どうやら俺はアメイジングでデジタルなサーカスに来ちまったらしい   作:黄金アオキ

5 / 7
すいません少し遅れました。でも、エピソード4があったから許して!


初めての冒険らしい?②

 

「猫じゃねえだろこれ...」

 

 

ベットから這い出てきたそいつは猫なんて言葉で言い表せるものではなかった。可愛い四足歩行ではなく二足歩行、手触りの良い毛並みなんてものはなく、あるのは無機質でゴム質な体、四肢はゴムホースのように伸縮している。頭に猫耳こそあるが顔がのっぺりで、口は肉食動物のものではなく雑食動物の歯並びを見せつけていた。そして、とてつもなくデカい。デカすぎるあまりこの部屋の天井の高さに窮屈している。

 

 

そいつはこちらを見ると何が面白いのかニヤニヤしている。最初の標的はどうやら俺に決めたらしい。その手を凄まじい速さで俺に向かって伸ばしてきた。

 

 

「あ、やべ」

 

そいつの様相に気を取られていたのもあり、あっさりと奴の手の内に収められてしまった。脱出しようと足掻くも全く抜け出せる気がしない。

 

 

「ヤバい助けてくれ!」

 

「ロンゴ!」

 

 

「あちゃー、これは僕たちにはどうにもできないなー。でも、安心しなよ、君の遺言はちゃんとみんなに伝えておくよ」

 

 

「ふざけんな!おい!いや、ジャックスさん!助けてくださいなんでもしますから!」

 

「えー、君と僕は出会って一日しかたってないんだぞ?信用ならないなー。もし君が逆立ちしながら鼻でスパゲッティを食べるって言うんなら考えてあげてもいいよ」

 

「やるやる!やるから助けてください!」

 

「やっぱやめた」

 

その言葉の後、ジャックスは瞬時に姿を消した。訳が分からん。でも、生き残ったら絶対許さねえ。

 

「ポムニ!お前は早く逃げろッ!」

 

奴のおどろおどろしい姿に面食らっていたポム二は俺の言葉に反応してやっと体の硬直を解いた。

 

「でも...あなたを助けなくちゃっ」

 

「いいから走れ!ポムニ!走れ!」

 

「...ごめんなさい!」

 

ポム二は即座に振り返り走り出した。

 

しかし、時すでに遅し。奴のもう片方の手がポム二を捕えんとしている。このままではポム二も手にかけられてしまうだろう。

 

 

俺は文字通り手も足も出ない。だが、まだ使えるものがある。頭だ。頭はまだ動かせる。古典的手法だが、人体から繰り出されるどんな攻撃よりも威力がある攻撃方法———

 

 

 

 

 

 

         ガブッ!!

 

 

 

 

 

 

 

—そう噛みつきである。

 

 

奴はポム二に伸ばしていた手を止め、堪らんとばかりに猫のような鳴き声をあげ、その巨体でのたうち回った。どうやら効果は抜群であるらしい。

 

 

「危機的状況に陥った人間はなッ!頭を使うんだよッ!よく覚えとけ!」

 

 

ポム二はどうやら逃げおおせたらしい。奴はポム二を追いかける気はもうないようだ。その気味の悪い顔をこちらに向け怒りの感情を最大限覗かせてきた。

 

 

「あー、ごめんね。噛んで悪かったよ。...ゆるしてくれない?」

 

 

最大限申し訳なさそうな顔をして謝ってみるも、一向に手を離してもらえる気配がない。逆にもっと締め付けがキツくなっていった。

 

 

「...お前よく見たらかわいいなぁ。なんというかスコッティッシュフォールドよりも絶対人気になれると思うぜ!ポケモンで言うところのピ◯チュウだな!」

 

 

俺のありったけの賛美を感じ取ったのか奴はニコリと笑顔になった。その次の瞬間、視界が縦横無尽に暴れ始めた。天井を見ているかと思えば、床を見ている。そして、頭を叩きつけられた。上、下、右、左とリズムゲームのように叩きつけられる。加速。速度はどんどん早くなっていっている。

 

 

「あへッ、ぐへッ、ごほッ」

 

何度も頭を叩きつけられた後、頭をぶっ飛ばされ意識が徐々になくなっていった。そして最後に見たのは自分の体が奴に食べられる瞬間だった。

 

こっちの世界に来て初日、まさかこんなに簡単に死ぬなんて最悪だな。こっちで死んだら、元の世界には帰れんのかな...

 

————————————

 

 

「ごめんなさいッ...」

 

ズーブルの部屋から轟轟とすさまじい音がするのを後ろ耳に聞きつつ、あの化け物から遠ざかるために私は足のギアをまた一段とあげた。足の回転が増すごとに口からの言葉も増していく。何に謝っているかは分からない。多分、いろんなことで謝っている。

 

 

「はぁ、はぁ...」

 

一階まで逃げると、ようやく足を止めることができた。切れないはずの息を必死に整えると、頭に酸素が回ってくるような感覚がした。冷静さを取り戻し、これからどうするかを考える。

 

 

「彼を助けなくちゃ...」

 

 

頭を回す。しかし、回せど回せど解決の糸口は見出せない。そして、頭を抱える。

 

ポムニ!

 

「考えなくちゃ...考えなくちゃ...」

 

何もできない自分に焦る。目と視界が回り始め、目の前がぼやけてくる。そして、周辺が歪み崩れ、真っ白に置き換わっていく。

 

ポムニ!

 

「えっと...えっと...」

 

 

 

ポムニ!

 

 

その声に正気を取り戻す。声の方に目を向けるとそこにはキンガーがいた。

 

 

「やあポムニ!私たちで一階は探したが、何も見つからなかったよ!それにしても私たちは一体何を探しているのかね?」

 

そうだ。一階にキンガーたちがいるのを忘れていた。まだ私一人になったわけじゃない。

 

「キンガー聞いて!猫が本当は化け物で、それでロンゴが捕まっちゃたの!だから早く助けに行かなくちゃ!」

 

「そういえば私たちが探していたのは猫だったね!思い出した!で、ロンゴがなんだって?」

 

「だから、化け物からロンゴを助けに行くのよ!」

 

キンガーは理解したように頷くと、踵を返して歩き出した。

 

「ラガタとガングルに合流しよう。人数は多い方がいいんだろ?」

 

「ええ!」

 

 

そして、ラガタ、ガングルと合流し、事のあらましを説明した。そうして化け物の確保及び救出作戦会議が開かれた。

 

 

まず化け物について

・巨体

・手を伸ばせる(もしかしたら全身が伸びるかも)

・噛みつきが効いていた

・ズーブルを食べているかもしれない

・ロンゴを食べたかもしれない

 

そして考えられる解決策

・自分たちでなんとかする

・ケインに助けを呼ぶ

 

解決策として出たのはとても解決策とは言えないものだったけど、今はとにかく試してみるしかない。

 

 

「ケイン!ちょっと助けてくれないかしら!ロンゴとズーブルが猫に食べられちゃったのよ!」

 

 

サーカス中に私の声が響き渡る。でも、あの常に調子に乗っいるような声は返ってこない。返って来るのは反響してきた私の声だけだった。

 

 

「あーもう!なんでいっつもいないのよ!」

 

結局、自分たちでなんとかしなくてはならないことが決まった。あの化け物を相手にしなければならないことについ叫んでしまう。そんな私を見かねてか、ラガタが私の肩に手を置いて、落ち着くよう言った。

 

 

「ポムニ、落ち着いて、ケインがいないことを嘆いてもしょうがないわ。私たちみんなで考えを出し合ってなんとかしましょう」

 

 

ラガタの言う通りだ。自分はこんなにヒステリックだったろうか。どうしても感情が表立って湧き出てしまう。今は冷静であるべきなのに。

 

 

「ふー、...ごめんなさい。取り乱したわ」

 

「落ち着いてくれてよかったわポムニ。私たちならきっとこの冒険をクリアできるはずよ」

 

「どうしてそんな自信たっぷりなのよ?」

 

 

ラガタはいつも肯定的なことを言ってくれる。私とは違う考え方で物事を推しはかっているのだろう。今はそんなラガタがとても羨ましく思えてくる。

 

 

「ケインはね、絶対クリアできない冒険はみんなにはさせないわ」

 

「...」

 

言われてみれば、確かにそうであると言えないこともない。グローインクの収集も、キャンディー王国でのシロップの奪還も、そしてミルデンホール邸での謎解きもちゃんと行えばクリアは容易であったかもしれない。

 

 

「あなたは信じられないかもしれないけど、ケインは私たちに楽しんでもらえるような冒険を作っているわ。まあ、私たちとちょっと感性はずれているかもしれないけどね」

 

「ラガタの言う通りだ!ケインはみんなのために冒険を作っているはずだ!」

 

 

今まで考えもしなかった考え方で考えてみる。ケインの考えそうなことを考える。

 

 

「今回の冒険は明らかに私たちに不利だわ。最初から敵わない相手を捕まえろだなんて土台無理な話よ。だから、おそらく今回ケインが渡したアイテムで化け物を確保できるようになってるはず...」

 

 

そう。今回ケインから渡されたアイテムはネットランチャーとキャットフード、このどちらかがこの状況を打開するためのアイテムなのだろう。多分おそらくキャットフードだ。

 

 

「ねえ、今回ケインから渡されたアイテムはどんな使い方をすると思う?前の冒険で似たようなアイテムを渡されたことは?」

 

 

前にラガタから聞いた話ではケインはNPCを再利用すると言っていた。なら、今回のようなアイテムももしかしたら再利用しているかもしれない。

 

 

「...わたし、あのキャットフードなら知ってるよ」

 

「教えてくれる?」

 

ガングルは一つ頷くと言い始めた。

 

 

「前に、ジャックスから無理やり食べさせられたことがあるよ。そしたら、急に体がうんと小さくなったの」

 

 

ようやっと、解決策が見えた。ケインもおそらくこれを考えていたのだろう。

 

「解決策が分かったわ。まず、キャットフードを化け物に食べさせて、小さくする。その後にネットランチャーによる確保を行う。ロンゴとズーブルの救出は化け物が小さくなった時ね」

 

 

解決策があることで一先ず不安が取り除かれた。しかし、また新たな不安が生じてしまった。

 

 

「...最悪だわ。アイテムは全部ロンゴが持ってたから二階にあるわ」

 

「それでは、まずはそれを取りに行かないとの!」

 

あの化け物がいる以上かなり危険ではあるがやるしかないだろう。一度あの化け物を一階に誘導して、その後二階に行ってアイテムを回収した方がいいだろう。誰がどうやって誘導するのかを悶々と考える。しかしその思考の渦は小生意気な声によってかき消された。

 

 

「ご心配なく、アイテムなら僕が拾ってきたよ」

 

「ジャックス!?」

 

両手にアイテムを持ったジャックスが悠々と歩きながら現れた。

 

「僕も手を貸してやってもいいよ」

 

その言葉に全員が少なからず反応を示す。

 

「あなた、助ける気はなかったんじゃないの?」

 

「記憶にないなぁ。そんな無意味こと聞くより早く行動を起こした方が僕は賢いと思うよ」

 

ジャックスが積極的に人助けを申し出るなんてことは本来ならありえない。でも今回は訳が違うらしい。まあ、なんとなく予想はつくけど...

 

「...ありがと」

 

とにかく事態は好転しているらしい。私たちは作戦を共有し、二階へ足を進めた。

 

化け物に敵うかは分からない。でも、1人よりも、みんなでならなんとかなるような気がする。

 

 

「みんな作戦通りお願い!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




エピソード4見たけど、ジャックスが振り回される側になっていたのが面白かったね。そして、やはりガンミグ...
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。