担い手さんがいく!   作:ラスキル

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1話です。



第一話 麗しの狩人

一人の青年が旅をしていた。名をヒッポメネースといい気ままな旅生活を過ごしていた。ある日立ち寄った国でヒッポメネースは一つの噂を耳にした。

 

”あのアタランテを妻にできる”

 

あのアルゴー船の乗組員である麗しの彼女を娶るために、国中の男たちが集まっているそうだ。ヒッポメネースも噂に誘われ、アタランテがいると聞いた場所へと足を進めた。

だがどうも話を聞くと、彼女を娶るためには俊足の足を持つとされる彼女に徒競走で勝つ必要があるのだと聞く。

自分にそのような実力はない、どうしたものかと悩んでいると、愛と美と性を司る女神アフロディーテの神殿を目にした。

これ幸いとヒッポメネースは祈りをささげると天からアフロディーテが現れ、彼に”黄金の林檎”を授け、これを1つずつ落としてアタランテの気を引き付けるように教えた。

 

「おぉ!女神アフロディーテよ、感謝します!これならきっと勝てる!」

 

そう確信しヒッポメネースはその晩すぐに眠りについた。それ故に、黒い影が近づいているのに気づかなかった。

翌朝、さっそくアタランテのもとに訪れ勝負を挑んだ。スタートの号令がされ二人は走り出す。アタランテは少し距離を置いて追いかけてくる。必ず勝てることを見越してのハンデであった。

しかし、ヒッポメネースには秘策がある。自分にはこの”黄金の林檎”があるのだ!と服の中から取り出そうとするが

 

「(ない...ないっ!林檎がない!?)」

 

いくら服をまさぐろうと林檎は見つからない。

そうこうしているうちにアタランテはすでに自分を追い越しており、一か八かで必死に追い付こうとするが当然距離は広がり続け、ついにアタランテはゴールした。

 

ヒッポメネースはゴールにたどり着くことはなかった、ゴールに着いたアタランテは弓を構え男に向け矢を放つ。その矢は正確に男の心臓を撃ち抜いた。

“私と勝負し勝った者の妻となろう。だが、敗者はこの弓で死んでもらう”

アタランテは宣言通り、自らに挑んできた男たちと勝負し、そして死を与えた。

ヒッポメネースもその男たちの一人に過ぎなかった、最後に彼は何を思ったのであろうか。その日、一人の男がその人生を終えた。

 

 ◇◇◇

 

 

時を同じくして、一人の青年が黄金色の林檎を食べている。

“普通の林檎と味は変わらないな”と悪態をつきながらむしゃむしゃと頬張っている。

青年は気ままな旅生活を過ごしており、たまたまこの国に立ち寄った。

この辺りでは珍しい顔立ちで、髪は夜のように美しく黒く染まっており、その瞳は宝石のように紅く輝いていた。

青年が林檎を食べていると子供達が近づいてきた。

 

「すごーい!綺麗な色の林檎だね!!」

 

どうやら林檎に見惚れているようだ。”ああ、拾ったんだよ”青年は答えた。

 

「へえ~ねえ、味は?味はどうなの?美味しいの?」

 

「味は普通の林檎と変わらないから美味しいよ。良かったら食べてみるかい?」

 

そういって黄金林檎を人数分に切り子供たちに渡した。

 

「いいの?!ありがとうー!」

 

「みんなで食べるほうが美味しいんだよ。そう教わったんだ」

 

青年は笑顔でそう答えた。

 

  ◇◇◇

 

 

ある日青年は一つの噂を聞いた。

 

”あのアタランテを妻にできる”

 

なんでも勝負に勝てばとんでもない美人を娶ることができるそう。青年はあまり興味は湧かなかったものの、やることもなかったので足を運ぶことにした。

アタランテがいるとされる場所を訪れると、まず目にしたのは心臓に矢が突き刺さった死体の山。聞くところによるとアタランテに勝負を挑み敗れていった者たちの死体だという。

 

”私と勝負し勝った者の妻となろう。だが、敗者はこの弓で死んでもらう”

 

そこまでして一人の女に執着するものなのだろうかと疑問に思い、“人間って相変わらず度し難いんだね”と言葉を零しながらその場を後にしようとする。

 

「なんだ、汝は挑戦者ではないのか?」

 

後ろから声をかけられた。

 

ああ、前言は撤回しよう。これは確かに自分の命を懸けてでも、と思っても仕方がないのかもしれない。

 

振り返ればそこには美しい緑の狩人がいた。

 

―それが狩人と青年の出会いであった―

 




一目惚れっていいものだと思うんです。私もアタランテのおかげでFateシリーズに触れることができたのですから
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