バンビーズみんなのバスターでバインバインしたかっただけなのに   作:カナダ次元

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『巨大なる意志』


COLOSSAL WILL

.

 

 

 

 

 

感電してる

 

お前を

 

離せなくて

 

 

 

 

 

BLEACHアニメ千年血戦篇  第○○話「COLOSSAL WILL」

予告ポエムより

(イラスト:キャンディス・キャットニップ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 燃える。

 

 燃えている。

 

 今まで自分を縛っていたものが燃えている。

 

 その少女はその燃え盛る建物を見てある種の感動を覚えた。忌み嫌っていたあの場所が無くなる。それは、その中に住んでいた連中も全員死んだと言う事だ。

 

 意識せずとも頬に涙が流れた。それに気づいたとき、彼女は驚く。あれだけ彼女達の事を嫌悪してたのに。いざいなくなってしまった今、自分は寂しさを感じてしまったのか?

 

 否。

 

 後にキャンディス・キャットニップと名乗る事になるその少女はその感情を否定する。

 

 だって彼女はようやく自分の意志で―――

 

 ―――自由に、なれたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――賛成4、反対1。決まりだな」

「ユノを彼女の家族の元へと返す計画。決行だ」

 

「・・・・・・・・・ちっ」

 

「キャンディ、アンタねぇ・・・ちょっとは隠そうとしなさいよ」

「なんの為の無記名投票だと思ってんのよ」

 

「まーまー、しょうがないよバンビちゃん。この結果は最初から見えてたじゃん」

「そもそもリルがBG9と計画を練ってた最初の頃からキャンディはずっと反対してたしね」

 

「それはしょうがないと思うの。わたしも実際、最後まで悩みましたし~」

「ユノちゃんとお別れするのは、やっぱり悲しいです( / Д`;)」

 

「・・・おいキャンディ、わかってるんだろうな?」

 

「わーってるよリル。投票の結果がどうあれ、あたしらは結果を受け入れる。みんなで事前に決めた通りだ」

 

「テメェは本当に受け入れられんのか?」

 

「・・・・・・・・・」

「なぁ、本当に他に方法は―――」

 

「分かりきったことを聞くんじゃねーよ」

 

「・・・ッ」

 

「BG9の『知識(ザ・ノーレッジ)』でユノのブレスレットに封印されてた石田宗弦の記憶、お前も見せてもらっただろ?このままユノが彼女の望み通りに霊王になったとすればユノは永遠に霊王宮に囚われる。いくら彼女が霊王に成る事で自身の力を自由自在に使えるようになるとは言え、霊王になった以上霊王宮に縛られる事には変わりはない。世界は()()()()()()()出来ているんだ」

「そして十中八九、ユノは現世の家族を救うために時間を逆行した。前の世界を丸々犠牲にまでしてだ。霊王になればユノは家族と永遠に会いにいけなくなる。するとどうなる?元々ユノはメンタルはあんまり強くない。確実に精神が壊れるぞ」

「下手すりゃ世界をまた殺して再び逆行を決行しかねない」

 

「だったら!!あたしらが零番隊の代わりにユノをずっと守って、現世の家族も霊王宮に連れてくればいいじゃねーか!!そうすれば―――」

 

「変わんねーよ」

「だってユノは、自分の母親を救えなかったんだからな」

 

「――――――!!!」

 

「断言してもいい。ユノは霊王になったらいずれその責任感に押しつぶされる。自身が母をいとも簡単に救うことができた巨大な力を持っていたと自覚してしまったらなおさらだ」

「だからこそ俺らはユノを本当の家族の元へと返すことに決めたんだ」

「俺らは誰も、壊れてしまったユノなんて見たくないからな」

 

「・・・・・・・・・」

 

「キャンディ・・・」

 

「・・・なあ、バンビ」

「あたしは、悔しい」

「悔しいんだ・・・!」

「だってあたしらも・・・・・・ユノの家族じゃねーのかよ・・・!!」

 

「だからこそよキャンディ」

「私達はユノを姉として、家族として彼女を愛している。だからこそ私達は彼女を守り、そして救うべきなのよ」

「アナタもそう強く思っているからこそ、そのだれよりも強靭な思いからこの計画に反対してたのでしょう?」

 

「・・・・・・」

「・・・わりぃ。頭に血ィ、のぼってたみたいだ」

 

「気にして無いわ」

 

「ハァ・・・今日はなんか疲れた」

「先に隊舎部屋に戻ってる。そろそろ帰らないとユノもあたしらがどこ行ったか探し始めるだろうしな。誤魔化しておく」

 

「ええ、よろしくね」

 

「ああ」

 

 パタン

 

「・・・大丈夫かな~、キャンディ」

「思い詰めすぎてないといいけど。ボクちょっと心配になっちゃうよ」

 

「わたしは大丈夫だと思うの」

 

「そうだな。俺もそう思う」

 

「ええ、そうね」

「だってそうでしょう?」

「なんだかんだいって、彼女は私達の―――」

 

「―――長女、なのだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『強制執行(ザ・コンパルソリィ)』」

「『後方移動(バック)』、『後方移動(バック)』、『左右移動(サイド)』」

 

「クソッ!このっ・・・!!ちょこまかと動きやがって~~~~!!」

 

 キャンディスは苦戦していた。

 

 親衛隊を相手にする以上困難な事は承知の上だったが、本来ならばキャンディスはこれ程苦労に見舞われる事は無かった筈なのだ。最愛の妹であるユノワールから親衛隊隊員の能力の詳細をさりげなく聞き出し、その後ユノワールに内緒で行われた対親衛隊相手の作戦会議にてキャンディスがペルニダを相手にする事が決定した時、キャンディスはこれほどまでに自分と相性がいい相手が親衛隊に居たことを喜んだ。

 

 ペルニダが持つ『強制執行(ザ・コンパルソリィ)』は「自身の神経を対象に侵入させ、それを自分の肉体の一部にして意のままに操る」と言うモノ。そして神経と言うモノは微弱な電気信号を使い脳と体の間で情報を伝達する代物なのだ。強力な電気を操る自分の能力とこれ以上ないほどまでに相性がよかった。うまくいけば他の親衛隊を相手にしてる妹たちの援護へ行ける余裕が出来るであろうほどに。

 

 故にキャンディスは念には念をいれ、親衛隊をリルトットの「王の舞台(ジェネレイド・ステージ)」で隔離する際にこの剣の世界であるフローディをリクエストした。巨大な剣がそこら中に刺さっているこのフィールドではその剣を形創る様々な金属を通して自分の雷撃の威力を高める事ができ、更なるアドバンテージを稼ぐことができるうってつけの世界だった。そしてなによりもユノワールが一番気に入ってた舞台でもある。実際一度リルトットと一緒にユノワールをこの剣の世界へと連れて来た時彼女は大はしゃぎだった。彼女が英語で口走ってた「運命」やら「無限の剣」なんちゃらについては顔を真っ赤にしながら終ぞ説明してくれなかったが、あの時のユノワールは本当に可愛かった。

 

「隙あり」

 

「うおっあぶねっ!」

 

 だがそのペルニダがこのニキータとやらへと変わってしまったことで稼いだアドバンテージのほぼすべてが一気に無へと化してしまった。彼女が持つ能力は発動するたびに口走ってる「強制執行(ザ・コンパルソリィ)」のままである事は間違いないのだが、その使い方がユノワールから聞いたペルニダが使う方法と大分様変わりしている。ペルニダが自身の神経を「外」へと放出していたのに対して、このニキータはどうやら「内」の操作に特化しているようだ。飛廉脚を使わずに空中を縦横自在に飛び回るニキータにキャンディスは電撃の狙いをつけられず、逆に翻弄されていた。狙いをつけられずにいるのはもう一つ理由があったが。

 

 しかしキャンディスにとって不幸だったのは、ニキータが「内」の操作のみに長けている事というだけでなく「外」の操作能力に関しても強力な手札をも持ち合わせていた点であった。

 

「そこ」

 

「がっ!!」

 

 おそらくロバートから奪ったのであろう、ニキータが握る二丁拳銃から放たれた銃弾。それがついにキャンディスの右手首へと命中した。

 

「ん、当たった?なら」

「『強制執行(ザ・コンパルソリィ)』」

「『遠隔操作(リモート)』」

 

 その放たれた銃弾を形作ってる霊子の塊から一気にニキータが操る神経が解き放たれ、キャンディスを浸食せんと右腕の内側から襲い掛かる。

 

「なっ・・・めるんじゃねぇ!!」

放電(ディスチャージ)!!!」

 

 浸食を食い止める為にキャンディスはやむを得ず己の切り札のひとつである放電(ディスチャージ)を使う。浸食された右腕を一時的に雷へと変換し、ニキータの神経が焼き切れたのを確認してから再び己の肉体へと状態を戻した。コントロールが難しく、下手すれば己の体を繋ぎとめる事が出来なくなり四散してしまうリスクを抱えたこの技をキャンディスは出来るだけ使いたくなかったが、下手すると今ので体を全部乗っ取られてしまうリスクに比べたら些細な事。しかし浸食弾を焼き殺したとは言えその銃弾が己の手首に突き刺さった際に生じた傷はそのままだ。不幸中の幸いか攻撃を受けたのはジゼルに再生してもらった右腕なので、その再生機能がまだ少し残っているおかげで傷は塞がりつつあったが。

 

「理解できない」

 

「・・・・・・あん?」

 

「あなたは強い。陛下に頂いたその雷の聖文字の力を十分に使いこなしている。確かに私は自己操作(セルフギアス)のお陰であなたの攻撃を避けられてはいるけど、それでもあなたほどの実力者なら数発は当てられるはず。なのにあなたは私に攻撃を一度も当てられないし、終いには私からの攻撃を許してしまった」

「いったい何に気を取られているの?」

 

 キャンディスはニキータのその言葉にカチンときた。

 

「ああ?何に気を取られてるだってえ~?」

 

 確かにニキータの分析は正確だ。キャンディスには確かに焦りがある。本来ならばコイツをさっさと片づけて妹たちの援護へと行けるはずだったのに大幅に足止めを食らっている今の現状が歯がゆい。なのでその焦りから集中力を欠いてるのは確かにある。

 

 しかし・・・

 

「テメーが痴女だからにきまってんだろーがああああ!!」

 

 そう。キャンディスがイマイチ目の前の敵に集中できないその最大の理由。それは目の前にいるニキータが裸マントの恰好をしているからにほかならないからだ。

 

「???」

 

「意味が分からないって顔をしてるんじゃねーよ!!」

 

「あなたも肌をたくさん露出してるのに?」

 

「あたしは大事な所はちゃんと隠してるだろーが!!ほぼ100%のテメーには言われたくねー!!」

 

「でも陛下はこの恰好を褒めてくれたよ?」

 

「やめろ!あんな奴の下世話な話なんて聞きたくねーよ!!」

 

「それはどうして?あなたも陛下に抱かれた事があるのでしょう?」

 

「なわけねーだろ!あたしはまだ処・・・って、何言わせてるんだテメーは!!」

 

「え?」

 

「あ?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・」

 

「・・・あなた、男だったの?」

 

「なにがどうなってそんな結論になるんだテメーはよ!あたしには立派なモンが二つココについてるだろーが!!!」

 

「女じゃなかったらおかしい」

「だってあなたは、私の血族」

 

「は?」

 

 そのニキータの突然の宣言にキャンディスはフリーズした。

 

「先ほどあなたに遠隔操作(リモート)で浸食を仕掛けた時にあなたの血の情報をほんの少し見る事ができた。だから間違いない」

「あなたは()()()()()()()()()()

 

「・・・なん・・・だって・・・?」

 

 立ちくらみがする。

 

 バカな。

 

 そんなバカな。

 

 それじゃあこの女は、自分の・・・!

 

 という事はまさか。まさか。まさか。

 

「・・・娘の・・・名は?」

 

「名前?あなた知らないの?変な事を聞くね」

「彼女の名は――」

 

 その名前を聞いた瞬間。

 

「わっ」

 

 ズン、と。キャンディスからかつてないほど膨大な電圧が目が潰れそうになるほどまでに彼女の体から発生した。そのあまりにも急激な変貌に普段無表情なニキータが思わず驚きを表すほどに。

 

「お前が・・・」

 

「?」

 

 

 

「お前がああああああああ!!!!」

 

 

 

 彼女の持つすべての力を振り絞り、キャンディスはこの目の前の敵へ。

 

 キャンディスの全ての元凶なる存在へと、突撃を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1000年前。

 

 「光の帝国(リヒトライヒ)」は滅亡の危機に瀕していた。

 

 種としての滅却師は200年前の殲滅戦にて死神により現世ではほぼ滅亡へと追い込まれるが、瀞霊廷へと侵攻した「光の帝国(リヒトライヒ)」は1000年前の敗北の時点ですでに滅亡一歩手前へと追い込まれていた。保有する兵力のほぼすべてを注ぎ込んだ侵攻は軍に大量の死傷者をもたらし、死神の逆侵攻にて現世の軍と領土はすべて紛失。わずかに生き残った帝国の残党はユーハバッハが振り絞った最後の力により影の領域(シャッテン・ベライヒ)へと撤退する事に成功はしたが、それによりとある制約が発生する。

 

 活動限界。

 

 影の領域(シャッテン・ベライヒ)にて生きる存在すべてに課された、領域から一定時間以上離れる事が出来なくなる縛りである。

 

 本来、ユーハバッハが持つ技量をもってすれば領域を作る際にこのような制約が課される事はなかった。しかし初代護廷十三隊の面々から始まり、零番隊との戦闘、そして果てには雀部長次郎による不意打ちから受けた傷などでユーハバッハは用いる力をほぼ使い果たしてしまった。故に苦肉の策として制約をもって必要技量を大幅に減らすことで彼は影の領域(シャッテン・ベライヒ)なるこの空間を作る事に成功したというわけである。

 

 しかし撤退した帝国の残党はこの縛りにより様々な問題に直面することになる。作られたばかりのこの空間は中身は皆無であり、衣食住のすべてを一から始めなければならなかった。侵攻後の瀞霊廷の復興のどさくさにて大量の物資を確保できてなければその時点で彼らは飢えにより終わっていたかもしれない。だがそれは誇り高き滅却師達が生きるためとはいえコソ泥なる手段を選ばざるを得なかったという事でもある。その屈辱的な想い。それが「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」による1000年後の侵攻の大いなる原動力となった。

 

 加えて、彼らの皇帝であるユーハバッハもその力のほぼすべてが使えなくなってしまった。回復しようにも受けた傷の完治、影の領域(シャッテン・ベライヒ)の維持、滅却師達の魂の循環、さらには「霊王の左腕」による「全知全能(ジ・オールマイティ)」の封印。それらを全て背負ってしまった滅却師達の皇帝。「聖帝頌歌(カイザー・ゲザング)」に歌われるように、完全なる回復には1000年もの年月が必要になった。故に最低限の行動しか取れなくなり、彼が影の領域(シャッテン・ベライヒ)内で新たに興した「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」はとても快調とは言えない滑り出しで発足した。

 

 だが星十字騎士団は優秀だった。幹部格だったヨハン・ザイドリッツ、ヒューベルト・アレクサンダー・クライヒ、そしてアルゴラ・ララウという中核たる面子が戦死したとは言えどギリギリのところで生き残ったユーグラム・ハッシュヴァルトとニキータ・デスロックが残党を取りまとめ軍としての体面を保つことに成功した。数年も経てば最低限の衣食住の確保も自前で出来る様になり、復興の道筋もある程度見えるところまで来た。だがそれによりとある問題が浮き彫りになってきたのである。

 

 人口問題。

 

 減る事はない。彼らは瀞霊廷にやってきたその時点で現世の器子から尸魂界の霊子へと変換を果たし、自らが滅却師であると言う事で自身の霊子を操り肉体の寿命から解き放たれた存在へと進化した。しかし増やす手段が無かった。1000年前の「光の帝国(リヒトライヒ)」は当時の現世の価値観が滅却師達にも浸透しており、当然瀞霊廷へと攻め込んだ軍はほぼほぼ男性で占められていたのである。唯一の例外が皇帝にその功績を認められ奴隷から親衛隊隊長へと昇格したニキータ・デスロックであり、当時の「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」に存在する女性は彼女ともう一人しかおらず、全軍にて2人しか存在してなかった。侵攻時には軍付属の娼婦たちも存在してはいたが、彼女達は全員戦死している。外から女性を連れてくるにしても瀞霊廷では死神しか存在してないし、現世から滅却師を連れてくるにしても活動限界という問題が立ちはだかる。強引に事を進めれば可能かもしれないが、それは死神達に自分たちの存在の露呈という高すぎるリスクも抱えた。

 

 人口を増やせないという事はすなわち戦力を増やせないという事と同義。つまりこのままでは「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」は穏やかなる停滞を経て死神を相手に永遠に勝つことが出来ないという事になる。

 

 この問題についてニキータは真っ先に気付き、そして彼女はその深刻さに猛烈に思い悩んだ。彼女は皇帝であるユーハバッハにこの身の全てを捧げるつもりではあったし、自身の胎も当然捧げる対象のうちの一つでもあった。しかし彼女はもう既に子供を産めなくなっている。かつての奴隷仲間であるリジェと同じく、彼女はすでにペペとソウケンによる実験、すなわち聖文字を宿すための肉体改造を受けており子供はもうこれ以上望めない体だ。加えて自身はすでにもう一つの実験である「霊王の左腕」の摘出実験の被検体にも選ばれている。ソウケンから成功の確率は低いと言われてはいるが、自分が適合できる可能性があると知った以上、陛下の負担を1ミリでも軽減できるのであれば彼女にとってそれは何よりも優先させる事柄であった。

 

 ならばどうするか。ニキータはその出自からして自分があまり賢くは無い事をこれ以上ないほどに自覚してた。なので彼女が最初に思いついた案は自分よりはるかに頭がいい誰かに相談すること。相談相手として最初に思い浮かんだのはソウケンではあったが、彼は現在不在。ソウケンは影の領域(シャッテン・ベライヒ)が作られた際に()()()外に残った唯一の人物で、「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」にとって影の領域を自由に行き来できる彼は非常に貴重な存在だ。領域内に居る事は稀であったし、行き来には常に神経を尖らせなければならない。

 

 となると気は進まないが、相談するべき人物はソウケンと頭脳にて双璧をなす、そのもう一人しかいなかった。

 

 そしてその彼から帰って来たのは、たった一つのシンプルな答えだった。

 

「愛だヨ♡」

 

 考えてみれば当然の答え。

 

 ならば彼女のすることはただひとつ。

 

「ムニャ・・・はいはーい、いまあけまーす・・・」

「えっ、母上?」

「どうしたのですか、こんな時間に?」

 

 ニキータ・デスロックにとってユーハバッハは絶対だった。彼女を奴隷からすくい上げてくれた彼は大恩ある全知の皇帝であり、この身の全てを当然のように捧げるべき全能の神でもあった。

 

 そしてそれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()も、例外ではない。

 

 

 

 

強制執行(ザ・コンパルソリィ)

 

絶対操作(エヒトギアス)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴィーゲ。ドイツ語で《ゆりかご》と言う意味を持つその場所は、その名でそう呼ばれていた。

 

 最愛の妹によってキャンディスと名付けられる事になる少女はそこで生まれ、育ち。

 

 そして常に嫌悪をもって過ごしていた場所であった。

 

 かつては「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」にとってその繁栄の起点となったヴィーゲではあったが、その輝ける栄光はもやは見る影もない。時を重ねユーハバッハが回復していくにつれ影の領域(シャッテン・ベライヒ)の活動限界の限界値も伸び、現世にて細々と暮らしていた同胞たちの保護も徐々に進み帝国内の男女比の問題が解決した今となってはもはや無用の長物に近いものではあったが、唯一残された機能をもってその存在を許されていた。

 

 すなわち、()()()()()()()()を。

 

 ヴィーゲは娼館として色々と特殊な場所だった。まず、娼館内で務めている娼婦は全員娼館の長である《グレート・マザー》から生まれた娘たちであり、《グレート・マザー》を含む彼女たちは全員その場所から"とある制約"によってその建物から文字通りに出る事が叶わなかった。

 

 その建物内にて生まれた者が出てこれる方法は主に三つ。

 

 《グレート・マザー》から生まれた娘の子である事。三世代目は制約の対象にならないから。

 

 死体である事。制約が切れたから。

 

 清い乙女である事。制約が結ばれる前だから。

 

 そしてキャンディスは当時、()()()()ヴィーゲにてその三つ目の条件に該当する唯一の存在だった。

 

 ヴィーゲはその"とある制約"の影響で実に歪に運営されていた。《グレート・マザー》は常に無気力であったし、その娘たちも然り。館の運営にてんで興味を示さなかった。《グレート・マザー》の娘から生まれた男児達は生まれた時点から兵士教育の名目をもってとある場所へと送り込まれ、唯一マトモに館を運営できるであろう娘から生まれた女児達はだれもかれもが機会があればサッサと館を出ていき二度と戻ってこなかった。《グレート・マザー》の孫娘たちは生まれた時から誰もがこの古臭い、辛気臭い、陰湿な場所から逃げたしたかったからである。

 

 そしてそれは娼館から出る事が叶わない《グレート・マザー》の娘達にとっても同じ事。しかし彼女達がこの縛られた運命から脱出するただ一つの方法は死ぬことであり、彼女達全員が切望してやまない思いだった。しかし彼女達を縛る"とある制約"により自死は許されてない。なので彼女達が取る客から殺してもらえる事が唯一の抜け道だった。

 

 当たり前だがそれは娼館の在り方に絶大な影響を与えた。当然である。訪れる客は娼婦たちと遊びたいのに、その肝心の娼婦が自身を殺してもらえるようにありとあらゆる方法で迫ってくるのだ。とてもじゃないが娼館としての質は最低レベルのものになり、成立時の役割から外れてしまったヴィーゲは閑古鳥が鳴く娼館へと落ちぶれていった。

 

 自業自得とは言え、殺してもらえる客足が減ってしまい《グレート・マザー》の娘達の不満は長い年月をかけて蓄積していった。不満をぶつけようにも他の娘たちへの攻撃はその"とある制約"によって抑制されていたし、自分の娘達も館から逃げるように去ってゆく。その溜まりに溜まった苛立ちを客にぶつけようにもそれにより客足はさらに遠のく。悪循環が更なる悪循環を呼び、ヴィーゲはもはや成立時の目的からかけ離れた存在へと成ってしまった。

 

 そんな中に誕生してしまった存在がキャンディスである。

 

 酔狂を通り越した気まぐれな客により、実に90年ぶりに《グレート・マザー》が生んだ娘。制約がまだ結ばれていない娘。それは他の《グレート・マザー》の娘達にとって久しぶりに溜まりに溜まったフラストレーションをぶつけるに相応しい存在が誕生してしまったということである。

 

 当然、その"とある制約"によって彼女達の行動は縛られてはいる。しかし完全に禁止されている自分達の子とは違い、いずれ制約が結ばれる妹に対しては"教育"という大義名分の元にある程度のやりようがあった。故にキャンディスは彼女の姉たちからその悪意のすべてを身一つで受ける事になり、彼女の性格に多大な影響を与えた。他人なんて信じられない、信じられるのは己だけ。姉たちの子供も自分を助けないし、ガキなんて大嫌い。実に歪んだものへと育っていった。

 

 母である《グレート・マザー》も彼女を放置した。一度だけ、姉たちからの"教育"に耐えられなくなった彼女は待遇についての直談判をしにいったこともあったが、帰って来た返事は彼女を実に失望させるものだった。

 

「恨むのなら、私じゃなくて母上を恨む事ね」

 

 当然恨んだ。だがそれ以上に自分を助けようともしない《グレート・マザー》をこれまで以上にキャンディスは恨んだ。そして絶対にココから自由になる。その強靭なる意志がキャンディスの生きる意味となった。

 

 しかし現実問題としてキャンディスはそれが難しい事を幼いながらも理解していた。いくら制約が結ばれる前だからといって彼女自身に制約が全くないわけではなく、いわば影の領域(シャッテン・ベライヒ)に近い制約が彼女を縛っており、一定時間以上外で過ごしてしまうと彼女の意志に関係なくその足は館へと戻ってしまうのだ。

 

 ならばなぜこのような中途半端な自由が自分に与えられているのか。"教育"の授業中に聞いた話によると、それは《グレート・マザー》の娘たちの最初の相手はこの帝国を支配する皇帝と決められているからだと教わった。つまり自分は初潮を迎えると同時に皇帝の城へと向かい、そこで初めて"とある制約"は完成し、皇帝から民へと下賜された《グレート・マザー》の娘である自分はそこで真の意味でヴィーゲに所属する一員となる。その為の外出許可が必要だからこのかりそめの自由が与えられている、だそうだ。

 

 ふざけるな、と思った。

 

 自分は牧場で育てられた家畜じゃない。あたしは絶対に自由になる。キャンディスはそう固く誓った。

 

 彼女がここから脱出するために唯一可能性として見出したのは《グレート・マザー》の娘から生まれた男児たち、すなわち兵士として育てられるために送り出された男どもにどうにかしてついて行くことだった。姉たちからの"教育"の合間に独自に調べ周り、生まれた男は兵士教育を兼ねたとある施設へと送られたことをキャンディスは掴んだ。うらやましかった。外出時にたまに道ですれちがう兵士たちの姿は素直にカッコいいと思ったし、兵士教育をどうにか受けられることが出来れば陰険な姉たちや母を見返すことができる。そのいつか訪れると良いなという想いを胸に秘め、キャンディスは姉たちから受ける地獄の日々を一日一日と耐えながら生きていた。

 

 ある日。外が激しい嵐であるにもかかわらず"教育"の名目でキャンディスはお使いに出された。ほぼ蹴りだされる形で外へと放り出されたキャンディスはあっという間に豪雨でびしょ濡れになる。道中小声で悪態をつきながらも姉たちから指定された商品をそこそこ距離があった店舗から購入し、帰り道のヴィーゲがある大通りへと差し掛かった、その時。

 

 特大の雷が、ヴィーゲの館へと落ちた。

 

「きゃああああああああああ!!!」

 

「うわあああああ!!火が!火が広がって!!」

 

「おい、嘘だろ!?こんなに雨降ってんのに・・・!!」

 

「ガス管とかに引火しちまったのか?火が全然消えねぇ!」

 

「ボーッとしてるんじゃねぇ!建物から離れろ!!」

 

「火事だ火事だ!!」

 

「おい、消防(フォイアーヴェア)だ!!誰か早く消防(フォイアーヴェア)を呼べ!!」

 

「もうやってるわよ!!でもこの嵐じゃあ何時になるか・・・!!」

 

「くそっ!!あの様子じゃあ中に居る奴らは・・・」

 

 ―――信じられなかった。

 

 燃える。

 

 燃えている。

 

 今まで自分を縛っていたものが燃えている。

 

 その少女はその燃え盛る建物を見てある種の感動を覚えた。忌み嫌っていたあの場所が無くなる。それは、その中に住んでいた連中も全員死んだと言う事だ。

 

 意識せずとも頬に涙が流れた。それに気づいたとき、彼女は驚く。あれだけ彼女達の事を嫌悪してたのに。いざいなくなってしまった今、自分は寂しさを感じてしまったのか?

 

 否。

 

 だって彼女はようやく自分の意志で、自由になれたのだから。

 

 ならば次の行動は決まっていた。少女はその燃え盛る館へ背を向け、彼女が憧れた場所へと走り出す。その施設へと到着した彼女は嵐の中、精一杯の力を込めて戸を叩いた。

 

 ドアを開けたのは、三つの目を持つ奇妙な男だった。

 

「キミは・・・?」

 

「頼みがある」

「あたしを、兵士にしてくれ!!」

 

 こうしてキャンディスはその「孤児院」へと行き着いた。

 

 一つの地獄から違う地獄へと足を踏み入れたに過ぎない事を。

 

 この時の彼女は、まだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今なら解る。

 

 あのふざけた"とある制約"。

 

 それを作ったのは、この目の前にいる女だと。

 

 ふざけるな。

 

 ふざけるな。

 

 ふざけるな!!

 

 帝国の為?滅却師の為?世界の為?

 

 そんなくだらないモノのために。

 

 あたしは。

 

 姉たちは。

 

 男たちは。

 

 ・・・あの、母は!!

 

「死ねええええええええ!!!」

 

「うん。よくわからないけど、ちょっと落ち着こうか」

「『強制執行(ザ・コンパルソリィ)』」

「『再起動化(ブートアップ)』」

 

「なにっ!?」

 

 焼き尽くしたと思った神経群。それはキャンディスの右手首から突然発現し―――

 

「『強制執行(ザ・コンパルソリィ)』」

「『一時停止(ポーズ)』」

 

 瞬く間に全身へと広がり、キャンディスは自身の体の自由を奪われた。

 

「あがっ・・・がっ・・・」

 

「呆れた。一時停止(ポーズ)で強制停止を掛けたのに声までまだ出せるなんて」

「やっぱりあなたの能力は私の能力と相性が悪いみたい。だったらここで始末するのが一番かな」

「でも、うーん・・・陛下の為にも胎は確保しておきたいし」

「そうだ。別にあなたじゃなくてもいいんだ。あなたのお仲間さんがまだ居たね」

 

「!!」

 

 この女、今何と言った?

 

 仲間がまだ居ると。

 

 あたしの仲間に。家族に。コイツは手を出す気なのか?

 

 あたしに、本当の家族というものを。ぬくもりを。

 

 そして愛を、教えてくれた、あたしが愛す妹たちに。

 

 リルに。

 

 バンビに。

 

 ジジに。

 

 ミニーに。

 

 ・・・ユノに!!

 

「でもあなたって私の最後の血族っぽいのよね。あの娘の気配も全然感じないし」

「うーん、ちょっともったいない気もするけど、うん。しょうがないね」

「あなたはもういらない」

「じゃあね」

 

「ふざけんじゃねぇぞ」

 

「!?」

 

「誰がテメェの言いなりなんてなるかよ」

 

「何故動ける。乱装天傀を使えたとでも?」

「いや、これは・・・!!」

 

 コイツは絶対にここで倒す。

 

 例え全身が四散しようとも。

 

「!!」

「全身を、雷のエネルギーに変えた!?」

「そんなことをしたら・・・!」

 

 キャンディスの能力である『雷霆(ザ・サンダーボルト)』はあくまで周囲の霊子を雷のエネルギーへと変える能力。自身を雷へと変える事は出来ない。あまりに強力が故に完全に制御できない、自分がバンビエッタから受け取ったもう一つの能力が由来である。

 

 そしてその制御可能範囲を突破し、周囲の散らばる剣を利用して更に高め、キャンディスは生涯最後である最大の技を放つ。

 

 リル。バンビ。ジジ。ミニー。

 

 ・・・ユノ。

 

 ごめん。おねえちゃんはここまでだ。

 

 だいすき、だよ。

 

 あたしの、いもうと。

 

「くたばりやがれ」

 

 

 

 

 

超雷龍(ちょうらいりゅう)

 

『 サンダー・ドラゴン・コロッサス!!! 』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ。いらっしゃいですキャンディ」

 

「ええ、なんとなくあなたも来るんじゃないかって予想してたんですよ」

 

「で?やっぱり知りたいんですか?貴女の名前の由来」

 

「えっと、確かこの辺に辞書が・・・あったあった!」

 

「はい、ラテン語から来てます。一応単語自体はギリシャ語にもあるかな?」

 

「ええ、この項目ですよ。ほら、これです」

 

「え?似合わないだって?」

 

「いやー、それリルにも言われたんですけどね、やっぱり私はキャンディにはコレだ!って思ったんですよねー。やっぱりピッタリですよ!」

 

「いや、そんなに恥ずかしいですか?自分の名前がラテン語で"純粋"ってのは?」

 

「・・・えっ、もしかしてキャンディって処――」

 

「いったーい!!姉さんがわたしをぶったー!!ぐすんぐすん」

 

「・・・えへへ、ウソ泣き、バレちゃいました?流石にわざとらしすぎたですかね?」

 

「でも私がこんなに甘えるのはキャンディだけですよ。他のみんなにはナイショですからね?」

 

「・・・・・・うん。気持ちいいですよ、姉さんのナデナデ」

 

「これからも、よろしくね」

 

「大好きだよ」

 

「キャンディス姉さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ご清覧、ありがとうございました。これにてキャンディス回は終了です。

 前回から大変間を開けてすみません。このバンビーズ姉妹シリーズを書くにあたってどうしても苦手な戦闘シーンを書く羽目になってしまい、苦手意識から後でやろう、後でやろうと避けていたら三か月も経ってた。なんでだ。

 気が付いたら四期の放送もあとちょっとに。本来ならば放送前に完結にもっていきたかったのに。どうしてこうなった。でも他にも色々な噂もありますし、本当に楽しみですね!

 以下今回登場した遊戯王要素解説。


 遊戯王簡易解説、その3:サンダー・ドラゴン【 Thunder Dragon 】

 2018年7月14日に発売された第10期第6弾のパック「ソウル・フュージョン」で正式にカテゴリ化された「サンダー・ドラゴン」の名がついたカード群。属するカード自体は2000年に販売されたVol.7にて登場しましたが、正式にカテゴリ化されたのはその18年後というある意味ロマン溢れるテーマ。

 メインデッキに入るモンスターは全て手札に関する効果を持っており、それを補助するギミックとして除外も生かすテーマで、展開力も割と高め。エースモンスターである「超雷龍(ちょうらいりゅう)-サンダー・ドラゴン」も今でも通じるサーチ封じという凶悪なロック効果を持ち、もう一つのエースモンスターである「雷神龍(らいじんりゅう)-サンダー・ドラゴン」も相手ターンに破壊効果を飛ばす事が出来る上にどちらも実質的な破壊体制を持つ。加えて召喚事態も容易であることで当時の環境群の仲間入りを達成しました。

 現在はインフレにおいていかれた感はありますが、サーチを多用するデッキ相手には下手しなくても完封することができるため、もし追加カードが発表される事があれば再び環境へと返り咲けるポテンシャルを持つテーマではあるなと個人的には思っています。

 今作品では除外ギミックをキャンディスが自身を雷へと変える事が出来る能力で表現。ちなみに今話で登場した技である「ディスチャージ」と「コロッサス」はカテゴリカードの英語名からきてます。遊戯王って日本語と英語で全然違う名前になってるカードがあって、サンダー・ドラゴンにもそれがちらほら。時々どのカードはどれだったかなって混乱してしまいます・・・


 次回は『P』。姉妹シリーズでは最後となる予定です。

 ではまた。
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