Forceへ繋がる物語   作:紅乃 晴@小説アカ

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chapter.7「暴きゆく道へ」

 

 

 

ミッドチルダ。首都クラナガン。

 

「調子はどうや?」

 

「解析は進めていますが……やはり情報が限られていますね」

 

「シンセサイド・プログラム」に反対する派閥であるリンディ提督や、レディ提督。そしてはやての友人でもあり、後援者でもあるカリム少将の力添えもあって、はやては秘密裏に運用可能な移動型指揮所、見た目で言えばトレーラータイプの大型MCを入手しており、ティアナに依頼している違法ギリギリ……いや、ほぼ違法行為も辞さない調査や、現在独自に小隊規模で行動するなのはたちの部隊運用なども、この指揮所トレーラーから行っていた。

 

シンセサイド・プログラム推進派閥の高官にすれば目障りこの上ない存在だろうが、はやてのバッグについている面子が持つ権限も無視することはできない。そのため、尻尾を出せば叩かれる程度の警戒はされているものの、はやての行動を封殺するほどの強硬手段に出ていないのが実情でもあった。実に政治的なやりとりである。

 

「やっぱり簡単には尻尾は掴めそうにないか」

 

「ええ、ここはティアナさんからの情報を待つしかないかと」

 

近くのカフェテリアで買ってきたホットコーヒーのカップをコンソールボードに置きながら言うはやてに答えるのは、かつて彼女の副官であったグリフィス・ロウランだった。

 

彼は六課解散後に本局の次元航行部隊に転属となっていたのだが、今回のワイズナリー・バイエンス社への調査補佐をはやてから依頼され、現在は彼女の副官として復帰している。

 

ティアナから送られてきたこれまでの報告書を目にして、グリフィスにもはやてと同じような疑問が浮かんでいた。

 

シンセサイド・プログラムの導入。それはワイズナリー・バイエンス社に大いなる利益をもたらすはずだ。

 

しかし、肝心の目的が何なのかがいまいち見えてこない。彼らの掲げる世界平和と治安維持、その声を馬鹿正直に信じるなら、彼らは次元世界の利益と平和のためにシンセサイド・プログラムを開発をしたというわけたが、企業は慈善行為でなりたつものではない。大規模な治安維持プログラムの導入には莫大な費用が発生するし、その維持費やメンテナンス費用、レプリカントやレプリロイドの運用費など、アフターフォロー費用も馬鹿にすることはできない。

 

実のところ、それらで生じる損失を補填できるほど、シンセサイド・プログラムの利益は多くない。

 

当然だ。これらはあくまで治安維持を目的としている。

 

本来ならそういった役目は行政組織が運営する治安維持組織の役目であるはずだが、その治安維持が満足にできていないことが問題であって、このプログラムを導入する方向で物事は進んでいる。

 

しかし資金繰りは?行政組織ならば対象区域に住む人々から「税」として資金を徴収することは可能だ。

 

しかし、今回のプログラムは企業が主導している。なので行政組織と同じように人々から徴収することはできない。

 

できたとしても契約なので月払いが年間払いか、そういった運用になる。

 

しかもそれはユーザーが望むからこそ成立する方式であって、ユーザーが拒否すれば契約なんてものもできない。

 

そんな不安定な財源のもとで運用するには、シンセサイド・プログラムは大所帯すぎた。

 

それら不安定要素を帳消しにできるほど、時空管理局やワイズナリー・バイエンス社が潤沢な資金源を用意できるなら話は変わるが、前者はともかく、後者は体制すらままならないほど、組織力は脆弱のように思える。

 

輸送艦部門は売り上げを伸ばしてはいるものの、他に目立ってやっていることはバイエンス社がやっていたデバイス向け小型通信機器の製造と販売、あとは強いて言うなら各次元界の投資金や物価、株価、次元世界間でやりとりされる輸出入品の取引レートが将来的にどう変動するのかを予測するシステムを開発、運用するといったものくらいだ。

 

過去の出来事をデータベース化し、そこから得られた情報を元に明日の資産や利益を予測する。それもまたワイズナリー・バイエンス社の手がける商品だ。

 

ふと、はやての思考にジョン・オールドマン中将が常々言っていた言葉がよぎる。

 

過去の偉人はこう言った。

 

過去は未来であり未来もまた過去である、と。

 

「はやてさん。高町一尉率いるの偵察隊はカルナログの北部、クルスト地区に到着しています。ワイズナリー・バイエンス社のレプリカント製造所へ偵察行動を進められますが、いかが致しますか?」

 

先日、フェイト共に出発したなのは率いる偵察部隊はすでに準備を整えていた。メンバーはなのはとフェイト、前衛にスバル・ナカジマとそんなスバルに協力する形でついてきた防衛役のチンク・ナカジマ。聖王教会からの派遣で無機質に潜航できる「ディープダイバー」という固有能力を持つセイン。他、なのはの教え子で口が硬く、能力に優れた航空魔導師が数人同行している。

 

舞台編成としては申し分無いが、彼女らの行動が偵察程度で済むかは疑問である。

 

それに加えて、財務管理の調査はティアナと探偵に依頼し、本社方面の偵察はヴェロッサ・アコースと、故郷であるカルナログに精通したヴァイス・グランセニックが向かっている。

 

しかし、はやてにはどこか不安があった。

 

カリムの予言。

 

「いずれ起こりうるであろう陸士部隊の全滅と管理局システムの崩壊」

 

J.S事件から四年。あの予言は今もまだ生きていて、どこかで自分たちの滅びを待っている。

 

はやては改めて自分で調べたワイズナリー・バイエンス社の資金の流れを確認する。事業は多様化しているのだが、資金は一度、本社にプールされて各所の製造所や、研究施設へと分配される。ただ、その金額が額面通りすぎた。叩けば埃が出ると楽観視していた過去の自分を疎ましく思いながら、表面上だけは潔癖すぎるほどの財務状況。調べれば調べるほど、薄気味悪さだけが残る。

 

それに比例して、嫌な予感が大きく膨れ上がってゆく。

 

「はやてちゃん!ティアナさんから秘匿通信で連絡がありましたです!」

 

リインフォース・ツヴァイの言葉を受けて、はやてはすぐさま光学式モニターを展開し、ティアナからのメッセージを確認する。警備ドロイドに襲われたという報告もあるが、一旦は無視して添付されたファイルを開く。

 

当たりだ。確固たる証拠を掴んだことで思考が高揚しているのを感じた。資料を読み取っていく。なるほど、表面上の資金繰りは潔癖なわけだ。相手は次元世界中にネットワークを持つ地下銀行を介して余剰分の資金を流していたのだ。

 

それも巨額の資金。並べられた資金をおおまさに合算するだけでも時空管理局全体の年間運営費を超える資金のやりとりがされている。

 

「何かあるとは思っとったけど……これは予想以上やな」

 

そのとんでもない資金はどこに流れているのか。資料を読み解いていくと、まず最初に流れたのは魔力動力炉を開発していた企業へ、そして次に魔法兵器……アルカンシェルや、アインヘリアルを開発した管理局の技術部門……そして現在は「シンセサイド・プログラム」に必要な研究機関。

 

その研究機関の名を見て、はやては目を見開いた。

 

「違う……」

 

「え?」

 

はやての呟きにリインフォース・ツヴァイが声を上げた。嫌な予感が確信に変わった。

 

「資金の提供先はワイズナリー・バイエンス社やない!管理局の科学部門に直接いっとる!ミッドの銀行を経由して上手く誤魔化してたんや!」

 

やられた。そう思いながらもはやてはすぐさま通信機をオンラインにする。

 

「全隊員に通達!ワイズナリー・バイエンス社に研究施設なんて存在せえへん!これはダミー……罠や!なのはちゃん!フェイトちゃん!聞こえてるか!?すぐに撤退や!」

 

だが、その通信をつなげるのはあまりにも遅かった。

 

 

 

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