どうやら俺はアメイジングでデジタルなサーカスに来ちまったらしい 作:黄金アオキ
お待たせしました!やっと更新ができて嬉しい限りです!
「いた...!」
居住スペースの入り口の角から覗き見ると、通路の奥に化け物はいた。猫のように床に体を丸め、時期足で耳の裏を掻いたり、無い毛並みを整えるかのように手を舐めている。さらに注意深く観察すると、最初に見た時とは体の質感が変わっているように見える。ゴム質であったものが、今や金属のような光沢を帯びている。それはロンゴの体の質感を思い出させた。
「ガングル準備はいい?」
ガングルは弱々しくもしっかり頷いた。
今回の作戦は大きな流れは、足止めからのキャットフードの投擲である。そして、ガングルはこの作戦の第一段階を担っている。いわゆる囮だ。
「ガングル、もしあいつの口の中にぶち込めるようならやってちょうだい。あなたならできる。頑張って」
ガングルは事前に分け与えられていたキャットフードを見つめ、ポムニにやれるだけやってみると返した。
「ラガタ、ガングルが囮になっている間にそれをあいつの足元にぶちまけて」
ラガタは手のひらサイズのブロックが大量に包まれた袋を一瞥して言った。
「分かったわ。私はこれをあの化け猫の足元に投げまくればいいのね?」
「ええ、頼むわ」
この大量のブロックは作戦の第二段階に当たる。この世界ではよく物体同士の接触判定に異常が起こりやすいことを体験している。その仕組みはおそらく接触する際の速度や接触角度などを主因とした物体同士の過剰接触だろう。そしてその過剰接触によりめり込み、反発などの現象が起こる。詳細な条件は調べていないため本当に足止めの効果を発揮するかどうかは賭けだ。
「キンガーとジャックスも作戦通りお願いね」
キンガーは大袈裟に、ジャックスは適当に頷いた。
◇
猫はとても心地よい気分であった。先ほど自分に噛みついてきた永遠の宿敵(猫にとっては)が今や己の腹の中に収まっているからである。長年不戦敗を続けていた猫にとって、それは溺れるほどの達成感と優越感をもたらしていた。しかし、いざ永遠の宿敵がいなくなってみると一抹の寂しさを感じた。それを手を舐めて誤魔化す。
ふと、何かが走ってくる音が聞こえてきた。そちらの方に目を向けると何やら赤く細い者がこちらに走って近づいてきていた。猫はそれを食らわんとして手を伸ばす。
しかし、掴んだと思ったのも束の間、その赤い細い奴はシュルシュルと一本の帯となり身体中を次から次へと這い回ってきた。捕まえようとしてもなかなか捕まえることができない。突如、そいつが投げてきたものが耳に当たった。と思うと、すぐさまそいつは元来た道に逃げ出した。
今度は確実に食うために、通路の隙間がなくなるほどに大口を広げて飛びついた。しかしながら、急に現れた宙に浮かんだ手によってそいつは引っ張られて行ったため、またもや食べるのに失敗してしまった。引っ張られて行った方向を見ると合計で5体の敵が確認できた。
猫は全てを食らわんと弾丸のように駆け出した。そしてそのまま食い散らかす———、こともなく何かに躓き転び、体が動かなくなってしまった。この事態に陥り、初めて床に大量のブロックが撒かれていることに気がついた。猫はなぜ自分が全く動けないのか理解ができない。ただ小刻みに体が震えているばかりである。
そうしていると奴らのうちの1人一番小さいやつがこちらに来た。手には何かを持っている。自分が動けないのを見て安心しているのがその表情から伺える。
こいつは自分を捕まえたと油断している。だが、自分にはまだ動かせる部分がある。そう頭である。あの永遠の宿敵のように自らも頭を使うのだ。こいつは自分が動けないふりをしているのに気づいていない愚か者だ。そう心の中でほくそ笑むや否や瞬時に再び大口を開け敵に食らいついた。
しかし、その瞬間こいつは食われることを予知していたかのように口の中に何かを投げ込んできた。途端に感じる違和感、浮き輪が空気栓を抜かれて萎んでいくような感覚。否、実際に体が縮んでいっている。どういうことだ、何をしやがったという意味を込めてそいつを睨みつけた。
「あんたが動けないふりをしているだろうことは、私はとっくに気づいていたわ。だから、私が安心した雰囲気を出せばあんたが大口開けてくれることも知っていたのよ」
「それでまんまとあんたは私の思惑通りに動いてくれたというわけよ。まあ、正直成功するかどうかは半々だったけどね。おかげで予備の作戦を使わずに済んだわ」
「あんたに食べさせたのは、あんたが今実感している通り体が小さくなる効果があるの。そして、おそらくもうそろそろといったところね」
不意に、猫に悪心が走る。胃の中から迫り上がってくるそれに耐えきれずに吐き出す。吐き出されたのはロンゴであった。それと同時に体から金属のような光沢は失われた。
「ロンゴ!大丈夫!?」
声をかけるが返事がない。どうやら、気を失っているようだ。再び化け物に目を向ける。化け物の体は最終的にポムニに見下ろされるほどにまで小さくなった。
「ズーブルは食べてなかったようね。でも、そうなるといったいズーブルはどこにいるのかしら?」
「まあ、それはあとで探せばいいわ。とりあえず捕まえないと」
ポムニはジャックスを呼び出すと、ネットランチャーで小さくなった化け物を捕まえてもらった。
それからみんながこちらに集まってきた。
「うまくいったわねポムニ!あなたの作戦のおかげよ!」
「ありがとう。でも成功したのはみんなのおかげよ。みんながよく頑張ってくれたから」
ラガタ、ガングル、キンガー、あとジャックスにも感謝を伝える。
「それにしてもスーブルはどこに行ってしまったのかの!」
キンガーが未だ姿を表さないズーブルに疑問の声を上げる。
「ズーブルの奴がこいつに食われてないってことは部屋に帰っていないことになるな。大方冒険に巻き込まれないようにサーカスの外にでも行ってるんじゃないか?」
「私はずっとこのサーカス内にいたよ」
声の方を向くとそこにはズーブルが小さな
「ズーブルあなた今までどこに!いえ、その腕に抱いている子猫はどうしたの!?」
ラガタがみんなの疑問を代弁する。
「あー、一階にいて、そしたら子猫がいたのよ。それよりもこっちも聞きたいことがあるんだけど、あんたらはいったい何を捕まえているんだい?」
「何って猫よ!今回の冒険で言われていたね!」
「といってもこっちが今回の目的の猫なのは確認済みなんだよ。そうだろケイン?」
名が呼ばれた途端、天井からにゅるりとケインが現れてきた。ケインは両方の猫に目を巡らすと、頭を掻きながら少し口籠らせて言った。
「スーブルの言う通り、今回飼い主から依頼されていた猫はズーブルの方の猫なのは間違いない。つまり、君たちが捕まえてくれたそちらの猫は私も預かり知らぬことなんだ」
「じゃあ、私たちが捕まえたこの気味が悪い猫はなんなの。あなたはこのサーカスを管理しているはずじゃないの?」
ポムニの疑問にケインは困ったとような顔をして言った。
「私も半信半疑で未だに信じられないのだが、もしかしたら明日、みんなでオープニングをしなければならないかもしれない。」
その言葉に私も含めみんながありえないとばかりに顔を呆然とさせている。いち早く復活したジャックスがケインに言葉を投げかける。
「おいおいおいケイン、君の言う通りだとすると、そこに捕まっているのは新しいサーカス団員だって言うのか?」
「そういうことになる。私も一度に2人の団員がこのサーカスに入団するのは初めてのことで、とても困惑している。しかし、彼がNPCではなくプレイヤーならば私は全力で歓迎するだけだがね」
「とにかく冒険はこれで終了だ!クリアおめでとう!」
その後、ケインは彼をどうするかについてはまた後日伝えると言い、捕まえた猫とともに消えていった。
◇
メタリックな部屋の一室でロンゴは目を覚ました。体を動かし、自分が死んでいないことを実感した。
「生きてて良かった〜...」
己が生が今も続いていることにただ安堵した。
あいつに食われる瞬間は死を覚悟したものだが、どうやらこの世界ではそう簡単には死なないらしい。今日一日を通して分かった。
「はあー、なんか寝てる間に嫌なもん見た気がすんな...。まあいいや、忘れてるってことはそこまで大したことじゃないだろ」
しかし、初めての冒険があんなに高難易度だとは夢にも思わなかった。某フロムゲーの難易度ではなく、初めは初心者にも優しい低難易度にしてくれよ。それと、俺が食われた後はどうなったのかも気になる。みんなは無事に逃げられたのだろうか?
「とりあえずみんなに話を聞きにいくか。」
そう考え、部屋を出てみんなの部屋をノックして回る。しかし誰も返事を返してこなかったため、一階に降りてみる。降りて歩いているとステージの方から声が聞こえてきたのでそちらに向かう。ステージ裏の幕から中に入る。そこには自分の姿を模したパネルが設置されていた。
「なんでこんなのが置いてあるんだ?」
次の幕をめくって入ると、薄暗いステージにただ1人いたポムニがこちらに気づいて声をかけてきた。
「ロンゴ起きたのね!体...というより精神的には大丈夫かしら?」
「オッス!心身ともになんともないぞ!それより、ポムニの方こそ大丈夫だったか?」
「ええ、私も大丈夫よ。他のみんなも特になんともないわ」
「そうかそりゃあ良かった!そういや今は何をしてるんだ?」
「今は「それではみんなオープニング開始するぞ!新しいサーカス団員のために全力で取り組んでくれたまえよ!」
幕の先からケインの声が通って聞こえてきた。内容から察するに新しい人がこの世界にやって来るらしい。昨日の今日でそんなに人は入ってくるものなのだろうか?などと考えているとポムニに自分のパネルが置いてあったさっきのところに行くように急かされた。
配置に着くと、すぐさま俺がこの世界に来た時と同様の音楽が流れ始めた。ふと、最初に見た時はみんな各自振り付けを行っていたことを思い出した。ならば、自分も振り付けを行わなければならないだろう。こういうのは本気でやるべきだと学校の文化祭しかり創作ダンスしかりで知っている。受けを狙いにいくのであればそれこそ一生懸命真面目にやらねければならない。
「見せてやるぜ...俺のとっておきの振り付けをな!」
ガングル、ズーブル、キンガー、ラガタ、ジャックスと名前が呼ばれる。
「見とけ見とけよ!」
そして、ポムニの名前が呼ばれ、ついに俺の出番が回ってきた。俺の気分はまさに大スターである。幕が開かれ、まばゆい閃光が入って来て俺を照らし始める。
顔を右に向け、そのまま真正面に向けた体を少し右に向ける。足は肩幅ほどに開き、左足を軽く曲げ、右足をピンと張る。足先は真正面に向け、顎を引き、胸を張る。そして、左手を左胸に当て、右腕は伸ばすと同時に、右腕の関節と右手首の関節を曲げる。最後に右手で指差す。これを一秒とかけずに成し遂げる。後は、完璧なタイミングであの言葉を叫ぶだけだ。
ここだ!ここが最高のタイミング!刮目せよッ!これが俺の十八番だッ!
ポウッッッッッッッッ!
決まった...
俺の発声とともに音楽が止まり、皆は静まりかえり、静寂がステージを支配している。間違いなく皆が俺に注目しているのが肌に感じる視線で分かる。
みんなの感動した顔を見るためにみんなの方へ顔を向ける。俺の視界に入ったのは愕然としたみんなの顔と、迫り来る黒くて小さい何かである。それは瞬時に目の前まで来た。
なんだこ————
「ブげウがべッッッッ」
—————れ
なんだこれと、そう思い終えるまもなく凄まじいインパクトが顔に生じ、俺はボールのようにぶっ飛んだ。とても長く感じる浮遊感が終わり、次に硬い床の感触を2、3回ほど味わった。倒れたまま何が起こったのかを先ほど自分がいた場所をぼやけてかすむ目で追う。
そこには黒い小さな猫がいた。そして、その顔をニヤつかせていた。
「嘘...だろ...」
俺は悟った。俺はまだ地獄の入り口にいたということに。これからが地獄だということに。
「ハハ...」
俺は心が錆びれていくのを感じながら気を失っていった。
アメデジで二次創作を書こうとするとアメデジの進行に追いついちゃうから原作沿いにするのは困難だと今更ながら思いました!
なので今後はちょくちょく原作を挟みつつ、基本はオリジナル展開になると思います!
「それでも私は一向に構わんッ!」という人はぜひこれからもよろしくお願いします!