸を……人は古代遺失物と呼ぶ」

 

すこし、話をしようと相手は言った。

 

たとえば膨大な魔力を有する器。たとえば情報を保管し必要な場面で確実に呼び出すアーカイブ。たとえば超高エネルギー結晶体などなど……様々な理由でそれらは過去に作られた。

 

目的も要素も機能も違うが、一つ共通して言えることは、管理局が危険視する古代遺失物には〝何らかの方法〟で、世界を壊す力を有しているのがほとんどで、それを作った文明や、悪用しようとした世界を滅ぼしていると言う点だった。

 

例えばジュエルシードで言えば、その物質自体が高密度の魔力を有する存在であり、一度臨界を迎えれば次元空間を破壊させる次元震を発生させてしまうほどの危険性を孕んでいる。

 

闇の書も然り、あの本の影響で幾つの文明社会が終焉を迎えたのか……計り知れない。

 

ロストロギアとは、そう言った力を持つ代物が多い。

 

では何故、古代文明社会はそんな不安定な代物を作り出し、そして自らの手で滅んだのか?

 

行き過ぎた文明の驕りなのか、はたまた狂人が犯した悪魔の所業か。

 

「それらの目的は文明のリセット装置。だからデッドマンスイッチなんだ。そしてこう言った考えもできる。この世界に生まれるあらゆる人種は、ある程度の進化や発展を遂げた段階で自己崩壊するようにあらかじめプログラミングされている、と」

 

魔法と人が混ざり合いすぎると、その危険性は一気に跳ね上がる。それはアルハザードの崩壊で証明されている。

 

人には想像絶する力を制御する合理性と理性がない。

 

現実問題でも、今のミッドチルダは魔法を使った犯罪が急増しており、管理局の名が知れている各次元世界も同様だ。

 

そう言った者たちがいる以上、叡智を極めた科学技術による崩壊というものは、人種の行動によって定められた事象なのかもしれない。

 

「じゃあ、この世界でも、避けられない滅びは運命だと言うのか?」

 

「運命じゃなくて必然だよ。人が魔法という技術を手にした段階からこの必然は避けることなどできない。そしてその行き着く先こそが人の現実であり、未来だ」

 

行き過ぎた技術を持つ世界の終焉。

 

ありきたりな話であるが、それはある意味決定づけられた物語でもある。

多くの神話などに登場する文明の頂点を極めたはずの世界は、そのことごとくが滅びの道を辿っているのだから。

 

「だから点を残した」

 

点。それは単なる事故や、事件かもしれない。ただその点と点を繋ぐものが必ずあるはずだ。その鍵はすでにいくつも用意してある、

 

全ては点であり、その点を線で繋ぐキーワードは巧妙に意識の外へ向かうよう設置され、隠されている。

 

全ての事象に辻褄が合うように引ける線。

 

その線を見つけられるか、どうかが重要だ。

 

「さて、主役である君たちはどう動いて……たどり着く?」

 

散りばめられた点に順番なんていう明確な取り決めは存在しない。しかしすでに点は散りばめられている。それを繋げず、何も気づがなければ、この世界も過去の残骸と同じ運命を辿ることになる。手がかりは多く、そしてさまざまな形になって世界を巡る。それを手に掴むことが必要なのだ。

 

三つの駒、ルーク、ビショップ、ナイトが向き合う番の中心部へ、キングを置く。

 

これほど間近にあるというのに、誰も気がつかない。

 

誰も見ない。

 

誰も感知しない。

 

しかし真実はそこにある。

 

光でも闇でもない場所から、静かに主役たちを見つめている。

 

だから点をそれぞれ繋ぎ合わせ、導き出された地へ来るがいい。

 

その未来こそが最後の希望なのだから。

 

 

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