魔法…曰くイメージを明確にすることで発言する力であり、万人に微笑む女神の法とでも言い表せる物だ。だが、私は生まれてこの方それらを全く扱えないでいた。
私の祖父マーリン・ウォルフォードが言う「お主はイメージを魔法へと変換する事が苦手のようじゃのう…婆さんの方を極めてみてはどうじゃ?」そう言われた。
私の祖母メリダ・ボーウェンが言う「グリムは魔道具を作る才があるね。それを伸ばしてみるかい?」そう言われた。私は無意識にはいと答えた。そこから、私の魔道の道は開かれたのだった。
「婆ちゃんに教えてもらった魔道具…文字が多くてあまり込められないしで結構面倒だな。…そうだ、オリジナルの文字を発明したら良いんじゃ?」
この発明が分岐点だった。私を魅了する魔術の道への扉が開かれたのはこの瞬間だった。そこからの発展は目覚ましかった。僅か7歳にしてオリジナルの言語の発明…それに伴う効率的な付与魔術。
「これじゃない…これじゃ無いんだよ。私のこの文字の限界点はこれじゃない。」
私は無意識的に呟いた。それは慟哭のような叫びだった。新たに開発したオリジナルの言語、それの限界点は高々付与魔法の身で終わる物じゃないと、本気で思っていた。
「そうだ…空に付与魔術を展開すれば良いんだ。」
それから一年の歳月を経て、私は一つの発明をした。それこそが魔術…オリジナルの言語を用いた全く新しい魔法のプロセス…これが、私の新たなる夜明けとなった。
「でも勝てない…兄さんには勝てない…。」
俺の兄さんシン・ウォルフォードは天才だ。私と同じようにオリジナルの言語を発明して、私以上の効率の付与魔法を編み出し、魔法の腕も天才と来た。その上剣術を教えられ、遠近熟せる兄さんは、文句のつけようがない程の天才だった。
「勝ちたい…何か一つでも良い、勝って鼻を明かしたい。」
それだけだった。私の胸の内にあるのはその思いだった。それを為したいがために、全てを捧げるのだろう。
「魔術式…展開」
何もない荒野で俺は呟く。それと共に空に沢山の魔術式が絵を描くように映し出される。
「火球」
兄さんなら片手で扱えるような魔法だ。いや…恐らくはこの世界に住まう人間の殆どが簡単に扱えるであろう。
「でも…これだ。私は飛んだ無能だ。優れた環境に置かれていても。私はこの程度の事しか成し遂げられない。」
歪んだ感情で出力されるのは歪んだ魔術だ。魔術程、己の内面を移す鏡の様な性質は無いであろう。
「このままじゃダメだ。負けてしまう。いや…負けているのだろう。」
だが…負けたくない。勝ちたい。何か一つでも。兄さんに勝ちたい。
「そのための魔術だ。何れ…私は兄さんを超える」