売れないホストもどき、もといライザーは、朱乃先輩の用意した紅茶を飲んでいた。
「いやー、リアスの『クイーン』が淹れてくれたお茶は美味しいものだな。」
「痛み入りますわ。」
ヤバイ、朱乃先輩怖い。
いつもの「あらあら」「うふふ」がないから余計怖い。
ソファに座るリアス先輩の隣に座ったライザーは彼女の肩を抱いているが、明らかに嫌がって、抱いている手を振り払っている。
それでも構わずに肩やら髪やら手やらに触りまくっているのは見ていて気分が悪い。
吐きそうだ。主に生理的な意味で。
「いい加減にしてちょうだい!」
リアス先輩も我慢の限界か……。
ソファから立ち上がりライザーを鋭く睨むが、当人はニヤけたままか……腹が立つな。
「ライザー!以前にも言ったはずよ!私はあなたと結婚なんてしないわ!」
「ああ、以前にも聞いたよ。だがリアス、そういうわけにはいかないだろう?キミのところの御家事情はいくら、魔王様を輩出しているとはいえ、切羽詰っていると思うんだが?」
「余計なお世話だわ!私が次期当主である以上、相手ぐらい自分で決めるつもりよ!父も兄も一族の者もみんな急ぎすぎるわ!当初の話では、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてくれるはずだったでしょ!」
その後の話を要約すれば。
三勢力が起こした戦争で純血悪魔が大量に死んだから、純血悪魔は今数を減らしてしまっている。
だから純血悪魔である上級悪魔の御家同士で結婚して子孫を残す必要がある。
だから純血悪魔である2人が結婚して、グレモリーの跡継ぎを作る必要がある…という事情があるらしい。
先の大戦で『七十二柱』と称された悪魔も半数以下になったとリアス先輩本人も話していたしな。
その辺りの事情もあるんだろうけど、
……リアス先輩がかわいそうだ。主にあんな奴とくっつくことにされるなんて、イッセーのがマシじゃないのか?
「俺もな、リアス。フェニックス家の看板を背負った悪魔なんだよ。この名前に泥を塗るわけにもいかないんだよ。こんな狭くてボロい人間界の建物なんかに来たくなかったしな。というか、俺は人間界があまり好きじゃない。この世界の炎と風は汚い、炎と風を司る悪魔、フェニックスとしては、耐え難くてね。」
ボワッと、ライザーの周囲を炎が駆け巡る。
「俺は君の下僕を全部燃やしてでも、君を冥界に――、『ピーピーうるさいな。』!」恭弥はとうとう我慢ならず、どこからともなく出した刀で床を叩いた。
「さっきからうるさいんだよ発情期なのか?聖獣フェニックスが聞いて呆れるね、あ、性獣だから抑えが効かないのか。」
「貴様!さっきから人間風情がべらべらと調子に乗るなよ。」心底訳知り顔で言った言葉の意味を理解したことでライザーが炎をざわめかせる。
「橘様、それにライザーさま、落ち着いてください。これ以上やるのなら今度こそ、私も黙ってみているわけにもいかなくなります。私はサーゼクス様の名誉の為にも遠慮などしないつもりです。」
ライザーは身体を覆っていた炎を落ち着かせ、息を深く吐きながら頭を振りかぶった。
「……最強の『クイーン』と称されるグレイフィアさんにそんな事を言われたら、俺も流石に怖いよ。」
それはもう、挙動に芝居がかかりすぎて周囲に図らずも嫌悪感を募らせるほどに。
「こうなることは、旦那様からもサーゼクス様もフェニックス家の方々も重々承知でした。正直に申し上げますと、これが最後の話し合いだったのです。これで決着が付かない場合を皆様方は予測し、最終手段を取り入れることとしました。」
「最終手段?どういうこと、グレイフィア。」
「お嬢様、ご自分の意志を押し通すのでしたら、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着をつけるのはいかがでしょうか?」
「――ッ!?」
その言葉にリアス先輩は驚きの表情を浮かべるが、
「……ではお嬢様、ゲームはどうされますか?」
「こんな好機はないもの。いいわよ、ゲームで決着をつけましょう、ライザー。」
「へー、受けちゃうのか。俺はかまわない、ただ俺はすでに成熟しているし、公式のゲームも何度かやっている。今のところ勝ち星のほうが多い。それでもやるのか、リアス?」
ライザーは挑戦的な態度で、彼女は、勝気な笑みを浮べた。
「やるわ、ライザー。あなたを消し飛ばしてあげる!」
「いいだろう。そちらが勝てば好きにすればいい。俺が勝てばリアスは俺と即結婚してもらう。」
しかし、どこまでも相手のことを考えない物言いといい、最低な男である。
「承知いたしました。お二人の御意思は私グレイフィアが確認させていただきました。両家の立会人として、私がこのゲームの指揮を取らせてもらいます。よろしいですね。」
「ええ。」
「ああ。」
「まあ、どちらにせよこの中で俺の可愛い下僕達に対抗できるのはリアスの『女王』である『雷光の巫女』ぐらいじゃないか。」
そう言いながらパチンと指を鳴らすと、その場に現れたライザーの眷属に、もはや恭弥は呆れ顔を浮かべることしかできなかった。
「これが俺の可愛い下僕たちだ。」
眷属が全員女。
恭弥は心の中で叫ばずにはいられなかった。こいつは馬鹿なのか?と。
「お、おいリアス。なんでそいつは俺をみて泣いてるんだ?」
ライザーはイッセーをみてドン引きしている。
「この子の夢がハーレムなの。きっとライザーの下僕をみて感動したのよ。」
イッセーが激しく首を縦に振っている。
「きもーい。」
「ライザーさま、このヒト気持ち悪い。」
「そう言うな、上流階級を下賤な目で見るのが下級な奴の常さ。俺たちの熱々なところを見せてやろう。」
ライザーは1人の眷属とディープキスをしだした。
『ブーステッド・ギア!』
イッセーは赤い籠手を呼びだす。
「お前なんかに部長は不釣合いだ‼この女たらしのクズ野郎が‼」
「だが、お前はそれに憧れているんだろう?」
「…………ハッ!そんなの関係ねえよ‼」
イッセー、そこで言葉につまちゃ、あかんでしょ。
「ハッ、お前なんかただの種まき鳥じゃねえか!フェニックス?まさに焼き鳥だな。」
「あは、イッセーそれって言い方を変えたらフェ二チキってこと?どこのコンビニの看板商品だ?」
リアス先輩は後ろを向き肩を震わせている。他の部員たちも似たようなものだ。
グレイフイアさんの眉もピクピクしているあたり、内心笑っているのだろう。案外、家の決定とは言え、彼女自身、反対の気持ちを持っているのかもしれない。
「キサマら、口の利き方がなってないようだな。おい、リアス、下僕の躾はどうなってる‼」
リアス先輩はそっぽを向くだけ。
「テメェなんて今、俺が倒してやる!ゲームするまでもねえ!」
イッセーがライザーに突っ込んで行く。
「ミラ、やれ。」
「はい、ライザーさま。」
だが、傍目に見てもイッセーがまるで動きが見えてないことは明白だった。
「がはっ⁈」
イッセーはすぐさまミラと呼ばれた少女の棍で天井に叩きつけられた。
「ごめんねっと。」
軽くミラと呼ばれた少女を蹴りとばして、恭弥はダサホストの眷属たちのところに吹き飛ばした。
「「「「「「「きゃあ⁈」」」」」」」
「ぐふっ。」
イッセーが天井から落ちてくるがスルーほとんどスルーであった。
「一回落ち着いたほうがいいと思うな。ハゲるぞ?」
「この人間が⁈行けカーラマイン‼」
ダサホストが若干自分の頭上を気にしつつ眷属に命令して俺を倒そうとしてくる。
「ハッ、ライザーさま」
甲冑を着けた女性が炎をまとった剣を俺に振り下ろしてくる。
「なっ!」
「だから、落ち着けって。」
俺に振り下ろされた剣はちょうど柄から上の部分がなくなっていた。一度俺が抜刀したのが見えてないらしい。
「どうやったらそこまで女好きになれるんだ?確かに俺も男だしそれなりに欲求はあるが………。だいたいなんで一昔前みたいなホストの格好して馬鹿なの。センスないね。」
恭弥は、失笑しつつそう言い放つ。
「貴様ッ!これでもくら…『遅い!』。」
彼は、怒りに任せ放たれたライザーの火球を手に持つ刀で叩き切った。
「なっ、」
「お止め下さい、これ以上は私も見過ごせません。」
「だが、そいつが…」
「先に攻撃をなされたのは、ライザー様です。」
グレイフィアさんに諌められ、軽く舌打ちをしつつも、リアス先輩に目を向ける。
「リアス、ゲームは10日後でどうだい。いますぐやってもいいが、それではおもしろくない」
「私にハンデをくれるの?」
リアス先輩が憎々しげにライザーを睨む。
「そうだ、それとそこの人間もゲームに参加させていいぞ。」
「いいのかしら、グレイフィア?」
「…そうですね。非公式のゲームなので、眷属でなくとも了承されるなら問題ないかと。」
「恭弥は…そのギラギラした目を見る限り大丈夫そうね。」
「ゲームでぐちゃぐちゃにして、俺に楯突いたことを後悔させてやるからな覚えていろ人間風情が。」
と吐き捨て、フェニクスは魔法陣で帰っていった。
「………リアス先輩、塩でもまいておきますね。」
「お願いするわ。」
部室には、なんとも歯切れの悪い空気が漂っていた。
次回修行からの焼き鳥蹂躙(予定です。)